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東松山市少年リンチ事件を分析してみた
2016年8月、井上翼さん(16)の遺体が唐戸という地名の河川敷で発見された。大変痛ましい事件である。去年、二月に起きた川崎市中一殺人事件を思い出したのは、僕だけではないだろう。
基本、事件の構図は両方ともほぼ同じであると僕は見ている。拙著『生身の暴力論』でも指摘した通り、1980年代後半から続き、また多発していた中途半端な不良少年が起こした残虐な事件である。
1980年代後半から1990年代前半の少年犯罪は、「綾瀬女子高生コンクリ事件」「名古屋アベックリンチ事件」「市川一家四人殺人事件」「木曽川少年リンチ事件」と多発している。これらに共通するのが、前記した通りの中途半端な不良少年。あるいは不良少年もどきの犯行であるという事だ。
川崎市中一リンチ事件同様、少年のネットワークはツイッター、フェイスブック、LINEの三つを駆使し、またSNSがなくても地元では大方、この手の噂は広まっていくものである。これは携帯電話がなかった1970年代~1980年代前半についても同様の事が言える。
地元ネットワークの濃さが、この手の少年犯罪の特徴である。
東松山市の場合。東松山駅にたむろしている「パズル」という赤ギャンのメンバーを中心とした少年たちの犯行であるとして取り調べが進められている。
井上さんは、「パズル」のメンバーではなく周辺でたまに、顔を出したりする程度の仲だった。僕はまとめサイトや2chを見ないので分からなかったが、今回、検索してみると井上さんもメンバーの一人だという書き込みがあったが違うだろう。
暴走族と違い、チーマー、ギャングなどは縦のつながりが弱く、たまたまチームのパーティに参加したりつるんでいたりするだけで「俺、○○(チーム名)何だけど」という自称が多いのが特徴である。井上さんはそういう自称すらしていなかったのではないかと思われる。
東松山市と言っても読者の方はピンと来ないかもしれない。埼玉県でもさほどの繁華街ではないからだ。「地方の街」ぐらいの認識だろう。不良少年というと代表的なのが暴走族で、その戦闘力や団結力はギャングよりも「強い」とされてきた。が、昨今では少子化と道路交通法により数が少なくなっている。そこで台頭してきたのが暴走族ほどつながりが強くはないが、集団化してきたギャングや愚連隊の存在だ(と言っても警察庁が認定した準暴力団、関東連合や怒羅権のような人脈や凶暴さは見当たらない)。
ギャングはたまにビッグスクーターに乗ったりはするものの、基本、街にたむろっているが、東松山市で言えば、遠出をすれば池袋や近くでは大宮等の街がある。十数年ほど前に池袋でギャング同士の抗争があったが、それぞれのチームは東武東上線等の電車で池袋まで来ていたのが特徴的だった。
東松山の不良少年事情でいうと、暴走族では、戦闘的で右翼的なチーム「A」というのが幅を利かせていた。レディースも有名な「B」というのがあった。両方とも現在は解散している。
ここからは想像だが、これら暴走族のOBで何人かは地元のヤクザ組織に入ったり、右翼民族派団体に進んだ者がいるだろう。いわゆる半グレ(準暴力団)である。