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小沢一郎代表講演 第3弾 「経済・雇用政策のあり方について」
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小沢一郎代表講演 第3弾 「経済・雇用政策のあり方について」

2013-12-01 09:28

    2013年11月28日 総合政策会議

    11月28日、総合政策会議での小沢一郎代表講演第3弾を開催いたしました。「経済政策」、「雇用政策」のあり方について語りました。

    ○畑浩治 総合政策会議議長

    本日は小沢代表から、経済・雇用政策のあり方についてお話を受け賜りたいと思う。ある意味では、我が党の一番の中枢であるべき政策だろうと思う。

    消費税・増税に反対し、そして生活をしっかり立て直すという意味で、私達は国民の生活が第一を作り、今、生活の党に至っている。

    そして、小沢代表のお考えは、どんな崇高な理念も現実の生活を良くすることに結びつかなければ意味がないということであり、昨今の安倍政権は生活よりも弱肉強食。そして、秘密保護法の強行採決に近い可決もあったが、ちょっと危険な、生活を離れた、国民が求めていない、そういう方向に行っているのだろうと思う。

    私達は、今一度、そういうイデオロギーではなく、政治の原点に立ち返って、生活とはどうあるべきか。政治とはどうあるべきか。そのための政策はどうやっていくか。良い機会だと思いこの企画を実行する段取りを整えた。

    ○小沢一郎 代表

    では、なるべく簡潔に申し上げる。

    日本経済は、ご承知のように戦後、輸出の奨励・振興・拡大という中で、経済の復興と高度成長を遂げてきた。
    そういう日本の経済政策の基本方針を、今日の色々な状況から考えてみて、そろそろ私は本当に、輸出に過度に依存する経済の政策を転換しなくてはならないのではないかと思っている。もちろん、輸出が必要ないという意味ではない。輸出に過度に依存する経済体質から、やはり、内需を中心とする低成長でも安定した経済政策に舵を切っていくべきではないだろうかと考えている。

    輸出奨励ということで今なお、自動車と、輸出競争力のある大きな産業は輸出で伸ばしているが、現実には現地生産等々で日本からの製造そして輸出というのはパーセンテージが徐々に徐々に落ちてきているという現状だと思うが、いずれにしても輸出奨励ということで、例えば我々が問題にしている消費税は、全て輸出企業に還付されるということになっているし、また、色んな形での輸出奨励策が取られている。
    こういう輸出に過度に依存する経済体質から、内需中心の安定した経済に向けて、色んな政策の舵を切らなくてはいけないのではないかと、そう思っている。

    それから、内需の拡大をして安定した成長を維持していくためには、次の項で述べたいと思うが、何と言っても個人消費の拡大ということが最大の問題である。

    3番目には、地方の振興。地方経済の活性化・振興ということが、非常に、単なる地方の活性化だけではなく、日本の全国の経済の活性化につながる。これはまさに、我々が主張している地方分権・地域主権が実現して初めて現実のものになるだろうと私は思う。

    4番目は、物づくりの重視の政策を徹底すべきだろうと思う。アメリカ経済が破綻し、リーマン・ショックに見られるようなマネー・ゲームのような経済というものは、所詮長続きはしないと思う。したがって、物づくりというのを軽視して、マネー・ゲームの中で利益を上げようという考え方そのものが、私は間違えているのではないかと思っており、これはやはり、最も中小企業を多く抱え、しかも中小企業の中に最も技術力を持っていると言われる日本経済の中においては、これを活かすべきである。

    それから、最近どんどん、どんどん熟練技術者が減って来ていると言われている。そして、また特に高齢の技術者が退職する。そういう中で、技術を継承する人たちがどんどん少なくなっている。そして、高齢の退職者・技術者はむしろ韓国へ行ったり中国へ行ったり、他へ行って技術指導にあたるというようなことさえも、現時点では非常に多く見られる状況だと思い、こういう熟練工というか技術者を支援し育成していく。
    高齢の技術者の問題、高齢者の問題については、また後で雇用のことで申し上げるが、日本の高度な技術、特に中小企業で持っている世界的にも通用するような技術が、日本の場合はかなり多く中小企業の中で維持されているのが現状ではないかと思っている。

    それから、物づくりでも大量生産という中で、すべてが画一的なものになったけれども、地域固有の伝統に基づく技術等を見直し、そこから新しい物をつくり出していくというようなこと等を、色々考えていくことによって、内需の拡大を図っていくことが必要になってくるのではないかと思う。
    これは、東京一極集中と、競争力のある大企業をどんどん、どんどん育てていくという考え方とは、まったく違う視点からの政策になるわけだが、私はそういった考え方の転換、特に今日の安倍政権のやり方を見ていると、一層その感を深くしている。

    日本の経済を若干掘り下げてみると、ご承知のように日本のGDPの6割強は、個人消費である。アメリカの場合は7割である。そして、日本の個人消費6割強、その公共投資は4%程度である。民間設備投資が10数%、その他が20%という形。いかに個人消費の割合が大きいか、また、大事かということが、日本において、そしてアメリカにおいてはなお一層その傾向が著しいということである。
    だから、経済を成長・維持発展させていくためには、個人消費の安定した拡大が一番大事だということになる。
    個人消費は、どのようにすれば安定して上向いていくだろうかということだけれども、その一番は、まずは雇用の安定だと私は思っている。

    今、小泉政権以来、どんどん国民の所得は減っている。あれ以来10年ちょっと経ったか。多分10%以上、国民の所得、収入は減っていると思う。昨年もたしか、減ったという報告、統計だったと思う。
    今年、「アベノミクス」で騒がれているけれども、私は、結果としては、今年もやはり増えないのではないかというふうに思っている。
    そのかなりの要因は、やはり、雇用の不安定化だと思う。統計的に既に、39点何パーセント、約40%が非正規の雇用ということになっている。
    この、雇用についての問題も後で別に申し上げるが、個人消費の拡大にはやはり雇用の安定ということが大事だと思っている。

    それから2番目は、再配分の仕組みを考えなくてはいけない。小泉さんも安倍さんも、競争力のある強い企業をどんどん、どんどん大きくして、それが儲ける、思う存分儲けてもらう、そして、儲けた分を国民に配分すれば皆も良くなるという論理だったけれども、今さっき申し上げたように、ずっと国民の収入、所得は下降線を辿り、落ちている一方である。
    安倍さんが経団連に行って賃上げを頼んだなんて言う話だが、別にこれがいけないというわけではないけれども、私は、この再配分について、私企業の賃金を法律で以って強制するということはできないけれども、例えば税制上や、あるいは奨励金等の活用によって、再配分・賃金への支出を高めるということは可能だと思う。

    現実に、例えば高齢者を雇ったりあるいは障害者を雇ったりした場合には、国が奨励金を出すという制度が現実に為されているところも、他の国でもある。だから、こういう間接的な再配分を促すということを、間接的な政策によってやっていくということは、充分私は可能だと思っている。

    それから、もちろん直接的に個人の可処分所得を増やすということになるわけだけれども、これは、消費税の話しとも関連してくるのだが、日本の場合は社会保険料を含めると、たしか7割以上が直接税である。直接税は、有無を言わさず徴収される。選択の余地はない。だから、その意味で直接税から間接税へ移行しながら、直間の比率を按配良くしていくという政策は必要である。

    ただ、今日のように、税やあるいは税に類似する社会保険料等々、あるいは年金を減らす、あるいは(支給開始)年齢を高めるというのも同じことだけれども、こういうことを減らす努力をまったくしないで、消費税の収入だけを上げることによって、結果として直間比率の是正がなされるみたいな、おかしなことをやっていたのでは、税負担だけが重くなるから、可処分所得はもちろん減ってしまうし、個人の消費に回ることはなくなってしまう。

    私も、消費税について、前から言ってたことはその通りだが、最初の時は、若干所得税も安くなったが、所得税・住民税等を半分にすると、18兆円の減税ということを唱えた経過がある。それだけの大減税をすると、確かあの時の計算では、ほぼ直間比率は五分五分に近い状況になったと思う。
    だから、消費税というのは税の面からのみ見ると、やはり直接税を大幅に減税し、選択可能な余地のある間接税をつくるということは、理に適ったことだとは思うけれども、今のやり方は、税負担のみを重くするということで、到底受け入れられないことだと思っている。

    それから、もう一つは、やはり年金制度の充実・安定というのが、絶対必要なことだと思う。今、若い人たちに意識を聞くと、「いくら掛け金掛けても、自分たちの時に年金はもらえっこない」と、「バカバカしい」という類いの意識が非常に強くなっていると言われている。
    私たちは当初、民主党では、この年金問題から政権への階段を上がっていったわけで、この年金のいい加減なずさんな厚労省のやり方、最近もまた何千億どこかに行ってしまったという話もいっぱいあるし、「消えた年金」は未だに、確か半分ぐらいしかここまで経っても分かっていないのではなかったか。確かそうだと思う。
    そういう、いい加減な中で、年金の受給年齢を「金がない」ということで上げる、掛け金を上げる、というだけでは、将来の保障が非常に不安定だということから、結局消費に回るお金は少なくなってしまう。ということで、直接的な要因ではないけれども、年金制度の充実・安定ということは、非常に個人消費に大きな影響があるのではないかと、私はそう思っている。

    次には、地方分権と経済成長ということだけれども、地方への権限・財源の移譲ということが、我々の「地域主権」とネーミングをした、最大の政策の一つだったのだけれども、これによって例えば財源が、霞が関の箇所付け等々の余計なことを省いて、地方に自主財源として与えられるということになれば、その地域で、先ずは金をどうやって使うかというソフト面の活動も作業も必要になってくるし、金があるところに色々な企業を興すということが当然出てくると思う。
    そして更には、さっきもちょっと言ったけれども、あまりにも画一的な今日の中で、地域、地域の伝統的な文化・技術を活かしたものが大きくなってくるのではないか。そう思っている。

    それから、権限の面では、地方での同じ企業でも、興すというよりも普通の企業だけれども、企業の立地がコストの面で、例えば土地・人件費等で地方が有利であることは間違いないわけなのだから、それが非常に促進されると思う。
    欧米では、世界的な大企業がその首都にあるのではなく、地方に本社があるという例が沢山ある。
    なぜ、日本ではないのか。土地も労働力も安いはずなのに、なぜか地方ではなくみんな東京に本社を移す。大阪でさえ大企業の本社はほとんどないそうだ。今や全部、東京である。

    ということは、権力が、権限が全部霞が関に集中しているからである。だから、これを地方に移すことによって、企業は有利な地域に自由に立地できることになる。
    それによって当然、若年層の雇用の拡大、地域への定着等々が促進され、地方の活性化につながる。そうすれば、担税力もついてくる、ということになる。

    もう一つの利点は、地方で企業が色々興る。あるいは今まで大都会にあった企業が地方にその拠点を移すということによって、雇用の場が非常に拡大される。増える。
    ということは、私の論理から言うと、農林漁業の安定的な継続・維持を図れるというふうに私は思っており、その意味で非常に、この地域の活性化と全国の均衡ある発展というものが、我々が今想像する以上に図られてくると思う。
    また、権限が地方に行けば、輸出入の地方の物産を直接地域の港湾から海外へ出す、あるいは海外のものを直接地方の港湾で入れる。これは、税関、全部、各地にいっぱい作ればいいということになるけれども、そういう地方官庁の出先という意味ではなくして、特に問題のあるもの以外は地方でもそういった権限も活用することによって、かなり大きなメリットがあるのではないだろうかというふうに思う。

    それから、雇用の問題だが、やはり一番は非正規社員の増大である。40%と言ったけれども、これは本当におかしな話なのだが、安倍内閣の規制改革会議「雇用のワーキング・グループ」というものがあるのだそうだけれども、ここで積極的に(非正規雇用を)促進している。正規社員をほとんどみんな、非正規の社員にした方がいいということで、政府がそれを推し進めているということであるが、これは単に雇用の不安定ということではなくして、雇用の不安定は社会の不安定につながる。
    なぜならば、生活が不安定になるからである。だから私は、非正規社員の割合をクオータ制を導入して、例えば全社員、従業員のうち非正規は何%。逆に言えば正規社員は何%、何10%なければならない、というぐらいのものをしないと、このままだと本当にみんな非正規の社員になって非常に不安定になると、私は思っている。

    それから、非正規社員というのは、全面禁止というわけにはいかないと思うが、この非正規社員の賃金とか、社会保険の問題とか、待遇の改善というのも同時に図っていかなくてはならないだろうと思う。
    2番目は、就業年齢の拡大ということ。その1つは定年だけれども、定年の延長。それから更にその上の、高齢者の就業の仕組みを考えるべきだと私は思っている。
    これは、私の持論だけれども、今、社会保障関係費の増大であっぷあっぷだとどこの国でも言っているが、日本でもそれを理屈にして、理由にして消費税のアップもやるわけだが、私どもも、そろそろ後期高齢者の域に達するところだけれども、歳をとれば、どこか痛くなったり悪くなったりするのは当り前の話で、結局それで何もやることが無い、生き甲斐が無い、それで毎日病院に通うということになって、医療費のもの凄い増加につながる。高齢化が進めば進むほど、この老人医療の費用は莫大なものになるという一般論の話だけれども。

    これは、高齢者が一つの就業の仕組みとして、介護やなにかにお互いに順番にその仕事に当たろうというものがある。医療のことは、今日取り上げる問題ではないけれども、とにかく色んな形で。例えば四国の徳島で、山の中で葉っぱばっかり売って、じいさん、ばあさんが何百万の収入をみんな得ていると。それで、みんな仕事をしているから(元気で)、仕事といっても木を植えて葉っぱ摘む仕事だけれども、それで医療費はほとんどかからない。いいことずくめの村か町かがある。
    それは、本当に変人みたいに言われた人が一生懸命になって、全国の料理屋を歩いてツマの葉っぱ、これの(販売の)話しを全部つけて歩いて、畑やなにかに木を植えて、その葉っぱを出荷する。それで皆な何百万の収入を、それぞれ手に入れるということで、非常に面白いアイディアと地域興し、老齢対策だと思う。

    私の岩手県でも、今はそうではなくなってしまったけれど、沢内村という非常に雪深い、2メートルも3メートルも雪が積もる奥羽山脈の中の村で沢内三千石という歌がある。そこで、老人に、高齢者に色んな仕事をさせている。だいたい地場の伝統技術や伝統的な栽培やら、そういう類いのことだけれど、どんどん、どんどん仕事をさせた。それによって、国保がまったく黒字になった時期があったのだ。今、国保の負担というのは大変であろう。

    やはり、「老人医療」と言うけれども、これは、人生、生き甲斐である。私の考えだけれど。生き甲斐がなくなって、自分が家族のためにも、地域のためにも、お国のためにも何の役に立たなくなる、何も役に立てないというところに、あちこち痛くなったり、病気になったりする。やはり、死ぬまで生き甲斐を持って働くということによって、私は医療費の解決になるし、また、年金の問題も、自分がそうやって働くということになれば、かなりの部分が緩和されてくるというふうに思う。
    社会保障・医療・年金は、銭の問題、金の問題ではないと私は思う。全ての国民に、特に高齢者に生き甲斐を与えることだと思う。今日のテーマではないが。高齢者の就業の仕組みというものを考えたら、知恵を出したらいいと思う。

    それから、もう一つは女性の雇用である。どんどん若い人が減っていくから、女性の労働力というのは非常に大事になってくる。最近、どんどん、どんどん女性が進出して男があぶれているけれども。それはやはり、一部に限られた範囲だから。そうではなくて、一般のほとんど多くの人たちも、女性の就業の仕組みがあったらいいし、それは労働力不足と今よく言われるけれども、それを補完することにもなる。

    自由党の時だったか、新進党の時か、民主党のマニフェストだったか。「子育て後の再就職」という言葉を使った。そうしたら、エライ、女性から怒られてしまった。何も、子育て後の(再就職の)必要はないと。最初から就業の場を与えればいいではないかという反対意見があったけれども。それはそれとして、それを否定するわけではないけれども、大多数の場合、ある意味で日本の場合は特に、一般的にはやっぱり母親が子育ての主たる役割を担うということになると、子どもにとって親の存在というのは必要だから、手がかからなくなった時点においてまた再就職ができるということ、これも一つは、クオータ制を作ってもいいと私は思っている。働ける女性をもう一度採用することもあるのではないかと思う。

    それからもう一つ雇用の問題は、日本の雇用というのは、大きな特徴は「終身雇用」と「年功序列制度」である。
    「年功序列」というのは、かなり閉鎖的な社会ではまだ許される余地があるけれども、今日のような社会の中では、「年功序列」はやはりマイナス面が非常に大きいと思っていて、これは今もう、だんだんなくなって来ているけれども、それでも、役所等ではまだ強く残っている。

    これは別として、もう一つの「終身雇用」という仕組みは、私は一概に否定すべきではないだろうと思っている。
    今、全部非正規になってしまえば、「終身雇用」もヘチマもなくなってしまうわけだけれども、「終身雇用」制度のプラス・マイナスを考えると、かなり、プラスの面が企業にとっても国家にとってもあるのではないかと私は思っている。
    それは、雇用の安定と、さっき言った社会の安定。そして個々のことを考えると、企業あるいはその組織に対するロイヤリティーの強さ。そういうようなことを考えた場合には、やはりこれは、日本的な、ある意味で雇用のセーフティネットなのである。

    非正規に全部なってしまったら、何時でもクビになるという話だから、このセーフティネットの、雇用での考え方を日本人が知らず知らずのうちに生みだしているのが「終身雇用」の制度だと思うので、この考え方はある程度活かしていかなくてはいけないのではないかと思っている。

    ただ問題は、この雇用の中で、この間、公務員のことで言ったけれども、大多数の一般の人と、それから俗に民間では総合職と呼ばれている、役人ではキャリアと呼ばれている、これらのところにおいては、私は競争原理を導入していくべきであろうと思っている。
    だから、これは、最初から「お前はノンキャリ、お前はキャリア」という、試験の成績で決めるというやり方を廃止すべきだと、私は思っている。
    そして、民間でも役所でも、管理職というか役所で言えば指定職というか。そういう地位を望む場合は、個人の希望と選択と能力によってやって行く、という仕組みを取り入れられたら、一番いいのではないかというふうに思っている。

    いずれにしても、経済の成長には、個人消費が一番大きな要因だけれども、その個人消費を支えるのは、やはり、雇用の安定と生活の安定ということになるだろうと思っているので、その切り口から、色んな問題を考えていけばいいのではということを、今日は申し上げた。

    以上。

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