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名クリーチャー映画監督ギレルモ・デル・トロが語る「なぜ、おとぎ話にダークな側面は必要なのか」
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名クリーチャー映画監督ギレルモ・デル・トロが語る「なぜ、おとぎ話にダークな側面は必要なのか」

2012-11-26 22:00
    名クリーチャー映画監督ギレルモ・デル・トロが語る「なぜ、おとぎ話にダークな側面は必要なのか」


    『ヘルボーイ』や『パンズ・ラビリンス』といった作品でダークな世界の描き方に定評のあるギレルモ・デル・トロ氏。一方プロデューサーとしては『カンフー・パンダ2』や『長ぐつをはいたネコ』など、子ども向けの明るいアニメーション映画にも数多く携わっています。

    本日は子供向け映画へのこだわりから、製作総指揮を務めた最新作『不思議の国のガーディアン』(北米で現在公開中)まで、デル・トロ氏がたっぷり語ったインタビューをお届け。

    デル・トロ氏のおとぎ話への情熱がかいま見える、詳細は以下で。
     

     

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    ―子ども向けのストーリーを作るときの最大の間違いとはなんでしょうか?

    ギレルモ・デル・トロ(以下デル・トロ):多くの人がダークな要素を入れようともしないことだと思います。無菌状態でひたすら明るく楽しく幸せな子ども映画ばかり作っている。しかし、ダークな要素は絶対に必要なのです。

    『カンフー・パンダ2』には精神的に危うく、反社会的な悪役「シェン」を登場させました。『不思議の国のガーディアンズ』には抜け目なく、強い意志で人々の恐怖心を操ろうとする「ピッチ」、『長ぐつをはいたネコ』にはひどく神経質な「ハンプティ」。

    気づかない人が多いようですが、これらの面はすべて子どもも持っています。子どもは神経質で、常に恐怖心とつきあい、大人やほかの子どもから実に刺々しい感情をぶつけられたりもします。

    映画はそのことをちゃんと理解して、子供たちがそういったものと向き合えるようなおとぎ話を作らなければならないのです。


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    ―子ども向け映画にこそ最高の悪役が出てくる印象がありますが?

    デル・トロ:それはどうでしょうか。ヒッチコックは「悪役が良いほど良い映画になる」と言い、実際にいくつかの作品の悪役は本当に素晴らしい。ジェームズ・ボンドの悪役だって、良いのがいます。ヒーロー物の映画も悪役次第ですからね。

    ―モンスター映画とダークなおとぎ話の違いは?

    デル・トロ:実にごくわずかな違いしかありません。ホラーは言ってみればおとぎ話から生まれるようなものです。共通点はたくさんあって、音程が違うようなものだと思います。おとぎ話には魔法や不思議さの要素が多く、ホラーにはもっと身近に感じる不気味さといった要素が多い。究極的にこの2つは非常によく似たメロディーを、まったく違う音程で奏でているのです。

    ―子ども向け映画に許されるダークさに限度はある?

    デル・トロある児童文学の巨匠は、世界の暗い部分をしっかりと受け止めた人でした。それがロアルド・ダールです。彼は『オ・ヤサシ巨人BFG』で非常に残酷な一節を書き、『魔女がいっぱい』ではまたとても薄気味悪く、暴力的な話を書いた。ほかにも例は尽きません。

    その点で彼は多くの子どもを非常に怖がらせました。彼の作品はだから...一線を超えてしまうと、それはもう子どもに読ませる話ではなく、大人のおとぎ話と言ってもいい。大人が楽しむためのおとぎ話です。

    そういった作品は東洋には多くあります。たとえば『千夜一夜物語』。これらの多くは非常に陰惨です。また忘れられがちですが、グリム兄弟が集めた物語の多くは大人に聞かせるための物語でした。人はグリムと聞けば「ああ童話の」と考えますが、本来はそうではなく、大人が聞いて楽しむためのものだったんです。ですから、質問に答えるとしたら「イエス」、子どもにはダークすぎる場合もあります

    そこが『不思議の国のガーディアンズ』の難しい点でもありました。常にバランスを保つように意識して、(ダークな面があっても)それでも楽しく、スリルを味わえるように。

    ―なぜ『不思議の国のガーディアンズ』の製作総指揮を?

    デル・トロ:これまで『カンフー・パンダ2』と『メガマインド』でクリエイティブ・コンサルタント、『長ぐつをはいたネコ』では製作総指揮を務めました。私はぐう話や物語を伝える仕事がとても好きで、監督としてはホラーも好きですが、プロデューサーとしてはそれ以外のタイプの物語にも関わっていきたいんです。

    メキシコやラテンアメリカでは社会的なドラマのプロデュースもしました。それと並んでこういったアニメーション映画のプロデュースもします。プロデューサー業のおかげで私はさまざまなことに興味を持ち続けられるのです。


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    ―今やクリスマス商戦のシンボルとなったサンタクロースをおとぎ話の世界に戻すのに意識したことは?

    デル・トロ:伝承の根本にあるエッセンスを取り入れて、それぞれが象徴するものを前面に押し出すようにしました。19世紀や20世紀のイメージをそのまま使いたくはなかったのです。

    たとえばイースターバニーは大地の守り主で、再生と希望を表しています。またノース(サンタクロースの劇中名)は自然の力を表し、誰にも止められない強さを持っています。某ソフトドリンクの陽気なおじいさんではなく、戦いもするし剣も使う。荒くれ者というわけではありませんが、もっとずっと力強い豪傑といったキャラクターです。


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    ―ガーディアンたちに加わって、ヒーローとして成長していくジャックフロストは子ども代表でもある?

    デル・トロ:ジャックフロストと他のガーディアンとの関係にはそれぞれ特徴があります。ノースとは父親と息子のような関係で、イースターバニーのことはいちいち気に障る。トゥースフェアリーは女の子としてちょっぴり気になり、サンドマンとは仲が良い関係です。

    そして敵であるピッチも、ジャックフロストには大きな魅力を感じます。ピッチはジャックフロストが将来そうなるかもしれない姿にとても近い存在です。本質的にこの2人は同じ種類の存在ですが、ジャックフロストは仲間と共に居ながら自分とは何かを示す方法を選び、他者を退けるピッチのようなやり方はしません。


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    ―『不思議の国のガーディアンズ』の視覚効果について

    デル・トロ:本作の照明効果や物の質感は、まるで絵本のようだと思いました。バニーの住む世界はとても豊かに描かれていて、古代の石や苔、虫たち、地下に広がる草原...それは本当に美しく、絵画を見ているようです。

    ―おとぎ話のスーパーヒーローがチームを組む『ガーディアンズ』。スーパーヒーローのチームに大切なものとは?

    デル・トロ:そのことを特に意識したのは、キャラクターの相互作用の面だけです。ピーター・ラムジー監督は本作をスーパーヒーロー映画だと考えていましたが、それはキャラクターにスーパーパワーを持たせるという意味ではありません。

    監督は最高のスーパーヒーローがチームを組むことで生まれる相乗的な力を表そうとしていました。チームでも気に入らない相手もいれば、やり方が合わないこともある。違いを乗り越えて協力することを学んでいくのです。



    Guillermo del Toro explains the biggest mistake people make in telling stories for children[io9]
    Rise of the Guardians Trailer - 2012 Movie - Official [HD][YouTube]

    (さんみやゆうな)

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    RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2012/11/rise_of_the_guardians.html
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