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監督自身の徴兵の経験の影響も? 『エンダーのゲーム』のギャヴィン・フッド監督にインタビュー
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監督自身の徴兵の経験の影響も? 『エンダーのゲーム』のギャヴィン・フッド監督にインタビュー

2014-01-14 21:30
    エンダーのゲーム


    オーソン・スコット・カードの名作SF小説の映画版『エンダーのゲーム』。今回は世界中で大人気の原作に果敢に挑んだ、南アフリカ共和国・ヨハネスブルグ出身のギャヴィン・フッド監督にインタビューして参りました。

    今作のキーとなるゲームと現実の関係についてや、主人公エンダーとも重なる監督自身の徴兵された経験など、監督ならではの言葉の数々は以下より。
     


    【大きな画像や動画はこちら】

     
    ――原作本と出会った経緯を教えて下さい。

    ギャヴィン・フッド(以下、フッド):確か5~6年前だったと思いますが、私のエージェントが『エンダーのゲーム』が私の経験と重なる部分があると感じ、送ってくれたのが最初ですね。

    実は、私は17歳の時に南アフリカ国防軍に徴兵され、(1981年から)2年間兵役に就き、その時に人生が変わるような辛い経験をたくさんと、少しの良い経験をしました。そんなこともあって、この本のテーマや主人公が家から遠く離れたところで生活を強いられたり、上官から自分の攻撃的な側面を表に出すように促されるというストーリーに強く惹きつけられたんです。

    軍隊は心をかき乱される場所でした。最初は上官を喜ばせようとしたのですが、段々と幻滅して疑問を持つようになりました。しかしある時、エンダーと同じように自分自身で善悪の判断をしなければならないのだと気付いたんです。

    大人や上官、政府の意見は信用できないものだったので、私は自分自身で決めなければなりませんでした。自分自身で決めるということは、エンダーの旅の中でも最も重要な部分だと思います。

    ストーリーの中で、エンダーは最初はプログラムに残りたいと考え、上官を喜ばせ、彼らのために勝ちたいと考えます。しかし、段々と自らの考えを持つようになり、いつしか上官の考えを拒絶し、最終的に暴力と同情の気持ちの折り合いをつけます。

    もちろんSFは素晴らしいものですが、この映画をSFだからという理由で撮りたかったのではありません。単に悪人だったり善人だったりするのではなく、両親から遠く離れた辛い環境で大人になろうとしている少年、エンダー・ウィッギンというキャラクターが撮りたかったんです。


    ――原作に比べるとエンダーがより心優しいキャラクターとして描かれているように感じたのですが、それも監督ご自身の経験が関係しているのでしょうか?

    フッド:面白い意見ですね。それは意識的にはやっていません。我々人間は芸術作品を見る時に自分の経験を通して見ますよね。原作本を読んだ時、私の軍隊での経験がこの作品の捉え方に関して強く影響を与えたと思います。なので、映画にも自分が意識する以上に影響があったのかもしれません。


    ――映画化するに当たって、カットしたり、変更をせざるを得ない部分があったかと思いますが、どのような基準で判断したのでしょうか?

    フッド:ご存知の通り、原作ではエンダーが6歳の時からストーリーが始まり、13歳で終わりますが、それを映画化する場合には複数の役者を用意しなければなりません。しかし、エンダーは非常に複雑なキャラクターであり、観客に彼を理解し、共感してもらうために数年毎に役者を変えてはダメだと思いました。

    そのため、制作のかなり早い段階でストーリーの中での時間を圧縮し、一人の役者に演じてもらって、彼のバトルスクールでの激動の最後の1年に焦点を当てることにしました。また、大きな変更としては、エンダーの兄と姉がインターネット上の匿名フォーラム(ブログ)で政治的発言をして社会的影響力を獲得していくという素晴らしいサブストーリーが原作にはあるのですが、残念ながらカットせざるを得ませんでした。

    2時間の中で、もし別のキャラクターに時間を大きく割くと、エンダーを描ききれないと考えたんです。エンダーの悪い部分、いい部分、暴力、同情の気持ち、そして最後の決断を1年間で描くためにカットすることに決めました。

    別の理由として、1985年に刊行された本にも関わらず、インターネットとブログの登場を予見していたのは時代の先見の明にあふれる小説でしたが、現代では皆ブログをやっているし、子供たちがコンピューターに文字を入力してるシーンは映像的に面白くならないというのもありましたね。



    エンダーのゲーム

    ワイヤーアクションも頑張るエイサ・バターフィールド


    ――エンダー役としてエイサ・バターフィールドさんを選んだ経緯を教えて下さい。

    フッド:沢山の若い役者をオーディションしました。彼らの中には、エンダーの傷つきやすさを表現できる人もいれば、攻撃性を表現できる人もいました。しかし、エイサはエンダーの傷つきさと同時に、強烈な怒り表現もできる稀有な役者です。

    感情の表現だけではなく、今作では重力のない環境を再現するワイヤーアクションのシーンが沢山あるのですが、彼はそれも上手にこなすことができました。エイサを見つけられて本当にラッキーでしたね。



    エンダーのゲーム

    ハリソン・フォードとエイサ・バターフィールド


    ――名優ハリソン・フォードを宇宙に戻すことにも成功していますが、彼との撮影はいかがでしたか?

    フッド:彼は非常に地に足の着いた勤勉な人物ですが、一方でいつも不機嫌な人に見えるかもしれません。それは、彼は自分自身を仕事をこなす普通の男と考えていて、名声を心地よく思っていないからなんです。しかし、撮影現場ではとても熱心に働いて、若い役者たちを支えてくれました。

    撮影当初、彼はわざとエイサと若干の距離を置きました。そのおかげでストーリーにあった形で、エイサがハリソン・フォードの存在に圧倒されるなんてことがありました。そして、撮影が進むにつれ、エイサは身長が5センチが伸びるとともに心も成長していき、ハリソン・フォードに歯向かうシーンが撮ることができたんです。



    バトルルーム

    バトルルーム


    ――原作にあった様々なシーンをカッコよく映像化していますが、一番撮影が大変だったのはどのシーンですか?

    フッド:今作は大きく分けると宇宙ステーション内のバトルルームでの戦いシミュレーション上の艦隊戦の2つが派手なシーンです。

    バトルルームに関しては、原作では黒い壁の中で子どもたちが模擬戦をするわけですが、せっかく宇宙ステーション内でやってるんだから、宇宙が見えるようにしようと決めて、ガラスのドームにしました。そこから地球や月が見え、まさに宇宙の中にいるという雰囲気を出したんです。それを作り上げるのが大変でしたね。

    シミュレーションのシーンは、原作ではコンピューターでビデオゲームをやるわけですが、それはあまり映画向きではないと思ったんです。なんといっても映画のラストの大きなシーンとなるわけですから、バトルルーム以上のものでないといけません。

    私は自分の子供たちと一緒にプラネタリウムへ行った時に、ハッと気がついて、戦闘を大きな空間に映し出すというアイディアを思いつきました。こうして、エンダーがプラネタリウムの真ん中に立って、スマートフォンを操作するように艦隊を操るというシーンが生まれたんです。

    オーケストラの指揮者にも影響を受けていて、巨大な空間の真ん中で力強く手を振り指揮をすることで、実際の戦闘の中心にいるかのようなシーンを作ることにしました。

    実際、これは難しかったです。普通の映画であれば、主人公が実際戦って危機に瀕するわけですが、ビデオゲームをやってるシーンであり、心理面を除けば危険がありません。そこで、戦艦を彼の周囲に映し出す形にして、よりビジュアル的な臨場感を作り出しました。これを作るのはバトルルーム以上に難しかったですね。



    シミュレーション

    艦隊戦のシミュレーション


    ――監督はビデオゲームで遊ぶことはありますか?

    フッド:私は1963年に南アフリカで生まれて、当時はビデオゲームはもちろん無く、テレビもありませんでした。13歳になるまでテレビを見たこともなかったんです。そんなビデオゲームを知らない世代なわけですが、子供ができてからやるようになりました。私は『アングリーバード』のようなシンプルなゲームで遊びます。

    でも、暴力的なゲームはやりません。ゲームと現実との境目にどうも混乱してしまうんです。ゲームはより現実的に見せようとしていますが、それでいて現実からは切り離されていますよね。一方で、現実の戦争ではドローン(無人機)が戦い、その様子をCNN(アメリカのTV局)で放送されるようになっています。いったい何が現実で何が現実ではないのか? 我々はゲームの中で暴力を振るって問題はないか?  私にはわかりません。

    ドローンを使った戦争も暴力です。ジョージ・ブッシュ政権がイラク戦争を仕掛けた時、彼らはビデオゲームで遊んでいるような感覚だったのではないでしょうか。しかし、あれはゲームではありません。現実です。

    ビデオゲームで遊ぶのと、現実の戦争をTVで見ることの境目に私は混乱しています。ゲームと現実の境目がおぼろげになってきているように感じているんです。これは非常に興味深いことでしょう。主人公がゲームで勝ち続けることを要求される『エンダーのゲーム』にも重なることです。


    ――続編については考えていますか?

    フッド今のところはまだなんとも言えませんね。原作が『ハリー・ポッター』や『ハンガー・ゲーム』のような(主人公が少しずつ成長していく)書かれ方はしておらず、今作の直接の続きになる小説『死者の代弁者』では、エンダーがかなり年を取り、ほとんどのキャラクターが一新されています。

    原作は素晴らしいものの、映画制作の面で言えばキャラクターの一新はかなり難しく、もし作るとしても、スタジオはキャラクターを維持しようとするかもしれません。あくまでスタジオの判断次第ですね。


    映画はボリュームのある原作小説をそのテーマを損なうこと無く、2時間という短い時間に巧みにまとめ、熱いシーンをよりビジュアル的にカッコよく再現していて、原作ファンの私としてかなりグッと来る作品でした。特に艦隊戦が素晴らしかった。ちゃんと説明などはあるので、原作を読んだことがなくても大丈夫ですよ!

    エンダー・ウィッギンを演じるエイサ・バターフィールドがまさにはまり役。エンダーというキャラクターの複雑な部分を上手に演じきっていたところも大変素晴らしかったです。彼の今後の活躍にも期待!

    『エンダーのゲーム』は2014年1月18日(土)全国公開。

    配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
    (c) 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.


    『エンダーのゲーム』公式サイト

    傭兵ペンギン

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