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  • 日本再生会議 甘利明経済再生担当大臣(2013年6月19日生放送)全文書き起こし

    2013-07-06 00:00
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    安倍首相が放った金融政策と財政出動という2本の矢。そして最後の一本である“第3の矢”である成長戦略が2003年6月14日に発表された。第4回の『日本再生会議』では、その主なプランである「日本産業再興」「戦略市場創造」「国際展開戦略」について経済再生担当大臣の甘利明氏に話を聞いた。


    角谷浩一(以下、角谷):皆さんこんばんは。コネクターの角谷浩一(かくたにこういち)です。先週(6月)14日にアベノミクスの3本目の矢が発表されました。成長戦略日本再興戦略と周期的な財政再建の方向性を示す経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針というのが閣議決定されました。そして総理はサミットに向かってG8で世界中の、いわばアベノミクスのチャレンジを注目し、結果的にはこのまま進めるべきだということでまとまっています。いっぽう個別に会談したドイツのメルケル首相などは相変わらず懸念をしめしていますけれども。いまアベノミクスの実体はどうなっているのか?そしてこれからどうなりそうなのか?そこをきょうは甘利大臣に伺おうと思っております。あらためてご紹介します。甘利明(あまりあきら)経済再生担当大臣です。

    甘利明(以下、甘利):こんばんは。しばらくです。

    角谷:2月のころ“最初にどんなことやろうとしてるんですか?”と甘利さんに伺ったら“どうなるのかしらん?”とお答えになって、そんなうちにどんどんマーケットも動き出した。甘利さんが何かよけいな発言してるわけじゃないのに…。

    甘利:(笑)

    角谷:なんか甘利さんが言ったから、みたいな雰囲気ももありますけれども。

    甘利:だって株価が下がると私のところに抗議の電話が来るんですよ(笑)いっぱい。そのくせ株価が上がってもお礼の電話1本も来ませんね。

    角谷:ははは。まあ大臣がその操作をしているわけじゃないんだけれども、逆に言うと政府の経済に対しての一挙一投足、それだけ国民は注目していると。ただ一方、株をやってる人以外のいわゆるわれわれは一体この効果はいつ私どもに到達するんだろうかと。そういう期待もあるし不安もある。それは一体いつなんだろうか?ということに対しての興味も高い、ということだと思いますね。

    甘利:そうですね。

    角谷:本日はそんな話をたっぷり甘利大臣に伺おうと思っております。番組ではユーザーの皆さんから質問やご意見などを募集しています。メールは番組のホームページの番組のページのメールホームからお願いしたいと思います。甘利大臣への質問、それからアベノミクスへの意見、いろいろ伺えればと思っています。

    甘利:はい。

    角谷:さてアベノミクスですが、2月にこの番組に出ていただいた時には大体春ごろにはこうなる、夏ごろにはこんな感じという話もいただきました。

    甘利:はい。

    角谷:さて、これまでのアベノミクスと言われる金融政策や財政出動、まあ、日銀の総裁人事もそのあと決まりましたから。ちょっとそこまでを振り返って甘利さんから見てこの2月から6月までの流れというものどんなふうにお感じになっているか伺えますか?

    甘利:かなりうまくいったと思います。成長戦略はまだこれからですが、その前に金融政策と緊急経済対策財政出動をやりました。これは予想以上にうまくいきました。まあ反応が良すぎた分、あとのリアクションで場が荒れてるんですけどね。点数をつけると80点90点くらいとしてもいいんじゃないでしょうか。

    角谷:そのなかで2月のお話の時には一時金のアップ、つまりボーナスを少しアップできないだろうかとか、給料が上がるようにできないだろうかとか、いろいろと相談して進めたいとおっしゃっていました。そのあと小売り中心に給料が上がる、ボーナスが上がる。それから場合によってはパートの人やアルバイトの人たちにもそれが広がるようなことをやりましょう、という会社も出てきました。

    甘利:はい。

    角谷:一方でちょうど2月から4月にかけては春闘の時期で、労働組合と経営者が給料というものに対してのやりとりがあるわけですけども。甘利さん、総理、それから麻生財務大臣へ対して“給料上がるようになんとかしてもらえんか”という声もありました。こういう動きはいままでなかったと思うんですけれども。

    甘利:そうですね。賃金交渉は民民の契約ですから民事不介入って原則があるのですけどね。われわれがやろうとしたのは、べつに組合に代わって交渉するっていうんじゃなくてですね。もうかったんだったら一時金でいい、つまり将来を拘束されないような、給料とかじゃなくていいから、一時金でも出していただくとそれがまた起爆剤になって経済の歯車はまわっていきますよってことを言いたかったんですね。

    角谷:まあいままでの停滞期で、場合によっては企業のなかでは内部留保といってお金をためてるけれども設備投資するタイミングやチャンスきっかけがない、と。それから耐震装備をするために会社のカタチを少しつくりなおし整備をさせることなどに費やされてなかなか人件費にまわってこなかった。ところが経済が明るくなる兆しがあるのなら、そちらにまわせるかもしれない、という経営判断が生まれる後押しになった感じはしますかね?

    甘利:そうですね。民間企業は200兆円も超える内部留保を持ってるんですね。ではなぜ打って出ないかというと、やっぱり見通しがつかないからなんですよ。政府がきちんと金融政策財政出動、それから成長戦略で将来の霧を晴らしてやる。あるいは規制緩和で障害物をどけてやると彼らも決断をするんですね。その決断を促す環境整備をわれわれがする、ということなんです。規制緩和ってのは企業にはできませんから。それに元の基礎研究や税制改正も国でしかできませんから。そんなふうに方向を見定めて障害物を取り除いて、彼らの乾坤一擲の勝負をうながすという環境づくりが政府の仕事ですね。

    角谷:その環境づくりはいろんなところにアプローチをかけたり、短期的なものでなく中長期的な戦略を持ちますよ、ということだと思うんですが、いままでやってきたように見えてこういうふうな方針で進めたのはちょっと久しぶりってことなんですかね?

    甘利:そうなんです。先ほども言いましたけれども。賃金交渉ってのはたしかに政府が介入するものじゃないんですよ。だから賃金本体じゃなくて一時金。とにかく労働分配率に少しでも還元するような、そういう将来を拘束しない余力を還元してくれればそれがどんどんいい回転を起こすんですよと。いまもう四方八方凍りついちゃってますが、どっかの氷を溶かしていかないと全体が動かないということでね。これは良い方向にまちがいなく動き出しましたからね。

    角谷:なるほど。流動性をつくり出すことによって、固まっているものが動き出すと。ただ小売業の皆さんは正社員というものがそんなに多くなく、パートやアルバイトの人中心です。彼らからすると社会の全体に行き渡るっていうのではなく、かなり一部なんじゃないかという声がありました。これはどういうふうに考えればいいですか?

    甘利:たしかにまだ一部です。先月NHKの討論会に出たときに、その調査で景気を肌身でよくなったって感じてる人って20%ですって数字が出たんですよ。まだ5人に1人です、と。でもその前ってだれもいなかったんだから(笑)だれもいないところから5人に1人のところまできてるんですよね。これが4人に1人。3人に1人。2人に1人ってまわしていくのがわれわれの仕事です。

    角谷:ええ。

    甘利:ちょっとおもしろい話があるんです。われわれは税制改正をやったわけですが、そのなかで交際費の上限を引き上げたんです。しかも全額経費として見れるようにして。これは4月から動き出すんですけれども、中小企業の社長は3月からなんか今度交際費の上限が増えたからっていって銀座でお金を使う人が出てきたと。ちょっと、社長社長!まだ来月からですから減税はっていう(笑)でも雰囲気が実態経済を引っ張ったっていうひとつの例ですよね。

    角谷:なるほど。

    甘利:だからいま消費が伸びてきたのは気分で伸びてきたわけです。そして回転し始めたから所定外賃金、つまり時間外の賃金と残業ですね。これは少しずつ上がってきてるんです。それからパートの時給も統計とってみると上がってきてるんですね。雰囲気から動いてますけども、それが実態経済にはね返ってきてると。だからいきなり全部ドーンとよくなるわけじゃないんですね。どこかが動き出してよそへ影響していって全体が動き出すと。

    角谷:“マーケットは前食いだ”という言葉があって、発表した段階でその可能性で雰囲気がよくなり、実施されたころにはもうその話は終わりだよ、と。どうしてもそのタイムタグがあって甘利さんが発表した直後の段階ではボーンと行くけども、実態が動き出したときにはもうつぎのことを期待しちゃってる。このマーケットと実態がうまくリンクしてくる時期ってのは、これからだんだん始まると思えばいいんですかね?

    甘利:そうです。成長戦略そのものはこの秋から具体的に動き出していきますから。アベノミクスで大事なのはプランだけつくってハイひと仕事終わり、っていうんじゃなくてプランを立てて、これを実行できるようにしっかりフォローしていくことが本当の仕事だと総理も宣言してるんです。ですから工程表を作成して1年1年進捗管理をしていくっていう体制をこれからつくっていきます。いままでの成長戦略と違うところはつくって終わりではなく、そこから始まるというところだと思うんですね。

    角谷:それでは成長戦略の話に少し入っていきたいと思っているんですけれども。この成長戦略ですけれども第1の矢として『大胆な金融政策』がありました。第2の矢として『機動的な財政出動』というのもやりました。そして第3の矢として『新たな成長戦略』があると。これは特徴としてどこを見ると、なるほど、これはいままでの仕組みと変わるな!ということになるんでしょうか?

    甘利:まず3つの政策を組み合わせているということです。『金融政策』と『財政出動』と『成長戦略』。いままでの場合、この『金融政策』が切り離されていて『財政出動』と『成長戦略』の組み合わせなんですよ。これの何がマズいかというとデフレのまま、進めようとすることなんです。

    角谷:なるほど。なるほど。

    甘利:簡単に言いますと経済対策成長戦略というのは、日本経済で500兆円の大きな薪に火を点けて燃えさせるってことですよね。でもふつう、キャンプファイヤーやる場合、いきなりマッチで火は点かないから種火を使うでしょう?小枝を集めて新聞紙を集めて、それに火をつけて本体に移しますよね?この種火が『財政出動』なんですよ。で、本体の薪である日本経済500兆円に火を点けようとするんですけど、なんどやっても火が点かない。よく見るとこの薪、水浸しじゃないか、と。水浸しっていうことはデフレの状態ってことなんです。だから今回アベノミクスがやったのは、まず『金融政策』という水抜きをして乾かして、それから種火へ付けて本体の500兆の日本経済に火を点けること。しっかりと水抜きをして燃えやすい状況をつくった、ということです。

    角谷:なるほど。種火はいままでもあったけれども、それが移らない。

    甘利:移らない。だから種火が燃え終わった時点で景気がダメになっちゃう。

    角谷:種火をすったマッチが借金として残ってしまう。

    甘利:そうそう。

    角谷:この種火がやっと移るところまできたから、これからチロチロがだんだん見えてくるぞと。こういうことなんですね。

    甘利:それがまずおおきな入口として違うところですよね。それから3つのプランを実施していく。具体的にはまず日本の産業界の足腰を強くする。そのためにいま古くなった日本の施設設備を最新のものに入れ替えて新陳代謝をする。日本の企業って不採算部門を抱えたままなんです。こっちではもうかってるけど、べつのところで不採算な部門の赤字を補填してる、と。だから全体の利益率が上がらない。だったらいっそのこと不採算部門を切り離す。切り離してまとめてもっとスリム化すれば本体の部門も補填がなくなるから利益率も上がるんですね。ただ、2つの不採算部門を集めてスリム化して採算が取れるようにしていくには赤字はしばらく出ますよね?このリストラ作業をしていく作業中に親会社が赤字を補填できるように、損益通算できるような税制があれば、これを彼らはやるんですよね。だから自身の設備を生産性のいいものに変えていくのと、不採算部門を切り離して採算部門に化けさせると。そして、それを税制で応援できるような仕組みをすると。それを臨時国会に出すということです。

    角谷:なるほどね。

    甘利:それから企業自身が元気になっても企業が使う基盤が元気じゃないといけないですよね。たとえばIT基盤。日本っていうのはITのインフラはよくできてるんだけど、IT活用が進んでないですよ。政府にいろいろ申請するにしたって、それ以前に政府の電子化が進んでないんです。政府の電子化をやります。いままでも政府CIO(政府全体のIT政策を統括する者)という人がいたんですが、今度法律改正してこの人を各省の事務次官よりもポジションを上にしました。すると何ができるかっていうと次官に指示ができるわけですよ。

    角谷:いわゆるアメリカのキャルスみたいなことなんですかね。

    甘利:あと、科学技術基盤を強化していきます。日本の科学技術の司令塔って、権限も予算もないから機能してないんですよ。だからそこを権限も予算もつけます。これが指揮官役で各省の科学技術予算の重複がないかとか、連携が取れるかとか、ぜんぶ指導していきます。

    角谷:ふんふん。

    甘利:それから人材です。国際人材が足りないですね。それなりの英語力を持った人材が日本は足りないんですよ。じゃあどうやるか。国家公務員のキャリアの試験にTOEFLを2年後から入れます。そうすると一般の企業や教育機関もそれに対応してくる。そうやってITの基盤、科学技術の基盤、人材の基盤を足腰から強くしていく。その上で2つのフロンティアをつくりますよ。国内のフロンティアと海外のフロンティアを。国内のフロンティアでは、いま日本が抱えている頭の痛い問題を戦略目標にするんです。たとえば少子高齢化が進んでいます。このままいくと2050年には65歳の人が人口の4割になります。そうするとみんな年金生活してる人ばっかり。払う人は減ってく。医療費は増える。ああ日本の未来はもう暗いってみんな思っちゃうんですね。

    角谷:悪循環なイメージありますね。

    甘利:それを生涯現役社会にしていく。そうすればみんなが支える人口はどんどん増えていくわけですね。ただしそれには問題があって、いまの問題は平均寿命と健康寿命のあいだがどんどん開いているんです。

    角谷:はい。

    甘利:これは寝たきり寿命とか入院寿命の割合が増えているってことです。ですから健康寿命を平均寿命に近づけていく。ライフサイエンスの分野で画期的な発明をしていくというのもひとつです。さっきの新薬の話もそうで、スピードを上げて新しい医療機器を日本からどんどんデビューさせていく。日本は技術は持っているのに製品医薬品とか医療機器は輸入超過なんです。これを逆にしようと思ってるんです。日本がソリューションをしっかり開発すればソリューションごと次には輸出ができるんですね。そういう戦略で国内フロンティアの開発をやってます。

    角谷:なるほど。

    甘利:それから海外フロンティア。このあいだ、シンガポールにある放送局で「ハロージャパン」っていう番組スタジオを見に行ってきたんです。そこで何してるかっていうというと、日本のアニメや番組を字幕をつけて流してるんですよ。けっこう人気があるみたいで。温泉番組とかでもいいんですけど、そういう番組をローカライズして日本のコンテンツはすごく魅力的ですと、アピールできる。

    角谷:それを見た人が日本に行ってみようか、と思うわけですね。

    甘利:ところが、現地化するのにお金がかかる。ファイル化っていって方式を変えなきゃならない。向こうにはそのお金がないんですよ。そこで官民ファンドをつくって支援をするっていうふうにしました。それで東南アジア方式にファイル化して変えて、それで現地語に変えて。もちろん放送枠も取るお金も必要ですけどね。流していくということと地域に来る観光客とのセットにするってそんな展開もしているんですよ。

    角谷:いまのお話聞いてなるほどと思うこともいっぱいあるんですが、ふたつ気になります。ひとつはアベノミクスの結果、リストラが広がってしまったり若い人の就職のチャンスが減っちゃったり、優秀な外国人ばかり採用されちゃって就職しようとするこれからの人たちが残念な結果になるんじゃないかって、不安を持つ人もいると思うんですけど。

    甘利:あのね、おもしろいもくろみをすることになったんですよ。日本のビジネスコンテストについてなんですけどね、現状だとゲームで終わっちゃってる。アメリカのFacebookだってGoogleだって学生発信ですよね?でも日本の場合、トロフィと賞状をもらって終わり。ゲームなんですよ。これをビジネスにつなげていく。小額で出資したい人をたくさん集めるクラウドファンディングで芽が出そうなベンチャーに出資をできるポータルサイトを今年中に作成します。ビジコンのアイディアとファンディングを結びつけるっていうポータルサイトです。それに加えて産業革新機構っていう政府系の期間がスモールビジネスというか、そのアイディアに出資をしていくっていう仕組みもエンカレッジしていきます。

    角谷:そうすると就職できるできない、でなく起業する、オレは自分でやってくぞ、っていうチャレンジの人たちを受け入れる土壌はかなり広がるってことですね。

    甘利:それで“会社をつくっていくにはどうしたらいいですか?”っていう疑問にもそのポータルサイトで相談できるようにしていきます。

    角谷:なるほどね。つまり“どこかに入りたい。けどどこかに入れてもらえない。はみ出しちゃう”、そうじゃなくて自分でやっていくということに対して面倒を見るよ、と。そういう人たちを応援するだれかが現れやすくなるために、政府が繋いでいく、と。

    甘利:そういうことです。

    角谷:さっきの教育の話でTOEFLとかいろんなものやるってのはいいことだと思うんです。自民党の教育再生会議のなかでもそりゃけっこうだと。だけど英語でいったいなにをしゃべるのかってことがポイントになるんじゃないかと思うんですよ。たとえば歌舞伎のこと、浄瑠璃のこと、落語のこと、日本の文化や食べ物のことなんかをいろんな世界中の人が興味を持ってくれても、いや英語できますけど日本のことはあんまり知りません、じゃ本末転倒になっちゃうような気がするんですけど。「クールジャパン」って日本のいいところを外に出していくってプランですよね。これはどのようにお考えですか?

    甘利:留学から帰ると愛国者になる。よくあることですね。

    角谷:よく言いますね。

    甘利:留学して外国の学生としゃべると彼らは自分の住んでる国はこんな伝統があるんだ、こんな文化があるんだと言います。そのあと“お前のところはどうなんだ?”と聞かれて、初めていかに自分が祖国のことを知らなかったと気がつく。それでいろんな人と話をするうちに日本って外から見たらこんなにいい国だったんだと認識するから愛国者になって日本に戻ってくる、って話ですね。国際交流ってのは相手の文化を認め合うってことなんですよ。認め合うためには自分で理解してなきゃならない。つまり外国文化と接するってことは日本の文化を見つめる機会になるんですよ。

    角谷:おっしゃる通りですね。

    甘利:だから“とりあえず日本語の論理構成ができてから英語教育を”なんて人がいますけど、そんな人はずーっと異文化と接触してないから自国文化についての造形は深まらないんですよ。だから国際化っていうことは自分の国を知ることと共通なことになるわけです。

    角谷:日本化が国際化につながるんだ。

    甘利:そうです。そうです。

    角谷:なるほど。それではもうひとつ。世界中ではすでに日本のいいところは知られている、そこをもっと活かすのにクールジャパンなんかのチャレンジがあるわけですよね。その一方で5月の末に自民、公明、日本維新で児童ポルノ改正法が出ました。

    甘利:はい。

    角谷:たとえばアニメーションなんかはまさに日本の文化であり、特徴であり、世界のなかでも冠たる日本のあこがれのひとつですけれども。もちろん児童ポルノはいいとはぼくも思ってません。ただ、アニメだとか2次元的なものだとか、出版物に対しての規制が広がってくることで日本の自慢できるものが前に出ようとするのに、国内ではダメって言われてるみたいな感じがするのですが。こういう矛盾もほんとは甘利さんのところで少し整理してもらいたいんですよ。

    甘利:そうですね。児童ポルノを取り締まるのをダメっていう人はほとんどいないと思うんですけれども。

    角谷:はい。

    甘利:あんまりそこから派生してアニメーションの表現がぜんぶ制約されたら、それこそ日本が誇る文化が衰退してしまうのではないかとは感じます。自民党が各党と調整してるのはだれが見てもこれはちょっとマズいんじゃないの?という内容だと思うんですが。そこからどんどんハミ出していかないような線の引き方をどうするか、っていうテクニカルな問題ではないでしょうか。

    角谷:そうだと思います。ただ改正法案は少し荒っぽくて、単純所持に対しても非常に厳しい扱いをしていると。たしかにこの理論っていうのは日本のいい部分と、世界からこれダメでしょうと思われてる部分が混在しているかもしれない。でもそこをきちんと整理してもらわないと、いいところだと思ったものがダメになったりして。

    甘利:よく注意していきます。

    角谷:さてそれでは、いまこういうことを考えていますよ、ということについてお聞きします。

    (角谷、フリップボードを出す)
    --------------------------------------------------
    6つの課題
    ・待機児童
    ・薬のインターネット販売
    ・混合診療
    ・農地問題
    ・社外取締役
    ・科学技術の司令塔
    --------------------------------------------------

    角谷:薬のインターネット販売でどうして景気がよくなるんだっていうふうな質問が出ましたけれども(笑)

    甘利:薬のインターネット販売を成長戦略に置くのはおかしいよと。それはたしかにその通りだと思うんですね。べつにたくさん薬を買ってもらうためじゃなくて、ネットを通じてこういうことができる、というのが成長戦略なんです。ネットだからダメとか、危険とか…ネットでも薬屋でも薬剤師しか売っちゃいけないんですから。売る手法を初めから線を引いてしまうのは、新しい展開を止めることにはなりませんか?ということだと思うんですね。

    角谷:安倍さんもよく言いますけど“ここで止まっちゃったっていうのはダメなんです”と。つまり3本の矢のその力を合わせることによって、いままではこれムリですとか、できません、とかを乗り越えるっていう知恵をいろんなところから持ってくるというのがいまの戦略だってことなんですね。

    甘利:そうですね。最初から既成概念のもとに“むかしからダメだから”っていうやり方だと発展していきませんから。さらに踏み込んでいくのに心配があるとしたら何ですか?と。その心配はこうやって排除できますね、って。できなかったらもちろんとどまるんだけど。できるんだったら進んでいいですよねっていうことです。

    角谷:全体的には骨太の方針やいろいろなことにチャレンジをしてる途上ですから、ぜんぶがいま出して明日結論が出る、なんてことがないのはわかります。ただ一方で生活保護を受けてる人が過去最高だというのは今年の3月の数字で出ました。

    甘利:そうですね。

    角谷:それからニートの数が過去最高になったという数字が昨日発表になりました。そういう意味では全体的には経済的弱者とでも言うんでしょうか、これからチャレンジする前にどうしてもつぎのステップに上がれない人たち。こういう人たちへのサポートとか、そこにどういうふうな光の当てかたをしていくのでしょうか?

    甘利:以前、若者女性活躍推進フォーラムというのをやったんですけどね。そのときにネットの関係者を識者のひとりとしてお呼びしたときに“ネット上のスーパーアイドルって引きこもりの人がつくるんですよ”って言われたんですよ(笑)引きこもりってクリエイティブなんです、と。彼らがつくってネット上にアップしたものが共有されてアイドルになるんですよ、と言われてかなりカルチャーショックを受けたんですけどね。ようするに、そういうクリエイティビティを実業に結びつけるとか引き出す。いろんなアクセスの仕方を通じて社会に出ていくっていう道をいくつもつくることが大事だと思うんですよ。

    角谷:ああそうか。なるほどね。

    甘利:待機児童を5年間で解消するっていうのを総理が提案したのは、女性が経済活動や社会活動に出ていきたいけどこういう制約がある、だったらその受け皿をちゃんとつくりましょう、ってことなんです。アベノミクスでは「全員参加」っていうキーワードがあります。それは意欲はあるんだけども子供を責任もって預かってもらえる施設が近所にない人とか、引きこもりの人とか、あるいはお年寄りで元気なんだけどもリタイアしちゃったって人とか、それぞれの出ていけない理由の環境整備をしていって、全員参加でがんばっていこうってことなんです。

    角谷:あなたの将来を面倒見ますよ、とは違うんだと。あなたはいままで選択肢がこれしかなかったけども、環境を整えていくつかの人生を選べますということを政府が用意するってことなんですね。

    甘利:だからみんなが何らかのカタチで社会を支えるんですよ。支えてもらう分もあるけども、100%支えてもらうじゃなくて6割支えてもらってるけど4割オレが支えてるんだ、という社会にしていかないと、このままだと活力がなくなっていくということですね。

    角谷:なるほどね、困ってる人たちへのセーフティネットって、いままでだとただ助けるということだけだったけども、ハードルを取り除いて選択肢を生み出すことでチャレンジを可能にする。そしてみんなが参加できる社会をつくっていく道を何本も整備するっていうのが骨太の方針なんですかね。

    甘利:そういうことです。

    角谷:いまのお話を聴いていると、これがあるからあきらめてる、これがあるからうまくいかない、これがあるからいま私はガマンしている。そう思ってる人たちもチャレンジする道をいくつかつくりますよ、と。その選ぶ道にちゃんとみんなが乗っかってくれて社会参加をしてくれると、じつはみんなに好循環がまわってくるんじゃないだろうか、と。

    甘利:そうですね。さっき生活保護が増えてるって話も言いましたが、収入が得ることができるとそっくり支給費から引かれちゃうんです。だから働いても働かなくても同じ額になっちゃうからじゃあ止めた、になっちゃうんですね。新たに収入を仕事して求めることができたらその半分は残るとか、そういうふうなシステムを変えていけばしだいに生活保護から脱出して行くことができる。0か100かという方式だからなかなか1回入っちゃったら出てこれないんですね。

    角谷:いままでの閉塞感のなかでしょうがないと諦めようって人たちが、いや諦めなくてもよさそうだと前を向いたり上を向くことで何かが見つかってくるかもしれない、と。その手助けは骨太の方針であるとか経済の景気全体が上向いてくることによって雇用が増えたりチャンスが増えたり、それから仕事の種類が増えたりとすることでまかなえるんではないかと。だから明日から皆さんに何が用意できますよ、とはいかないけれども、皆さんの才能や若い人たちのエネルギー、パワー、知恵、それを活かす場所をつくればいろんなことが始まるんじゃないか、ってことなんですね。プライマリーバランスがどうしたこうしたって、若い人はそこに行き着くまでにくたびれちゃうんだと思うんですよ。甘利さんがよし、これやろう!と。規制緩和に関してもよし、これはもうみんなに相談してみるよ!と。いろんなことが障壁になっているんならオレが言うよ!っていうのがあればたぶん転がるんでしょうね。

    甘利:そうです。いまの組織ですが、会議を開いて決まったことを本部会議に上げるんです。本部会議は総理が主催してますから、総理大臣命で各大臣にあなたはこれをできるように役所を指導しなさい、これができるように組み立ててくださいって指示がいくんです。どうしていままで民主党政権下でいろんなことがうまくいかなかったんだろう?って考えました。内示を受けて経済再生担当大臣に就任するまでの2週間のあいだ、組織の設計とかを徹底的に検証して上手くいくような仕組みを設計したんです。

    角谷:なるほど。その準備期間がだんだんモノをいってくるということなんでしょうかね。ではいままでのお話をふまえてアベノミクスに対してのアンケートをとってみたいと思います。以前この番組に出ていただいた2月はアベノミクスがまだ動き出す前でした。いま少し動き出してじっさい株価が上がったり、いろんなことが可能性として広がり始めました。さてアベノミクスに期待するか。今までの甘利さんのお話を聞いて期待するかどうかと。4択でお願いしたいと思います。

    --------------------------------------------------
    アンケート
    1:期待する
    2:どちらかといえば期待する
    3:どちらかといえば期待しない
    4:期待しない・わからない
    --------------------------------------------------

    角谷:経済のむつかしい話だったり具体的になにをしますということよりも、こうやって新しい日本の考えかたのインフラの組み替えを政府全体でチャレンジしてるということですね。

    甘利:それからね、目標を10年で達成するとするでしょう?そのあとに1年ごとにチェックするんですよ。政策群ごとに達成度指標っていうものさしがあるんです。ものさしを当てて1年間で達成できなかった場合には、その原因を探りなさいと。そして原因がわかったら政策推課をしなさい、と。

    角谷:工程表だけじゃダメなんですね。工程表の検証が大事なんですね。どこでつまったかが、わからないといけない。

    甘利:そういう仕組みなんです、アベノミクスって。だからそれがいままでと全然違うんですね。

    角谷:さあどういう結果が出ますか。ほうほう、これちょっと興味深い数字だな。

    --------------------------------------------------
    アンケート結果
    1:期待する 40.9%
    2:どちらかといえば期待する 22.9%
    3:どちらかといえば期待しない 14.9%
    4:期待しない・わからない 21.2%
    --------------------------------------------------

    角谷:どんなふうにごらんになりますか?

    甘利:ありがたいですね。

    角谷:メールをいただいています。愛知の男性38歳の方です。『アベノミクスで景気回復と言いますが民間はまだまだどん底です。もし給与が上がる前に消費税が上がってしまうとまた不況になってしまうと思いますが、いかがお考えでしょう?』という質問です。

    甘利:たしかに消費税8%に上げるのは来年の4月からで、その判断は今年の10月にします。その10月のときに何を判断するかっていうと、これは法律で決まっているんですけど、名目成長率、実施成長率、それから物価動向、失業率等々を相互判断して景気が間違いなく好転してます、という判断が成り立ったときに上げるっていう選択をすることになっています。

    角谷:ゴーサインが初めてそこで出る?

    甘利:はい。ですから景気が失速しているなかで消費税を上げるっていう判断はありません。そこでわれわれは全力を投じて、その10月の時点に間違いなく景気が好転してるって状況になるように全力でやってかなきゃならない。

    角谷:ヘンな話ですけど、名目成長率などもとりあえずなんとかなっていて、いまのままでいったら消費税を上げられるような環境が−−いちおう法律で決まっているものは−−整ってると。でもここで消費税を上げたらちょっと景気が冷えこむんじゃないか、そういうマインドとしてちょっと不安だな、というときは“ちょっと待ちましょう”とか“延期しましょう”っていう選択はあるんですか?

    甘利:いま私が言えることは上げられる環境が整うように全力でやるということなんです。G8でもアベノミクスはかなり高い評価もらえました。ただ1つだけ注文がつきました。それは財政再建の道筋をちゃんとつけてください、ということです。

    角谷:そうでしたね。

    甘利:もしここをおざなりにするとどういうことが起きるかというと、日本国債の信用が落ちて利払費が増えちゃうんですよ。利払費がいきなり増えていくと一般歳出経費がその分押されて減っちゃうわけなんです。だからラクをしようとすると苦労がきちゃう、っていう結果になるんですね。

    角谷:ふんふん。

    甘利:だから日本国債の信用をしっかり保つためには財政再建、つまりこの皆さんが持ってる国債は間違いなく償還されておかしなことにはなりませんよ、っていうことを担保しなきゃいけないんです。消費税を上げても大丈夫だってなるように、ここはもうしゃにむにがんばって経済環境をよくしていくと。そうしないとすべてのシナリオが狂っちゃいますから。消費税を上げる判断するときまではーーまではって、それから先ももちろんそうなんだけどもーーぜったいに政府は気を抜かないで景気回復に全力投球をしていくということになると思います。

    角谷:そこらへんは気をゆるめられても困るけれども、一方で4月からいろいろ税金や公共料金など、じつは上がってるものもたくさんあるんですね。ですからそれに見合う生活のレベルっていうことを考えると、消費税ってのはちょっと頭のなかでは皆さん重くのしかかってるはずだ、ということはやっぱり念頭に置かなきゃいけないと思います。

    甘利:うん。

    角谷:もう1つ。36歳、神奈川の男性の方です。『最近、株価が乱高下したりしていますが、こういう状況を見ると景気回復について不安になります。甘利大臣はどのようにお考えでしょうか?落ち着くときはくるのでしょうか?』と。

    甘利:市場がここのところ乱高下してるのは短期資金ですよね。短期資金っていろんな思惑で動くんですよ。上がってもうけて、下がってもうかる。ようするに変動しないともうからない。

    角谷:もうからないといけない。

    甘利:もちろん短期資金を否定するつもりはまったくないです。短期資金ウエルカムです。でももっと大事なことは、中長期資金をひきつける市場にしなきゃいけないってことです。なぜかというと中長期資金っていうのはイノベーションを起こします。企業は上場しようとして何かの事業を起こすときにやっぱり何年間かは赤字ですよ、本当にイノベーション起こす事業ってのは。そこを辛抱してくれるような資本が集まる場所が日本だ、というふうにしないとね。

    角谷:なるほど。

    甘利:先ほど、未上場未公開の株の非上場株の出資ができるような仕組みをつくると言いましたけどね。それも今日出資して明日配当よこせ、っていうような人ばっかりだったらイノベーションって起きないですよ。3年間ガマンして支えてやるからしっかりやれというような出資者がないと起きないんですよ。世界中で資本家の忍耐が短くなってるんです。でもイノベーションが起きないと世のなかしあわせにならないんですね。だから短期資金はもちろんウエルカムですけども。中長期資金にとって魅力的な市場が日本だというようにしたいと思いますね。

    角谷:昨日の夕刊あたりだと東京では億ションが飛ぶように売れてるという話ですが、まだそこには投機的な意味のほうが強いのかなという感じがしますよね。そこらへんのバランスがうまく合ってくる時期ってのはじょじょに近づくんだと思いますけども。その秋口の消費税上げる決定のときとの競争なんでしょうかね。いまね。

    甘利:今年の秋口に判断するけども、じっさいに上げるのは翌年の4月からです。それまで総理は景気動向を徹底的にしっかり球ごめをしてくぞ、とおっしゃってます。つまり財務省的にいうと10月の判断だったら、もうあとは気を抜いていいっていうふうになりかねませんよね。でも安倍政権としては判断をして以降も手を抜かないで成長戦略徹底的に達成度を追ってくぞ、と。重要なことがいままでなぜできなかったかというと、1年で政権が替わるからですよ。だから大事なことは、この安倍政権が長く続いてしっかり責任を持って最後までやり遂げるってことだと思います。さいわい7月に参議院選挙あったら3年間選挙がないですから。3年間は一心不乱に取り組めるんです。こういうチャンスってあんまりないんです。

    角谷:うんうん。

    甘利:だからしっかり、長期の安定政権で政策を実行していくってことが大事なんですよ。

    角谷:工程表とそのチェック。問題点があったらそこが風通しが良くなるまでちゃんと検証する。これを進めて振り返り、進めて振り返り。これはもう気が抜けない作業だと思いますけど。それをやり遂げたときにやっぱり日本全体がいい感じになるんでしょうかね?

    甘利:そうですね。そうさせなきゃいけないと思っています。安倍総理はもう、そうとうな覚悟でやっています。私、1次安倍内閣のときも経済産業大臣やりました。2次内閣でもやっていますけれども、1次内閣のときといまと彼は別人だと思います。

    角谷:そうですか。

    甘利:覚悟がまったく違います。

    角谷:最後に甘利大臣からユーザーの皆さんに一言、アベノミクスのこれを見とけ!というポイントを教えていただければと思います。

    甘利:成長戦略を250項目かかげています。それを皆さんの興味のあるものでいいので、追っていっていただきたいんですよ。何年までにこういうことができる、っていうのがいくつもあります。きちんとフォローアップができているかどうか、1年ごとにやっていきますから。

    角谷:ということです。甘利さんには今年の2月に出演していただいて、今回は6月に出ていただきました。次回のときには、甘利さんとうとうここまで来ましたね、とそんな話ができることを期待しております。本日はどうもありがとうございました。

    甘利:どうもありがとうございました。
  • 日本再生会議 根本匠復興大臣(2013年3月8日生放送)全文書き起こし

    2013-04-09 13:20

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    東日本大震災の被災地では、今なお、深いツメあとが残っている。住宅再建が進まず、多くの人々が仮設住宅での暮らしを強いられ、あるいは被災者たちのあいだには先が見えないことによる不安がつのっている。震災からの復旧・復興は、第二次安倍内閣が掲げる重要事項の一つでもある。

    震災から2年を迎えようとする2013年3月8日、福島県郡山市出身の根本匠・復興大臣をお招きして、復旧・復興の課題と施策について詳しく話を聞いた。はたして、被災地の復旧・復興を加速させる秘策はあるのだろうか。



    七尾功(以下、七尾):ニコニコ動画の七尾です。間もなく2011年3月11日の東日本大震災から2年を迎えようとしております。本日のニコニコ生放送では、「日本再生会議」の第3弾といたしまして、根本匠復興大臣に単独生インタビューの機会を作っていただきました。実は今日、私どもは復興庁にお邪魔しております。今後の復興の道筋などについて、ユーザーの代表として、私が根本大臣に直接話を伺ってまいりたいと思います。それではさっそく入ります。

    根本匠・復興大臣(以下、根本):こんにちは。

    七尾:こんにちは。本日はありがとうございます。七尾と申します。よろしくお願いします。

    根本:はい。

    七尾:失礼します。ありがとうございます。大臣、今、これはインターネットで生放送しているんです。

    根本:初めてです。

    七尾:ぜひよろしくお願いします。それではさっそくなんですけども、本題に入ってまいりたいと思います。まず、大臣は福島県の郡山出身です。地元の復興にかけるお気持ちは非常に強いと思います。震災から間もなく2年が経とうとしているんですが、これまでを振り返ってみて、今現在どのような思いがありますでしょうか?

    根本:私は3.11の地震の時に、地元の郡山にいました。だから、あの時にいかに大変な震災であったかを肌で感じてきました。特に私は震災後、郡山市の防災対策アドバイザーを頼まれたんですよ。それで、いろいろな郡山市の取り組むべき対策や相談をずいぶん受けてやってきたんですね。例えば、「県を通じて国と相談したら、『できない』と言われた。なんともならない。どうしましょうか?」。そういう案件を、国の各省庁と直接やりとりして動かしていく活動をやっていました。

    だから、地元の皆さんとはずいぶんお話をしました。例えば、農業者は風評被害で自分の作った野菜を孫に食べさせられないとか。被災者の皆さんの悩みや苦しみは共有してきました。3.11からもう2年を迎えますが、改めて、東日本大震災で亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げますとともに被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

    七尾:2年というのはあっという間ですか?大臣の中でどんな感じでしょうか?

    根本:振り返ってみるとあっという間でした。やはり最初は、地震で建物も相当やられました。

    七尾:大臣は3.11の時は福島にいらしたんですね?

    根本:地元にいました。

    七尾:本当ですか?

    根本:郡山にいました。

    七尾:では、まさに震災を体感したわけですね。

    根本:すごい地震だったし、私はある事務所にいたんですけど、ものすごく揺れました。外に出たら、喫茶店だったと思うんですけど、隣の建物のレンガが全部落ちていました。そして、たしか天候も、雪が混じった横殴りの風でしたよ。空も暗くなっていた。あの時は天候もそういう状況なっていましたね。道路もあちこちやられていたし、建物もやられていたし、大変な災害でしたね。

    七尾:昨年12月の政権交代前は、今おっしゃったように、福島県で皆様の様々な声を実際お聞きになって、国、県に要請なさっていたということなんですけども、その際に復興への問題意識は、かなり高まったと思うんですが……。

    根本:ありましたね。なんで、もっとこういうこと早くやらないんだとか。いろんなことを陳情、要請して、いろいろ調査に来られる方がおられるんだけど、大変な災害だからスピーディに進めないということはあるんです。それで、やはり復興が遅いという不満を被災地でよく聞きましたね。あと、「誰に言えばいいんだろうか」という話もよく聞きました。

    私が前回の選挙でぜひ議員に復帰したいと思ったのは、自分自身で震災を体感したからです。具体的に、こういうことやりたいというのはずっと持っていました。農業の風評被害対策、あるいは復興の具体的な町作りなんかも。だから、ぜひ復帰して、もっと国をどんどん動かして、復興を加速したいという思いが非常に強かったですね。

    七尾:そして、政権交代がありまして、昨年の12月26日で安部第二次内閣の復興大臣に。これはちょっと運命的ですよね。今のお話を聞くと、必然と言うか。

    根本:天命だと思いましたね。ですから、私も大臣就任記者会見で申し上げたのは、とにかく今の施策を総点検し、何が問題で何が課題かということをあぶり出し、施策を再構築するということです。

    結局、今回の災害は、現場によって地域によって状況が異なりますから、やはり「現場主義」に立つということです。「現場に解がある」ということですね。そして復興庁の司令塔機能を強化するということ。これが最初に大臣就任記者会見で申し上げたことで、本当にそう思ったんですよ。

    ですから年末年始返上して、とにかく復興を加速させると。それから補正予算、通し予算。もう1月中旬までに具体的な予算を仕上げなければいけなかったんですね。だから今年は復興庁の職員の皆さんも頑張ってくれました。今年は正月を感じませんでしたね。もうずっと仕事をやっていたから。

    七尾:なるほど。

    根本:新しい政権になって、我々が政権を担うわけですから、とにかく復興加速をしなければいけない。よく政権が変わった時、ファースト・ハンドレッド・デイズということを言うんですね。最初の3カ月のことです。

    七尾:そうですね。100日。

    根本:私はむしろファースト・サーティワンだと。1月は31日ありますから。ファースト・サーティワンで勝負をかけよう、この時期にしっかり基本的な枠組みを作らなければならないと、そんな思いでやりました。

    私がやったことは3点あります。1つは「司令塔たる復興庁の体制の見直し」です。やはり、いかにして各省庁を動かしていくかですから。しかも復興は各省庁にまたがるんですね。いろんな横断的なテーマがあるので、縦割りを排して、横串を入れていく。安部政権では、復興と日本経済再生と国家の危機管理、この3点を最重点課題に据えました。私は安部総理からの復興加速の指示を受けました。司令塔強化の指示も受けた。ですから復興庁体制の見直しをやりました。

    七尾:2番目は「復興予算に関するフレームの見直し」。これは具体的に言うと?

    根本:震災から集中期間5年間に、19兆円の財源を用意して、復興していくという枠組みがありました。かなり予算は消化していましたから、「この予算はこれからきちんとつくのか?将来は大丈夫か?」と地元では心配になるわけです。

    七尾:地元で、そういった不安の声をかなり聞かれたと。

    根本:財源が19兆円だから。

    七尾:決まっていますからね。

    根本:決まっていますから。そういう不安を払拭するためには、やはりフレームの見直しが必要だということになり、19兆円のフレームを25兆円に見直したんですね。そして被災地の皆さんに安心してもらおうと、まず5年間の予算のフレームを作った。

    もう一つは「復興の加速策の具体化・推進」です。

    七尾:これはよく言われていましたね。「スピードはアップにならないんですか?」と。

    根本:要は、施策を総点検しました。新たに具体的に補正予算、通し予算で新たな加速策を打ち出したんです。これで1月に道具立てが大体そろった。そして、さらに施策的な問題を解決していくということで今進めております。問題解決型でやりたいと。

    それと、やはり司令塔たる復興庁で体制見直しをして、復興庁が中心になって各省庁を動かしていくということが狙いですから、復興庁の職員の皆さんには、これからの復興加速のためには課題問題が出たときにやれない理由を探すんじゃなくで、どうしたらやれるか、どうしたら解決できるかという想像突破型の精神でやってもらいたいと指示しました。

    七尾:なるほど。

    根本:あと、具体的な復興庁司令塔の強化は、できるだけ私が中心にとなって各省庁を束ねて動かしていく仕組みをいくつか作りました。

    七尾:この点につきましては、今から具体的にいろいろ質問させてください。

    根本:はい。

    七尾:震災からの復興ということなんですが、今、当初から問題になっている除染、インフラ整備、あと避難されている方々への対応など様々あるんですけども、大臣になられて今、被災地の復興の現状は具体的にどう把握されて、どう評価されていますか?

    根本:岩手、宮城は津波による被災地ですが、福島県の場合、地震・津波に加えて原発事故に伴う、いわゆる放射能の問題がありますから、そこは様相が異なるんですね。全般的に言うと、例えばインフラについては大急的な復旧は終わったんですよ。復興に向けての事業については、今、事業計画工程表に基づいて具体的に動いています。

    ただ、例えば津波被災地で一番の問題は、住宅再建なんですね。仮設住宅の皆さんとお話をしますと、「いつになったら帰れるんだろうか?戻れるんだろうか?」という話で、つまり将来が見えないんですね。ですから津波で被災された地区については、いかにして住宅再建をスピードアップするかが大きな課題になります。例えば補正予算でも、住宅再建投資のための予算は1000億円つけました。それで住宅再建をしてもらう。もう一つは、例えば津波で本当に被害のあったエリアは、まず面整備からやっているんですね。

    七尾:はい。面整備ですね。

    根本:面整備をやって、津波の被災地から高台に移転する。高台の山を削って、津波の被災地は面整備してということなんですけど、それには時間がかかります。そして面整備が終わって、例えば災害公営住宅という住宅再建となるんですが、これもやはり時間がかかるんですよ。

    だから先に「住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォース」というものを作り、関連する局長に集まってもらった。住宅再建のスピードをいかにして早めるかということです。例えば用地取得では、職員が足りなかったり、土地の権利関係の問題や所有者が不明の土地があります。これをどうするか。文化財が出ると、文化財調査をしなければいけない。それから設計して施行ですから、かなり長い期間のかかるプロジェクトもある。

    用地が見つかったところでは、公営住宅を作れますから。あるいは自力再建もできます。今、津波被災地で一番問題なのは、いかにして住宅再建をするかです。そして、あとは産業の再生、生業の再生ですよね。

    七尾:そうですね。地域の経済対策。

    根本:それについては、例えばグループ補助金というのがあるんですけど、産業ごとにグループ化してもらって、そこに国が4分の3の補助を出します。

    七尾:4分の3なんですね。

    根本:これはかなり効きますから。

    七尾:効き目ありそうですね。

    根本:ほかにも水産加工業グループとか。要は、業種のグループごとに申請してもらったら、後押しするということです。これは二重ローン対策にもなります。そういう産業の復興と、あとは産業復興企業立地補助金です。工場を立地する場合に、補助金で後押しをします。これも津波被災地まで今回拡大したんですよ。

    岩手、宮城の津波被災地は端的に言うと、町づくりから住宅再建、そして産業の再生。住宅再建については、仮設住宅におられる方がいつ戻れるのかという問題がある。実は今回、市町村ごと地区別に、年度別にどのぐらいの公営住宅ができるか、民間の開発する住宅用地がいつできるかについて工程表を作って、お知らせすることにしたんですよ。

    七尾:これは非常に重要ですね。それが今までわからなかった。きちんとした目標と期限を明示するというのは非常に重要なことだと思います。

    根本:仮設住宅の方とお話すると、そこが一番の不安なんですね。だから、我々が今考えているのは、来年の冬は被災者の方々に希望を持って迎えていただこう、そのためにあらゆる努力をしようということです。津波被災地の現状と課題は、今申し上げたようになります。

    それから福島県の場合は多少様相を異にして、避難指示をされた長期避難者の方がおられるんですよ。皆さんは県内にもそれぞれ仮設住宅、あるいは借上住宅に入っています。長期避難者のための支援で今回予算に組んだのが、町外コミュニティっていう考え方なんですが、災害公営住宅を作って、そこに仮設から移っていただく。そうなると周辺の道路整備とかをやらなきゃいけないんで、そこは国が全面的に応援しますよと。

    それともう一つは、帰還できるエリアについて、今、区域見直しています。つまり、帰還できる地域が出てくるんですね。じゃあそこに帰還できるように支援しましょうと。例えば、帰還しようと思ったけど、介護施設がないという場合は、そこは応援しますよと。

    七尾:受け入れ体制ですね。

    根本:受け入れ体制の後押しをする。もう一つは、ちょっと低放射線量のものですから、福島県の中通りでは、子どもが屋外で活動を制限されていました。今ずいぶん解消されていますけど。子どもが運動不足で肥満になったり、あるいは体力が低下したり……。

    七尾:ニュースでも報道されましたね。

    根本:そういう状況で、伸び伸びと運動できる屋内の運動場を作りたいという要請が非常に多くあった。今の低放射線量ですと、お医者さんは「健康にはまず影響がないですよ」とおっしゃる。ただ、子どもたちの体力が低下しているんで、雨が降っても、雪が降っても、運動できる運動場を作る。

    あるいは、若い世代が「公営住宅があればまた戻りたい」という要請もあるんで、子ども元気復活交付金というものを作った。やはり、「福島県の子どもたちは日本一元気な体力のある子どもたちなんですよ」という魅力ある地域を作ることによって、ふるさとに戻ってもらう。あるいは「ふるさと」で元気にがんばってもらう。ふるさと復活プロジェクトっていう3本の矢ですね。これを新たに予算で組みました。

    あとは営農再開です。要は農業の再開のための支援も。災害によって状況が異なるものですから、それぞれの地域の問題課題に対応する対策予算を組んだんですね。

    七尾:なるほど。ありがとうございます。ちょっとユーザーの方からメールがきましたのでお答えください。神奈川県の男性の方からです。ニコニコ生放送の番組で、「3.11特集」というのを今やらせていただいていまして、一昨日、被災地の町長さんにいろいろお伺いしたんです。

    「その中で福島県の町長さんが、復興庁への大臣への要望として、『政治という枠を外してスピード感を持って復興してほしい。村に早く戻れるような事業や仕事を作ってほしい』と言っておりました。大臣はこの件についてどのようにお考えになりますか?」

    根本:その通りですね。私が「現場主義」と言っているのは、それぞれの状況が違うから。だから、その意見を吸い上げて施策に動かしいく。ですから帰還支援の予算を作りました。あと産業立地の補助金。これも帰還できるような状況になったところで、事業者が進出する場合は、税制上の軽減措置、今まで対象でなかったエリアを法改正して、優遇措置取れるようという税制改正もします。

    それから産業立地の補助金も例えば2分の1、3分の1。地区によって違いますけど、それも後押しをして、雇用の場を作ってもらう。あるいは営農再開の支援も組みましたけれど、やはり福島県は農業県ですから、営農再開できるような後押しも今回の予算でも組んでいます。我々がやっているのは、具体的な問題、課題があればそれを解決し、そして復興を後押しするということです。全力をあげて取り組みたいと思います。

    七尾:非常に具体的なお話で、ユーザーもそこに期待する声が大きいんですけど、ちょっと急ぎ足でお願いします。復興予算の流用問題もありましたが、これはちょっと飛ばします。これはしっかりやっていただけると思います。

    根本:厳しく対処しました。

    七尾:あとよく言われることですが、国交省や環境省、経産省、農水省など様々な連携をしていく中で、縦割りになっているということは、以前から声が上がっていましたけど、これはもう解決していけるということですか?

    根本:まさに縦割りを打破することが、我々の役割です。安部総理は、「閣僚はすべて復興大臣という意識を持ってやってもらいたい」と指示しています。

    七尾:あれは、かなりインパクトのある発言ですね。

    根本:そして、「復興大臣に一元化して、復興大臣を中心に進めるように」と。私はこれが大きいと思っているんですね。

    七尾:つまり、根本大臣は様々な復興大臣がいる中でそのリーダーなわけですね。

    根本:各省庁を束ねる。それはもう安部総理が閣僚の全員に指示しています。ですから政策総動員で我々はやります。例えば、最近、集団防災移転事業があって、津波の被害があったエリアから高台に移転する。この場合に、市町村が元々あった住宅とかを買取するんですね。

    農地を買い取ろうと思ったら、土地をどう利用するのか示す転用許可が必要です。これについては、私は複数の首長から要請されていました。結果的に言えば、農林大臣と農林水産省の事務方と話をして、転用の許可が不要になりました。これは2週間で不要になりました。

    だから一番大事なのは、政治と官僚の信頼関係だと思いますよ。100の言葉より1つの実行。そして真の政治主導というのは、政治家が方向性を示して、官僚をリードし、政治家が決めるということです。決断するのが政治ですから。そして責任を持つ。安陪内閣では、真の政治主導で復興を加速させていきたいと思います。

    七尾:はい。もう残り時間少ないんですが、今、スピードアップするめの施策、様々な矢を放っておりますが、それでも復興の完了はかなり数年先のことになると思います。大臣の中で、何をもって復興した、何をもって完了したと言えるのでしょうか?このあたりにつきまして、大臣は終着点というか、どういうイメージをお持ちですか?

    根本:これからどんどん復興を加速化させていきます。ただ大事なのは、単なる復旧に留めてはならないということです。新しい可能性と創造の地として、新しい東北を作り上げる。復興推進委員会という委員会で新たにスタートさせるんですけど、そこでは復興加速と新しい東北の創造をメインテーマにしてやりたいと思っています。

    では、新しい東北とは何か。今回の震災で東北が直面しているのは、20年後、30年後に日本が直面するだろう課題です。例えば高齢化・過疎化、あるいは産業の空洞化、エネルギー問題などを今直面しているわけです。

    簡単に言うと、例えばエネルギーの問題でも、子どもの元気でも、あるいはアクティブエイジング、つまり生き生きとした高齢化社会でも、あるいは農業も、東北が日本のモデルになるような、新しい可能性を見出していく。新しい東北を作る。そういう長期的な視点と柔軟な発想で、ぜひ新しい東北の創造に挑戦していきたいと思います。

    七尾:ありがとうございます。残念ながら、もう時間となりました。今後も、ぜひこうした企画を続けていきたいと思うんですが、大臣、また機会がありましたら、ぜひお話をお伺いしたいと思います。よろしいでしょうか?

    根本:はい。ありがとうございます。

    七尾:今日はお忙しいところ、ありがとうございました。ユーザーの皆さんもご覧いただき、ありがとうございました。それでは、このあたりで失礼したいと思います。ありがとうございました。

    根本:ありがとうございました。


    (了)

  • 日本再生会議 西村康稔内閣府副大臣(2013年2月26日生放送)全文書き起こし

    2013-03-07 15:00

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    経済政策「アベノミクス」は、もはや第二次安倍内閣の代名詞だと言える。長期にわたって低迷していた株価は上昇し、為替も円安に向かっている。ここからは、ただ株価や為替の数字が良くなるだけではなく、給料や雇用など、生活する人々の目に見える形での景気回復の成果が必要になる。政権発足からちょうど2カ月の夜、甘利明・経済再生担当大臣のもとで政策を実務に落としこむ役割を担う西村康稔・内閣府副大臣をお招きして、詳しく話を聞いた。

    インタビュアーは、コネクターの角谷浩一氏。はたして、アベノミクスはこれから日本の景気をどう牽引していくのだろうか。これまでの自民党政治とどう違うのだろうか。

    角谷浩一氏(以下、角谷):みなさんこんばんは。ニコニコ動画コネクターの角谷浩一です。日米首脳会談が先週末、ワシントンで行われました。オバマ大統領との会談に臨んだ安倍晋三総理は、アベノミクス、日本が今やろうとしている経済政策について事細かに説明したという報道も伝えられています。オバマ大統領からも、日本は経済再生に向けて順調に進んでいるというようなやりとりもあったと言われています。

    2月1日には、甘利明・経済再生担当大臣にニコニコ動画に出てもらって、一体、アベノミクスとは何なのか。日本経済再生会議とは一体どんなものなのか。大臣はどんな仕事をするのかを伺いました。ダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)では久しぶりに日本のアベノミクスが話題で、日本が中心となる会議は久しぶりだったという感想も甘利大臣から伺いました。そして今日は、西村康稔・内閣府副大臣……ということでいいんですかね。

    西村康稔・内閣府副大臣(以下、西村):はい。

    角谷:西村副大臣にお越しいただきました。こんばんは。どうぞよろしくお願いいたします。

    西村:よろしくお願いします。

    角谷:さて、第2弾は西村副大臣にいろいろ伺おうと思っています。今日はイタリアの総選挙があった。それから、日本銀行の人事の内示があったこともあって、株価、それから円がかなり動きましたね。

    西村:はい。

    角谷:夕刊紙などを見ると、「日銀人事ショックだ」という書き方があれば、「イタリアの総選挙でユーロ不安で円高が加速しているんだ」という書き方もあります。日経平均株価が1万1398円。そして円が91円80から81銭ということで、ちょっと円高に振れた。こういうのを見ると、西村さんは敏感に反応するんだと思います。政府の人間ですから、感想は言う必要はありませんけれども、イタリアの総選挙や、日銀の人事についてのマーケットの反応をどんなふうにご覧になりましたかね?

    西村:安倍政権ができて、日銀の金融緩和、2%の物価目標というのも、われわれの念願だったことです。ようやく日銀も、物価目標を入れて金融緩和を責任持ってやるということを断言しました。そういうタイミングと、プラス、アメリカの経済も良くなってきた。ヨーロッパの債務問題も安定してきたところで、良い条件が揃って、これだけ急激に円安になって、株価も上がってきたということなんです。ですから、その条件のどこかが崩れるとやはり脆い。期待感が崩れていきますから。そのことが今回よくわかったと思うんです。

    イタリアでベルルスコーニ氏の率いるグループがどちらかというと、ばら撒きに近い、放漫財政をやりかねないような政策を打ち出しています。そのグループが、それなりに善戦したということで、ユーロがグッと安くなって、今度は円がグッと上がって、引きずられてドルとの関係でも円が高くなるということですから。やはり相当なことをやらないとインフレ期待とか、日本の経済が良くなる感じは出てこない。私はやはり、もう一回、金融緩和、日銀には「一本目の矢」を頑張ってもらうと。われわれは「二本目の矢」、財政出動はなかなか出せませんけども、「三本目の矢」である成長戦略は相当思い切ったことをやらなきゃいけないなということを今日改めて感じました。

    角谷:麻生太郎副総理が言うように、「こういうことをやりますよ」というメニューは見せたけども、まだ実際は始まってないんだと。今そのメニューだけでマーケットも動くし、円も動くと。大変結構なことなんだけれども、これをやっていかなきゃいけない。

    それから、「骨太の方針」を6月に出す。その後に参議院選挙があるわけです。民主党政権の時には、消費税を上げるということを国民に理解してもらうために大変苦労した。同時に、その決断をすることだけで手いっぱいで、景気を良くするところまでまったく手が回らなかった。でも、本当ならばその両方があってこそです。

    西村:そうですね。

    角谷:三本の矢の前に、やはり国民に負担も頼むけれども、景気も良くすると。この2つがあってこそ、消費税の増税も、議論として本当は国民の頭の中にも上がってきて良かったと思うんです。民主党は、どうも負担をかけることに怯えすぎていた節があります。もちろん、われわれも「負担を回してくれ」と言えるほどのことはないですよ。だけど景気が少しでも良くなれば、気持ちも変わる。やはり40歳以上の人はバブルを知っていますから。バブルを知らない世代にとっては、これが当たり前です。逆にデフレ基調は、物価があんまり上がらなくて良かったんじゃないかと思われてしまう節もある。そこを乗り越えていかなきゃいけない。ここが今ものすごく難しいところです。

    西村:そうですね。

    角谷:その司令塔の要は甘利さん。そして実務は西村さんがやっていると。

    西村:はい、ありがとうございます。

    角谷:今日はじっくり伺っていこうと思います。話したいことはたくさんあると思いますが、こちらもいっぱい伺いたいと思います。よろしくお願いします。

    西村:よろしくお願いします。

    角谷:さて、西村副大臣ですけれども、みなさんからの質問を受けようと思っています。番組ではユーザーのみなさんからの質問やご意見などを募集します。メールは番組ページのメールホームからお願いします。質問やご意見をいただいて、後半でご紹介するということにしようと思っています。

    さて、西村副大臣のまずはプロフィールと役割、それから内閣府は一体どんなことやってのいるかを伺いましょう。だって副大臣って言うけれども、今、ものすごくいっぱい役職あるんですよね。

    西村:そうなんです。

    角谷:西村さんの主な担当、どれ一つも相当大変な仕事じゃないかと思うんですけども、まず経済再生。これは、もちろん今、国が大きく掲げている政策ですからね。それから経済財政政策。社会保障と税の一体改革。それから、拉致問題も週末も会合出ていましたね。

    西村:そうですね。はい。

    角谷:それから、PFI、プライベート・ファイナンス・イニシアチブ。防災、国土強靱化。それからPKO(国際連合平和維持活動)とNPO(民間非営利団体)と。こんなにたくさん一遍にできるんですか。

    西村:そうなんです。内閣府って何やっているか、よくわからない方が多いと思うんですけども、基本的に各省にまたがるような話について、総合調整をやったり、あるいは司令塔的な機能を担っています。経済の関係も、財務省、経済産業省、それ以外に国土交通省があったり、金融庁があったり、いろんなところが関わる部分です。

    それから外交安全保障。拉致もPKOもそうですけど、外交、防衛はそれぞれ外務省、防衛省と関わります。防災、国土強靱化も、国交省だけじゃなくて、消防庁もあれば、病院の関係で厚生労働省もある。PFIも民間の資金を使ってできるだけいろんなことをやっていこうというんですけれど、金融庁も関係するし、国交省も関係する。そういう幅広い分野を担当しているんです。

    甘利大臣をはじめ、内閣府大臣は5人います。あと官房長官がいますので、内閣府は、大臣6人に副大臣が3人しかいないんです。ですから、私は甘利大臣の経済関係、社会保障と税の一体改革のところ。それから古屋圭司大臣の拉致問題、防災、国土強靱化。それから官房長官のPKO。NPO、PFIも甘利大臣なんですけれども。そういう役割分担になっていまして、相当大変です。

    角谷:そうですね。この場合、私ども政治記者のイメージで言うと、官邸の出先機関と思ったほうがわかりやすいんですか?

    西村:そうですね。官邸とは一体的になって、全体の調整と司令塔的な機能と両方果たしていきます。官邸とは密に相談しながらやることが多いです。

    角谷:それが内閣府の大きな仕事で、西村副大臣の担当はこれだけあるということがわかっていただければと思うんですけれども。じゃあ、西村さんはどんな人なのかということも、少しご紹介いたします。僕は、西村さんが経産省出身ということしかよくわかっていないんですけど、「私はこういうもんだ」という説明をすると、どんなふうになりますか?

    西村:経産省で15年いまして、どちらかと言うと環境・エネルギーをやっていました。原発はやったことなくて、どちらかと言うと、新エネルギーとか石油をやっていました。それから地域の開発、あるいは駅前の中心市街地の話。それからベンチャーの支援とかを15年くらいやりました。その間にアメリカにも留学をさせてもらって、戻って来て、もう一回、石川県庁に出向しました。石川県の地方財政や地方振興みたいな話も現場で経験させてもらった。これはすごく活きているんです。

    経産省は15年で辞めました。それから選挙に出たんですけども、1回目に落選して、4年近く浪人しました。非常につらかったんですけども、この間、ポスター持って10万軒近く歩いたり、朝早く街頭立ったりした。その成果かどうか、後援会のみなさまからものすごく応援をしてもらって、その後、4期連続当選をさせてもらっているという状況です。

    角谷:実は、西村さんは自民党総裁選にも立候補したことがある。そこで一気に永田町の顔の一人になっていったということなんですね。

    西村:まだまだです。

    角谷:お話を伺いますと、経産省での仕事が内閣府副大臣の業務に相当役に立ちそうですね。

    西村:そうですね。経済関係はずっとやってきましたし、党においても経産部会長とか財金部会長をやらせてもらいました。まさに日銀法改正なんかも、自民党案をまとめた責任者でした。その時に、甘利大臣は当時政調会長に就く前で、経済財政金融の調査会の会長で、私がその事務局長をやっていました。そういう意味では、ずっと一緒にやってきたんです。当選後、外務政務官もやらせてもらいました。拉致問題やPKOも担当していましたから、今は私のやってきたこと、経験を活かせるポジションだと思っています。

    角谷:そういうことになっているんですね。ですから、西村さんは突然、副大臣からスタートしたわけではなくて、実は今まで役所でもやってきた。それから県庁に出向していた。こういう経験が今ストレートに、今度は官邸機能の中の一部として、甘利さんとコンビを組んでやっているということなんですね。

    西村:はい、そうです。

    角谷:そういう意味では、甘利さんが大きな枠を作って、一つひとつ実務に落とし込んでいくというのが西村副大臣の役割だということは、お話を聞いていてわかってくると思います。自民党と民主党では層の厚さの違いがあるんだけれども、当時の民主党政権だと、当選回数4回くらいの大臣がうじゃうじゃいたんですね。当選5回だと、大臣を2回くらい経験している人がいるくらい回転が早かった。野田内閣だけで4回内閣改造やっていますから。そういう意味では、ほとんどの人が何らかの形で内閣、政府の仕事に就いたということになったのかもしれません。だけど自民党はそんな甘くない。当選4回でこれだけ仕事をしても、まだ先輩がいっぱいいますからね。

    そんな中で、自民党が新しい世代に上手にソフト・ランディングしている。同時に、安倍さんの年齢のこと考えても、自民党は今かなり若返っているんですね。そもそも野党時代に青年局に何人いたのか。小泉進次郞議員は当選1回で青年局長になって、ほんの十数名を束ねていた。自民党の青年局というのは、45歳以下が入れる。45歳より上の人は「俺は入りたい」と言っても青年局には入れない。こういうルールになっています。この青年局に、今回選挙の結果、80人余りがいるというから、自民党は世代が相当若返りましたね。

    西村:もうガラッと変わったと思います。

    角谷:そうすると、今、自民党の若い議員たちの中で、どんな人たちが西村さんの元で働いているんですか?

    西村:今、政府で甘利大臣が中心となって日本経済再生本部をやっています。党でも経済再生本部を立ち上げています。政府はどうしても日本全体のことを考えがちですので、党は主として地方のこと、地方が活性化するようなことも念頭に置きながらやろうということになっています。いくつかチームを作って、当選2、3回くらいの後輩議員たちが主査クラスをやっています。そういう意味では、若い人たちが毎週地元に帰って、現場の声を聞いて、現場の感覚でいろいろ提案してくれると思います。この何十人かのチームが一緒になって、党と政府でキャッチボールしながらやりたいと思っています。期待しています。

    角谷:そこなんですね。官邸と内閣だけがものを進めてもうまくいかない。党の言い分を聞いていたら、引きずられちゃう。TPPもそういう議論になりつつありますけども、党と内閣の役割分担がかなりうまくいっているように見えるんです。副大臣から見ると、どうでしょうか?

    西村:例えば、経済財政諮問会議や産業競争力会議で議論があったことは、党の側にもできるだけ伝えて、党の側から出てくるいろんな意見をわれわれ吸い上げて、政府の中で提案したいと思っています。今のところ、そのキャッチボールが良い感じでできているんじゃないかと思います。

    ちょっとさっきの話に戻りますけども、やはり議員には連続当選してほしいと思うんです。かつて小泉チルドレンも80人くらいいたんですけれども、(2009年総選挙で)グッと減って10人くらいになった。今度また戻ってきていますけれども。やはり、継続して国会での経験を積んで、党での仕事で汗をかいたり、政府の中に入ったりということを繰り返しながら、経験も積み、だんだん仕事ができるようになってくると思うんですね。途中で落選して、また通るかどうかわからないような状況ですと、仕事を任せられませんし、経験も積めません。

    日本の政治としては、やはり民主党も同じことですよね。今回ガラッと落ちていますけども、良い人はずっと当選してきてくれるような政治でないといけないなと思います。ぜひ、そこを応援したいと思いますし、仕組みも考えなきゃいけないのかなと思いますね。

    角谷:西村さんのように選挙に強くなってくださいということだと思います。さて、アベノミクスの話をじっくり伺おうと思います。状況としては、政権が発足してから、今ちょうど2カ月くらいです。その間に外交のほうで活発な動きがありました。最初は、アルジェリアの人質事件からスタートしました。その後、日米首脳会談。それから森(喜朗)元総理のロシア訪問。韓国の大統領就任式。外交において、それぞれの役割の人たちの活躍が目立ちました。

    一方で、まだ何もしてないけれども、ムード先行でアベノミクスは非常に風に乗っている感じがします。これを形にしていくためには何が必要か。それから3月の経済状況です。今日、補正予算案が一票差で参議院で通りました。衆議院で予算の自然成立を待つよりも、ここでスタートすると。つまり、この後の本予算に向けて動き出せる。つまり15カ月予算の最初のスタートが切れたと。

    西村:スタートが切れるわけです。

    角谷:こうなっていくわけです。3月以降、どんなことが始まるんですか?

    西村:10兆円規模でお金が出ていきますから、相当な経済効果になります。円安の効果もこれから出てきます。そういう意味では、今年前半はそれなりに景気……。さっきも言いましたけれども、やはり海外の状況に依存していますから、ヨーロッパで何かあると、また大変なことになります。アメリカはそれなりに住宅を含めて良いようですから、期待をしたいと思いますけれども。

    角谷:(アメリカは)雇用も良い。

    西村:雇用も良いですね。ただ、「財政の崖」の問題があるんで、どこかでガクンとくる可能性もあります。そこは要注意ですけれども、海外の状況が今のように安定してくれば、今年は10兆円の予算が出て、円安の効果が出ます。それから年中から後半になると思いますけど、来年4月消費税上がるという前提からすると、すでに一部出ている駆け込み需要があります。今年は、それなりに経済は良いんだと思います。

    ただし来年4月以降、やはり駆け込み需要の反動があったり、消費税が実際に3%上がるとすれば、お金を吸収します。だから、ガクンとならないように、そのために第三の矢である成長戦略です。規制緩和であったり、あるいは特区であったり、いろんなことを打ち出していって、年後半から来年につながるようにする。これをぜひやりたいと思います。

    角谷:財政出動はそう簡単ではないというけれども。どちらかというと、民主党政権時代に同じような補正を組んだりすれば、「何でこんな無駄遣いするんだ」とか、「こんなにお金があるわけないじゃないか」ということになった。やはり今回も借金で財政出動しているわけです。補正も含めてね。

    西村:はい。

    角谷:そういう意味では、財政出動はやめていきたいと。もちろん景気が良ければ、あっと言う間に解決の糸口はつかめるんだと言えば、いつでもその状況はあるわけです。どの政権の時もあったかもしれない。だけど、それが恒常的に続かなければ意味がないんです。瞬間風速でできても無理なんですね。それはどうやるんでしょうか?

    西村:さっきもおっしゃいましたけれども、われわれは増税の前に景気を良くしようと。これが先だと。デフレでずっと不況の中で、そりゃ増税なんてやったらもっと悪くなります。やはり景気が良くならないと増税なんてできませんから、増税の前にやることがある。それは景気回復であり、デフレからの脱却だというのはわれわれの強い意識です。そのために今回借金は多少増えるけれども、しかし中長期的な財政規律を守る。かつての自民党のように、ばら撒きの無駄遣いはしない前提で、今回10兆円規模、数学的には20兆円規模の予算を組んだわけです。

    これはよく評価されて、(国債の)金利は上がっていません。自民党になって、これだけの規模でやって、中長期的に財政規律がむちゃくちゃになるんじゃないかと思われたら、その瞬間に国債は売られて金利が上がります。その状況は今のところありませんので、そういう意味では、まず景気対策を思い切ってやって、景気を良くする、しかし中長期的には財政規律を守って財政再建をやっていくんだという自民党の政策、われわれの姿勢がよく理解をされているんじゃないかと思います。

    ですから、今回は相当思い切ってやると。しかし財政出動はそう何回もできない。しかも中身は、防災のためにどうしても必要な堤防とか、民主党政権の時に予算を減らされて遅れてしまった小中学校の耐震化などを前倒しで思い切ってやること。まず、どうしても必要な防災対策をやる。これが一つの塊ですね。トンネル事故がありましたから、トンネルの点検もやりますし、道路の点検も何万カ所とやります。

    一方で、もう一つの公共投資のグループは、未来に活きるものです。例えば羽田空港の国際化に役立つ工事であったり、ミッシングリンクと言っていますけど、高速道路がつながっていなくて効率が上がらないところをつなげるとか。あるいは、大学の研究施設。iPS細胞なんかもそうですけども、研究棟が足らないところに研究施設を作って、そこで研究してもらう。こういうタイプの未来に活きるような公共投資を今回やっています。

    角谷:民主党が仕分けで「止めよう」と言ったものばかり復活させている感じがします。そうじゃないですか?

    西村:そうなんですよ。ハヤブサもものすごく予算カットされて、何十分の1になった。ハヤブサが何年か経って帰ってきたら、民主党は予算を増やしているんですよ。民主党の悪口を言ってもしょうがないんで、批判はもうしません。だけど例えば、中小企業のものづくりの補助金も民主党でゼロになったんですけれども、今回、1000億円復活しました。ざっくり言うと、1000万円で1万件くらい応援したいと思うんです。新規で商品開発をやったり、試作品を作るところを応援します。何でもかんでも応援するというんじゃありませんから、やはり頑張って何かやろうという人たちはぜひ応援したい。

    角谷:甘利大臣もよく言うんです。「ばら撒きとは違うんです」、「吟味します」、「選びます」と。でも、それがとても大事なんです。またお手盛りにやったり、申請してきたら「いいよ」ってやっていたら、今まで通りの自民党の感じですよ。その違いはどうやっていくんですか?

    西村:まさに未来に活きるかどうかというところを厳選していきます。

    角谷:そうか。未来に活きるか。なるほど。

    西村:未来に活きるかどうかをまず見ます。それから、実際にお金がどう使われて、どういう効果を上げたかというところをぜひチェックしたいと思っています。プラン・ドゥ・シー・アクション、PDCAサイクルというか。これをやりながら、もう一回、自分たちでやったことも反省もする仕組みを入れたいと思っています。

    角谷:でも西村さん、使い勝手の悪いお金だと、「これには使えるけど、こっちには使えない」となる。つまり流用できないと、実は不自由なお金で、「政府から来るお金は使い勝手が悪いんだ」ということは、みんな言いますよ。

    西村:例えば、かつては1000万円の補助金をもらうのに、書類が10センチと言われたわけです。その人件費だけで何万、何十万、何百万使うかもしれない。だから書類はできるだけ簡素化する。だけど、やはり国民の税金ですから、しっかり吟味して良いものに付けるということです。一方で、似たような話ですけども、復興の交付金がやはり使い勝手が悪いという話はある。復興はいろんなことが一遍に起きていますから、やはり進捗状況によって多少流用したり、関連のものに使ったりしなきゃいけない部分は出てくる。だから、復興の交付金はもうちょっと使い勝手を良くしたいと思っています。

    角谷:全然関係ないものに使っていたという問題もありました。だけど、「使っていた物が壊れちゃったんで、これで買いました」というのが、融通が利くと見るのか、関係ないものも買っているんじゃないのかと見るかは相当これ……。

    西村:難しいですね。

    角谷:難しいですよね。その吟味は、復興担当大臣がやれば良いことなのか。それともそれを含めて景気復興なんだというふうにやるのかというのは……。

    西村:「この範囲で」という大枠は、国民の税金ですから、やはり国がやらなきゃいけないと思うんです。ただ、その範囲でどういうふうに使うかは、できるだけ自治体に任せたいと思っています。県や市町村の実勢に任せて、ある程度融通を利かせて使えるようにしたいと思います。

    角谷:そういうところで、震災後の2年間は何か思うようにいかなかった。お金は用意したのに思うようにいかない……。

    西村:不用が出ていますね。使い切れなかった。

    角谷:余っちゃっている。それは余っているわけがなくて、本当は融通の利くお金があれば良かったんじゃないか。そういう意味では、民主党政権の時の予算で組まれたものを、もう一回洗い直して、復興担当大臣とうまく相談しながら、うまく活かしてくれないと。うまくいく人だけ伸びるというのも結構なんですけど。

    西村:みんなにチャンスがないとですね。

    角谷:やはり、少なくても被災者の人たちが後回しにされたり、置いてけぼりにされるようなことでは、こちらもあまり良い気持ちはしませんよ。

    西村:そうですね。もう一つ、復興地域の公共事業も不調と言われるんですけど、入札してもなかなか整わないわけです。

    角谷:そういう話を聞きますね。

    西村:いろいろ調べてみると、やはり人件費がどんどん上がっていて、あるいは建築資材も上がっていて、「予定された金額で取ると、もう全然赤字でだめだ。やってられない」という声が非常に多かった。ですから、人件費や復興の資材の見直しも、もうすでに始めています。それ以外の日本全国、かつては自民党政権も年間3%くらいずつ公共投資は減らしましたけども、民主党政権でガクッと減っていますので、人手がもうないんですね。どんどん解雇されていますし、建設会社の数も減っています。いきなり公共投資が増えるからといっても、できないわけです。人件費がドーンと上がっています。

    角谷:そうなんですね。

    西村:それもうまくやらないと。工事をやってもらうのは必要ですけれども、やってもらったけど赤字でまた倒産になったり、あるいは不調になって工事が全然……。

    角谷:公共事業損じゃ困るんですね。

    西村:そうなんです。

    角谷:「人のためになるから工事を受けたけど、こっちがつぶれちゃったよ」では意味がない。

    西村:公共事業が減っているから叩き合いで取り合っているところもあります。

    角谷:なるほど。

    西村:ちゃんと現状を踏まえた適正な人件費にならないか、また建築資材を高騰しているのであれば、その分をちゃんと見合うような形にならないかと検討し始めています。

    角谷:西村さんは国家強靱化のご担当だから伺います。小泉内閣の時から、公共事業の予算はどんどんカットされ始めました。ですから、もう8年ぐらい前から続いている作業です。公共事業自体が明らかに自民党政権時代の予算からも削減されていった。民主党でガクンとまた下がる。「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズでちょっと状況が変わりました。また戻ってきました。

    国家強靱化、「なんだ、また公共事業中心の自民党政治とタックを組むのか」と思われたけれども、公共事業は最初に土地の買収をしておかないと、上物なんて最後の最後なんです。実は、土地を年々の予算で確保して、やっと上物が最後に建てられると。

    西村:何年か計画でやらないといけない。

    角谷:そうですね。ですから今言ったように人はいなくなっちゃった。建設会社の数も減っちゃった。一方で、土地の買収がままならなければ、上物が建つのはずっと先になっちゃう。それを短期間にやろうとするのか。それとも、やはりスピードは守って、強靱化計画とマッチングするのか。そこら辺はどうなっているんですか?

    西村:もちろん、無理をして手抜き工事のようになってしまったらいけませんから、やるにも限度はあります。しかし、役所との手続きや入札の手続きなど、簡素化できるところはできるだけ簡素化しようということで今回もやっています。そういう意味では、できるだけ早く今回の補正予算の効果が出るようにやりたいと思っています。

    いきなり買収を始めろと言っても無理ですから、やはり何年か計画あるものを前倒ししてやってもらうことが主となります。一番いい例が小中学校の耐震化工事ですね。これは何年かかけて100%やる計画を1年前倒ししようと。来年やろうとしているのを今年やろうとかです。こういうものはどんどん進めたいと思っていますね。

    角谷:その優先順位が今度は実はものすごく大事で、ここに政治主導が活かされないと。役所主導よりも、ここは逆に政治主導だと思っているんですよ。

    西村:そうですね。

    角谷:政治が「優先順位はこれです」「これをやりなさい」というふうにしていかないと。まさに、ここが大事だと思うんですね。だって、やらなきゃいけないことはたくさんあるけど、それをどうするかというのは政治が決めていかなきゃだめだと思うんですね。

    西村:闇雲に何も分からずに、政治が「ああだこうだ」と、計画もないところ「やれ」と言っても無理ですから。やはり、積み上げたものや計画あるものがありますから、それをちゃんと聞いた上で、判断しなきゃいけないということですね。それが真の政治主導だと思いますね。

    角谷:その中で、政治だけで荒っぽくやるのでは良くないと。そのために今回、いろんな会議ができましたね。まず日本経済再生本部。西村さんがいるところでもあります。それから産業競争力会議。それから経済財政諮問会議。いろいろ会議ができました。この役割はどういうもんなんですか?

    西村:まず再生本部は、全閣僚が入っています。総理が全閣僚の意見も聞きながら指示を出す一番の司令塔の部分です。全体の設計は再生本部がやって、マクロ経済の設計みたいなところは経済財政諮問会議でやってもらいます。今の財政再建と経済成長との両立など基本的な議論を経済財政諮問会議でやってもらって、それを受けて再生本部でいろいろ指示を出していくんです。

    もう少し細かい実施設計、細かいミクロの政策みたいなところを再生本部の下に置いた産業競争力会議というところでやります。例えば、国際化をどうやって進めていくのか。競争力のための規制緩和をどうやって進めていくのか。そういった実施設計みたいなところを考えてもらおうということにしています。

    さらに規制改革会議があり、総合科学技術会議があり、社会保障国民会議がある。会議がいっぱいあるように見えるんですけれども、全部連動しています、競争力会議で「こういう規制緩和が必要だ」という球が出てくれば、規制改革会議に投げて、専門家に議論してもらう。あるいは、「こういうテーマで研究開発を進めなきゃいけない」というのは総合科学技術会議で議論をもらう。「社会保障の負担をどう考えるか。その制度設計を考えよう」と諮問会議で議論が出れば、国民会議とキャッチボールしてもらう。

    一番の特徴は、全閣僚が入って総理が指示を出す日本経済再生本部を中心にして、全部の会議を連動させていることです。民主党政権時代のように、いっぱい会議ができて、いろいろ好きなようにバラバラにやって、結論出しても実行できないということではなく、やれることから結論を出して実行していこうと。毎回、総理がそういう指示を出して、全部連動させています。

    角谷:産業競争力会議には民間の人もたくさん入っている。例えば、楽天の三木谷(浩史)さん。それから最近では……。

    西村:ローソンの新浪(剛史・社長)さん。それから、竹中(平蔵・慶應大学教授)さん。

    角谷:高橋洋一(経済学者)さんの名前が出始めましたね。

    西村:いえ、それはないです。

    角谷:ないですか?今日の報道では高橋さんの名前が……。

    西村:競争力会議のメンバーは今、10人ですけど、増やすことはないですね。

    角谷:そうですか。

    西村:あと、コマツの坂根(正弘・会長)さん。榊原(定征・東レ会長)さん。秋山(咲恵・サキコーポレーション社長)さんという女性はものづくりやっておられます。それから東京大学教授の橋本(和仁)さん。それから経済同友会(代表幹事)の長谷川(閑史・武田薬品社長)さん。岡(素之・住友商事社長)さんですね。岡さんには、規制改革会議とつないでもらっています。

    角谷:民間の人から忌憚のない意見があるから、会議の中身は生放送できないので、私どももニコニコ生中継ができないんです。だけども、どういう中身だったかというのは後日……。

    西村:議事録が全部出ます。

    角谷:議事録が出ることになっています。

    西村:相当思い切った議論がなされています。ものすごく刺激的です。

    角谷:日本は変わるなという感じを受けますか?

    西村:そうですね。今日も総理からTPPの報告、訪米報告を言い渡させていただいて、それに対してご意見いただきました。基本的に賛同していただいていますけれども、さらに、「もっといろんな点、こんな点に注意すべきだ」ということも相当出されました。そういう意味では、叱咤激励、応援団でもあり、一方で相当な注文もいただきます。それをわれわれこなしていかなきゃいけません。これをこなしながら、総理が各閣僚に指示を出していくということになっています。今は良い循環になってきていると思います。

    角谷:高橋洋一さんの起用を検討するという報道が今日出たんです。そんな話も出てきている。

    西村:私は聞いていませんし、承知していません。

    角谷:そうですか。そんな記事が出ているようです。まあ、そんなこともいろいろあって、兎も角、いろんなところの声を出している人の英知を入れ込もうと。春闘の最中で財界と連合ではもう賃金を1%上げるなんて無理と言われていたけど、2月1日に甘利さんに出ていただいた時に、「そんなの待っていないで、何か目に見えたものが経営者だけじゃなくて、サラリーマンにも、働いている人たちみんなにもいきわたるように」と。

    そうしたら、ローソンがボーナス3%アップすると。景気に関わらず、業績に関わらずやりますと。メンバーだから言ったのかなと思いましたけれども、これは最も良い話で、20代後半から40代のモデルケースで、だいたい15万円くらい春と冬の賞与でプラスになると。3人くらいお子さんがいる家庭だと、30万くらいプラスになると。こんな数字がモデルケースで出てくると、やはり生活しているお父さんたちは、ちょっと良くなるかもしれないなと考えますね。だけど、消費税が増税になったら3%くらいは消えちゃうんじゃないかという不安がある。つまり、相殺されてしまうと。

    こういう不安と期待が今入り交じっているけど、まだお金がちゃんと手元に届いてない状況です。僕はローソンの新浪社長が頑張っているし、最初に手を上げることは大変なことだと思います。だけど一方で、コンビニはアルバイトの人もたくさんいる。派遣で働いている人もいるのかもしれない。いろんな働き方があって、パートの人も多いでしょう。いろんな形で、実は正規の社員じゃない人たちもたくさん働いている。それはもちろんローソンだけじゃない。そういう働き方をしている業種はいっぱいあります。

    安倍さんも「良くなってきたところから給料上げてくれよ」と財界に投げかけてくれた。甘利さんもそういうアプローチをしてくれている。連合や組合の言うことは聞かないかもしれないけど、安倍さんに頼まれたら、「分かりました」と。そうしたら、「安倍さんに期待しようかな」と思う人増えるかもしれない。でも、みんな正規社員の人たちのことなんですよ。今は、たくさん働き方があって、そういう人たちばかりじゃないということを分かってもらって良いですか?

    西村:はい、ありがとうございます。まず、総理からお願いをして、ローソンをはじめ、いくつかの企業はもうすでにやってくれています。ベースアップという基本の給料を上げていくことは、競争があってなかなか難しいところもあるんです。業績の良くなった分はボーナス、一時金で出してもらうということは、多くの企業を賛同してくれています。これはそれなりに今回やってくれると思うんですね。それは一つですね。それから、おっしゃったように働き方が多様化しています。

    角谷:だって時給で働いていたらボーナスないんですもん。

    西村:ええ。いろんな働き方があるのに、正規か非正規かというこの二つしか分かれていないわけですよね。これがもう少しきめ細かにできないかというところは……。

    角谷:多様化ということを認めていく……。

    西村:多様化に応じて、認めて、できないか。例えば、自分は正規になりたいけども、転勤があったら嫌だとか、責任持たされるのも嫌だとか、もう少し何かやりたいけども非正規のほうが楽で良いやという人もいます。そういう意味では、正規と非正規の間に準正規みたいな、ちょっと転勤がないようなものとか、そういう正規社員みたいなものを作れないかとか。

    角谷:地域採用というところね。なるほど。

    西村:地域採用とかですね。今いくつか工夫、検討を始めています。単に正規か、非正規かだけで分かれないようにしたいなと思っています。それからローソンもそうですけど、トヨタなどの期間工、一時的に働きに来た人もそうです。ローソンのアルバイトの人もどんどん正規社員化を希望者しています。そういう仕組みをもう少し流していくようなことも考えたいなと思っています。

    それから、いわゆるフリーターの人たち、アルバイトの人たちも含めて、私は初当選の時からずっと取り組んでいますけども、いわゆる「トライアル雇用」です。企業に一部補助金出して、3カ月や半年間、雇用を試しにやってもらい、お互い良ければ正社員になるという仕組み。この仕組みでもう何十万人という雇用がこの10年間で生まれています。こうした仕組みをもっと取り入れられないかとか。

    これからの課題で言えば、インターン。日本では、大学生のインターンってあまりないですよ。うちの事務所には、アメリカから学生が来て、インターンで単位を取ったりしています。夏休みに働きながら、学んで単位が取れる。インターンで実際の仕事を学んで、その企業に就職するという仕組みを少し具体化できないかなと思っています。

    角谷:それこそ、このいろんな会議には財界の偉い人、会社の社長さんがいっぱいいるわけでしょう。でも、エントリーシートや履歴書を出して選ぶのは、実はその会社の人事なわけだから。「君、この間何やっていたの?」「西村君、落選して浪人時代あるけど、収入もなくて、この間何やっていたの?」となるわけでしょう。つまり、いろんな人生あるじゃない。

    それから、例えば浪人したのが1、2年あったからといって、別に人生だめになるわけじゃない。新卒で就職できなかったから、人生だめになるわけじゃない。それはみんな知っているのに、でも企業には「昔から、そうしています」とか、「この学校以外、うちは取っていません」とか、そんなことばっかり言っている人たちがいる。もちろん企業として、「それは必要だ」と言うなら良いけど、世の中がもうそうじゃなくなっている。そういうことも言ってくれているんですか?

    西村:そういう企業はだめになるんですよ。

    角谷:だめになるの?

    西村:だめになる。

    角谷:なるほど。

    西村:もう変わってきていますから。例えば、統計で明確に出ていますけども、女性をたくさん採用して、女性の役員が多い企業ほど業績は良いとか。かつてとは全然違ってきています。

    角谷:先週の21日ですけども、厚労省が発表したところによると、女性の給与は今、男性の7割まで迫ってきている。つまり、男女雇用機会均等法ができたというよりも、優秀な女性がたくさんいるんですよね。ところが、「君、まだいるの?」みたいなパワハラとセクハラが交じったような社会がずっとある。働き方がこれだけ変わっているのに、まだそんなこと言っている会社はだめになりますよ。

    西村:だめになる。もうだめになると思いますね。自然淘汰でだめになっていきますから、若い人たちもそんな企業にこだわっちゃだめなんですよ。もっと大胆に、いろんなことをやってくれる企業、あるいは新卒に限らずいろんな時期に採用してくれる企業もたくさんあります。大きな企業だけじゃなくて、中堅企業でも良い会社はいっぱいありますので、もっと目を見開いてやっていただきたいと思います。それから、もう一つ、希望する学生は全員留学に行けるということを今やろうとしています。希望したら、全員海外に行ける。これをぜひ打ち出したいと思っています。

    角谷:そんなプランもあるんですか?

    西村:今、それを検討しています。例えば民間にも多少資金を出してもらって、国からも3分の1出す。残り3分の1は奨学金的な形で、無利子の融資でもいいですよ。就職してから返してもらえば良いので。

    角谷:つまり、チャレンジしたい人たち、留学したい人は行けると。

    西村:例えば、年間300万円費用がかかるとして、国が100万円を出せばいいわけですから。1万人に出して100億ですよ。10万人に出して1000億ですよ。たいした金額じゃないんですから、どんどんグローバル化して、海外に行きたい人は行ってもらう。このようなことも、ぜひやりたいと思っています。海外からも、良い学生が日本に来てくれて、切磋琢磨してやってほしいと思います。安倍総理の言われる「次元の違う政策」をいろいろ……。

    角谷:次元が違うんですね。

    西村:次元が違う政策を出していきたいと思っています。だから企業も次元が変わらないと今まで通りやっている会社はもうだめになります。

    角谷:「いつやるか?今でしょ」というフレーズも今流行っていますけど。つまり、そういうタイミングに来ているということですね。

    西村:そうですね。

    角谷:そういうのは西村さんのプランから出てくるんですか?それとも会議から出てくるんですか?それとも役所から出てくるんですか?

    西村:それはもうすべての英知、知恵アイデアを結集しています。もちろん役所の若い人たちからも出てくる。私もいろいろ意見を出す。それから、産業競争力会議とか諮問会議からもいろいろ意見が出てくる。もちろん甘利大臣は大臣で思いを持っておられる。これを全部結集してやろうとしていますので、別に誰が言おうと関係ないです。党の1年生であっても意見言ってもらえれば、良い意見であれば採用したいと思っています。

    角谷:でも西村さん、そういうのはとりあえず盛り上がって活性化するような気がするんですよ。だけど、「先生、ご発言は大変結構なんですけど、私どもの政策としては」「西村さん、そんなこと言うと先生の経歴に傷がつきます。おやめになったほうがいかがでしょう」と何とか省が言ってくるんじゃないですか?

    西村:役所の抵抗や役所の縦割りを廃止するのが内閣府の仕事です。

    角谷:しびれる発言ですね。本当ですか?

    西村:それが内閣府の仕事です。もう総理になったつもりで指示出さないといけない。甘利大臣もやられていますし、私もそのつもりでやっています。

    角谷:でも、過去にも内閣府で特区構想をやろうとか、いろんな人たちが一生懸命やっていて、それでみんな協力してくれなくて、梯子を外された形でがっかりして終わっていくというようなこともたくさんありました。

    西村:ありましたね。

    角谷:ある意味では、行政改革だとかいろんな改革をやろうと言っている、今「みんなの党」の代表になっている渡辺喜美さんだって、前回の安倍さん時に行政改革担当大臣やったけど、誰も付いて来てくれなくて、怒って辞めちゃったということがありました。本当に最後まで梯子を外さないんですか?

    西村:一つは、今、7割近い支持がありますから、総理の政治姿勢に対してこれだけの国民の支持があるということは非常に大きな強みです。ただ乱暴にやる気はなく、丁寧に議論は積み重ねていきたいと思っています。あまり拙速に、まさに変な政治主導みたいなことをやりたくないんです。各役所がいろんな抵抗あるでしょうけど、その意見は聞きます。しかし、そこは丁寧に説得して、方向性は変えずにやりたいと思っています。かつての自民党政権では、やや無理して強引に社会保障費削減をやったことある。そういう反省の上に立って、方向性は出しつつ、TPPもそうですが、やはり丁寧に話して了解してもらいながらやる。

    角谷:その辺、僕らは忘れていたけど、自民党の中では「今までの自民党は良くなかった」という反省がいっぱいあるんですかね?

    西村:かつての自民党を反省して、新しい自民党でやらないと、もう次の選挙はないです。別に選挙のためにやっているわけじゃないですけれども、日本の将来はないと思っていますね。

    角谷:評価はもらえないと。なるほど。そうすると、衆議院選挙に勝って、安倍政権ができて、自民党はもう満足しちゃったのかと思っていたけどそんなことない。

    西村:自民党にとっても、ラストチャンスですよ。これでできなかったら、われわれはもう次はないし、日本の将来もないと思って今やっています。相当思い切った方向性を出したい。しかし、単に強引に方向性だけ出すというんじゃなくて、丁寧に説得しながら実行していきたいと思っています。やれることはもう今すぐ実行していくという姿勢でやっていっています。

    角谷:さて、全体的にはその責任の範疇(はんちゅう)じゃないかもしれませんけど、成長戦略の中ではTPPという問題があります。施政方針演説では、総理から踏み込んだ発言があるんではないかというふうにも言われています。日米首脳会談を受けて、総理は今日の参議院でも説明を一生懸命していました。成長戦略の中で、TPPはどういう位置付けなんですか?

    西村:TPPというと、関税交渉が一番メインのように思われています。もちろん、これはこれですごく大事です。日本から輸出していく上で、アメリカを中心に諸外国で関税あるものについては下げてもらうことは大事です。日本の関税が比較的高い農業についても、「ゼロにしろ」と言われたらこれ大変きついですから、やはり日本としては、一定の例外品目は必要です。

    アメリカの農業は日本の農業規模の90倍くらいあって、オーストラリアは日本の1500倍ありますから。そんなところと対等条件で戦えと言われても、なかなか無理。いくら日本のものがおいしいとは言えです。そこは一定の例外も必要ですし、もし自由化するとしたら一定の予算措置なり支援策も必要だと思います。構造改革も必要になってくるでしょう。

    しかし、関税の議論はごく一部で、投資をした時にしっかり保護をしてくれるとか、知的財産を守るとか、政府調達ちゃんと公平なルールでやるとか。つまり21世紀の新しい時代の国際経済、貿易、投資のルールを決めていこうという枠組みなんですね。同時に日本はEUとも議論を始める。アメリカはEUと議論を始める。つまり、日本・アメリカ・EUもほぼ同時にそういう議論を始めていく。

    角谷:つまり、二国間FTAみたいなのがいっぱい結ばれるのとTPPは同時進行と?

    西村:同時進行。しかもその中にはオーストラリア、カナダ、シンガポール、先進国はほとんど入って、そこで新しいルールを決めていくという。これがすごく大事でして、世界の枠組み・ルール、特にアジア太平洋でのルールが決まっていく。これを将来、知的財産や投資などで、中国や新興国に守っていくように促していくのが大事なことだと思っています。中国に投資をしたは良いけども、すぐ道路ができるからと没収されたり、例のレアアースにしても民間同士で契約をしているのに、いきなり入ってこなくなった。こういう国際ルールを無視したようなやり方をやめてもらう。国際社会の一員として、ルールを守ってもらうことを新興国に言っていかなきゃいけない。その一つのベースになっていく新しい時代のルール作りがものすごく大事です。そこに日本が入らないわけにはいかないし、主体的にルールを作っていくと。できることなら日本の国益に合うような形のルールが良いに決まっていますから。そういう主張をしていく。

    角谷:だったら、日本がTPPなんて入るんじゃなくて、ロシア、オーストラリア、中国も入った、もっと大きなこれから可能性がある貿易のグループを、日本が策定してイニシアチブを取れば良いじゃないですか?

    西村:日本がイニシアチブを取ってやったのが、APEC(アジア太平洋経済協力)なんですよね。APECも同じ枠組みで、2020年に自由化しようという方向で議論進んでいます。われわれはすでに合意文章をAPECの中で結んでいますので、2020年貿易自由化、投資の自由化って言っているわけですから、ある意味TPPと同じような議論をやっているんです。

    角谷:こちらのほうが相手にしている国の可能性が広いんじゃないですか?

    西村:広いからなかなかそう簡単に進まないんで、むしろ雄志が集まったTPPのほうが議論は早く進んでいくわけですよね。

    角谷:なるほど。

    西村:そういう意味で、私はTPPというのは一つのプラットホームになっていくと思う。TPPがベースとなって、EUやオーストラリア、カナダが入って、さらにASEAN(東南アジア諸国連合)+6やAPECの議論のベースになっていくんだと思うんです。

    角谷:13カ国とか20カ国とかに広がっていますね。

    西村:日本はしっかり主張して、国益に合うような形を作っていくことが大事だと思います。もちろん、やはり農業はこれ守らなきゃいけない部分があります。北海道、東北を中心にもう大規模にできるところはやってもらうとしても、私の地元の淡路島もそうです。総理がよく言われる、下関から日本海側の棚田ですね。中山間地域。

    角谷:淡路島のタマネギおいしいからね。

    西村:タマネギはおいしい。タマネギはもう競争していますからね。これは強いんですけど。しかし中山間地域で棚田のところはいくら規模を大きくしろと言ったって、できませんから、地域の特性とか品目別にいろいろ対応していかなきゃいけない部分もあります。農業の持っている多面的機能ですね。国土保全、自然との共生。都市農業でも一定の安らぎを与えてくれていますし、防災的な機能もあります。そうした機能も評価していかなきゃいけないんだと思いますね。そのための支援策は、ぜひやりたいと思っています。

    角谷:そういう意味では、自民党の農業をベースにしている選出の議員の先生たちは……。

    西村:私もそうです。私も農業をベースに。

    角谷:反対している人たちが多い。それから地元の県会、市会の議員だって、なかなか納得できないという声も強い。条件闘争に入っていくならば、政権としては、しめたものかもしれませんけれども、まだなかなかそんな甘いものじゃなさそうですよ。

    西村:条件闘争とかそういうことじゃなくて、TPPあるなし関わらず、安倍総理もまったくそう思われていますけど、農業は成長産業として絶対生まれ変われる。放っておくと高齢化していく私の地元もそうですけれども、65歳、70歳の人が一生懸命やって元気ですよ。元気ですけれども……。

    角谷:後継者の問題がありますね。

    西村:後継者がいなくて、跡をどうするのか。この5年、10年の間に集約化できるところで集約化してもらう。それも集約化しようにも飛び地になっていたりするんですね。若い農業者とも議論しますけれども10ヘクタール、20ヘクタールやっているんだと言っています。よく聞いてみると、飛び地で効率性が上がっていないんです。それをどうやって土地交換したりしながら集約化していくか。農業委員会、農協、市町村と窓口も1カ所になってなかったりします、ワンストップで行けるように、いろんな情報が集まってそこでできるようにするとか。例えば地方の都市公社みたいなところでやってもらうとか。

    あるいは一時、都市部の開発で民都機構(民間都市開発推進機構)というものを作ってやってもらいましたけど、農業版民都機構的な集約化をしていくための機能。土地の公社、県の公社ができれば良いですけれどもね。いろんなアイデアを使いながら、この5年、10年の間でできることはできるだけ集約化していこうと。

    やはり、地域をよくわかった農協の力も必要です。農協は農協で去年ファンド法というのを作って、今年補正予算でも追加していますけれども、農業者が何かやりたいというときに、例えばカゴメやキューピーとかそういう商工業者と一緒になって、付加価値を付けて全国展開する、海外に売っていく。そういうところを支援するのに農協も出資してもらうと。そういうスタイルの投資銀行的な投資家インベストをやってもらう。そういうところも農協に新しい機能として頑張ってもらいたいなと思うんですけれどもね。

    角谷:なるほど。最後に、一言で言えっていうのは難しいですけど、このアベノミクス、中長期的には今までの仕組みはどんどん変わるという話はずいぶん伺いました。公共事業にしても、農業にしても、それから留学だとか、文科省の政策も大きく変わるのかもしれない。そういう意味では、その先どんな国家像を描いて、アベノミクスをやっているんですか?

    西村:一つは、時代の変化において変わらなきゃいけませんけれども、伝統的に引き継いだ日本の良さ、伝統文化であったり、地域の共同体であったり、人と人との信頼関係であったり。この日本人としての良さ、強みは絶対忘れちゃいけないんです。日本の良さを守りながら、しかし時代はどんどんグローバル化して、インターネットもこれだけ広がってきていますから、やはり国際社会の中で活躍できる人であったり、企業であったり、それから日本で勉強したい、仕事したいという海外の意欲を持った人たちはぜひ来てもらって、切磋琢磨をしてやる。ある意味、開かれた保守というか、開かれた共同体というか、そういう国家でありたいなと私自身は思っています。安倍総理もやはり日本の良さは大事にしたいと思っておられると思いますね。

    角谷:はい。メールを頂いています。質問があります。神奈川の男性です。先ほどの議論の先にあるものですね。もう少し具体的なことだと思います。「最近アベノミクスの影響か、円安や株価が上昇していますが、いまだ僕のような一般市民には実感がありません。そのような時は来るんでしょうか?また、それはいつごろですか?」。

    西村:これまでの景気の回復、過去の経験で言うと、賃金が上がってくるのは少し遅れてきます。それから地方に波及してくるのも遅れてきます。大企業が良くなった後、中小企業に裨益(ひえき)するのも遅れてきます。だけど、できるだけスピードアップして、同時にいくようにしたいと思っています。だからこそ賃上げをお願いしたりしています。それが一つですね。

    それから、これまでは雇用か賃金かというときに、日本経済全体として雇用を取ってきたんだと思うんですね。失業率そんなに上がっていません。しかし、その分賃金は下がってきています。ある意味、二者択一で雇用のほうを優先してきた面があると思うんです。今回われわれは二兎を追いたいと思っておりまして、雇用もできるだけ維持拡大したい。しかし、賃金も上げていきたい。これはインフレになる以上、当然上がっていってもらわないと困ります。そういう意味で、これまで雇用だけを守ってきたところを、次元を変えて、両方追い求めていきたいと思います。そう遠くない将来、果実が行き渡ると思います。ぜひ頑張りたいと思います。

    角谷:なるほど。京都の男性からです。「先日、日銀人事案が発表になりましたが、この人事案はアベノミクスの成功たらしめるために十分だとお考えでしょうか?」。

    西村:黒田(東彦)さんは国際感覚豊かですし、金融緩和に対して積極的です。それからある意味、財務省出身で財政規律を守る。財政ファイナンスはしないというメッセージにもなりますから、そういう意味では、総理の選ばれた人事として、すばらしい方だと思います。それから私が財金部会長の時にも部会に来てもらって、金融緩和の議論をしていただいた岩田規久男先生(経済学者)も、リフレ派というか金融緩和派の第一人者ですから、相当メッセージが出ると思います。とは言っても、日銀の組織をやはりしっかり運営していかなきゃいけません。

    角谷:独立性も保たなきゃ。

    西村:保たなきゃいけないということで日銀出身の方を入れた。そういう意味ではバランスの取れた人事だと思います。

    角谷:なるほど。愛知の男性です。「西村さんはアベノミクス始動後、どのようなところで一番効果が出てきているとお考えでしょうか?また次、強化したいところはどんなポイントでしょうか?」。

    西村:政策を発表して、金融緩和、財政出動機動的な出動、それから成長戦略。これに対する期待感で人々の気持ちが変わったところです。株も上がり、円高も修正されてきたことは、まず一番の効果だと思います。マーケットがしっかり反応している。株価と経済成長は過去を見ると、見事に半年後パラレルに動きます。株価が上がったということは、半年後の経済も上向いてくることの兆しであります。先行市場ですから。そういう意味では、期待感先行ですけども、われわれがしっかり政策をやれば、経済も必ず良くなるというところです。

    先ほどからお話している通り、第一の矢で金融緩和をやっても、そのお金を使ってもらわなきゃいけない。その呼び水の第二の矢の財政出動をやったと。しかし、これは何度もできない。三本目の矢で規制緩和なり、特区なりの成長戦略で、企業がお金を使おうと資金需要が出て、インフレ期待が起こることで、物価も上昇して、経済も本当に良くなっていきますから。三本目の矢、規制緩和、特区、成長戦略を。

    角谷:6月に骨太の方針を出すんだと思いますけど、もう矢継ぎ早にいろんなものやって、多岐にわたる分野にやらなきゃだめなんですよね。

    西村:そうなんです。ですが、6月に骨太と成長戦略もまとめますけれども、それを待っているわけじゃなくて、やれることはもう全部やっていこうと。例えば薬事法の改正も7月の緊急経済対策に入れてももう走り出しています。医療機器とか再生医療も規制改革をして、もっと進むようにしようということも打ち出して、ぜひ早くやりたいと思っています。それから雇用の話もいくつか賃金上げも要請もしました。できることは次から次へ、ぜひやっていきたいと思っています。それをマーケットは見ていますから、それに応えていきたいと思っていますね。

    角谷:なるほど。ということで西村副大臣にいろいろ伺いましたけれども、今いろんな話をした中で、ニコニコのユーザーのみなさんに「これはもっと強調しておきたい」「これは言い忘れた」というところがあれば。どうぞカメラ目線で。

    西村:今日は経済政策を中心に話しましたけれども、私は拉致問題とかPKOとか安全保障の問題にも関わっています。この安全保障面についても、次元の変わる政策を安倍政権は打ち出しています。集団的自衛権であったり、あるいは防衛費を増額させたこと。あるいは普天間を基地の移設を進める。これらのことをオバマ大統領に安倍さんから言って、オバマ大統領がものすごく評価をしてくれたわけであります。

    そういう意味では経済も次元が違う。安全保障も次元が違う。これまでの日本が内向きで、しかも縮み思考で経済も伸びなかった中で、ガラッと変えて、外に目を見開きオープンに、そして日本のやれることは経済も安全保障もやっていこうという。新しい世界のリーダを目指してやっていくと。世界の中で信頼され、尊敬される国になろうというところを、経済だけじゃなくて安全保障面でもこれからやっていきたいと思います。

    角谷:前回の甘利大臣に続いて、今回、西村副大臣に出ていただきました。これは第2回日本再生会議といってニコニコ動画で何弾もやっていこうと思っています。分野が多岐にわたりますから、いろんな閣僚のみなさん、内閣で働いているみなさんにここに来ていただいて、お話を伺うというのもさることですけれども、甘利大臣や西村さんには何度も出てもらおうと思っていますから。

    西村:喜んで。

    角谷:ちょっと停滞していたり、あまりスピードがアップしていませんよということが起こるだけで呼びますから。

    西村:はい。分かりました。

    角谷:また来ていただけますかね?

    西村:はい、わかりました。

    角谷:今日はやっていただいて、どうですか?

    西村:喉が渇きましたね(笑)。

    角谷:そうですか(笑)。

    西村:暑苦しいですもんね(笑)。すみません。

    角谷:すみません。だけど期待は大きい。その期待が大き過ぎると。この間、麻生さんが民主党を皮肉って言っていましたけどね。期待が大きすぎると、うまくできなかったときに落胆も大きいと。だから、もう休んでいる暇はないんです。本当に今このメンバーのみなさんだけじゃなくて、閣僚のみなさん、それぞれ頑張っているのがよくわかるんですけれども、やはり国民一人ひとり見えてこないと実感が湧かない。頑張っているだけじゃ、「政治家、それ仕事だろう」と言われちゃう。結果を出さなきゃいけないところが、参議院選挙で評価されるんでね。選挙のためにやるわけじゃなくても、参議院選挙という中間試験があるみたいに思われていますから。

    西村:そうですね。結果をぜひ出したいと思います。

    角谷:そこはやはり出さないとだめだということも含めて。ここで分からないこと何か動きがあったときには、また来ていただこうと思います。今日はどうもありがとうございました。

    西村:よろしくお願いします。どうもありがとうございました。