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「私よりブスなのに、私よりデブなのに、私よりモテてたんだ」ってとこですよね

山口 以前、Aさんと雑談をしてた時に「わたしの中にもカナエがいる」という名言が飛びだしまして、女性はみんなそうなのか?ということで我々も興味を持った次第なわけです。で、Aさんの友だちであるみなさんに今日は集まってもらい、いまさらながらではあるけど、木嶋佳苗を題材に、みなさんの赤裸々な話を聞きたいなぁと。

柳沢 赤裸々というのは大事ですね(笑)。

山口 さっそくですが、みなさんはなぜ「木嶋佳苗なるもの」に興味を持つのか? まずはそこから教えてください。

S 女性で興味がない人はあまりいないと思う。

A 男性は普通に興味を持つ感じはしないですか?

山口 俺なんかは、佐野眞一の書いた『別海から来た女』を読むと、書いた佐野眞一のドラマのつくり方というか、ノンフィクションという名のフィクションのつくり方みたいなほうに興味がいっちゃう。

一同 へえー。

山口 女性の多くが木嶋佳苗に自然に興味を持つというのが、なんだか実感としてわからない。だって、「俺の中にカナエがいる」とは思わないもん。みなさんも「わたしの中にカナエがいる」という感覚があるわけでしょ?

T 女性はみんなそういう実感は持ってると思う。それは大それた問題ではなくて。「そんな話、別にいまさら」みたいな……。

山口 とりたてて、いまさら騒ぐ話でもないだろうと。

T ええ。

山口 じゃ、じゃあね、基本中の基本だけど、いちばん最初に木嶋佳苗のビジュアルを見た時にどう思った?

T ひどいなあ、と。

山口 ひどいとは?

T ブスだなあと(笑)。男性を何人も騙して殺してまでいるわけだから、さぞかし……とハードルが上がってるところで写真を見たから。「あれ!?」って。

S それは誰でもそう思うよね。しかもブスなだけでなく、普通以上に肥えていらしたので。そこにも驚きました。

山口 『別海から来た女』の証言の中には、「あざらしみたい」って表現もあったよね。

S みんな男性によく思われたくて痩せようとしてるのに。「痩せてなくて大丈夫だったの?」という気持ち。

A 「あれでいいんだ?」「あれで男性は引っかかるんだ?」という印象が強烈だった。

T だから、みんな興味を持ったのは「こんなブスなくせに」ってとこですね。

S 「どうしてこんな女に?」ってとこにまずみんな喰いつくんだと思う。

山口 男だけじゃなく、女性でも入り口は月並みに、そこ。

T 絶対そうです。これが美人の起こした犯罪なら当たり前で面白くないけど。

A ちょっと恥ずかしいけど、「私よりブスなのに、私よりデブなのに、私よりモテてたんだ」ってとこですよね。

山口 「私より」がキーポイント。

T 「こんなブスなくせに」が入り口ってことはそういうことだよね。

S それで、引っかかった男の人たちを見て、正直「なんだ。こんな男たちだったらしょうがないわ」という気持ちもありました。

山口 ちょっとホッとした?

S そうですね。

A 引っかかったのが素敵な男性だったら「キーッ!」ってなったかもしれない(笑)。普通、女性はブスに見えないように、他人によく思われるようにと頑張って暮らしてるのに。木嶋佳苗のような人が大暴れすると、「普通はこうでしょ」と思ってたことが覆されることに驚く。

山口 「世の中にはもっと頑張ってる女性がたくさんいるのに、そんなに頑張ってなさそうな人がなんであんなにモテるの」ということ?

A そういう思いは私はかなりある。

山口 木嶋佳苗について書かれたもう一冊の『毒婦』という本は、北原みのりという女性が著者で、佐野眞一が書いたものとは読後感とかトーンが全然違う。この本の中で裁判所に傍聴にきていた30代と思わしき女性に、どうして木嶋佳苗に興味があるのか取材してるんだよね。で、木嶋佳苗は憧れに近い存在だと答えている人が何人かいる。憧れの感情を持ったことはない?

T 憧れてない、憧れてない。

A 憧れにはならないよね。

T モテて羨ましいとか思わない。

A むしろ「こういうふうにならないようにしよう」と思う。

山口 どういうこと? 捕まらないなら私もやってみたいってこと?(笑)

A 捕まらないんだったら…………もちろん、殺しまではしたくないですけど。

S 手玉には取りたい!

A そうそう。手玉に取る楽しさはちょっと味わってみたい。できるかどうかわからないですけどね。

S でも、どんな人でも手玉に取りたいわけじゃなくて。自分の好みの人ばかりを手玉に取りたいわけでしょ。

A 佳苗はそうじゃないよね。

S そうじゃない感じがするから、あまり羨ましくない。被害に遭われた方々を見ても、女性に不自由してた方々を狙ったんじゃないかと思われるので、そういう点でもあんまり羨ましくはないよね。

A お金を貢いでもらうというのが嬉しいとか、そういうことじゃないんだよね。

山口 じゃ、じゃあ、何に惹かれるの?

S その手口。どうやって簡単にお金を振り込ませたんだろうとか。

柳沢 そういうことをする男だという見定めがすぐできる女性だったってことじゃないの?

山口 ああ、フィルタリングの問題。

柳沢 そう。木嶋佳苗はそこが長けてる。だって俺たちも二日でお金を振り込んでくれるような人をさんざん探してきたけど、そんな人、なかなか見つけられないよ(笑)。

山口 確かに(笑)。木嶋佳苗の事件はファンタジーに見える? それともリアリティーのある事件に見える?

T リアリティーがある方かな。

S ファンタジーではないよね。

柳沢 周りに木嶋佳苗に近いような女性はいる?

A いる。

山口 いるんだ!

A ルックスもどちらかといえば佳苗に似たタイプで、女性から見ると「もうちょっと頑張って綺麗にしなよ」という感じなんだけど、なんかモテる。

S いる、いる。

A ダンナとか特定の彼氏がいるわけではないんだけど、なんだか生臭い物がいつも周りにある。そういう人ってけっこういて。だから、「男の人って何でこういうタイプに惹かれるんだろう?」という思いは普段から持ったから、そういう意味でも佳苗は気になるよね。私もたまにはいい男で周りをいっぱいにしてみたいと思いますが、誰も来てくれない。佳苗や佳苗チックな人たちの周りにはいつもいるのに、「何で私にはそういうことがないの?」って思う。

山口 知りません!(笑)。生臭いってことでいうと、世の中にはスカベンジャーみたいな趣味の男がいるってことなのかな?

A 何ですか、スカベンジャーって?

山口 腐肉を漁る動物。自らは狩りをしないで腐肉を中心にしか食わないみたいな。

A そういう人たちが佳苗に惹かれてると。

山口 違うか?

S きっと佳苗を好きになった男性にとっては、佳苗は素敵な女性に見えてるんじゃない? 腐った肉とは思ってなくて。自分のことを素敵な女性として見てくれる男性を選んでるというか。

T 「この人、私に惹かれてるわ」と思っても、その人が自分の好みとは限らないでしょ。「でも、あんな人、イヤ」とか。佳苗はそれがないのが凄いのかなと。


山口 まったく愛情を持たないってことなのかね?

T そこに愛情もあるんじゃないかなあ。

A そう思う。

T きっと愛情はあるんですよ。「貢いでくれるんだからいいや」という割り切りがあると思えない。

A 出会った最初の頃とかはかわいさとか素敵なところを見つけて、ちょっと好きになってるよね。

T 絶対そうだと思う。最初から「いずれこの人は殺す」という割り切りですべて進んでるんじゃなくて。

A 何かしら好きなところを見つけて自分を納得させてるよね、事を進めるに当たって。

柳沢 ……………………。

山口 ……………………。

柳沢 ……なんか、惚けてしまう(笑)。

山口 ……なんか、「あんぐり」って感じ(笑)。

A 何で「あんぐり」なの?(笑)。


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