今日もとある記事が目につきました。
「日銀理論」の背景にある 「貨幣数量理論は成り立たない」を検証するダイヤモンド・オンライン
今までは「日銀はインフレをコントロールできない」と考えられていたが、そんなことはない!ということを説明しようとしている内容です。
いろいろグラフもあって参考になったのですが、途中からちょっと分かりにくかったので、自分なりに整理しました。
一番引っかかったのは、次のグラフ。
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マネー増加率とインフレ率の間に正の相関がありそうだとわかる(図4)。これで、両者の因果関係には言及せずに、あくまで相関関係があることを確認する。というのですが、これが分かりにくいです。
そのグラフで特徴的なのは、インフレ率はマネーストック対前年比を超えないということです。グラフの縦横比を合わせて45度の線をびっと引いてやると、
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でも、マネーストック対前年比をあげてやればかならずインフレになるかというと、そうでもなくて、マネーストック対前年比を20%にしようが40%近くにしようが、インフレ率は数%なんてことがざらにあることが分かります。
さらに、本文では、図1として日本のマネーストック対前年比とインフレ率の時系列が載せられています。
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さっきのグラフと同じようにインフレ率はマネーストック対前年比を超えていませんが、じゃあマネーストック対前年比をあげさえすればインフレになるかというとそうでもなくて、それどころかマネーストック対前年比がプラスであっても、インフレ率がマイナスになるつまりデフレが起こってることが分かります。10とか20とかにしていけばインフレにはなるかもしれませんが、今度はインフレ率も2を遥かに超えるかもしれません。
以上からわかることは、すくなくともマネーストック対前年比をある程度大きくしなければ、インフレにはなりっこないということで、今回アベノミクスの三本の矢の一つである大胆な金融政策が必要だということです。
でも、それだけでは必ず上がると決まっているわけではなく、それも分かっているから他の矢も用意しているのでしょう。
ということで、冒頭の「日銀はインフレをコントロールできない」かどうかは、この記事からは私は分かりませんでしたが、マネーストック対前年比をあげるべき点についてははっきり書かれていて大変参考になりました。
平成バブルもそうでしたが、日本は世界で前例がない、いつも最先端な経済状況を突っ走っているようです。果たして、三本の矢でインフレがコントロールできるのか固唾をのんで見守ろうと思います。
ところで、今回のようなグラフはたまに現れるので注意が必要です。グラフの斜め上半分に点がないような時は簡単に相関係数が上がって行くのですが、だからといって直線で近似していいのかというと、今回のように慎重に考えた方がいい場合もあります。相関係数求める前にチェックした方がいいと思います。
・併せてどうぞ
【リチャード・ウィルキンソン「いかに経済格差が社会に支障をきたすか」に見る利他的行動の合理性】 ここでとりあげたTEDのプレゼンで使われているグラフでは、そういうところに慎重に対応していて、大変参考になりました。