今回からメルマガを書く訳だが、大体「こんな事を書きます」というものをまず羅列してみしたいと思う。
●「延長ニコ生ナックルズ」
これは毎月第二水曜午後八時からニコニコの公式番組となっている「ニコ生ナックルズ」(司会は僕)という番組の「延長戦」と思って頂ければ幸いだ。
今まで「ニコ生ナックルズ」は「ニコ論壇」というカテゴリーの中で「一番危ない番組」などと評されてきて、テーマも第一回目が「ヤクザとは何か」から始まり、「刑務所体験」「AV特集」「大量・猟奇殺人」「原発アウトロー」「フェチとは」「特集・未解決事件」「六本木闇社会」といったテーマを多彩なゲストを招いて検証してきた。
最後の20分くらいは視聴者からの質問コーナーなのだが時間の都合上、5、6人の問いしか答える事ができない。しかし実際は100近く質問が来ているという。そこで、その100近くの質問に全部答えてしまおうというものである。質問に答えるだけでなく僕が持っている情報、考察も書いてみたい。
●原発・芸能・裏社会
自著『原発アウトロー青春白書』では福島原発がある街で生まれ育ち、十代から原発に従事。3.11、午後2時46分を原発の中で体験した若者たちの肉声を描いた。今も彼らは放射線を浴びながら働いている。
取材の過程で芸能情報も入ってくる。これは時々、僕がテレビ東京の『ゴッドタン』(土曜深夜放送)でたまに出演した際にイニシャルで芸能裏情報を話すのだが、その文字版と思って頂ければ幸いだ。
裏社会のニュースも継続的に取り上げていきたい。例えば暴力団排除条例は実際、闇社会の住民はどう対応するのか、また芸能事件になると何かと名前が出る関東連合や怒羅権がどのように動いたのか、などである。最近の「ネトウヨ」の動向は民族派はどう思っているのかなども伝えていければと思っている。
今もなお続く福島第一原発復旧作業
第一回目はまず、福島原発事故についてお伝えしてみよう。本原稿執筆時は8月14日だが、その三日前に宮城の某所で作業員たちの話を聞く事が出来た。この作業員たちは自著『原発アウトロー青春白書』の登場人物たち、つまり警戒区域の町で生まれ育ち、そのまま原発作業員として原発の中に入り3月11日を福島第一原発の中で経験した人たちとは違う。宮城県で生まれ、津波に遭いながらも生き延び、去年の夏から復旧作業に従事している。
現在、東京を中心に脱原発運動が盛んだがその根拠となっている福島第一原発(通称1F)では、今もなお復旧作業が行われており、いつ症状が出ても分からない放射線を浴びている人たちの現実を知って頂けれと切に願う。
少し前、四号機から燃料棒が取り出されたが、それはあくまで一本のみであり、まだ「眠っている」燃料棒が数十本ある。たかが一本でニュース取り上げられたが、それ以降何も伝えられていない。あの燃料棒取り出しにもしも失敗したら……。現場は冷や冷やしながら見ていたという。一号機の傾き具合も深刻だ。考えたくないが「もしも」の事を現場では危機意識を持って見ている。
一つ断っておくが、僕は原発問題について「断言する事」だけは避けようとしている。なぜなら世界で初めての事故であり、前例がないからである。だから「絶対安全だ」という報道も「絶対危険だ」という報道も信用しない。これは放射線について特に言える事だ。常識で考えて誰も予期できないはずである。大事な事はその現実をなるだけ冷静にとらえる事である。
少し話がそれるが、僕たちマスコミはその在り様の原点を抑えておくべきだ。つまり「弱者の視点に立つ」。僕は原発取材をするようになって特にそう強く感じるようになった。明治時代に近代ジャーナリズムが確立されたとして、それは例えば『最暗黒の東京』(松原岩五郎著)、『日本の下層社会』(横山源之助著)などにみられる。両方とも明治時代の東京のスラムの現場に潜入し取材した秀逸なルポであり、明治時代の鹿鳴館のようなきらびやかな歴史の真逆にスポットを当てたものである。この両著にこそジャーナリズムの原点がありそれを忘れてはいけないと考えている(僕は編集者でありジャーナリストではないが)。
同じ事が原発事故についても言えるのではないか。
現在、被災地で何が起きているか。なぜ自殺者まで出てしまうのか。そして日給一万数千円で放射線を浴びなから働く作業員たちの実態。彼らも同じ日本人である。日本政府は「日本国民の生命と財産を守る義務」があるとすれば、今こそそれを果たすべきではないのか。極論すれば消費税などは後回しだ。まず第一にやるべき事をやって欲しい。そう思うと僕は政局報道などを見るたびにうんざりする。それを嬉々として論じる政治記者や評論家に、でもある(全員とは言わない)。
「あそこは俺たちの間では『禁断の花園』って言われているんですよ」
一人の作業員が言う。一号機の周辺の事である。彼の証言では放射線は1000ミリシーベルトである。一号機の周辺では地面からも出ているとも言われており、これが本当だとすれば深刻だ。先日、浪江町の会社が作業員の胸につけるAPD(警報器付き線量計量器)を鉛で覆えと命じた事が問題になり新聞各紙の一面で報じられた。しかし、別の作業員に取材したところ、「一年前からありましたよ」という人もいた。あるいは線量を上げないためAPDを自ら装着しないで作業に出かけたりしていた。
法令では「一年で20ミリシーベルト、五年間で100ミリシーベルト」とあり、僕が入手した東京電力の作業員に配布されるテキストにもそう書かれていた。その線量を下げてなるだけ長期間働くためにそのような無茶もしていたのだ。これを解消するのは簡単だ。作業員の日給を上げればいいのである。一日一万数千円で何年後かに現れるかも知れない症状の恐怖の代償としては余りにも低すぎるだろう。
作業は防護服を着る訳だが、鉛は放射線を基本、通さない事になっている。従って、25~30キロはあるであろう「鉛を着て」原発では復旧作業をするという。
「それを着て走らなければならない訳ですよ。禁断の花園を」
走る? どういう事か。東電の社員が、まずは一号機の線量を測る際、長い棒の先に線量計を取り付ける。
「それで、例えば『●秒で走って』と言われるんです。その線量が何ミリとかは教えてくれません。俺の場合、多い時で2.4ミリ浴びました」(前出・宮城県の作業員)
福島第一原発の復旧にはさまざまな問題があるが、僕が日頃から疑問に思っている事に汚染水の処理がある。とりあえずタンクにどんどん貯まっているが、いずれ原発内にも置く場所がなくなるのではないか。
「だから今は汚染水を除染装置と処理施設の建築です。ただおっしゃるように汚染水の量が多すぎて海に流しているとも聞くんです」(前出・宮城県の作業員)
ぞっとする噂だが作業員の話を忠実に再現するとこうなる。
「大体、防護服だってマスクする訳ですがしゃがむとマスクの横が外れてしまう事もあるんです。つまりその時は内部被曝しているって事です」
その内部被曝の量を東電は教えてくれない。現在は親会社に言って調べてもらうようになった。
「覚悟ができない人間じゃないとあの現場は入れないですよね」(前出・宮城県の作業員)
それでも怖くはないのか。
酒を少しあおりながらその作業員はポツリとつぶやいた「人生、悔いなしですから」
僕は何も言えずにいた。何か言ったらそれ自体軽薄なものになるような気がしたからだ。だから黙って水割りを口に運んだだけだった。
まずはこういう人たちがいるという現実を知って頂きたいと思い、第一回目の僕の配信とする。(了)
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