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Vol.014 結城浩/手書きノート(4)/生徒をあえてつまずかせる/
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Vol.014 結城浩/手書きノート(4)/生徒をあえてつまずかせる/

2012-07-03 07:00

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年7月3日 Vol.014

    結城クイズ

    ギリシャ神話に登場する「腫れた足」という意味の名の人物は誰でしょう。

    はじめに

    こんにちは、結城です。

    文章を書くときには「型(かた)」が決まっている方が書きやすいものです。

    たとえば、結城は毎週このメルマガを書いていますが、 自分で「本を書く心がけ」のようなコーナーを定め、 そのコーナーの「型」に沿って文章を書いています。 「型」が何もない、まっさらなところに書くよりも、 このほうがずっと書きやすいのです。

    「型」というのは一種の制約です。

    「すべてが自由であるより、制約があった方が書きやすい」というのは、 少し変な感じもしますが、考えてみると例はたくさん見つかります。

    たとえばアンケート。 レストランのアンケートで、

     「何でも自由にお書きください」

    と言われても、何を書けばよいのかすぐには思いつかないですよね。 けれども、

     「値段についてはどうでしたか」
     …ちょっと高いかなあ。
     「味はいかがですか」
     …うん、まあまあよかったよ。
     「接客サービスは満足いただけましたか」
     …そうだね。満足満足。

    このように個別に聞かれれば、答えやすいものです。 つまり、制約がある方がずっと話が進めやすいものです。

    メルマガに話を戻します。 コーナーに分けて、「型」を定めると書きやすいです。

    でも。

    話はここで反転します。

    でも、そのような「型」を定めた書き方だけをやっていると、 何だか文章がコンパクトにまとまってしまいがちだなあ、 と思うこともあるんです。

    文章のスケールがちっちゃくなってしまう。 それから、読者さんの心にもあまり残らない。 きちんと「ひっかかって」くれない。 可もなく不可もなくという文章になってしまう危険性を感じるんです。

    変な比喩かもしれませんが… きちんとコーナーに分けられ、 「型」が定められ、コンパクトに区切られた文章は、 素因数分解できる合成数のようです。たとえば24のように。

     24 = 2×2×2×3

    として、ばらばらっと分けられてしまう。 別にそれが悪いわけではないけれど、 ときに私は「大きめの素数みたいな文章」を書きたくなります。

    たとえば、24じゃなくて、29のように。

     29

    29は素数です。これ以上素因数分解はできません。

    12や、24や、36みたいな合成数は区切りもいい感じ。 親しみも持てる。とらえやすい。わかりやすい。ひっかからない。

    それに対して、 11や、17や、19や、29みたいな素数は、 塊を塊としてとらえるしかない。 どうもごつごつして落ち着かない。そんな印象があります。

    そんな文章って書けないのかな、と最近よく思うんです。

    (感覚的な話ですみません)

    この文章は、何を言いたいのかよくわからない。 でも、なぜか気になる。 無視できない。 ちょっと落ち着かないけれど、先が読みたくなる。 一度読み終えてからも、むしょうに読みかえしたくなる。

    そんな不思議な文章は書けないかな、と思うんです。

    人間の理解は、単純じゃない。まっすぐじゃない。 話を聞いて理解するときでも、 文章を読んで理解するときでも、 すぐにパッとわかることもあるけれど… そうじゃないときもある。

    昔の「なにげない一言」が、ずっと心にひっかかったままになっていて、 あるときフッとわかる。「ああ、そういうことだったのか」って。

    いつの日か、そんな体験をするような文章を書いてみたい。

    結城は最近、そんなことを考えています。

    …おっと、いけない!

    メルマガの「はじめに」がこんなに長くなっちゃった。

    今回のメルマガを始めましょう。目次をどうぞ!

    目次

    • 本を書く心がけ - 手書きノートのスナップショット(4)
    • Q&A - 生徒をあえてつまずかせることについて
    • 次回予告 - 結城浩セミナー/プレビュー版(2)
     
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