間違ってはいませんが、ただブログを書くだけでは、求める成果を生み出せない可能性が高いと考えています。
では、ブログを書く以外に何をすれば良いのか。
一般論で書くと、”コンテンツ戦略を考える”、”編集カレンダーを作る”、”SEOを意識する” など、わかるようで、よくわからない説明になってしまうため、法人向けビジネスを行う企業のコンテンツマーケティング実例ということで、当社Ginzamarketsが現在行っていることを紹介します。
どういう事業環境/背景の中で、どういったことを意図して、何をしているか、書ける範囲で紹介します。
ただブログを書けば良い訳じゃない、コンテンツ制作の前にどういったことを視野に含め検討したか、何のために行い、目標設定と実行をどうつなげているか、など、当社の行っていることが願わくば好例であると信じ、一つの実例として参考になればと思います。
マーケティング戦略の検討背景
全てのマーケティング活動の背景や上位には、ビジネス上の状況や判断があり、自社を取り巻く環境があり、ユーザー動向があります。
まず、マーケティング戦略検討の背景情報について説明します。
当社の事業環境の変化
当社の製品Ginzametricsは、大規模サイト/複数サイト運営者向けのSEOツールとして提供してきました。
当社の置かれる事業環境としては、SEO動向があり、Webマーケティングの動向があり、プロモーションやマーケティングの動向があります。
直接的に影響を受けるのはSEO動向になりますが、私の知る限り、アメリカでは2011年の段階で、被リンク購入の施策は御法度になっており、古き良きSEO内部施策/外部施策よりも コンテンツマーケティングの枠組みの中でSEOも考えられる文脈が徐々に強くなっていました。
ウェブマーケの領域では、アメリカで起こったことが、2−3年後に東京で起こりがちですので、私個人としても、2011年の終わり頃からコンテンツマーケティングに関する情報収集/適切な理解に努め、機を見て情報発信しました。
- 当時のブログ記事の例:コンテンツマーケティングって流行りませんでしたっけ
2012年に入ると、Google社からの良質なコンテンツ重視のメッセージもあり、not provided問題がアメリカで顕在化し、その先、自然検索のマーケティング、コンテンツマーケティングの動きが活発になることは予見されました。
当社のプロダクトの進化
このような事業環境の変化の中、当社のプロダクト自体も、コンテンツマーケティングの流れを受けた/予見した開発を進めてきました。
例えば、2012年9月にリリースした「SEO分析機能に加えてソーシャルシグナル分析機能の提供を開始」は、その一つ。
日本では当時 “SEOツールなのに、なんでソーシャル?” と思われることもありましたが、同じ時期アメリカでは、当社のようなSEOプラットフォームはソーシャルのデータを統合していないと相手にされない状態でした。
この後も、コンテンツマーケティングの流れを見つつ、”コンテンツマーケティングの効果測定”、”コンテンツマーケティングの分析”、”コンテンツマーケティングの調査”あたりを構成するであろう機能を徐々に拡充し、今に至る状況です。
- 最近のリリース:コンテンツのサーチ&ソーシャルを統合した効果測定機能
ウェブ上の競争状況
SEOの競争、自然検索での競合状態が激しい業界は、例えば人材、不動産、旅行や教育などありますが、当社のいるSEO界隈のSEO競争状態は、結構大変です。
なんせ、SEO領域でビジネスをする会社ばかりですから、SEOに詳しくて強くてうまい会社が多いのです。“SEOツールとしての競合” は少ないですが、”SEO/コンテンツマーケティング界隈の情報の競合” は多いです。
残念ながら、仮にビッグワードで1位になりたいと思っても、当社はそれに見合う事業体ではありませんし、それ相応の歴史やコンテンツもありません。そのため、頭をひねって工夫する必要があります。ウェブ上で他社と同じことをしていたら、かなりの確率で他の会社に負けるのです。
当社のお客様の動向の変化
2012年から2013年の前半くらいまででしょうか、”コンテンツマーケティング”は一種のバズワードと言うか、私含めたベンダーやエージェンシーサイドの人は声高に情報発信するも、肝心の企業のマーケティング施策としては、まだ実施段階に至っていない場合が多い、と感じておりました。
しかし2013年の中盤以降でしょうか、具体的に予算化/組織化して施策として推進する/推進し始める、といった声を一定以上の頻度で耳にするようになりました。
当時の環境背景をまとめると
教科書的なまとめ方をすると、当社の事業背景/環境としては次のような状況でした。
【事業環境】
コンテンツマーケティングの流れが強くなる。
【製品開発:Company】
流れに合わせ、コンテンツマーケティングに関する機能を作る。
【ウェブ上の競合:Competitor】
普通にSEO施策しては上位表示難しい。SEOにしても工夫が必要。
【顧客:Customer】
コンテンツマーケティングに実際に取り組む会社が増えつつある。
施策としてのブログ活用
上述の事業背景/環境を踏まえ、具体的にブログで、”コンテンツマーケティング”関連のことに着手します。
当社のこれまでのブログ活用の概要
2011年の終わり頃から、継続的にブログ記事を書いています。
その結果、2011年4月のサイト訪問数を「1」とすると、2014年4月は「31」くらいです。訪問の中でブログコンテンツが占める割合も、2011年4月時点は限りなくゼロに近いですが、2014年4月は「60%」を超えるくらいです。
ブログを書けば万事OKというわけでは決してありませんが、特にBtoBサイトやもともと更新性の低いサイトは、コンテンツを継続的に発信することなしに、自然検索などのトラフィックを増やすのは難しい(既存のページに手を加えるとか、そういうことでは難しい)と感じます。
“コンテンツマーケティング”関連についての狙いと目的
さて、ここからがいよいよ本題です。
過去においても、コンテンツマーケティング関連のブログ投稿は不定期にしていましたが、上述の環境背景まとめのとおり、Ginzametricsの機能的にも充足しつつあり、マーケットも温まってきた、要は日本においても「機は熟した」と判断したため、より意図的/積極的に”コンテンツマーケティング”関連に取り組むと決めたのが、2013年の後半です。
決めたはいいけれど、Webマーケ界隈で当社の存在を知っている方は多分10%未満(5%未満。3%未満かな……)であり、”SEOツール屋”として知ってもらっている状況です。
もちろん、当社もボランティア団体ではありませんので、売上/受注が必要ですしコンバージョンが必要です。しかしその前段として、当社のことを認識してもらわねければ始まりません。
そのため、コンテンツマーケティングの狙いであり目的を次のように設定しました。
”コンテンツマーケティング” 関連について何かしら調べる方に、主たる関連プレイヤーの1社として、Ginzametricsが存在することをイメージ付ける
単語で言えば「ブランドアウェアネスの向上」であり「ソートリーダーシップ」の獲得、を目的とします。言い方を変えれば、先日たまたま見た、佐藤可士和さんのインタビュー記事のこの部分がしっくりきます。
ブランディングとは「本質的価値×戦略的イメージコントロール」とのことで、当社が提供するGinzametricsは、コンテンツマーケティング関連のツールとしての機能を拡充しつつある【本質的価値】ため、自社ブログに意図するコンテンツを追加し、もちろん get found されるようにし、「”コンテンツマーケティング” 関連について何かしら調べる方に、主たる関連プレイヤーの1社として、Ginzametricsが存在することをイメージ付ける」【戦略的イメージコントロール】を狙います。
チェックする指標と実施する範囲
狙いと目的を決めれば、次はウォッチする指標(KPI)とその範囲を考えます。
指標は色々ありますが、主たる2つの指標は、自然検索の “上位表示割合”と、”他社サイトに対する勝率” としています。その下位のサブ指標として、トラフィックと新規割合をチェックしています。
ソーシャル系の指標は、もちろんシェアされるに越したことはないですし、シェアされたコンテンツを見たことで当社を認知するケースもあろうかと思いますが、「”コンテンツマーケティング” 関連について何かしら調べる方」を意識するため、チェック指標からは外しました。
自社の数字だけを見ていると、かなり意思が強い方であっても往々にして自己満足に陥りますので、“仮想敵”としての他社サイトに、狙いを定める領域で勝てるように頑張るわけです。
PVやUUでいいじゃないか、と思うかもしれませんが、例えば、たまたまバズって初速でPV/UUを稼ぐこともあり、またそういった記事は目につきやすく、書いた当人として気分的にも良いものです。
しかしながら “必要に迫られて、仕事として調べる必要にある状態” な方に目に留まってもらいたく、その意味で、じわじわと細く長く “get found” される良質なコンテンツ、調べたいことに答える記事、なるほどと感じる内容、が良いと思い、”必要に迫られて調べる方” 向けに、自然検索でのファインダビリティを指標としてウォッチします。
また、PV/UUとソーシャルの数値は基本的に過去を示す指標ですが、検索順位は少し先を予測する先行指標、つまり今のままで、少し先もユーザーを自社サイトに連れて来る状態なのか、それともてこ入れが必要かを示す指標である、と認識しているため、過去ではなくて、今後のことを把握したいというのもあります。
上述の指標にてチェックする範囲は、”コンテンツマーケティング” の掛け合わせキーワードです。
当たり前ですが、5ワードとか10ワードではないです。
“必要に迫られて、仕事として調べる必要にある状態” な方は、結構色々と調べます。つまり “コンテンツマーケティング” という限定した領域でありながら、様々な検索キーワードを意識してコンテンツを作っていく必要があります。
当初の段階での現状把握と具体的キーワードの洗い出し
①キーワード洗い出し
自分の頭で考えると、都合の良いキーワードが思いつきやすいため、このツールに「コンテンツマーケティング」と入れて、サジェストワードを洗い出し、ここから不要なものを除いたもの +α くらいのキーワードをチェック対象としました。
ちなみにチェック対象キーワードとして、自社ワード(ginzametricsなど)は含めません。また、自社サイトにコンテンツがあるかないか、も考えません。
自社の都合ではなく、あくまで(潜在)マーケットニーズから考えます。
②Ginzametricsにキーワード/キーワードグループ追加
キーワードをGinzaに設定し、「コンテンツマーケティング」グループも設定。
データを見る時の基本である、まずは大きく見て、その上で細かく見る、のとおり、キーワード毎の前に、キーワードグループ毎に数値を見るようにします。
③競合サイトを設定し直し
通常、競合比較をする場合、自社のビジネス上の競合を意識します。
しかし自然検索の競合比較においては、ビジネス的には競合ではなくとも、検索結果上は競合になるサイトも追加します。ユーザーは、自社サイトと競合サイト以外にも、色々なサイトを見ますからね。
当社の場合、競合サイトは以前と現在だと、次のように設定しています。
- 以前:SEO関連の会社やブログ
- 途中:ネット専門メディア、良く目にするウェブ系企業のブログ
- 今:ネット専門メディア、コンテンツマーケティングのサービスを行う企業
ネット専門メディアはもちろん事業上の競合企業ではないですし、コンテンツマーケティングのサービスを行う企業は競合どころかビジネスパートナーです。
しかし、自然検索の結果においては、そのような会社のメディアやサイトは当社のブログの競合サイトとなります。
④(当時の)現状把握
(青線:当社サイト、緑線:某ネット専門メディア、赤線:某企業のブログ)
対象キーワードの、2割強のみが10位以内(検索結果1ページ目)にあり、平均順位は30位前後で、のらりくらりとしています。切ない状況でした。
実際のウェブのコンテンツ制作
実際どういったコンテンツを作ったか。
“必要に迫られて、仕事として調べる必要にある状態” が、きっとこういうこと知りたい/調べたいだろう、と思う内容のコンテンツも作成しています。
例えば、「【社内説得/啓蒙/企画用】コンテンツマーケティングの重要性を説明する5つの切り口/調査データ」。
当の本人はコンテンツマーケ大事!と思っても、その上長や関係者は “それって広告よりいいの?”、”何でそういうことやる必要があるの?” と思うわけで、そういう時にウェブでネタを探すでしょうから、そういった “必要に迫られて、仕事として調べる” 方向けの内容です(当社の営業担当が、営業中の方から「うちの上司が分かってないんだよねー」と言われた時に、さっと差し出す情報でもあります)。
その他は、ぜひ当社ブログをくまなく読んでいただければ!と思います。
- Ginzamarketsブログ:http://www.ginzametrics.jp/blog/
コンテンツを追加 → 適度に追加したら数字見る → まだダメだからコンテンツ追加 → 数字見る、を幾度か繰り返しました。
ただ、そんなに都合良く上位表示されるわけでもなく、ただ30位前後だった平均順位は、25位くらいにはなった程度でした。
この頃ふと思ったのは、競合サイトの設定を誤っているぞ、ということ。別の競合サイトを設定して数字を見ると、全然負けてるじゃないですか!(右端にある、黒、黄色が新たに設定した他社サイト)
のらりくらりコンテンツを追加してちゃ駄目だと気づき、更に奮起してコンテンツを制作します。過去コンテンツにも手を加えます。”コンテンツマーケティング” の主たる関連プレイヤーの1社と認識してもらいたいですし、ソートリーダーシップの獲得を狙うわけですから、内容の薄っぺらい内容を書くわけにいきません。
自分たちの知識/経験/ノウハウを集約し、また情報収集に努めながら、ユーザーの役に立つであろうコンテンツを粛々と制作します。
制作して数字見て、制作して数字を見て。
数字を見る理由は単純です。
コンテンツを制作すると、”やった感” で清々しい気持ちになりますが、清々しいのは自分の気持ちだけで、それが結果につながっているかは別の話です。
結果の指標から見て、行ったことが十分そうか足りないかを判断します。
行った行動から判断するのではなく、結果の数字から判断します。
リソースは有限ですので、効果が出ていないからと無尽蔵にリソースを使えるわけではありませんが、当初企画する計画どおりにコトを進めるのが大切な会社であっても、結果を求めることに極端に力点を置く会社であっても、いずれにしても数字をチェックする必要はあるでしょう。
コンテンツ制作の効果測定
本腰を入れた甲斐もあり、ウォッチ対象としたキーワード群では、平均順位は改善され、某コンテンツマーケ企業2社のサイトより上位になり、10位以内は対象ワードの2割強しかなかったものが、6割強ほどに改善されました。
(青線:当社サイト、緑線:某ネット専門メディア、赤線:某企業のブログ、
黄/黒線:某コンテンツマーケ企業)
あくまで現時点ですので、今後この状況を更に改善/維持する必要があります。
また、当ブログ上では平均順位のみ掲載していますが、実際にはキーワード単位で見るものもあり、数字を見ながら、リソースの入れ具合/リソース配分を調整しながら対応を進めます。チェック指標は、自然検索の “上位表示割合”と “他社サイトに対する勝率” 中心の見方から、今後はトラフィック含めた別の指標を見ていこうかと検討中です。
当社のコンテンツマーケティング実例のまとめ
当社の “コンテンツマーケティング” 関連についての過去背景から直近の数字まで公開しました。
ウェブサイト以外のことや、今後予定する対応については割愛させていただきましたが、ただブログを書いているだけじゃないよ、ということはお分かりいただけたのではないでしょうか。
あくまで、とあるBtoBのサイトで、とある領域についての対応ですので、このやり方が広く汎用性のあるやり方かはわかりませんが、オウンドメディアとしてのブログ活用の一つの実例として参考になれば幸いです。
ginzametrics-shimizu
">by 清水 昌浩