透明ビニールの「テンガロンハット」！
帽子にぱたぱたと当たる雨音！
つばに施された水玉模様の向こうには
タクシーが泊まっていて
「ママ」が私に向かって
濡れちゃうから早く早くと手を振っている！
「ママ」に言われなくても私は急いでいた！
なにしろそのタクシーに乗れば
新しい家に着く！
祖父母と離れるのは寂しいが
タクシーの行き着く先では
家族五人による新しい生活が始まる！
それがとんでもなく楽しみだった！
だから私は
雨で濡れた舗装もされていない道に
足下をすくわれながらも
傘など持たずに走り続けた！
私はなぜ傘をさしていないのだろう？
きっと両手に
何か大切な物を抱えていたのだろう！
前の晩にトラックに積まれてしまうと
翌朝寂しくなるような何かを
両手いっぱいに抱きしめて走っていたのだろう！
それが一体何だったのかは覚えていない！
なにしろそれは
今おもえば
私が３歳の頃の記憶なのだ！
昨