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  • 窪寺博士のダイオウイカ研究記-その19

    2018-12-20 16:42
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    1.ダイオウイカ釣獲騒動記
    2.ダイオウイカが釣れちまった
    3.引揚げたダイオウイカ
    4.このダイオウイカから分かったこと

    ダイオウイカ釣獲騒動記

     調査初日の12月4日、昼少し前、何時ものように磯部さんの第八興勇丸に乗り込み沖に出ていた。

    「おーい、磯部さん。なんか変なものが付いているよ。サメかな?」

     空は明るいものの昨日の強風で大きなうねりが残る荒れた海。我々は、小笠原弟島北東約15マイルの沖合で調査用の縦縄を引き上げていた。長い幹縄を巻き終わると、一番下の枝針に何か白っぽい大きな獲物がかかってきた。海面の反射でよく見えない。磯部さんがラインを手繰ると徐々に近寄ってきた。記録用に撮影しているビデオカメラのファインダー越しに、長い腕がうねうね動いているのが見えた。

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    海面に姿をあらわしたダイオウイカ

     「あ、ダイオウイカ?」、磯部さんも「ダイオウイカだ!」と、ほぼ同時に叫んだ。

     ダイオウイカはその全身を海面に現し、うねりに揺られながら船縁に引き寄せられてきた。巨大なイカである。水深650m付近から引き上げられたというのに、まだ生きて動いている。太い漏斗から勢いよく海水を噴射して逃げようともがく。頭部は大きく、深海の闇を
    見続けた大きな眼が恨めしそうに見上げる。長く太い腕が海中で大蛇のようにのたうっている。体の背側は明るい赤紫、腹側は真っ白のツートンカラーで、生きているダイオウイカの姿は輝くばかりに美しい。

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    船べりまで引き寄せられたダイオウイカ。アカイカを抱いている。外套膜の腹側が白い

    ダイオウイカが釣れちまった

     「ひえー、こんなところでダイオウイカが釣れちまったよ・・」

     ちょっと焦りながら、暴れまわるダイオウイカをビデオカメラに収録しつづけた。生きて
     
  • 窪寺博士のダイオウイカ研究記-その18

    2018-12-17 15:01
    50pt
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    [本号の目次]
    1.科学研究助成金基盤研究(B)に採択される
    2.小型HDビデオカメラ撮影システムの開発
    3.2006年10月、小笠原深海ビデオカメラ調査
    4.2006年12月、二度目の調査

    科学研究助成金基盤研究(B)に採択される

     2005年にNHKの依頼で後藤アクアティックスの五島さんが心血を注いで開発した深海HDビデオカメラ撮影システムは、素晴らしい映像を撮ることが出来るものの、総重量200㎏を超えて特殊なウインチ等を装備する調査船が不可欠となった。そのため浦環教授の研究航海であるJAMSTECの調査船「なつしま」を利用させてもらったが、これでは調査時期や海域など制約があり、独自の機動性が大きく削がれることになった。
     2005年に科学研究助成金の基盤研究(B)に「中深層性大型頭足類の分類ならびに生態、潜在生物量に関する基礎的研究」のタイトルで申請していた3年計画のプロジェクトが採択され、申請額全額とはいかないが2006年から研究助成金を受け取ることが決まった。この研究費を基に、2005年にソニーから市販された「いっきに手のひらサイズ」の小型HDビデオカメラ(HDR-HC3)を組み込んだ深海撮影システムを製作することを考えた。撮影システムを小型化すれば、磯部さんの第八興勇丸で自分なりの調査が出来る。

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    ソニーから市販されたHD小型ビデオカメラ(カタログより抜粋)
     
  • 窪寺博士のダイオウイカ研究記-その17

    2018-11-02 16:04
    50pt
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    [本号の目次]
    1.NHK撮影班の奮闘
    2.深海HDビデオカメラ撮影システムが捉えたもの
    3.ヒロビレイカ論文の推敲
    4.我々の映像が語ること
    5.ヒロビレイカの論文発表

    NHK撮影班の奮闘

     結局「なつしま」の8時間に及ぶ深海の映像記録から、ダイオウイカは発見することができなかった。しかし、今までに見たことも撮影されたこともないような大型のイカが、大きな鰭を悠然と波打たせてカメラの前を自由自在に泳ぎまわる映像が何度かにわたり捉えられていた。

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    餌のスルメイカをめざして突進する
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    仕掛けのクリップに突っ込む
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    そのまま前進して向きを変える
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    反転して鰭をたたみ、後ろ向きに高速で去る

     「なんのイカだ?」 最初に見たときは鰭が三角形で大きいことからソデイカかと思われた。が、さらに映像をよく見ると、腕の先が一瞬光っていることに気が付いた。そうだ、マッコウクジラの胃内容物の調査でしばしば見つかったヒロビレイカに間違いない。あの光は第2腕の先端にある大きな発光器が光っているのだ。これこそ世界で初めて深海でヒロビレイカの生時の姿を捉えた貴重な生態映像になる。しかし、論文として纏めるためにはより多くの行動様式を撮影した映像が必要であった。
     調査期間を終えた「なつしま」が我々を乗せて帰路に就いた9月15日以降、NHK撮影班の小山ディレクターと河野カメラマンは父島に残った。小笠原水産センターの調査船「興洋」の五ノ井船長と大型漁船「勇大丸」の平山船頭を拝み倒して、引き続き10月1日から7日にかけて小笠原父島南東海域で、ダイオウイカを撮影するため「なつしま」から引き揚げた深海HDビデオ撮影システムを両船で各々16回と2回、深海へ降ろしたのである。生きているダイオウイカの映像を、この機会にどうしても手に入れたかったのだ。