第13回 シュートボクシングでの初メインの日。
プロのリングに憧れた僕は、シュートボクシングでデビューした。2戦目もKOで勝った僕は少し調子に乗り、3戦目で今度はKO負け。笑っちゃうくらい綺麗に倒された。だけど、あれがあったから今の僕がある。そんな出来事が僕にはいっぱいある。全てはネタなんだ。人生はネタの宝庫。いろんなことがあるから人生は楽しいのだ。
3戦目の相手は僕の他にもう一人いた若手の注目株で、関西の新鋭。試合ラスト10秒まで僕が勝っていた。ポイントでも圧倒していて、あともう少しで試合が終わるところだった。
後楽園ホールは試合時間を告げるタイマーが客席から見えるようになっている。リング上からも見える。タイマーを見た僕は、残り10秒だから軽く攻撃して終わりにしよう、このままポイントでも勝ってるから軽く攻めて判定勝ちにしようって思った。
その時、軽く出した左フックに相手の渾身の右ストレートが被さってきた。全く見えなかった、漫画で見たクロスカウンターだ。漫画は読んでるから見えるけど、実際に受ける当事者には本当に見えない。パンチを食らった瞬間に、銀色が見えた。アルミホイルをクシャクシャにしてそこに光を当てたような不思議な映像が見えた。そして、その映像が見えた後、真っ暗になった。気がついたら僕はリングで横になっていた。
KOされるってこういうことだって初めて分かった。緊張して迎えたデビュー戦に勝って褒められ、すぐに組まれた2戦目はハイキックでKO勝ちした。僕は調子に乗っていた。デビューして2戦はフレッシュマンクラスというキックボクシングの3回戦のような扱いの試合。当時のキックボクシングは若手が3回戦、メインの選手や上の扱いの選手は5回戦が普通だった。
その後、K-1の出現によって3回戦が普通になるずっと前の時代。シュートボクシングは他の格闘技との差別化を図るために、若手が出場するフレッシュマンクラスは6分連続で試合をして引き分けなら、さらに3分の延長戦。上の選手が出場するエキスパートクラスは10分連続で闘って、引き分けならさらに5分の延長戦を判定が決まるまで無制限に行う。今なら考えられないような厳しい試合時間でやっていた。