今年の7/31にGoogleがソーシャル・マーケティング・ソフトウェアの有力デベロッパーWildfireを買収したことが発表されました。
それ以前にも、オラクルやセールスフォースなどの大企業によるソーシャルメディア関連企業の買収が昨年から今年にかけて増えていました。現在は、GoogleのWildfire買収で主要企業の買収は落ち着いたように見えます。
大手企業の買収によって、日本でソーシャルメディア関連のツールを利用する際に影響を与える可能性もあるため、まずは現在の状況を把握しておくことをおすすめします。
図と表で理解するソーシャルメディア関連企業の買収動向
わかりやすいように図と表でまとめました。まずはこちらをチェックしましょう。
表にするとこのようにまとめられます。
買収した企業 買収された企業 買収金額 発表時期 Oracle Involver 非公表 2012年7月 Vitrue 3億ドル 2012年5月 Collective Intellect 非公表 2012年6月 Salesforce.com Buddy Media 6.89億ドル 2012年6月 Radian6 3.26億ドル 2011年3月 Assistly 5000万ドル 2011年9月 Rypple 非公表 2011年12月 Microsoft Yammer 12億ドル 2012年6月 Adobe Systems Efficient Frontier 非公表 2011年11月 Google Wildfire 2.5億ドル 2012年7月
買収された企業が提供するサービス
ここからは買収した企業ごとに各企業が提供するサービスについてみていきます。
Oracleが買収した企業
現在世界で第2位のソフトウェア会社であるオラクルはソーシャルメディア関連企業の買収を2012年5月から3ヶ月連続で行うなど、積極的な姿勢がうかがえます。
買収した企業にはもともとSalesforce.comの競合企業であることが多いです。
Involver
Facebookを中心に企業向けアプリケーションの提供を行なっている企業です。
Facebookがサービス提供企業のエキスパートとして推薦する「Preferred Developer Consultant」にも認定され、ナイキ、リーバイス、コーチなど大手有名ブランドを中心に60万以上のブランドや企業にソリューションを提供しています。
Involverが提供するアプリは過去にも紹介した、ウェルカムページ作成アプリやRSSタブを表示できるアプリなど無料で提供しているものも多くあります。
なお、日本国内向けには、株式会社トーチライトが独占提供しています。国内向けにはFacebookだけでなく、mixiページ向けのアプリケーションも提供しているのが特徴です。
Vitrue
企業向けにソーシャルマーケティングツールを提供する企業です。
企業がFacebook、Google+、Twitter、YouTube、Instagram、Pinterestといったソーシャルサービス上でキャンペーンを展開するためのSaaSベースのツールを提供しています。
マクドナルド、イケア、スカイプ、サムスンなどの企業がこのツールを利用しています。
なお、このあとご紹介するSalesforce.comが買収した「Buddy Media」の競合企業です。
Collective Intellect
ソーシャル・メディア上の口コミ情報などを分析するツールを提供している企業です。
提供している分析ツールは、1日当たり数千万件の情報を処理して、ブランドや企業についてどんなことが言及されているか、ネガ・ポジ分析などが可能です。
アメリカのニュース専門放送局のCNBC、MTVなどを提供するバイアコム、米食品大手企業のゼネラル・ミルズなどこのツールを導入しています。
なお、このあとご紹介するSalesforce.comが買収した「Radian6」の競合企業です。
Salesforce.comが買収した企業
CRMソリューションを中心としたクラウドコンピューティングサービスを提供するセールスフォース・ドットコムは昨年から特にソーシャルメディア関連企業の買収が続いていました。また、セールスフォースとオラクルが競合となるソーシャルメディア関連企業を買収するという流れもありました。
9月19日には、ソーシャルメディアマーケティングの包括的ソリューション「Marketing Cloud」を発表し、買収したBuddy MediaとRadian6のサービスなどを包括して提供しています。
Buddy Media
前述した「Vitrue」の競合となる企業で、企業にソーシャルメディアマーケティングのツールを提供しています。
Buddy Mediaプラットフォームを使うと、各種ソーシャルメディアの投稿やソーシャル広告の出稿と最適化、ソーシャルメディアの効果測定が可能です。
フォード、ヒューレット・パッカード、ロレアルなど、セールスフォースの発表によると「世界の広告主トップ10社中8社が利用している」とのことです。
Radian6
前述した「Collective Intellect」の競合となる企業です。ソーシャルメディアモニタリング・分析プラットフォームとしてサービスを提供しています。
セールスフォースはTwitter本体とも提携しているため、全ての公開ツイートをリアルタイムに取得して、ユーザーに話しかけることもできます。
なお、日本国内向けにもサービスを提供しており、日本語で解説したサイトも用意されています。
Assistly
中小企業向けのSaaS型のヘルプデスク・アプリケーションで、現在はAssistlyをベースに開発された「Desk.com」としてサービス提供を行なっています。
このツールでは、電話やメールだけでなく、FacebookやTwitterのソーシャルメディアからの問い合わせも同じダッシュボードで統合してヘルプデスクとして管理することが可能です。
また、モバイルから対応も強化しており、PCと同じように顧客対応が可能なツールです。
Rypple
社内ソーシャルネットワークにすべての従業員を取り込み、個人およびチームの人材パフォーマンスを管理することができるツールです。Facebookが社内で導入していることでも有名です。
セールスフォースは買収後に、Ryppleのシステムとセールスフォースの既存CRMソフトウェア、企業向けSNSプラットフォームの「Chatter」を統合してサービスを提供しています。
Microsoftが買収した企業
世界最大のコンピュータ・ソフトウェア会社のマイクロソフトも大型の買収を今年行いました。
Yammer
企業向けのソーシャルネットワークサービスです。
アメリカのフォーチュン500企業の85%が採用し、20万社を超える企業の500万人以上が使用しているというデータもあります。
また、日本でも楽天が全社の従業員向けに導入を開始しています。会社関連のニュースの共有や、情報とアイデアの交換、企業イベントの宣伝などをリアルタイムに実施しているそうです。
Adobe Systemsが買収した企業
IllustratorやPhotoshopなどのソフトウェアで有名なアドビですが、2009年にOmniture(オムニチュア)を買収してからマーケティング関連のサービスにも力を入れています。
Efficient Frontier
もとは金融工学のポートフォリオ理論を応用し、検索連動型広告のROIを最適化するための入札・運用管理ツールとして提供されていました。
近年では、ソーシャルメディアの普及に伴い、Facebookをはじめとするソーシャル広告の管理も行えるツールとして提供されています。
日本国内では、サイバーエージェントやアイレップなどの広告代理店を通じて提供されています。また、日本語サイトの運営および広報の支援はアタラ合同会社が行なっています。
Googleが買収した企業
検索エンジンで成長してきたGoogleですが、近年はGoogle+をはじめとしたソーシャルメディアのサービスを強化しています。今回のWildfireの買収をうけてますますソーシャルメディア強化が加速しそうです。
Wildfire
オラクルが買収したInvolver、セールスフォースが買収したBuddy Mediaと競合する、ソーシャルメディアマーケティングプラットフォームを提供する企業です。
競合する企業と同じように、Facebook、Google+、Twitter、Pinterest、YouTube、LinkedInなどのソーシャル・メディアを利用したキャンペーンを行うソフトウェアを開発しています。今後はGoogle+でのキャンペーンを強化することが予想されます。
ソニー、ユニリーバ、アマゾンなどの1万6000社にサービスを提供しています。
日本では、2011年6月よりトランスコスモスと提携してサービスを提供していました。過去のプレスリリースでは「Wildfire社より教育を受けたトランスコスモスの担当者が、Wildfireプラットフォーム上のアプリ構築やカスタムデザイン、分析までを提供する」と発表されていました。
ソーシャルメディア関連企業のこれから
今回ご紹介したように、オラクルとセールスフォースが競合する企業をそれぞれ買収するなど競争が激化していました。
しかし、GoogleのWildfire買収で、主要ソーシャルメディア関連企業の買収が完了したため少し落ち着いたように見えます。
今後は、大手企業が複数のソーシャルメディア関連企業を買収することで、Salesforce.comが発表した「Marketing Cloud」のようにキャンペーンの開始から自社アカウントのファン管理、効果測定、ソーシャル広告の管理まで複数のツールを統合して提供する機会が増えると予想されます。
また、今回紹介したのは全て海外企業の事例ですが、最近では日本でもFacebookアプリなどを提供していたクロコスがYahoo! JAPANに買収されるという事例も出てきています。
今後は国内企業の動向にも注目していきましょう!
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">by ソーシャルメディア集客ラボ