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小池壮彦 怪奇探偵ブロマガ vol.33
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小池壮彦 怪奇探偵ブロマガ vol.33

2013-12-27 20:41
     徳洲会の事件が発覚して都知事が狙い撃ちされた茶番の件で、世間で言われているようなTPPとか医療利権のこととは別に、南関東ガス田開発プロジェクトの問題がある。徳洲会事件そのものは東京地検がまたぞろやらかしただけのことにすぎないが、この事件が9月17日にニュースになってから薄い興味で見ていたところ、9月25日に東京都が〝湾岸天然ガス発電所〟の事業計画を突然中止した。この日の都議会で猪瀬氏が唐突に計画の見直しを述べたのだ。

     この〝湾岸天然ガス発電所〟のプロジェクトというのは、原発に依存しないエネルギー政策の一環として、2年前に副知事だった猪瀬氏の主導で立ち上げられたものである。長年の間、なぜ実用研究しないのか不思議に思われていた〝南関東ガス田〟の有効利用がついに決定された画期的な計画で、「東京で第2の東電を作るしかない」という猪瀬氏の発想に当時の石原知事も賛同した。いわば石原・猪瀬都政の目玉だったわけである。

     すでに用地の絞り込みも済ませ、自然環境の調査も今年秋に終える予定だった。ところが、徳洲会事件の発覚というタイミングでこの計画が白紙になった。やっぱりツブされたかと思ってニュースを見ていたが、誰にも気づかれないような一報が流されただけで続報はない。そこで都議会の議事録を見ると、あいかわらず変な質疑がおこなわれていた。

     このプロジェクトに難色を示していた自民党の吉原修議員が反対意見を述べた後、猪瀬氏による問題の答弁があるのだが、まず吉原議員は現状の東京の電力供給が逼迫した状況にはないことを指摘した上で、天然ガス発電所を建設する必要性について疑義を投げかけた。その答弁として猪瀬氏は、以下のように述べて、あっさり計画の見直しを表明した。

     百万キロワット天然ガス発電所プロジェクトについてでありますが、東日本大震災直後、都内でも計画停電が実施されるなど、電力供給は危機的な状況に陥りました。

     このため、最新鋭発電所を直ちに視察するなど情報収集と分析に取りかかり、その年の八月に本プロジェクトを立ち上げました。プロジェクトでは、東京産エネルギーの確保に向けて検討を行うとともに、その内容を生かし、老朽火力発電所リプレースの促進や、官民連携インフラファンドの具体化にもつなげました。

     このファンドを活用した十万キロワット級発電所が、来年八月に運転開始となる予定であります。現在は、首都圏では、この夏も懸念された電力不足に陥っておらず、電力事情が震災直後とは大きく異なっております。ただし、現状は、東京電力の老朽化した発電所が稼働し続けており、故障による運転停止リスクがつきまとっていることから、安定供給に支障が出かねない状況にあります。

     このことを踏まえ、新規の発電所建設となる百万キロワットプロジェクトの推進については見直し、東電老朽火力発電所のリプレース促進に全力を挙げていきたい

     東京都はこれまで、国と東電に対して、リプレースを促進するための具体的な提案をしてきましたが、今後も強く働きかけ、電力の安定供給のための努力を続けていきたいと思います。

     *傍線は引用者による

     以上の答弁をちゃんと読んでも意味がよくわからないかもしれないが、要するに傍線部にあるように、新規の発電所計画は見直すというのが要点である。報道でもその部分が引用された。発電所の立地の問題や、それとオリンピック用地との整合性という問題には何も答えていないし、このプロジェクトの採算の問題についても答えていないが、計画自体をやめるのだから、それらの課題はすでにどうでもよくなったわけである。

     天然ガス発電計画のそもそもの動機は〝脱原発〟だった。それと同時に隠れ資源である南関東ガス田開発に着手するという目的があった。しかし、結局は東電の老朽化した発電所のリプレースを進めるというトーンダウンぶりであるから、ガス田を利用して第2の東電を作るという発想がやっぱり鬼門だったのだろう。ちなみに東京都環境局によると、天然ガス発電計画は猪瀬氏が言うような〝見直し〟ではないらしい。〝中止〟ですらなく、明確に〝終了〟だそうである。初めからこの計画は〝なかった〟ことにされたのだ。

     徳洲会事件というのは、いろいろと複合的に仕掛けられた事件であって、猪瀬氏はスケープゴートにすぎないだろう。それにしても、せっかく南関東ガス田の本格的な開発に手をつけたという功績はあるわけで、これがどこまで現実化するかというのはそれなりに見ものだったわけである。しかし、日本はせっかく技術がありながら、自前の資源を活用研究しようとすると、どこからか邪魔が入るようになっている。

     そのからくりについて歴史的に眺めてみると、やはり〝関東大震災〟というのが否応なく視界に入ってくる。結局、日本は大正12年(1923年)に首都を襲った歴史的大災害から復興する過程で米国資本に乗っ取られていった。つまり、明治維新以来の親分だった欧州金融資本に代わって、米国の石油屋が日本を手玉に取るべく、まっさきに〝復興援助〟をしたのである。これも当時の〝トモダチ作戦〟だったわけだが、要するに日本は米国に借りができた。

     もちろん向こうは善意ではなく、残酷な商売を始めるための準備だった。「会ってみたらイイ人だったよ」という騙され方が日本人には多すぎる。これは日本人の美点でもあり重大な欠陥でもある。「ヘイ、ボーイ、チョコレートならあるぜ」でだまされる人々の群れである。島国でなければとっくに滅んでいた民族だろう。その証拠が後に述べる東京大空襲である。復興援助の裏で、すでに米国は史上例を見ないジェノサイドの準備を進めていたのである。

     関東大震災が起きたタイミングというのも、疑えばキリのない話ではあるが、地震の直前まで東京では地下鉄工事のための地盤調査をしていた。ガス田の存在もわかっていたので地盤への影響という調査もしていたはずだが、その辺の記録について、はっきりしたことは何も明るみには出ていない。わかっているのは、関東大震災を経験した年寄りが伝える地震時のキノコ雲の存在や、火災旋風にまつわる凄絶かつ奇妙なエピソードである。
     
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