オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第112回 大人だからわかる怖い話のウラガワ(1)
◆もくじ◆
・大人だからわかる怖い話のウラガワ(1)
・最近の志麻子さん
TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
8/18(木)及川眠子さん『破婚』イベントにゲスト出演
8/21(日)ふかわりょうさんプロデュース「ロケフェス」に出演
8/26(金)「韓流アフタヌーン ~岩井志麻子のイイオトコ図鑑~」開催
「岩井志麻子の千夜玩具物語」連載中
カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中
・著者プロフィール
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大人になったからこそ、そのディテールがわかる「怖い話」。
今月は「大人だからわかる怖い話」のエピソードをお届け。
岩井さんがある編集者から聞いた話。
隣の部屋の人が楽器を始め、音に悩まされるようになった。ところがある日、逆に彼が管理人から注意されることに。それには「あの声」が響いているという内容も含んでいて!?
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2014年11月「「そんなプロもありか」な人達のウラガワ」
12月「「殺人者」たちから聞いたウラガワ」
2015年1月「「大人の冬休みの日記」なウラガワ」
2月「「大人の冬休みの日記のつづき」なウラガワ」
3月「ベトナム愛人との旧正月のウラガワ」
4月「春の喜怒哀楽のウラガワ」
5月「韓国人夫の失踪届けを出したら……のウラガワ」
6月「ホラー作家まわりの怪異のウラガワ」
7月「異国の夏休みのウラガワ」
8月「そろそろ怖い目に遭う予感のウラガワ」
9月「秋風に謎めく過去のウラガワ」
10月「人生の秋を生きる女達のウラガワ」
11月「「結婚」に振り回される女達のウラガワ」
12月「出版業界の仕打ちのウラガワ」ほか
2016年1月「会えなかったけど気になる女たちのウラガワ」
2月「接点がないのに気になる人たちのウラガワ」
3月「嘘をつかずにいられない人たちのウラガワ」
4月「春のおかしなお便りの数々のウラガワ」
5月「距離感のおかしい人たちのウラガワ」
6月「台湾から連れてこられたある女性のウラガワ」
7月「大人の夏の観察日記のウラガワ」
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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ/ソウルの新愛人のウラガワ/風俗嬢の順位競争のウラガワ/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ/「大人の夏休みの日記」なウラガワ/その道のプロな男たちのウラガワ
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子どもの頃の夏の楽しみの一つに、大好きな「怖い話」をテレビや漫画雑誌などでたくさん見られる、というのがあった。
夏は怪談の季節。テレビでも漫画でも特集を組んでくれ、子ども会や親戚のおうちでのお泊まりなどでも、ちょっとした百物語めいた場ができた。
もちろん大人になった今だって怖い話は大好きで、ついに職業にしてしまったほどだ。今は怖い話は四季を問わず読めるし、存分に見られるのだけれど。
もう夏休みは関係ないのに、今もこの季節は夏休みの子ども気分になってしまう。
考えてみれば子どもの頃と大人になった今では、「怖い話」は変わりなく好きでも、その怖さのポイントみたいなのがちょっと変化していたりする。
そんな訳で今月は、「大人の怖い話」を書いてみたい。
※
私と同世代だが今も独身の編集者の彼が語った話を聞いて、何の関係もないけれど思い出したことがあった。子どもの頃、たまに泊まりがけで行った母の実家だ。
ある部屋の天井の染みが、単なる染みでしかなかったから夜寝ているとき見上げてもなんとも思わなかったのに。あるとき隣に寝ていた妹が唐突に、
「あれって、お坊さんの顔に見える」
などといい出したときから、怖くて夜はその部分を見られなくなったのだ。
今まではただの染みだったのに、お坊さんの顔にしか見えなくなった。別の部屋に寝るようにして、やり過ごした。
後に母の実家は大きく建て替えられ、長らく行ってないので天井がどうなっているかわからないが、改装のときに天井板も取り換えられ、あのお坊さんはもういないだろう。
そう、染みはなくなっている、ではなく、お坊さんはいなくなっている、というふうに思えるのだ。
さて。その編集者の彼によると、隣の部屋の人が楽器を始めた。最初のうちはものすごく下手というか下手以前の問題として、ちゃんと音も出せないし、まったくメロディにもなっていなかった。
だから彼はうるさいなぁと思いながらも、
「まだ、がまんできたんです」
という。ただの雑音、騒音でしかなく、窓の下を走る車の音や近くの工事現場の音と同じで、生活音の一種だったのだ。
ところが次第にお隣さんは上達してきて、有名な曲などをたどたどしいながらも「あの
曲だ」とわかるレベルで弾けるようになってきた。
となると彼は、うるさくて耳障りで耐えられない不快感にさいなまれるようになった。
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