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[MM日本国の研究857]「平成27年夏の敗戦 猪瀬直樹が語る新国立問題」
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[MM日本国の研究857]「平成27年夏の敗戦 猪瀬直樹が語る新国立問題」

2015-07-30 15:00
    ⌘                    2015年07月30日発行 第0857号
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     ■■■    日本国の研究           
     ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
     ■■■                       編集長 猪瀬直樹
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                           http://www.inose.gr.jp/mailmag/

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    「平成27年夏の敗戦 猪瀬直樹が語る新国立問題」

    (現在発売中の週刊SPA! http://goo.gl/qSXsQz 巻頭インタビューより)
     
     7月24日、5年後に控える2020年東京五輪の開幕日に当たるこの日、新
    国立競技場の建設予定地に赴くと、資材運搬用の大型ダンプカーが列を成して
    往来しているかと思いきや、広大な更地には重機の姿もまばら……。五輪開催
    に向けてのカウントダウンが、完全にストップしてしまったかのような荒涼な
    空気に包まれていた。

     デザイン案が決まった当初は1300億円と言われていた予算が、なぜか五輪招
    致決定後3000億円に膨張。その後、二転三転を繰り返しながら、最終的には25
    20億円という数字に落ち着いたものの、この不可解な建設費の“焼け太り”に
    批判が噴出した新国立競技場建設費問題。結局、安倍首相の「英断」で建築計
    画そのものを一旦白紙に戻し、ゼロベースでリスタートを切ることが決まった
    のだが、果たして、これで本当にうまくいくのだろうか? 2013年9月、「チ
    ームニッポン」で五輪招致を勝ち取ったときの東京都知事で、本誌「民警」を
    連載する猪瀬直樹氏が話す。

    「ワイドショーのコメンテーターが、ザハ・ハディド氏のデザインしたキール
    アーチについて、『総工費2520億円のうち950億円もかかっている!』と繰
    り返し批判していたのが象徴的ですが、メディアはキールアーチに惑わされて
    問題の本質が見えていない。むしろ、真に問われるべきは総工費を巡る不可解
    な推移であり、1569億円という通常の3倍以上のコストがかかっているスタン
    ド部分のほうなのです。今回の競技場建設は入札方式ではなく、ゼネコンとの
    随意契約。にもかかわらず、第三者機関に検証する機会を与えず話を進めてい
    るのは、アンフェアな問題を抱えているからと疑われも仕方がない」

     確かに専門家の間でも資材や人件費の高騰でコストが上乗せされるのは「せ
    いぜい3割程度」と言われており、ザハ案を推した建築家の安藤忠雄氏が、会
    見で「なぜ2520億円なのか、私も聞きたいくらい……」と首を傾げていたのも
    事実だ。猪瀬氏が続ける。

    「私が2013年11月に都知事として所信表明した際、国立競技場はあくまで国立
    であり、東京都が競技場本体の整備費を負担することはないが、競技場へのア
    クセスや周辺のバリアフリー化も考えると周辺整備費については受益者である
    都が負担する考えもあると言っているのですが、このとき、設計内容について
    チェックできるよう『専門委員会を立ち上げて精査する』とも明言しているの
    です。工事にかかるお金の流れなどを細かく精査するためには、こういった“の
    ぞき窓”の役割を果たす透明性の高い専門機関が必要であったのは言うまでも
    ないこと」

     ただ、猪瀬氏が2013年12月に都知事を辞任したことで、このチェック機
    関の設置案はうやむやになってしまった。透明性が担保される仕組みになって
    いなかったことは大いに悔やまれるが、不可解なコストの釣り上げは、文科省
    が「付け込まれた」という見方もできるようだ。

    「JSC(日本スポーツ振興センター)は旧国立競技場の管理者にすぎず、高
    速道路や庁舎建て替えといった大規模な工事を発注した経験などないですし、
    ゼネコンを向こうに回して交渉に当たるようなノウハウも勘どころもない単な
    る文科省の天下り組織。寄せられた要望をすべて上乗せしていたらコストが膨
    らむのは当然の話で、『今回は国家プロジェクトなんで少し泣いてもらえませ
    んか。次はおいしい仕事(公共事業)を回すんで……』といったコスト面での
    交渉事ができるのは、やはり1000億円以上の仕事をこなしてきた国交省なんで
    す。実は、庁舎の修繕や補修は各省庁がそれぞれ行っていたのですが、田中角
    栄が、議員立法でいわゆる『官庁営繕統一法』という法律を作ってすべて旧建
    設省に一元化した。角さんはこれによって建設省に恩を売ったわけだが、“縦
    割り”の官庁に横串を刺した点では意義があった。新国立競技場ほどの大きな
    工事なら、交渉の窓口は最初から国交省でよかったんですよ」

     7月21日、政府は新たなリスタートを切るに当たって、JSCを所管する文
    科省を見限り、その主導権を国交省に委譲させることを決めている。新設され
    た閣僚会議の座長には遠藤利明五輪担当相を据え、これまでトップを務め、今
    回の迷走劇で責任論が噴出している下村博文文科相は副座長に“降格”される
    に留まった。

    「招致レースのときは、『電車が時間通りにくる』とか『治安がいい』とか日
    本人の長所ばかりをアピールしていたわけですが、『協調性がある』というこ
    とは、裏を返せば『同調性圧力に弱い』という意味であり、『みんなで仲良く』
    ということは、即ち『強力なリーダーが存在しない』ことでもある……。つま
    り今回の迷走は、皮肉にもそういう日本人の悪い部分が一気に噴出したように
    も感じます。国際的な契約を変更する以上、政府には、今回の問題がどのよう
    な経緯を踏んだのか説明責任を果たす義務があるが、誰一人責任を取ろうとは
    しない今の状況はどう見てもおかしい。まさに、私が『昭和16年夏の敗戦』で
    描いた日本的な意思決定のプロセスそのものだ。太平洋戦争直前、敵を前に、
    “縦割り”が邪魔をして陸軍と海軍は互いの石油備蓄量すら言わず無謀な戦争
    に突き進んでいく……。石油がなくなる前に開戦すべし! という“締め切り”
    に翻弄される様は、まさにラグビーW杯という“締め切り”に惑わされた今回
    の迷走劇とよく似ている。

     白紙に戻した安倍さんの『御聖断』は正しかったと言えるが、森(喜朗・五
    輪組織委員会委員長)さんがこだわっていた“締め切り”をこのタイミングま
    で押し返せなかったのは、遅きに失したと言わざるを得ない」

                       (週刊SPA!8月4日号より抜粋)

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    「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp

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