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小池一夫インタビュー
PROFILE
作家。漫画原作者。
代表作に「子連れ狼」「首斬り朝」「修羅雪姫」など多数。
77年より漫画作家育成のため『小池一夫劇画村塾』を開塾。独自の創作理論「キャラクター原論」を教え、高橋留美子、原哲夫、板垣恵介、堀井雄二など、多くのクリエイターをデビューさせる。現在も「キャラクターマンWEB講座」の開講や、大阪エンタテインメントデザイン専門学校で教鞭をとるなど後進の指導にあたっている。
ツイッターアカウント:@koikekazuo


最近気になっているキャラクターなどはいますか?

アメリカ人に「今、一番ホットなキャラクターはなんですか?」と聞いたら、『初音ミク』だと答えていたので、やはり気になっていますね。初音ミクはソーシャルの世界で歌を歌う“ボーカロイド”というツインテールをした女の子のキャラクターですが、あのキャラクターにはドラマがついていない。何のドラマもついていないキャラクターというのは漫画の世界ではありえない。ストーリーやセリフがないから、性格がわからない。けれどニコニコ超会議などのイベントへ行けば、ものすごい人がそのキャラクターに集まっています。異質な存在のキャラクターがひとり歩きして、マスメディアを食っているという現象。これは気になります。


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キャラクターコンテンツが社会に与える影響とは?

これから初音ミクのようなソーシャルのキャラクターというのは、どんどん出てくるでしょう。例えばローソンのキャラクターの「ローソンクルーあきこちゃん」。最初はローソンに勤めている店員というだけのキャラクターしかついていなかった。だけど、様々な仕掛けやイベントを次々に用意して、『あきこロイドちゃん』というボーカロイドまで作ってしまいました。大ヒットしてローソンの売上に貢献しています。今後どんどんこの傾向が強くなっていくでしょう。

企業が用意するキャラクターは原型くらいで留めておいて、あとはどんな顔をして、どんな髪型をして、どんなものを着ているか。どんなイベントをして、どんな歌を歌わせるか。これを「みんなで考えて作りましょう」という形にすることで、ソーシャルメディアの中で作っていくと人気が出てくる。人気が出てくるとさらに人が集まる。こうやってそのキャラクターをみんなで作っていくからみんなのアイドルのようになってしまうのです。

ですが、スマートフォンやタブレットといったソーシャルの世界は、基本的にはフリーミアムという経済スタイルなので、それだけではなかなか収益を生み出せません。マスメディアの世界は落ち込んでいって今いいものがあまりない。この2つの世界が入り混じって動いています。マスメディアが滅びるのか、ソーシャルメディアが生き残るのかの戦いの中、角川とドワンゴがくっついた理由はおそらくこれでしょうね。

つまり、ソーシャルで出てきたキャラクターを、逆に今度はマスメディアの世界が物語をつけて漫画にして、ドラマにして、アニメにする。そして出版する。今までのやり方とは逆の世界が登場しているのです。この合併がどうなるか楽しみですね。