昨年9月に公開され高評価を得た『心が叫びたがってるんだ。』のブルーレイ/DVDが発売となった。
本作は興行収入が11億円に達するなど、アニメ映画史に歴史を刻んでいる。
参考URL:http://www.eiren.org/toukei/img/eiren_kosyu/data_2015.pdf
この興収11億円がどれほど偉大な出来事なのか解説していきたい。
オリジナルのアニメにとって興収10億円は巨大な壁である。
この壁を突破できるのは『細田守』 『ジブリ』 『大友克洋』といったごく一部の監督、スタジオのみである。
『心が叫びたがってるんだ。』の長井龍雪監督、岡田摩里脚本コンビが手掛けた『劇場版 あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』も10億円を少し超えたところで終わっている。
近年、実績と名声を得始めた『新海誠』ですら最大のヒット作である『言の葉の庭』が興収1.5億円で終わっている。これは料金が一律1000円で公開と同時に配信が行われていたので特殊な形であることを留意する必要があるが。
オリジナルではないが『涼宮ハルヒの消失』が8.5億円だ。攻殻機動隊の続編『イノセンス』は10億円となっている。
『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising- 』は7.4億円の結果だ。深夜アニメで最も成功した『ラブライブ! The school idol movie』は28億円である。
なお『ガールズ&パンツァー 劇場版』は4DX特需と言う特殊な興行形態も相まって興収は15億円に達した。
参考URL:http://news.mynavi.jp/news/2016/03/16/637/
昨年公開された細田監督の『おおかみこどもの雨と雪』は42億円を超えている。最新作では『バケモノの子』は58.5億円の結果になっている。細田作品はこの数年で確実な”ブランド”へと昇華された。その影響が如実に現れた結果と言える。
ブランド力の差が明確に結果へと反映されてしまうのがアニメ映画興行だ。そのため現時点では『あの花』 『けいおん!』 『ガルパン』 『まどマギ新編』 『ラブライブ!』のみが10億の壁を超えている。
それ以外の深夜アニメはネットで話題となり人気を獲得しても10億円の壁を突破することが難しいのだ。『涼宮ハルヒ』ですら8.5億円で止まっているのだから、10億の壁が如何に巨大な物なのかが理解できるだろう。
アニメ作品としての優れた出来が口コミで広まり、それが興収に結びついた形だ。同じくオリジナル作品、口コミで評判が広まった『楽園追放 -Expelled from Paradise-』の興収は1.8億円だ。これは上映館数が13館とかなりの小規模公開であることを留意する必要があるが、それでも2億円に届いていないのだ。(館数が多ければより大きな数字になった可能性は否めない)
参考URL:https://www.facebook.com/EFP.official/posts/1079554358737563
このような状況下で『ここさけ』は10億を突破し、最終的には11億へと到達した。これは『ジブリ』 『細田守』 『大友克洋』に次ぐ4番目の快挙となる。
10億円突破は所謂”オタク層”だけでは成しえなかっただろう。『ここさけ』を鑑賞した際は”リア充”的な層の観客が多く見られた。口コミのおかげか、今まではアニメ映画を観てこなかった層が劇場を訪れたと推測できる。この新規観客層を開拓した『ここさけ』は日本アニメに新たな風を巻き起こしたのだ。限りなくオタク向けに近いアニメ作品へと呼び込んだ『ここさけ』はアニメ界のみならず日本映画界にとっても大きな刺激になっただろう。
深夜アニメでも到達が難しい10億円の壁を”オリジナル”で突破した長井・岡田コンビの動向に注目したい。
※画像は権利者に帰属します。
http://www.kokosake.jp/
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