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【犬との暮らし方】しつけでは治らない犬の問題行動
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【犬との暮らし方】しつけでは治らない犬の問題行動

2016-04-07 21:00
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    犬が噛む、襲う、ひたすら吠える、自虐行為をする、などの深刻な問題行動を抱える犬は多く存在しています。もし愛犬がこれらの問題行動を持ってしまったら、誰に相談すれば良いのでしょうか。また、どのような対処が必要なのでしょうか。
    世間には、「犬のリーダーになれ」や「犬を褒めてしつける」など、様々な方法が出回っています。しかし、これらは本当に問題行動へのアプローチとして最適なのでしょうか。
     
    私のクライアントの多くに「トレーニングに出したけど治らない」や「犬の幼稚園に入れたけど悪化した」などのケースがあります。こうしたケースでは、いずれも問題行動の中でもダントツに対処が困難な、”人を襲う”や”自虐行為(強迫行動)”が多いのも特徴的です。
    なぜ、トレーナーに預けたり、指導を受けても問題行動が解消しないのか。この理由はシンプルなものです。それは、問題行動の原因にアプローチできていないからです。
    犬が問題行動を起こしているのなら、何故そのような行動を取るのかについて考えなければなりません。原因を突き止めずに対処をして無駄吠えが治っても原因は残ったままです。残った原因は違う問題行動を生み出すでしょう。ここでその行動の原因にアプローチできれば、原因が解消され、問題行動を起こす必要がなくなるわけです。
    原因を突き止めるには、プロの行動心理カウンセラー(ドッグビヘイビアリスト)などによる徹底した観察が必要となります。原因の目処がたったら、行動修正プログラムを実施して問題となる行動を減らしていきます。

    よく見られる、原因を無視した事例を見てみましょう。

    よくある無駄吠えの対処法

    ・パターン1:
    犬が吠えている時に、犬に嫌な印象を与える。例えば犬が吠えている最中に犬から見えないところで、丸めた新聞紙で床を叩き、犬を驚かせる。そして犬が静かにしている時に、褒めたり、おやつを与えたりをする。

    ・パターン2:
    犬が吠えていても、一切構わないようにする。犬が吠えている時に、叱ったり、話しかけたりすると、犬は飼い主の関心を引けたと学習し、かまってほしい時に頻繁に吠えるようになる。

    いずれも、この”無駄吠え”への対処としてよく知られている方法です。これらの方法は学習理論に基づいた方法であり、部分的には間違っていません。しかし大切な視点が抜けているのではないでしょうか。
    何故、吠えているのかという、行動の原因が無視されているのが見て取れます。ヒトは無駄吠えと言いますが、犬にとって無駄な吠えなどありません。理由があるから吠えているのです。彼らが必死に吠えて訴えているのは何なのか。そこを見つければ、問題解決の半分は終わったも同然です。

    例えば観察の結果、サークルに綴じ込められているのが不満で吠えているとしましょう。犬は「出してくれ〜」と叫んでいるわけです。この場合なら、サークルから出せば吠え止むでしょう。簡単ですね。
    ここで飼い主さんは、「サークルから出すとイタズラが酷くて困るんです」と言うとします。ならば、何故イタズラをするのかの原因を見つければ、同様に解決に向かいます。イタズラの原因は、運動不足かも知れません。単に構って欲しいだけかもしれません。行動の原因は、犬や家庭の環境によっても異なるため、観察を行いながら原因を探求していく必要があるのです。

    これらは、無駄吠えに限らず、ヒトを襲うなどの問題行動にも同じことが言えます。原因を取り除き、犬が問題となる行動をしなくても済むようにすれば、犬にもヒトにもストレスのない毎日が送れるようになります。
    先の無駄吠えの例での方法で、無駄吠えを抑えたとしても、吠えている原因は残ったままです。吠えてはダメだと教えられた犬は、不満があっても吠えることが許されず、鬱憤は溜まり続けます。こうして溜まった鬱憤は次なる問題行動の火種になるのは明白です。

    問題行動の発生メカニズム

    犬の認知行動学では問題行動の原因として、大きく分けて二つの要因を挙げています。遺伝的要因と環境的要因です。これらは多くの病気でも同じです。遺伝的に神経質な個体なら、些細なことでも不快なストレスを受けやすくなります。環境的要因は、日常の生活に関わる全ての事柄が当たります。産まれてから飼い主の元に渡るまでの経験や、散歩、日頃の飼い主の接し方などが主な環境的要因となります。これら遺伝的要因と環境的要因のどちらか一方が要因となることもあれば、両方が影響することもあります。
    深刻な問題行動の場合でもメカニズムは同じです。このような場合では心因性であることが多くあります。文頭に挙げた問題行動が見られた場合は、まずは獣医師の診察で外科的・内科的な問題がないことを確認します。獣医師から「心因性の疑いがある」という診断が得られた場合は、ドッグビヘイビアリストが原因を突き止めて行動療法や認知行動療法を実施します。
    つまり、深刻な問題行動には、しつけやトレーニングでの対処は難しいということです。犬にとって何が必要かを見極めることが先決です。犬のニーズを満たすことを怠れば原因はそのまま残り、行動が悪化したり、更に深刻な問題行動へ発展してしまうでしょう。

    原因に対処しながら行動療法などで問題行動が減少してきたら、犬にトレーニングを実施するのが望ましい方法です。また原因を無視したまま、過度なトレーニングを実施すると、犬はストレス状態が続き、問題行動は悪化します。こうした例が、冒頭に挙げたような例です。

    容易に手に入る情報には注意が必要

    世間には犬のしつけポータルサイトなどに、様々な対処法が書かれています。特に「直ぐに治る!」や「最新のしつけ法で簡単に治る!」などの対処法には気をつける必要があります。犬の行動の原因は、そんなに容易に判るものではありません。観察を繰り返し行い、犬の心理を読み解く作業が必要になります。
    愛犬の行動に心配があるのなら、行動療法などに詳しいドッグトレーナーや、行動療法の専門家であるドッグビヘイビアリストに相談しましょう。行動療法は確立された療法です。時間がかかることはありますが、一定の効果が認められています。またこの行動療法はヒトの世界でもカウンセラーなどの臨床心理士が行っている療法です。

    なるべく早く手を打てば、問題の悪化を防ぐことができます。飼い主さんは「私のしつけ方が悪かった」などと思う必要もありません。すみやかに専門家に相談し、問題行動の原因を見つけることが出来れば、犬もヒトも幸せに暮らせるようになるでしょう。

    そして犬が穏やかになったら、楽しいトレーニングをたっぷり行い、愛犬に多くのことを経験させましょう。犬がストレスを溜め込んでいない状態なら、トレーニングは多くの効果を生みます。日々の楽しいトレーニングは犬の情緒を安定させ、飼い主との絆を作るのに大きく貢献します。

    まず、しつけやトレーニングありきではなく、犬の心の叫びに耳を傾けたいものです。

    ※TOP画像は著者が撮影したもの。
     
     

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    (執筆者: MASSAORI TANAKA) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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