ホラー映画『Citadel(シタデル)』の、シアラン・フォイ監督へのインタビューです。
フォイ監督はかつて、14歳の少年たちからハンマーを使った集団暴行を受けたことがあります。それ以降、自分の家を出ることが困難になり、家のドアから一歩も出られなくなってしまいました。
しかし数年後、その実体験を元にして、観客のド肝を抜く様な恐ろしい映画を制作。現実に起こった恐怖体験をどのように映画に落とし込んだのか? 経験談もふくめて、フォイ監督はいろいろと語っています。トレイラー動画もあるので、合わせて以下へどうぞ。
フードをかぶった若者たちが、イギリスの路上へ赤ちゃん狩りにやってくるこの映画ですが...。
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――劇中に登場するクリーチャーたちに正式な名前はありますか? かつてカレらは人間でしたが、別の生き物に変わってからの名前はあるのでしょうか? そしてカレらの背景は語られるのでしょうか?
フォイ監督(以下フ):脚本家にとって、最低限カレらがドコから来たのかを知っておくのは重要であると感じたので、設定については全部書きだしていましたよ。そしてカレらがどのように操られているのか、などもね。でもその後から、そうした情報をまた少しずつ覆い隠す作業を始めたんです。
というのも、ワタシ自身が映画ファンとして、最近のホラー映画は観客に情報を与えすぎではないかと感じているので、観客が映画を観た後に自分自身で仮説を立てられるよう、少し判らない部分を作ったのです。ワタシの場合、情報を全部知ってしまうとその映画のことを忘れてしまうので。
設定と脚本では、カレらは「ザ・フーズ」と呼ばれています。そして常識が通用しないカレらは、野性的で凶暴な子供たちとなりました。
――これらのクリーチャーたちに適用されるルールは何ですか? カレらは盲目で、恐怖を感じ取ることができるようですが、ソレ以外には何かありますか?
フ:いやぁ、特にはないですね。現実にはカレらはワタシの人生で起こった事件の、暗喩が具現化したものですから。でも映画の中の話では、カレらは繁殖するために狩りをするんです。小さい子供たちを誘拐します。対象が幼いほど、カレらに好まれるんです。そして、カレら自身が地下室の檻の中で育てられたように、子供たちを同様に育てようとするのです。
オリジナルでは、カレらは自分たちが住む塔の中で変種の菌によって感染し、その菌類の中毒になっていることにしました。そして、その菌をさらってきた子供たちに注射し、その子らが突然変異するといった具合です。映像の中でもその説明があったのですが...編集作業の中で、ザ・フーズのひとりが壁をナメるシーンがあり、ソレがどうしてなのか観客には解らないので、そっちを使ったほうがより不気味になるだろうと変更しました。
ワタシは18歳の時に、若いギャングたちに襲われて広場恐怖症になってしまいました。でも一番恐ろしかったのは、カレらはワタシから何も欲しがらず、何も盗らなかったことです。
どうしてその事件が起こったのか、意味も理由も解らないのです。ワタシが思うに、物事が起こった時に、その理由が解れば人はある程度安心できると思うのですが...永遠にその理由が解らないままでいるコトは、根源的な恐怖ではないかと思います。
――広場恐怖症の経験と、劇中のキャラクターが体験することは、どれくらい類似しているのでしょうか?
フ:イロんな意味で、映画の前半はかなり個人的なモノになっています。襲撃時ワタシは18歳で、両親と実家で暮らしていました。玄関のドアは、ワタシにとって最大のチャレンジだったのです。それはワタシが通り抜けられなかった、針にひとつ空いた糸通しの穴そのものでした。
家の外を歩いて、ひとりで行動することなど、考えることができなかったんです。あの長方形が恐怖のカタマリとなり、墓標となってしまっていました。そして、映画の主人公トミーは何かしら四角形の中におり、どういうワケか四角いものから攻撃を受けるのです。
ワタシはまだ正面玄関を開けることができません。多分もうワタシは世界に直面できるでしょう...。でもナニがいけないのか、カンゼンに不条理な恐怖であり、その立ち位置からカンゼンな弱さが感じられます。外の世界では、不条理の恐怖と現実の恐怖がワタシを待っているんです。実際、ワタシを襲ったカレらは未だに外を出歩いています。それはあまりにも現実的なのです。
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ということで、フォイ監督のトラウマは一生治ることのない、深い心の傷となっているようです。この映画が出来た事によって、監督の中に何か整理がついたのか、何か昇華できたのか判りませんが、そんな監督だからこそ、観客を本当に怖がらせるホラー映画が作れたのかもしれませんね。
日本での公開が待ち遠しい一本です。最後に、『Citadel(シタデル)』のトレイラー動画をチェックしてみてください。主人公の病的に警戒心が強く、疑心暗鬼な表情がすでにコワいです(汗)。
How the Citadel director's real-life agoraphobia turned into a horror movie[io9]
(岡本玄介)
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