「どう伝えるか」「どう受け取られたいか」にフォーカスしていた企業内コミュニケーションを、「どう背中を押してあげられるか」「どう語られたいか」にシフトしていくことが、エンタープライズソーシャル成功の入り口となります。
社内SNSの推進役やファシリテーターは、社員の行動特性や思考様式を踏まえ、コミュニケーションとコラボレーションをデザインしていきましょう。
行動科学や脳科学の世界から、コミュニケーション・デザインの秘訣に迫ります。
1 「もっとも古い脳」の関心ごとは3つだけ
人類が生き続けてくることができたのは、私達の祖先が常に「食べられるか」「セックスできる相手か」「殺そうとしていないか」に注意を払ってきたからです。それらを見分けるために、脳は顔に対して特別な注意を払うようにできています
2自分の決断は合理的・論理的だと思いたがる
決断の多くは実際には無意識に行われているものの、人は自身の決断を正当な理由があってのものとしたがります。納得しやすい合理的・論理的な理由を提示してあげましょう
3 弱みを出すことが場を深める
パワーを持つリーダーや、スマートに仕事をこなしていそうと周囲から思われている人が、自身の弱みや葛藤をオープンにすることで場が深まります
4 お金をたくさんもらうと仕事は楽しくなくなる
わずかな報酬で作業をさせられると、納得がいかない脳は「金のためではなく、楽しいからやった」と無意識に思い込もうとします
5 意志の力に頼らない
お昼に何を食べるかを決めるだけでも、限りある意思の力は枯渇していきます。極力選択肢を減らし、頭を使わずに選択~実行できる状況を用意してあげましょう
6 人は見ない振りをする
人は、曖昧なものに対して見て見ないふりをしがち。また、現物や結果を見ないと人は動かないので、自らがプロトタイプやショーケースになることも重要です
7 忘れられることを前提に
人は忘れる生き物。何を忘れるかは無意識に決まってしまいます。忘れられてもすぐに見つけられる方法を準備しておきましょう
8 ピアプレッシャーによる行動倫理
ピア・プレッシャーは常に「同化圧力」となるわけではありません。ソーシャルにおいてはむしろ「他人に常に見られていることによる倫理観」に繋がります。窓が大きければ大きいほど汚れは目に付きやすく、壁のない状態はピアプレッシャーをもたらしやすいです
9 見出しは決定的に重要
読んだ文章が記憶にどう残るかは、事前に指示や情報が与えられているかに大きく左右されます。見出しにより先に何があるかをきちんと示しておきましょう
10 バーチャルとリアル
「バーチャル」と呼ばれている世界も、それを作ったのもそこで動いているのも生身の人間です。そこには人間の本質が反映されます
11 「繰り返し」が脳の物理構造を変化させる
記憶を高めるには、経験によりニューロンを繰り返し刺激し、近辺のニューロンとの結合を強めさせましょう
12 自分にとってのベストをみんなにとってのベストと錯覚する
他の人の感情や理論は想像でしかわからないため、どうしても自分と同じように考えているに違いないと思ってしまいがちです
13 感想を変えさせるには認知的不協和音を活用して感想を変えさせる
実際の感想に関係なく、「役に立った」「楽しかった」と発言や書き込みをすると、実体験を変えるわけにはいかないので、脳は感想の方を無意識に変えようとします
14 脳は因果関係をあてはめたがる
脳は「提示された情報はすべて関連していて、そこには前後関係や一連の流れがある」と思い込みたがります。断片的な情報からもストーリーを生み出してしまうのです
15 データより物語のほうが記憶に残る
物語は感情的に訴える力が強く、共感により情緒的な反応を呼び起こすことにより、記憶中枢を強く刺激します。そのため、情報は深いレベルで処理され、記憶に残る期間も長くします
16 損失嫌悪バイアスと現状維持バイアス
脳は、積極的に投資する場合のリスクをひどく恐れます。そして現状維持から起こるであろうリスクをほとんど意識しようとしません
17 「考える」という行為は時間の流れを遅くする
メンタルな処理は時間が長くかかっているように感じさせてしまいます。作業が短く感じられるように細かく区切ってステップを作りましょう
18 視覚的カクテルパーティー効果
情報が溢れている中でも、知覚のフィルターは無意識に「自分の名前」「食べ物」「セックス」「危険」に関する情報を選別して受け取ろうとします
19 脳には「防錐状顔領域」という顔認識専門の領域がある
とりわけ感情に強く訴えるのは「こちらをまっすぐ見つめている顔」です。また、実際には顔じゃないものであっても、目や口の特徴を表すよなデザインや形状に強く反応します
20 論理よりも数がものを言う
実例が増えれば増えるほど疑問は減り、「認めよう」「認めざるを得ない」という認識へと変わっていきます
21 思い込みは危険
こちらには自明のことでも、相手には分かっていない可能性は想像以上に高いものです。情報に注目してもらいたければ、自分で必要だと思う以上にはるかに目立つよう強調した方がよいでしょう
22 知恵の共有は悩みの共有から
人はある程度関与した問題に対しては、良くも悪くも何らかの結論を求めたがります。悩みの共有の場を育てていくと、知恵の共有の場になることが多いです
23 「手伝う」よりも「手伝わせる方」が好印象
自分が取った行動にふさわしものとなるよう、人は自分の感情に無意識に修正してしまいます。手伝ってあげるよりも手伝ってもらう方が「私はこの相手を好きだからこういう行動を取っている」と思わせることができます
24 外的報酬はドーパミンの放出につながるが依存性も高い
外的報酬がもっとも優れていると思っていると大間違いです。依存性が高いため、数回繰り返した後には「もっと、もっと!」となりますし、時には「金銭的報酬がなければやらなくて良い」という考えにつながりかねません。とりわけ「発見的な仕事」では、内的報酬が強いやる気を呼び起こすことが知られています
25 習慣化には18日から254日かかる
特定の行動が習慣になるまでの日数は、個人特性や行動の複雑さなどにより異なります。しかし、ある程度習慣化が達成されれば、その後、それを発展させていくのはさほど難しくありません。まずは、小さなノルマを課して習慣の形成を目指します
26 人間は生来4種類の欲動を持っている
- 獲得への欲動
- 絆への欲動
- 理解への欲動
- 防御への欲動
27 強い紐帯と弱い紐帯にはそれぞれの良さがある
「148人を上限とする強い絆(ダンバー数)が精神的な安定をもたらす」という考えと、「弱いつながりは強いつながりが持ちえない斬新な視点や情報をもたらす」という考えは、どちらも正しいものでしょう。コミュニティーの設計には、どちらに取り組もうとしているのかを意識しておく必要があります
28 返報性の法則
情報は、情報を受け取った方からのお返しや、関連することについての相談を持ち込まれるようになることなどにより、出せば出すほど入ってくるようになります
29 ピグマリオン効果
相手に対する期待や想定は、それを表明するかしないかにかかわらず、無意識に伝わって現実となっていきます。これは良い期待だけではなく「悪い期待」も同様です
30 選択肢が多いほうが思い通りになっていると感じる
選択肢が多いと選びにくく脳も疲れてしまうにもかかわらず、人は「自分は決定権を持ち、周囲の環境を自身により選択している」と思いたがるものです。いくつかの方法を提供したほうがよいでしょう
31 ミラーニューロンに訴える
主張をポジティブに受け取って欲しければ、相手の主張をポジティブに受け止め、それをオンライン上で目に見える形で示しましょう。共感の神経細胞であり、他者の活動を自分の脳内で再現する「ミラーニューロン」に働きかけましょう
32 オンラインとオフラインは明確に区別されない
ウェブ上の出来事を「オンラインだけでのこと」と下位に位置づけたり、独立して論じることはもはや無意味です
参考図書: 『インタフェースデザインの心理学――ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針』他、多数
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八木橋 Pachi 昌也
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