のどかな時代は終わりました。日本の全研究者は自分が人殺しになる可能性を念頭に置きながら、自分のキャリアを考えなくてはいけません。
東大、軍事研究を解禁 公開前提に一定の歯止め産経新聞 - Yahoo!ニュース
東京大学浜田純一総長が禁じてきた軍事研究を解禁したことが日、分かった。東大関係者が明らかにした。
東大は解禁理由について「デュアルユース研究は各国の大学で行われている。研究成果の公開性を担保する国際的な動向に沿った形で、ガイドライン改訂を行った」
他の国もそうだから、という凡庸な思考で合わせてしまいました。逆にうちはしないと世界に発信すれば、それを求めて世界中から優秀な研究者を集められたでしょうに。
これまで日本から離れて研究をするということは、自分の研究が兵器を作ることになる可能性を常に抱えていました。日本で受け止めてあげることができず、アメリカに行ってしまった東京大学のロボット技術。彼らは、そもそも軍事予算を獲得するためにアメリカを目指しました。アメリカで研究は続けられますが、殺人ロボットにその技術が使われるのは不可避です。彼らは重い運命を背負ったのです。
受け入れ先はグーグルだからとか、なんの気休めにもなりません。アメリカの軍事予算は兵器かとか防衛かとか垣根ありません。無人飛行機技術では、アマゾンが配達事業をまだ始められていないのに、そのずっと前に、外国に飛んでってばんばんミサイル撃つ飛行機が活躍しています。
自分はたとえばソフトウェアエンジニアだからとか分野で安心することはできません。機械学習の研究をしていたら、「もっとも人を効率良く殺していく」アルゴリズムに使われるかもしれません。
ですから海外、特にアメリカに行って研究するということは、自分の研究が将来人を殺す兵器に使われるという可能性を受け入れるということです。
日本でも軍事研究はありますが、これまでは軍事研究といっても、防衛に関わることだから、まだましでした。
しかし、これももう甘い考えになってしまいました。日本で潜水艦の研究に携わっている人は、今年冒頭のこのニュースに脳天を打ち砕かれたのではないでしょうか。
日豪潜水艦を共同生産…船体、分業で 防衛省が提案
日本の潜水艦技術は世界でもトップレベルでそれは誇らしいといえば誇らしいですが、このまま進むとオーストラリアとの共同開発が始まりそうです。
これが何を意味するか。いままで防衛のために日本で研究していた人は、自分の研究がオーストラリア潜水艦に使われ、ある日テロとの戦いとか言って西の方のどっかにいって、攻撃を始めるかもしれない不安をこれから先ずっと抱えなければならないのです。ある日突然兵器開発の片棒を担がされたのです。
もちろん日本だって集団的自衛権の問題が出てきていて、日本の潜水艦が西の方のどっかで外国を攻撃する可能性はありますが、少なくともそうなる前に日本の中でたくさんの議論がされるでしょう。一研究員の問題ではなく、全国民の問題として共有できます。一緒に苦しめます。
しかし、オーストラリアに渡ったら、そんなわけにはいきません。オーストラリアだって好き好んで攻撃したくないでしょうが、いずれにせよ日本とは無関係です。もしオースラリアの潜水艦が人を殺したら、日本の潜水艦研究者は、自分の研究が人を殺したという業を背負うことになります。
いままで日本で研究していれば、自分の研究が人を殺すリスクなどほとんど考える必要はありませんでした。実際考えた人なんてほとんどいないでしょう。東大のロボット「シャフト」がグーグルに行った時も、日本は大騒ぎになりましたが、それが将来兵器になる無念を表明した記事はほとんどないはずです。
そもそも若者はどんどんアメリカに行って研究すべきという人はたくさんいるけど、でもそれは兵器になる可能性があるからねと忠告する人もほぼ0です。
しかし、日本にいたって、自分の研究が兵器を作る可能性を考えなくてはいけない時代になってしまったのです。
これから先、日本の研究者、そしてこれから研究に進もうと思う人は、それぞれが自分の研究が兵器にならないよう慎重に自らの研究キャリアを決めなければなりません。
逆に日本中の大学は今大きなチャンスを持っています。国内外に高らかにうちは軍事研究はやらないと宣言すれば、世界中の優秀なでも兵器なんか作りたくない研究者を集められるのです。あるいは研究室単位で宣言してもいいでしょう。なんか共通のロゴ作って貼るようにすればいいのではないでしょうか。
これまでは日本の軍事予算は防衛のためだったから、ま、軍事研究も必要か〜とあやふやなところがありましたが、もう違います。先の潜水艦の方針が打ち出されたことで、日本の軍事予算も外国を攻撃するために使われるであろう見通しが立ってしまいました。集団的自衛権の行方によっては、自衛隊も海外で他国を攻撃することになるでしょう。