ども! イケダミノロックです!

 高田馬場ゲーセンミカドでインカムNO1のALL.Net P-ras MULTI配信タイトル『ギルティギアxrd』は全部で20台以上稼働してる。ALL.Net P-ras MULTI発売当初、ミカドの資金力でこれだけの数を揃えるのはまず不可能だった。じゃあどうやって揃えたの? その理由には、とある大コケゲームタイトルが関与している。

 2008年から11年間、スタッフの「じょにお」がミカドの『ギルティギア』シリーズのコミニティを牽引してきた。当時のタイトルはNAOMI基板でリリースされた『ギルティギアAC』。2009年には主戦場を新宿ミカドから高田馬場ミカドに移し、コミュニティはどんどん拡大。対戦台設置台数も4台、6台、8台……と定期的に増設され、2011年には全12台の対戦台が稼働。今と変わらず毎日のようにじょにおによる企画が展開されていた。

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 2012年の春くらいであろうか? SEGAよりALL.Net P-ras MULTI基板が発表。今後『ギルティギア』シリーズはHD化及び、レベニューシェア(課金)方式で配信リリースされる流れになった。この時点ですでにタイトーのNESiCAxLiveが稼働・展開していたため、業界的にこの流れは必然であるが、前年の東日本大地震で売上に壊滅的ダメージを受けたミカドのような貧乏ロケーションには由々しき大問題となる。

 じょにおが牽引してきた『ギルティギア』シリーズの売上はミカドにとって生命線。しかしこれらをキープするために2012年9月発売のALL.Net P-ras MULTIを一度に12台用意するお金はないし、課金によるプレイ料金の値上げ(50円から100円へ)にお客さんがついてきてくれるのか? など、さまざまな問題と向き合わなければならない。震災時に株式会社INHは融資の支払いが滞り、一度パンク寸前に陥っている、借金すらできない状況だったのだ。

 ミカドの売上の心臓部である『ギルティギア』全12台分の買い替えが目の前に迫る……まずは資料をもとに試算。
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 初期導入費用は1台あたり19万円。つまり19万円×12台で228万円だ。

 うん、無理!!

 あの当時、そんな金どうやっても捻出できません(笑)。

 しかし、最初に稼動する『GUILTY GEAR XX Λ CORE PLUS R』は完全な新作ではなく、4:3の既存筐体で問題なかったのはラッキーだった。

 ひとまず俺はマックジャパンさんに相談し、レンタル台での対応に動き、2台(4画面)分の設置の約束をとりつけた。俺のほうは、CAVEさんの基板やらミカドの在庫基板を売りさばいて、なんとか2台。これで計4台のALL.Net P-ras MULTIを確保。

 しかし、もうこれ以上は無理だ!! どうやったって金はないない袖はふれない!!

 そこでじょにおに相談。

俺「すまん、最初は対戦台4SETだ(※しかも2SETはレンタル)。がんばって少しづつ筐体を増やす……」

じょにお「わかりました、大丈夫っすよ!」

俺「あと、1プレイ50円では運営できない」

じょにお「わかりました」

俺「大会の際、掛かった従量課金(試合数×60円)をいつも控えてほしい」

じょにお「えっ、大会にも課金が!?」

俺「うん。参加費を上げてくれ」

 ……こうして高田馬場ゲーセンミカド受難の時代が訪れた。

 本来、新作ゲーム導入した際に、そのタイトルの売上がまるまる現状の店舗売上にオントップで乗り、店全体の売上が底上げされることが理想的な状態だ。しかし、この手の格闘ゲームのバージョンアップは、初動こそいつもよりインカムは上昇するものの、今までのプレイユーザーが移行するだけで、投資に対してインカムの上げ幅は非常に少ない。現状を維持するために「買わざるを得ない」だけだ。

 ゆえに、今まで12SETで稼動していたギルティコーナーが3分の1に縮小。伴って売上も単純に3分の1……いや、従量課金の追加でもっと低くなる。2SET分の支払いだってキツイのに、今後ALL.Net P-ras MULTIや『ギルティギア』がHD化したときに備え、16:9筐体を買い足していかなければならない。

 いやぁ、無理じゃね??

 俺はこのとき本気で閉店を考えた。

 一方そのころ(2011年秋)、バンダイナムコからとんでもないゲームが発売された。

 その名も『鉄拳タッグトーナメント2』だ!!

<DX KIT>
ノアール筐体×4
基板×2
ライブモニター×1
計418万円

<PCB KIT>
基板×1
計69.8万円

 こいつが、こいつが後にミカドの運命を変える……!!!!

 ALL.Net P-ras MULTIの登場によって一度は閉店をも考えたミカドだったが、じょにおだけに『ギルティギア』のあれこれを負担させていた俺が今までが間違っていたと思い、「『ギルティギア』になんざもう頼らねぇ!」と、課金のないMVSやCPS2タイトルで「超人五輪」「ストリートファイターカーニバル」「シューティングゲーム実演」などの企画を寝る間を惜しんで畳み掛け、ギルティコーナーが縮小した分の売上をなんとか補填していく。2012年は、なりふり構ってる状況ではなかったのだ。

 まずはこの資料を見てほしい。

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 じつは前々から告知されていたが、今後ALL.Net P-ras MULTIはソフトをDVDインストールではなく、配信供給されるALL.Net P-ras MULTI version2として生まれ変わる。そのシステムバージョンアップは有償であり、1台あたりの導入トータル額が19万円から、資料の値段を足した37.6万円に跳ね上がる。セガが未完成で商品を売ったのか、ロケーションへの温情(2回の分割払い)なのかはわからないが、結局は従量課金付きの高額基板を我々はつかまされることになった。

 こうなってくると、バージョンアップに付き合いきれないオペレーターが必ず出てくる。ましてや、この時点で前のバージョンとソフトに違いがないし、既存3タイトルは全国規模でみればヒットしているゲームではない。ミカドのように日々大会だ、配信だと盛り上げてるような店舗ならいざしらず、あれから半年以上が経過し、普通のロケなら売上はたかがしれている。そこにきて追加投資はありえない話だ。

 これはチャンスとばかりに、俺は当時中古業者に勤めていた元バーチャの鉄人であるキャサ夫に相談・結託し、ALL.Net P-ras MULTIをバージョンアップしない店舗の情報を集め、中古で買い取る動きを開始。

 いやぁ、出るわ出るわ、中古基板の山(笑)。

 ALL.Net P-ras MULTIは起動キーチップのみをセガからレンタルしている基板ゆえ、稼働させるにも申請書類のやりとりなど敷居が高いため、中古になると値段がつかないのだ。さらに当時の多くのオペレーターは課金の有無しか見ていないため、きちんと試算し、安い値段で買い上げれば、従量課金基板といえど1プレイ100円運用なら充分利益を上げることができる。それを考えもしないオペレーターや業者から2万とか3万とか言い値で買い上げることができたのだ(笑)。

 「じょにお! 俺、やったよ!」

 この時点で10枚の基板が集まった。しかし、一度にALL.Net P-ras MULTI version2へのバージョンアップはやはり資金的には難しい、なのでマックジャパンさんに10台分のバージョンアップキットを発注し、マックジャパンさんと半分づつ、一ヶ月置きに二台づつバージョンアップしていく作戦となった。マックジャパンさんはミカドのメインコンテンツであるギルティの売上をレンタルで確保できるかわりに、支払いを半分五ヶ月間立て替えるのを快く飲んでいただいた。

 くっくっく……これなら戻せるぞ、12台に!!

 ゆっくりではあるがミカドのギルティコーナーは活気を取り戻し、売上も絶好調となった。俺はミカドの平和をついに取り戻したのだ!

 ……だが、安心したのも束の間。遂に新作『ギルティギアxrd』の噂が流れ始めた。

 それまで稼働していた『GUILTY GEAR XX Λ CORE PLUS R 』は、NAOMI版『GUILTY GEAR XX Λ CORE』のアッパーバージョンのため、4:3筐体で運用しても問題なかったのだが、新作の『~xrd』は完全に16:9専用。つまりミカドのギルティギアコーナーを全て液晶筐体化させなくてはならない。なんとか安い値段で筐体を揃える方法はないか? ふたたびキャサ夫を呼び出し作戦会議。

 すると……

 キャサ夫「イケダさん、楽勝!! 『鉄拳TAG2』が大コケしてる。筐体4台セットを買い叩けるよ!」

 目ん玉が飛び出るほど導入価格が高額だった「鉄拳TAG2」は、当時のミカドにとって高嶺の花すぎるゲームだし、関する情報を一切仕入れていなかったが、まさかそんなことになっているなんて!

 いろいろ調べてみると、あまりにも悪い売上はオペレーターから非難轟々で、「別売りダブルコンパネ仕様(※4人で遊ぶのかよ笑)」とか「待望の1人用実装!」とか対応も大迷走(笑)。

 つまり『鉄拳TAG2』は「メーカーとしては売れたけどゲーセンで稼がない」という売り逃げゲームで、このタイトルを導入したいくつもの店が閉店に追い込まれた噂もある。

 キャサ夫と俺が考えた作戦は、いたしかたなく同作を稼働している店舗に対して「4台セット(対戦台2セット)を10万円で買い取るよ?」という営業をかけるものだった。

 10万円稼ぐには最低で1日3000円以上の売上が必要だが、『鉄拳TAG2』の対戦台2セットはそれにも満たない売上しかなかったようで、「ぜひ売ります! 売ります!」が続出(笑)。以後、ミカドのギルティは毎月8台づつ、HD化の道を歩むことになる。

 そう。大コケゲームは導入したロケーションにとってはたまったもんじゃないが、時として我々のような貧乏中小ロケーションにとって神のような存在になり得るのだ(笑)。本来、『鉄拳TAG2』に採用しているノアール筐体にはALL.Net P-ras MULTIのカードタッチパネルがない。ただ、そこは中小ロケ魂を全開!! サンダーを片手に大改造で対応していった。

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 ……かくして、ミカドの『ギルティギアxrd』問題は終結した。以降、ALL.Net P-ras MULTI version2も鳴かず飛ばずで、中古市場に出回ると同時にその都度ミカドでも増台を進め、2019年現在、高田馬場ミカドのギルティコーナーは20セット以上稼働している。

 ここまでくるには、じょにおの努力、「ギルティに頼らない!」と腹に決めた俺、マックジャパンさんやキャサ夫の存在……何かひとつ欠けたら実現不可能だ。大コケゲームが中小ゲーセンを助けるとは書いたが、助けてはくれないね(笑)。やはりこれは、みんなの努力と協力が呼び込んだ、奇跡の判例なのかもしれない。

 次の俺の課題はALL.Net P-ras MULTI3か……もういいよ。わかったよ。なんでも来いよ……。

 乗り越えるだけだ!!