• このエントリーをはてなブックマークに追加
[MM日本国の研究860]「警備業の礎をつくったピンカートン探偵社」
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

[MM日本国の研究860]「警備業の礎をつくったピンカートン探偵社」

2015-08-27 15:00
    ⌘                    2015年08月27日発行 第0860号
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ■■■    日本国の研究           
     ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
     ■■■                       編集長 猪瀬直樹
    **********************************************************************

                           http://www.inose.gr.jp/mailmag/

    ◉--------------------------------------------------------------------◉
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                【好評発売中!】
               田原総一朗×猪瀬直樹
            『戦争・天皇・国家』(角川新書)

            なぜ日本国は意思決定ができないのか?

        「なるほど『戦後レジーム』でなく『黒船レジーム』で考えると
           “現代”がよくわかるのですね!」(読者の声)
               「目からウロコの日本近現代史!」(読者の声)

          □ 戦後論ではみえない“日本国”の正体 ■
          □ 帝国主義の脅威は現在も続いている! ■
          □   史実を直視し、未来を語れ!   ■
              ↓アマゾンはこちら↓
              http://goo.gl/mJZb8G 

    ○------------------------------------------------------------------○

     ◇ 猪瀬直樹のオンラインサロン「近現代を読む」 会員募集中です!◇
                ↓↓↓
       http://synapse.am/contents/monthly/inosenaoki 

      このサロンは、戦前・戦後の知識人や事件を参考図書と共に取り上げ、学
      べる参加型のオンラインサロン。激動の昭和時代、確かにあった知識と経
      験を、現代の視点から再び読み解き語ります。

      憂国の視点を持ちつつ安直な国家批判や既得権益批判は決してしない、作
      家・猪瀬直樹ならではのファクトとエビデンスに基づいた批評と、現代に
      活かす前向きな姿勢を保つ、日本の課題を考える現代の教養塾です。

      既存のメディアとは一味違う、新しい活字体験と思考体験をお約束します。

    ○------------------------------------------------------------------○

     日本の「安心・安全」はどうして成り立ってきたか――。敗戦・占領、再武
    装、復興の象徴・東京五輪警備……。民間警備会社の黎明期の秘話から戦後史
    の謎を解き明かす猪瀬直樹の意欲作「民警」が「週刊SPA!」誌上で大好評
    で連載中です。

     今回のメルマガでは、まだ読んでいない読者のために、特別に発売中の最新
    号「警備業の礎をつくったピンカートン探偵社」から、さわりをお届け!

     「19世紀半ばのアメリカにつくられたピンカートン探偵社は、公警察の力が
      及ばない時代に、贋金造りや列車強盗や殺人など、無法地帯で起きる犯罪
      を防ぐ警備業として生まれた。後のFBIやCIAの捜査手法のすべての
      基礎をつくったことで知られている……」

     全文はぜひ書店・コンビニで本誌をお求めください。

     ・週刊SPA!の電子版→ http://www.magastore.jp/product/27821
     ・紙版はアマゾン→ http://goo.gl/EK5oyH 

                  *

    「警備業の礎をつくったピンカートン探偵社」 

     民間軍事会社ブラックウォーター社が2007年にイラクのバクダッドで起
    こした一般市民14名の殺害と18名への傷害事件は、ようやく2014年に刑事
    責任を問う裁判が始まった。その仔細はジェレミー・スケイヒル著『ブラック
    ウォーター─世界最強の傭兵企業』に記されているが、ブラックウォーター社
    副社長は民間軍事会社の役割に言及するにあたってこう述べた。

    「エイブラハム・リンカーンが就任式に臨もうとしたとき、ピンカートン社以
    外に自分を警護できる会社を見つけられなかったことを思い出す。ピンカート
    ン社は、米国の新大統領を警護するという問題に対する民間セクターを使った
    解決策だった」

     ピンカートン探偵社がかつて、19世紀にリンカーンの警護をして大統領就任
    直前の暗殺計画を未然に防いだ、という事実はアメリカではよく知られている。
    それを踏まえて、ブラックウォーター社はやや開き直りの弁明をしているので
    ある。

     探偵というとコナン・ドイルのつくったシャーロック・ホームズも、あるい
    は日本の江戸川乱歩の明智小五郎シリーズも、いわば謎解きによって犯人を見
    つける仕事として描かれている。

     1819年生まれのピンカートンが19世紀半ばにつくった会社は、公警察の
    力が及ばない時代に、贋金造りや列車強盗や殺人など、無法地帯で起きる犯罪
    を防ぐ警備業として生まれた。智恵較べで謎を解くのではなく、工作員を派遣
    して潜入捜査をしたり、オトリ捜査をしたり、司法取引をしたり、後のFBI
    やCIAの捜査手法のほとんどすべての基礎をつくったことで知られている。

     リンカーン暗殺未遂事件も、暗殺グループの噂を聞き、ピンカートン社の探
    偵が慎重に内偵し、相手側に潜入することで秘密裏に情報を入手し、土壇場で
    出し抜くという方法を用いた。

     シャーロック・ホームズの『恐怖の谷』には、英国ではなく米国の1875
    年の冬の風景が描かれているが、ピンカートンの時代の雰囲気がよく表わされ
    ている。

    「夜行列車がヴァーミッサ谷の上方にあるこのへんの中心地ヴァーミッサの町
    をさして、急傾斜をあえぎながら登っていた。ここからバートン交差点へかけ
    て線路は下りで、ヘルムデールをすぎ、純然たる農業地のマートンへと通じて
    いる。鉄道は単線だけれど、いたるところに側線があって、石炭や鉄鉱を満載
    したおびただしい数の貨車が行列をしており、地下に埋蔵された豊富な資源が、
    アメリカ合衆国でもとりわけ人煙まれだったこの地方に、多くの荒くれ男ども
    を引きつけ、一種の繁栄を来していることを語っていた」
     
     産業革命は勢いがすさまじい。ゴールドラッシュの時代、ヒト、モノ、カネ
    が広大な風景を一変させ、欲望と無法がないまぜに荒れ狂う。

    『恐怖の谷』は1部と2部に別れて独立した作品のように書かれており、1部
    はホームズが相棒ワトソン博士と謎を解いていくのだが、2部は文体がハード
    ボイルド風に転調し、ハリウッド映画のようなテンポで物語が展開する。先に
    引用したのはその2部の冒頭である。

     この無法地帯に「中肉中背の男で、三十歳を越したばかり」の人物が潜入し
    て荒くれ男たちの仲間、結社に加わっていくのだ。敵対する人物を平気で殺す
    ボスは、当初は新参者を疑い、試すような試練を課すが、しだいに信用するよ
    うになっていく。その人物がピンカートン探偵社の潜入工作員であることは読
    者には知らされない。

     終幕に近づいたころ、探偵が潜入しているらしい、との噂があって、こんな
    会話が出てくる。

    「なんだ、ばかなことをいうな! ここにゃ巡査や探偵がうようよしているじ
    ゃないか。それで一度だって損害をうけたことなんかありゃしないじゃないか」
    「いいや、こんどのはこの土地の探偵じゃない。なるほどこの土地の探偵なら、
    知れたもんだ。たいしたことはできやしない。しかしピンカートン探偵局の名
    は聞いているだろう?」

    「そんな名は何かで読んだことがあるな」
    「うそはいわないが、あいつらにねらわれたら、君だってあごを出すぜ。ここ
    いらにいる『できたらやる』政府の連中とはことが違う。真剣でとっくんでき
    て、どんな手段によっても、かならず目的を遂げずにはおかない。だからピン
    カートン探偵局のやつに、本気で向かってこられたら、われわれはまず根こそ
    ぎだね」

     舞台となる1875年は、ピンカートン社がそれなりに実績と名声を得た時
    期だった。             
                 (週刊SPA!9月1日号掲載「民警」より抄録)

                  *

     全文はぜひ書店・コンビニで本誌をお求めください。

     ・週刊SPA!の電子版→ http://www.magastore.jp/product/27821
     ・紙版はアマゾン→ http://goo.gl/EK5oyH 

               *   *   *

    「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    バックナンバーはこちら。 http://www.inose.gr.jp/mailmag/
    ご意見・ご感想はメールでどうぞ。 info@inose.gr.jp
    メールアドレスの変更の方はこちら。 *|UPDATE_PROFILE|*
    配信解除の方はこちら。 *|UNSUB|*
    まぐまぐの配信解除は  http://www.mag2.com/m/0000064584.html

    猪瀬直樹の公式ホームページはこちら。 http://www.inose.gr.jp/

    ○発行 猪瀬直樹事務所
    ○編集 猪瀬直樹
    ○Copyright (C) 猪瀬直樹事務所 2001-2015
    ○リンクはご自由におはりください。ただしこのページは一定期間を過ぎると
     削除されることをあらかじめご了解ください。記事、発言等の転載について
     は事務局までご連絡くださいますよう、お願いします。
    コメントを書く
    この記事は現在コメントできません。