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[餅田もんじゃ] 新進気鋭の謎の女性ライター『下世話の品格』
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[餅田もんじゃ] 新進気鋭の謎の女性ライター『下世話の品格』

2014-07-09 23:00

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    「久田将義責任編集 ニコ生タックルズマガジン」

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    『実話ナックルズ』『ダークサイドJAPAN』元編集長の久田将義が、インターネットを通して新たな「アウトローメディア」を始めました。その名も「久田将義 責任編集 ニコ生タックルズマガジン」。編集長の久田氏をはじめ、様々なアウトロー著者陣営がどの既存メディアでも露出できない記事をお届けします。(毎週金曜日に はその週のまとめ記事を配信)


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    餅田もんじゃ 寄稿記事
    『下世話の品格』


    どちらかと言えば、下世話な方だと思う。Yahooニュースで『あの芸能人が逮捕』的な見出しがあれば最初に開くし、社内恋愛の噂は結構好きだ。例の兵庫県議の動画も、一瞬で目が覚めることを言い訳に先週は毎朝見ていた。というか、夜も見ていた。

    私の周りにも下世話な人は多い。たとえば同僚の井口さんだ。彼女は兵庫県議の前はチャゲアスの動画を見るのにハマっており、その少し前はSTAP細胞にハマっていた。ハマって何をするのかと言えば、「STAP細胞はありまぁす」と言い続ける、ただそれだけだった。最初は披露するたびウケていたという。そこでやめておけば良かったのだ。だが、彼女はその後も事あるごとに言った。言い続けた。いつしかそれは物真似から口癖の領域に入った。そしてある日、遠く離れたところに住む妹との電話中にもその言葉は口をついて出た。

    「STAP細胞はありまぁす」

    恐らく、まったく脈絡はなかった。というか、この言葉が脈絡を持つのはSTAP細胞の有無を問われた時以外ありえない。当然ながら、STAP細胞の有無など尋ねていなかった妹は激怒した。そのあまりの怒りように、以来その真似を封印したのだと、ほがらかに彼女は話した。反省していないことは明らかだった。

    この下世話さが笑えるのは、後腐れがないからだ。これをSNSで不特定多数に発信したり、含意のある言い方をしていれば、きっと何かが引っかかって面白くなくなる。赤の他人のゴシップで楽しませていただく以上、なるべくシンプルに、スムーズに、さくっと終わらせる。それが最低限の礼儀、下世話の品格であると私は思う。

    その品格を心得ない人がいる。たとえば先輩の村岡さんがそうだ。彼の悪いところは、言葉を選ばないことだ。

    「ああいう輩は金がほしいんでしょ」

    会議中にそんなことを言って場を凍らせるのが村岡さんの得意技だ。石原議員の真似事にしては、恰幅から口調、そしてそのあとの下卑な笑いまで、すべてが堂に入っている。こういう人を見ていると、悪代官って本当にいたのだろうなとしみじみ思う。
    また私自身、彼にこんなことを言われたことがある。

    「餅田ちゃん、最近痩せたけど何かいいことあったの?」

    村岡さんはいつものようにニタッと笑っている。その笑いもだが、なにせ最後の「何かいいこと」の響きが余計だった。その時居合わせた人は皆いい人だったので、ハッと息を飲むのがわかった。
    私はイラついた。なぜならば、私は痩せてはいない。むしろ太ったのだ。それを髪型で懸命にごまかそうとしているだけである。その勘の鈍さにもうんざりだ。

    仕返しに、私も「村岡さんこそ、またお腹が大きくなりましたね」などと爪を立ててみたものの「俺のことはいいよ」と流すばかりだ。いい人たちは私の切り返しにまたハッと息を飲むし、こういう空気ができると最後、何もいいことがない。完全なもらい事故である。

    村岡さんとは去年まで部が同じだったこともあり、飲み会で一緒になることが度々あった。年度末の最後の部会の時である。その日はちょっとしたゲームイベントがあり、最下位になった人が「答えたくない質問に答える」という罰ゲームを受けることになった。その質問を募った時、一番に手を挙げたのが村岡さんだった。嫌な予感がした。

    「年収!年収!」

    その目の輝きから、彼が本当にそれを知りたがっていることは明らかだった。渦中にいる、最下位の男性社員は困っている。言いたくないだろうし、開示したところでその場が良い感じに収まるとは考えづらい。周りも村岡さんをいなそうとしているが、酒の勢いもあって、彼の「年収!」コールは終わらない。

    すると、個室の隅から「はい!」と声が上がった。井口さんだった。一体何を言いだすのかと注目が集まる中、彼女は声高に言い放った。


     
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