いつもとちょっと違う水曜、今回は気楽に重いネタの[S]です。
日本が潜水艦をオーストリアに輸出するという計画は、フランスに阻まれたそうです。
鯨にこだわり、潜水艦逃した安倍政権のお粗末 中国の圧力も(木村正人)
とりあえずはよかったというところでしょうか。
日本人には想像がつかないでしょうが、アメリカで研究するということは、多なかれ少なかれ、人殺しに加担するという覚悟が必要です。アメリカでは軍事研究が盛んですし、実際に人を殺してます。たとえばドローンが中東でばんばん人を殺します。
ドローンに関連する技術を想像するだけでも、それがいかに広範囲であるかわかると思います。
私は日本で高速ビジョンの開発に関わって、のほほんと卓球の球追えて「たのし〜」とかやってますが、アメリカだったら間違いなく軍需に応用されます。
画像認識だ人工知能だって流行りの分野にしても、間違いなく軍需と地続きです。
アメリカでは警官が犯人を射殺することも普通で、正義のもとでの殺人は日常です。アメリカ人は生まれてからずっとそういう世界で暮らしていますし、科学者として研究していれば、直接的に国防省の予算で研究することもありますし、その周辺も地続きに裾野が広がっています。「私は国防省の予算では働かない」と、そこだけ突っぱねて自分だけ綺麗な身でいようとしても、多分間接的には関わることになるでしょう。アメリカには、研究を軍事研究とそうでない研究を隔たらせる壁がありません。
一方日本人が日本で研究している場合は、軍事研究をしないと宣言し、防衛省の予算を取らないということができます。実際そう宣言している大学や研究者は多くいます。
しかし、最近は防衛省予算に前向きな大学や研究者も増えています。たしかに一口に防衛省といっても、自衛隊をみればわかるように防災も重要です。たくさんの研究・開発が必要です。軍事研究といっても、あくまで自衛のためという大義名分もあります。もし仮に、自衛隊が海外で人を殺さねばならない状況に陥ったとしても、それは日本国民全員の問題であって、その兵器の開発に携わった科学者が槍玉にあがることもないでしょう。
しかし、輸出するとなったら話は別です。いったん日本の潜水艦が海外に渡れば、それが人を殺すかどうかはその国が決めることです。私たち日本人がいくらやめてと言っても、武器を売っておいてその言い草はなんだと失笑を買うだけです。
日本人のほとんどすべての科学者は、自分が人殺しに加担する可能性など考えたこともないでしょう。おそらくアメリカに研究に行った人のほとんどもその可能性を考えないまま行ったことでしょう。私もまったく考えてませんでした。
東大発ベンチャー「SCHAFT(シャフト)」は国防省のコンテストに出て、google に買収されましたが、それはつまり兵器としてのロボットに使われるということです。ドローンが人を殺しまくっているように、いずれそこから生まれたロボットが人を殺しまくることを覚悟しなければなりません。
アメリカに行った人は、それぞれが自分が殺人に加担するという現実を受け入れれば済む話ではありますが、日本で研究をする人にとっては、まったく想定に入っていないことでしょう。
しかし、防災のための防衛省の予算で研究をしたら、それがいずれ兵器に転用され、しかも輸出され、それが正義の名の下に人を殺すことはもはや絵空事ではありません。すでに海外との共同開発は進んでおり、F35の部品を輸出したりしています。まあ、そういう企業で軍事研究している人たちは、もともと覚悟していることでしょうが、今後はそれ以外の研究者にも広がっていくかもしれないのです。大学も防衛省の予算に前向きだし、国は武器を輸出したくてたまらないからです。
今回の潜水艦は輸出されませんでしたが、科学者は一人一人、自分の研究成果が人を殺す可能性を認識し、加担したくない人は注意深く行動することが求められる時代になってしまったのです。
関連記事
日本の研究者が人を殺す日〜研究者は自衛せよ〜
《ワンポイントミライ》(?)
ミライ: [S]なので出てくるつもりではなかったのですが。
フツクロウ: ホ?
ミライ: みてください、さっき出てきたこの記事。