“ホエイルの心得 ver2.0” 心躍るミニ四駆レースに誰もが参加できるようになるために――おじゃぷろがホエイルを「自由でオープン」にする理由
MSフレキが主流な改造となり、今ではその中でも様々な流派が生まれるようになりました。最近はVZという新しい片軸シャーシが発売されるという動きがある一方、それに負けじと旧来のシャーシも改造技術が洗練されるなど、ますますミニ四駆界隈の盛り上がりを感じています。
■ホエイルとはマシンの名前ではなく”スタイル”
もう少し具体的に言うと、下記の2つが成立すれば“ホエイル”です。
1)”ホエイルの概念”または“過去のホエイル”に基づく。
2)レーサーが“ホエイル”と呼びたい。
1)について、マシンの新たな改造を作ることが得意な人(開発者)と、新たな改造を実際のレースに落とし込み結果を出すことが得意な人(運用者)がいるとするならば、“ホエイルの概念”を追求する人はホエイルの開発者であり、“過去のホエイル”を踏襲する人はホエイルの運用者と言えます。そこには、開発する人と運用する人が共に手を取り合ってホエイルを進化させていければ、という願いがあります。
つまり、ホエイルとは具体的な改造を指すマシンの名前ではなく、あくまで概念の名前であり、もっとカジュアルな言い方をすれば“スタイル”と表現するのが適していると思っています。
“ホエイル”とはマシンの”スタイルの名前”
“ホエイルシステム”はモデルの名前。
“ホエイル”というスタイルを開発・運用する人のマシンを“ホエイル”と呼べる。
■“ホエイルの概念”と“過去のホエイル”について
MS3.2までのホエイルの概念
- 矢のようにきれいにまっすぐ飛ぶように
- 強い制振性を意識する
- ズレた際の補正能力を高める
- (※ミニ四駆超速ガイド 2015参照)
MS4.0以降のホエイルの概念
- 多層化ジェルボール…表面材質・柔らかさ・形状の選択性と"層"の解釈
- 極小の一点…パーツがより重心に近いほど危機回避能力が高いとする、パーツ構成の目標
MS3.2までのホエイルの概念の実装
- 「矢のようにきれいにまっすぐ飛ぶように」調整できるピボットの幅の調整構造
- 「強い制振性を意識する」ためのフロント提灯とフレキ
- 「ズレた際の補正能力を高める」ためのATバンパーのアンダーガード
MS4.0以降のホエイルの概念の実装
- 壁に乗り上げたときにマシンが摩擦で横に回りにくいよう接触部分にパッシングシールを貼る(表面材質)
- 壁や床面に当たりやすいパーツをできるだけ反発をもらわないように「ミニ四駆キャッチャー」などの柔らかい素材を採用する(柔らかさ)
- 壁に乗り上げたときにすぐにコース内に復帰できるようにアンダーガードを曲面にする(形状)
- 壁に乗り上げたときに"マシンを復帰させる"ためのパーツと、"壁を回避する"ためのパーツ2つを状態分けし利用する("層"の解釈)
- イレギュラー挙動を発生しやすいブレーキプレートやアンダーガードの位置を重心に近づけたり取り除くことで、重心に近いパーツを中心にマシンを組み上げる(極小の一点化)
- おじゃぷろ式フレキ
- リフター付きフロント提灯
- アイアンテール
- ATバンパー
- アンカー
■ホエイルの情報を”自由でオープン”にする理由
しかしながら……。ある程度レベルが上がれば、実力者との差は縮まることもまた事実です。その時には、レースを競うことに楽しさを感じる場面が増えることでしょう。
■ホエイルの心得 ver2.0
1)ホエイルで学んだ概念・技術・ノウハウは公開できるようにしましょう。
2)『役に立つこと』に目を向けましょう。
3)人それぞれ『大切にしていること』があります。
4)可能性に挑む姿の邪魔・批判をしてはいけません。
5)考えた先に必ず何かはあります。それが”壁”か”金脈”かはわかりません。
では、それぞれ解説していきます。
1)ホエイルで学んだ概念・技術・ノウハウは公開できるようにしましょう。
2)『役に立つこと』に目を向けましょう。
3)人それぞれ『大切にしていること』があります。
故に、自分が『正しい』と思ったことが、他者には『重要ではない』または『役に立たない』ことが多々あります。それは大人でも子供でも、男でも女でも関係がありません。自分が『正しい』と思った時こそ、相手がどのような世界観かに目を向けることが必要だと、僕は思います。
4)可能性に挑む姿の邪魔・批判をしてはいけません。
5)考えた先に必ず何かはあります。それが"壁"か"金脈"かはわかりません。
故に自身で考え、自身で切り開くことに意味があります。それが"壁"か"金脈"かはわかりません。しかし結果はどうであれ、それが糧になりアイデアや判断の軸となります。
■ホエイルから“おじゃぷろ”の名前がなくなる日を夢見て
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この記事の元になった、おじゃぷろの"とりま"はこちらです↓
おじゃぷろの"とりま"「ホエイルシステムって、どこまで~?」
https://ojapro.hatenablog.com/entry/2015/11/05/022736
おじゃぷろの"とりま"「ホエイルの心得。的な」
ATバンパー2つの“真髄”がいま明かされる! スラスト角度とアンダーガードに注目してGWはマシンを見直してみよう【おじゃぷろミニ四駆ラボ】
コロナウィルスの影響が拡大している中
ゴールデンウィークはお休みという方も、お仕事という方も健康にお過ごしでしょうか。
今回はATバンパーについて少し踏み込んだ見方をしていきます。チェックポイントは2つです。
・“風見鶏の性質”とスラスト角度
・ギミックの配置と形状
これから説明するのは、「縦のビスを使ってストロークするバンパー全般」が対象です(僕の公開しているATバンパーも含まれます)。
■「ATバンパー」とは?
「ATバンパー」という名称は、「壁を追従(オート・トラック)する」意味からきています。その性質は既存のリジットなバンパーより壁にフィットする柔らかさと、既存のスライドダンパーより広い対応領域を持ち、既存のアンダーガードよりコース内に入りやすい性質を持ったバンパーです。
効果としてはマシンがコーナー壁で段差に衝突したり、空中からコーナーへ進入(エアターン)した際にマシンの姿勢が乱れたり、空中からストレートへズレて入ったとしても、バンパーがマシンの位置をある程度補正し、最終的にコースに入る確率が上がるバンパーと言えます。
ATバンパーの全貌・作り方については僕のブログ「おじゃぷろの"とりま"」を参照ください。
■ポイント1「風見鶏の性質とスラスト角度」
風見鶏は風になびいているとき、必ず風上に頭、風下に尻尾が向く性質を持つように設計されています。この性質をここで「風見鶏の性質」と名付けて話を進めていきます。
ATバンパーに風見鶏の性質を当てはめると、「壁面の流れに沿ってスラストが変化する性質」を指します。
では、その性質を実現するにはどのようにセッティングすればいいのでしょうか? 気をつけることは下記の2つです。
・ローラーは必ず縦軸より後ろに配置
・一時的にならアッパースラストになってもOK
風見鶏の性質を反映したATバンパーは必ず以下の条件を満たします。
・支点2つより後方にローラーの接点がある
(※支点とは縦にストロークするビス軸にATバンパーのブリッジが嵌っている箇所を指す)
・横から見た時、支点より上下に1点ずつローラーが配置され三角形を形成している
この物理的な法則を、ミニ四駆のパーツセッティングに落とし込むと下記のようになります。
・支点2つより5mm以上後方にローラーの接点がある
・マシンを横から見た時、支点から下方のローラーへの距離と上方のローラーへの距離とでは後者の方が長い
・フロントATバンパーのローラー幅は下方より上方が同幅~1mmほど長い(下方8mmローラー、上方9mmローラーなど)
・ローラーを押さえてゼロスラストになるための荷重は100~200gf



風見鶏の性質をこれらのセッティングによって利用し、基準スラストがコーナーの壁の流れに沿うことで、スラスト軽減効果が生まれます。
コーナーの壁は3レーンではマシンの遠心力のため、5レーンでは長期使用のため壁面上部が外周方向に湾曲しているので、ATバンパーで壁面に合わせつつマシンが遠心力でインリフトしかけた状態でのスラスト軽減を目指すわけです。
スラスト軽減効果が顕著に現れ、クリティカルなアッパースラストまで至る速度域になったら、今度はATバンパーの押さえの力を強くするか、基準スラスト角を急にします。
風見鶏の性質はコーナー以外でも影響します。
空中からのコーナー進入時(エアターンや飛び込み)でイレギュラーなマシンの暴れが発生した場合や、コースへ突っ込んだ時にダウンスラストでさらにフロントが押さえつけられてしまうい、リア側が上がった場合にコースアウトの原因になる可能性があります。



そんなときに壁の流れや形状に沿って一瞬アッパースラストになることで、無理な体勢にならずにコースに進入する確率が上がります。



実際のATバンパーではこのように動きます

まとめ
・風見鶏の性質を実現するため、ローラーは必ず縦軸より後ろに配置
・風見鶏の性質によって、一時的にアッパースラストになっても大丈夫
■ポイント2「ギミックの配置と形状」
マシンの暴れを収束させることを、どれだけのレーサーが意識しているでしょうか?
現代のミニ四駆ではより速く、より正確にコース上を辿ることが求められています。しかし、スタートさせたらマシンに挙動を任せるしかなく、熟達したレーサーでなければコース上を走るマシンの軌道を正確に予測するすることは難しいことが現実です。
そこで思い通りに走らずマシンが暴れても、コース内に軌道が収束し“結果的に入りやすい”ことを、重要視したのがATバンパーです。
ATバンパーの特徴に「傾斜をつけた丸いアンダーガード」が挙げられます。つまり、石鹸がすべって石けん台に収まるように、コリントゲームの球がカップに収まるように、アンカーの丸いヘッドが基部に収まるように、丸い形状のものは受け取る形状のものに収まろうとします。
同じようにコースとマシンの関係も、コースをカップとしたら、マシンを丸く整えると収まりが良くなります。つまり、アンダーガードに傾斜をつけ丸く整えると、スロープからの飛び込みの時に収まる確率や収まるまでの時間が短くなります。
つまり、まとめると。
・ATバンパーの底面は傾斜をつける(底面と平行にしない)
・ATバンパーの底面はできるだけ上げる
・ATバンパーがスムーズに持ち上がりやすく調整する
コースへの収まりを良くするために、ATバンパーでは以下の条件を満たすように調整します。
・アンダーガードは壁・前方に向かって傾斜している
・アンダーガードの両端はマシンの重心から3-4mm下方に存在する
・アンダーガードが持ち上がり始める力は60gf以下(量りで計測)
・アンダーガードは5mm以上縦にストロークする
・アンダーガードはピボット軸から両端まで傾斜している【※】※リアATバンパーでは重要視しなくてよい




■マシンを見直そう
上記を参考に、GWは各自のマシンを見直してみてはいかがでしょうか? 修正できるところがあれば、必ずマシンの挙動に現れてくるはずです。以上、おじゃぷろのミニ四駆ラボでした~。またね!
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