小沢一郎代表 就任挨拶


 

ただいまは、ご出席の皆様の総意をもって、新しい出発にあたって党の代表ということでご推挙賜ったわけでありますけれども、この皆様のご推挙を引き受けるに当たりましてや、私自身、何人かの方々からお話をいただきましたときに、非常に考え、どうすべきか、ということを悩みまして、今回、このような皆様のご厚意をうけるに当たりましてもなお、心の中に、自分が代表に就任してはたして、皆様の為にそして国民の為にあるいは日本の国の将来の為にいいのだろうか、と自分自身の心に問いかけている状況でございます。


その理由は、一つは昨年の総選挙におきまして、いろいろな原因があったといたしましても、本当に多くの仲間・同志を失ってしまったことです。当選してもらうことができませんでした。そのことにつきまして、自分自身として本当に心から強い責任を感じております。そういう意味におきまして、形の上ではもちろん未来の党に合流し、嘉田代表のもとで戦ったわけでありますけれども、自分の皆さんに対する、同志に対する協力の力添えが十分できなかったという思いがいっぱいでございます。そういう自分自身の気持ちが一つ。


もう一つは、私はいろいろと「表に立て」「表に出ろ」「先頭に立て」と多くの方から言われております。自分自身、なにも今までもこれからも陰に隠れているつもりはありませんけれども、ただ私が代表として、あるいは先頭に立って政治活動を行えば必ず、皆さんもご承知の通り、過去の3年半の権力の濫用により私自身の政治活動は制約された3年半でありましたけれども、それに象徴されるような意図的な批判や誹謗中傷にさらされるということです。私自身は我慢すれば済むことですけれども、そのことによってみんなに迷惑をかけるのではないかと、そういう思いを大変強く持ち続けております。


そのようなことで、本当に今日に至るまで、何人かの方からそのお話を聞くたびに思い悩んで参ったわけであります。しかしながら今申し上げましたことは、すでにこの会場においでの皆さんがご承知の事であり、そのことをわかった上であえて、自分に代表を命ぜられたことなのだろう、とそのように考えまして、ここまで皆さんからご支援いただき、信頼いただき、ご推挙いただく以上は、自分も非常な決意をもってその代表の責任を果たさなければならない、と今本当に皆さんのご厚意を直接いただいて、その決意を新たにいたしました。この身は力の及ぶ限り全力で、皆さんと共に、国民の為に、日本の国の為に頑張ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


 代表にご推挙いただき、自分も皆様の前で決意を申し上げましたので、この機会に党の代表として若干自分の思いを申し上げたいと思います。


 政党の命はやはり政策でございます。もちろんまだ日本の風土の中では、論理的、合理的な政策とその説明が必ずしも素直に選挙結果に反映するということには、まだ残念ながら至ってはおりません。しかしながら私どもはあくまで、何と言われようとも、我々が国民の皆様に約束した、そして我々の信念に基づいた政策を、その大義の旗をあくまでも掲げていかなければならない、それが政党のあるべき姿だと思います。


 この政策の基本は、私があえて今申し上げるまでもなく、先般の選挙においても、そしてまた国民の生活が第一という我々の基本の原則、あるいはまた、さらにもう少しさかのぼれば、政権交代の時に国民皆様にお訴えした、そして約束したその原点に戻れば、おのずから政策は決定されるものと、私はそのように考えております。


 我々はあくまでも国民の生活、命と暮らしを守っていく。このことを前提といたしまして、政策を改めて生活の党として訴えてまいりたいと思います。今日は基本政策の発表もあるわけでございますが、この基本の政策を、できればぜひ広範な国民皆さん、そして有識者の皆さんのご意見、ご論議をいただいて、さらに質的に良いものを作り上げていきたい。特にあと半年で参議院の選挙がありますので、できるだけ早急に、そしてより良い政策を国民の皆様に改めて申し上げたい、そのように考えているところであります。


 それからもう一つは、政党そして民主主義のまさに基本、依ってたつところは、主権者の総意。主権者の総意で示されるものは選挙であります。その意味で今申し上げましたように、参議院の選挙が6か月後に、半年後には通常選挙が行われる予定になっております。


この参議院の選挙は、今までの選挙戦に増して、本当に日本の将来にとって大事な大事な、行く末を左右する選挙戦だと思います。昨年の総選挙で自公は衆議院で3分の2の議席を獲得いたしました。もし夏の参議院選挙で、自公と、そして自公に連なる勢力とが一緒になって、結果として同じように、参議院においても議席を占めるということになりますと、本当に、その場その場でやりたい放題の政治が行われるという可能性が非常に強い。もちろん国民にとっては何党であろうが、民主党であろうが自民党であろうがどの党であろうが、国民のために良い政治をしてくれればいいわけでありますけれども、今日の新しく誕生した安倍内閣、そして自公の状況を垣間見ておりますと、非常に、日本の将来にとって危うい、危険な要素が見えてきております。


もちろん単純に右とか左とかということではありませんけれども、それぞれの政党、あるいはリーダーの理念、信念に基づいて、その論理的結果で結論が出されるものであれば、それはそれなりに、国民も我々も含めて、意見は違ってもそれなりに理解することができるわけですけれども、今日の状況をみると、そのような理念やあるいはしっかりとした論理や合理性というものは感じられません。その時の思い付き、あるいはその時々の自分の感情でもっていろんな行動をする、という嫌いが非常に強く感じられます。


今日は具体的にいろいろなことを申し上げる場ではございませんけれども、俗に言われる憲法改正だ、国防軍だ、なんだかんだという話がありますが、特に、最初に黙祷いたしましたアルジェリアでの問題が発生いたしました。国際情勢を今日は言う話ではありませんが、こういうような不安定な状況は、私は今後もさらに続くのではないかと思っております。


そういう中で、自衛隊の派兵というのがまた言われるようになり、マスコミの場でもそれが当然であるかのごとく議論がなされております。日本人の生命やあるいは日本人の権益が危うくなった時に、軍隊を派遣するということは、まさに海外派兵そのものでありまして、これはあらゆる戦争というものも、そういう御旗の下で軍を外に派遣してきた、それが戦争の大きな理由であります。


私どもはもちろん、私どもの、国民の生命、財産を守ることをしっかりと行動しなければなりませんけれども、国際問題が一国の軍事力によって解決するということは不可能であります。そしてさらに紛争を解決するということは過去の歴史を見ても、そしてまた最近の、イラクだアフガンだどこだここだということを考えてみましても、世界最強の米軍を何万投入しようが民を安定させることはできない、ということが証明しているものであります。


私たちはそういう意味で、第一次世界大戦後には国際連盟、そして第二次大戦後には国際連合を世界の総意として作ったものであります。まだまだ国連なんてあてにならない、機能しないということをおっしゃる方もおります。もちろん十分でないことはその通り。北朝鮮の核実験の非難決議もようやく、妥協の産物でできたような状況でありますから、十分な機能を発揮できないのはその通りです。しかしながら私たちは、より多くの国民皆様の、そして地球上の皆さんの理解を得ながら紛争を解決し、平和を維持しなければならない。そういうことに考えを致せば、当然この単独の海外派兵というものが、どういう意味を持つものか当然わかるはずでありますけれども、私はそういった議論がメディアの間でも全くなされずに、ただ人質になって、日本人の命が失われた、ということのみで、海外派兵ということに道を開くような議論というものは、非常に私は、基本の平和の理念にも反しますし、また私どもが国際社会で生き延びて、繁栄し平和を保っていく上においては、全く短絡的な議論であると思います。


いずれにいたしましても、ちょっと横道にそれてしまいましたが、そういうような中での現在の政権と、そして参議院の選挙であります。従って私どもは、今のような政治ではだめだという多くの人々と力を合わせなくてはなりません。


しかしながら、その力を合わせる連帯連携の基本はやはり政治の理念であり、基本の政策であると思います。そういう意味で私たちは、我々が「国民の生活が第一」という原則に基づいた政策を、大義を最後まで掲げ、その共通する、共有するお互いのみんなでもって、なんとしても参議院選挙においては、今言ったような無茶苦茶な、その場その場の思い付きの政治をさせてはならない、そのための力を国会内において、参議院内において維持していかなくてはならない。そのように考えております。


当面、私どもの党で、同志といたしまして次改選期を迎える6人の現職議員がおります。北から申し上げますと、青森の選挙区、平山幸司君と、新潟の選挙区、森ゆうこ君、そして広島の選挙区、佐藤公治君。この3人が選挙区の候補者として選挙戦に臨むことになります。それからまた比例区では、はたともこ君、広野ただし君、そして藤原良信君。これまた3人の現職の候補者が夏の参議院選に臨むことになっております。


もちろん現職以外にも、政治活動をともにしたい、参議院選挙にも参加したい、という方もお見えになっておりますので、その皆さんの中からも候補者を決定しながら、一緒に力を合わせて頑張っていきたい。そのように考えているわけであります。


いずれにいたしましても、本当に小さな所帯になってしまいましたけれども、考えてみますと、我々も、そして民主党もちょうど合併前の状態に戻ったというような現状でございます。そのことを思うと、よくこの状況の中から政権を取るまで頑張ったな、という思いを致しておるのですけれども、まさにそのことを考えてみれば、今日の現状からスタートしたそもそもの民主党政権でしたから、私たちが心を新たにして、本当に国民皆さんの、そして日本の国の将来を見据えて考えた時に、もう一度、国民の皆様のための、「国民の生活が第一」という基本原則、基本理念に則った政権をもう一度打ち立てたい。


皆様のご推挙で、こうして自分を顧みず代表をお引き受けしたからには、今申し上げましたこの大目標の決意を、改めて自分自身で心に刻み、そしてまた皆様の前で申し上げまして、私の代表就任のご挨拶といたします。誠にありがとうございました。