前回

 話題の『マインドフルネス』の本当の意味  

では、『マインドフルネス』などの瞑想法が、私たちの「言葉を使わずに考える力」に気づくきっかけになるという話をしました。

 「言葉を使わずに考える力」は特殊な力ではありません。

 たとえば、今日のランチどこに行くかを決めてくれてる力なのです。ランチどこに行くか、言葉で理詰めで決めますか? 普通は仲間とのやり取りの中で、あるいは一人だとしても、なんとなくこれだって決まっていきますよね。

 その選択は、そのランチがどれくらいおいしくて楽しくなるかという、とても大事なことでありながら、それを決めるプロセスを言葉で説明することは難しいはずです。

 仮に言葉にしようとすれば、実にいろんな要素を考慮していて、それを羅列することにうんざりすることでしょう。

 なのに「今日はうまく選べて、美味しくて楽しかった!」選択をかなりの確率でやってのける、それが「言葉を使わずに考える力」です。

 そして、その力に意識を向けるのが瞑想なのです。

 しかし、なんか瞑想って大事なんだろうなと思っても、とにかく瞑想って難しいです。

 瞑想挑戦した人たくさんいると思いますが、「だから何?」で終わってしまうことが多いのではないでしょうか。

 瞑想の究極の姿は、以前一時的に左脳を失った科学者ジル・ボルト・テイラーさんの話を紹介しました。

 一時的に左脳を失った科学者の話が悩ましい  

 この人は一時的な脳の損傷で言葉を失ってしまいます。その途端、言葉を使わず考える右脳を使うようになったのですが、そうすると自分と外界との境界がなくなり、素晴らしい幸福感に浸れたというのです。

 瞑想とは、言葉で考えることをやめて、言葉を使わずに考えることです。「考える」という言葉が引っかかるなら、言葉を使わずに「感じる」ことです。言葉で考えるとは、過去→現在→未来と順序立てて考えることであり、言葉を使わずに考えるとは、現在の自分の周りをまるごと感じながら考えることです。

 ですから、瞑想が成功しているとすれば、テイラーさんのように周りや自然との一体感が生まれます。

 しかし、脳内の言葉を排除するのは並大抵のことではありません。なにしろ、昔はものすごい修行をした人でなければできませんでした。

 それが時代が進みノウハウがたまるにつれ、もっと普通の人でも実践できるようになってきているのですが、やはりまだまだ難しいことに変わりはありません。

 瞑想では、脳内ツイートを抑えるために、たとえば「自分の呼吸に意識を向けて」などと言われます。それは脳内ツイートを無視するための工夫なわけですが、それだとなにか「自分の内面に深く潜っていく」イメージがどうしてもつきまとってしまいます。

 でも、本当に「言葉を使わない考え方」が発動すれば、テイラーさんのように周りとの境界はなくなり同化するわけですから、ある意味「間違った方向」への努力になり兼ねません。

 それが瞑想が難しい理由です。

 ということで、もっと簡単になんちゃって瞑想はいかがでしょうか。

 生活の中のちょっとした時間に「脳内ミュート」するのです。

 たとえば電車の移動中に「脳内ミュート」してみるのです。やり方は、「瞑想」の脳内ツイートに関連する部分です。別に落ち着いて座るとかしなくて構いません。ひたすら浮かんでくる脳内ツイートをスルーするのです。そのために、呼吸に集中してもいいでしょう。もしもうまくいかないようであれば、まずは家で瞑想そのものを実践してみましょう。脳内ツイートをスルーする技術を身につけるために。

 日常の空いた時間にスルーさえできれば、おそらく周りに気づけるのではないでしょうか。

 実際昨日ミラフツを書き終えた後、今日はこのネタということになりましたので、早速「脳内ミュート」を実践したのです。ベットの中で。途端に聞こえてきます。蛙の鳴き声が。最近いつもそうだったはずなのですが、こんなに大声で鳴いてたんだと、もう吹き出しそうでした。

 自分と周りとの境界がなくなるとかは、難しい悟りかもしれませんが、ちょっと「脳内ミュート」するだけで、こんな風に気づくことができます。「たまには周りの音に気を配ってみよう」と思ったわけではありません。

 ただ、「脳内ミュート」しただけです。もしかしたら、「天井のシミ」に気づいたのかもしれません。何に気づくかはわかりません。でもそれが、脳内の「言葉を使わないで考える」が発動している瞬間です。これでいいのか?とか苦しみながら瞑想するよりも、ずっと手軽に、いろんなものに気づく豊かな時間を過ごすことができるはずです。


 私たちは、あまりに素晴らしい景色を見た時、「言葉を失う」と言います。脳が麻痺しているわけではありません。

 あまりに素晴らしい景色を楽しむために、「言葉を使わないで考える」力が強制発動している瞬間なのです。もしその瞬間に出会ったのなら、詩人でない限り、ひたすらその「言葉を失っている」瞬間を楽しみましょう。隣にいる人に「きれい」と言葉にしている場合ではありません。手を繋ぐとか寄り添うとか、言葉以外の方法で隣の人とコミュニケーションしましょう。

 そんな感動は日常ではあまりないかもしれませんが、日常のちょっとした時間、スマホを取り出す代わりに、「脳内ミュート」してみましょう。難しい瞑想よりも手軽に、「言葉を使わないで考える」力を呼び起こすことができます。

 「言葉を使わないで考える」力は、言葉で堂々巡りになっている考えからあなたを救い出してくれます。

 漫画家士郎正宗は『攻殻機動隊』で有名ですが、私はその前の『アップルシード』からファンでした(ドヤ)。その中のエピソードに『プロメテウスの大天秤』というものがあり、私はそれを読んでから、ゆうに10年か20年は「より大きな天秤はないか」を意識して生きることになります。つまり、小さな天秤、些細な選択にこだわっていると、より重要な選択を迫られていることに気づかず致命的な誤選択をしてしまいます。そうならないよう、いつも「言葉」で、より重要な天秤がないかを心がけました。

 しかし、それは今は修正されています。それだけでなく、本当にすべきことは、大きな天秤やら小さい天秤やらたくさんある天秤を「いっぺん」に天秤にかけることです。

 ランチを何にするかを考える時、より大きな天秤はなにかを考えるより、無数の天秤をいっぺんに天秤にかけて、「今日は『イタリアン』!」と決める方が、おいしく楽しいランチにありつけるのです。

 言葉で書くとややこしいけど、「言葉を使わないで考える」力は、ランチの選択だけでなく、日に何度もそれをやっているのです。

 ですから、気軽に「脳内ミュート」を楽しみましょう。その瞬間が豊かな時間に早変わりするし、きっとランチや日々の選択のヒット率があがり、楽しく生きることができるのです。


《ワンポイントミライ》(

ミライ: やった〜〜〜〜〜。昨日の私の話が採用されました!!

フツクロウ: ホッホッホ。

ミライ: すごい。私生きてますね。

フツクロウ: ホホ。