前回の、

 リーマンショック後最高になった大卒の就職率を地道にさかのぼってみた  

 に引き続いて、高校卒業後の進路も地道にさかのぼってみました。

 就職率、高卒については、文部科学省の平成27年3月高等学校卒業者の就職状況に関する調査
に1976年からの統計があります。そのグラフを引用すると、次のようになっています。

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 バブル崩壊前は、97%前後の高い就職率を保っていましたが、崩壊後86%まで落ち込みます。2000年以降次第に回復し、リーマンショックでいったん落ち込むものの今年ついに 97.5% とかつての高い水準に戻りました。

 とりあえずはほっと一息というところです。

 さて、高卒についても、前回のように学校基本調査を調べてみました。年次データとして一つの表になっているものは貧相なので、地道に各年のエクセルから抜き出していきます。昔の方は、飛び飛びに 1958年、1970年、1980年を拾い、1989年からは2014年まで全て拾いました。

 まずは生グラフ。
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 1992 年をピークに高卒者は減っているようです。主な進路は大学、専修学校、就職、どこにも行かないです。

 まず大学については90年代から、入学者がほぼ一定なのが目を引きます。高卒者は減っているというのに。子供が減っても、大学が定員分取り続けている様子が明らかです。

 専修学校については、昔はひとまとめにデータが取られていましたが、1991年からは専門課程と一般課程に分けられています。専門課程への進学者は微減傾向であるもののそれほど少なくなってはいませんが、一般課程の方はピーク時の1/5くらいになっています。

 次に、百分率にしたものです。
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 印象的なのは、60%から80%にかけてある線、これは大学や専修学校などなんらかの学校に進学した人の割合です。つまり高校を出ても学費がかかるところに行っているという割合です。一貫して上昇し、最近は75%くらいで落ち着いています。つまり景気にまったく左右されていません。景気が良かろうが悪かろうが、高卒の4分の3はどこかの学校に進んでいるのです。

 大学や専修学校の学費を少し調べてみましたが、それぞれいろいろで、どっちだから安いというわけではなさそうです。つまり、親としては、高校出てもなんらかの学費がいるとあらかじめ覚悟している人はしているわけで、その時の景気によって変わるわけではないということでしょうか。
 あとで書きますが、就職する人の割合は景気で変わっています。
 自分で学費を稼ぐ人もいるとは思いますが、なんか、親心が現れているグラフと言えるかもしれません。

 その上、就職者や「左記以外の者」は、別途取り出してみましょう。
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 途中から「一時的な仕事に就いた者」が増えますが、データの様子から見て、「左記以外の者」に含めました。合わせて「就職・進学しなかった者」としています。
 なお、大卒のデータと違って、正規雇用か非正規雇用のデータはありません。

 「就職者」「就職・進学しなかった者」はいわゆる就職率に連動しています。景気が悪くなれば「就職者」は増え、「就職・進学しなかった者」減ります。景気が良くなればその逆です。

 進学のデータは景気にあまり左右されませんでしたが、こちらはされています。つまり、進学する人は景気に左右されず進学し、しない人は就職しようとするが、景気によって就職率は変わるという構造のようです。

 いずれにせよ、行き場のなかった人の割合は5%程度まで落ち込み、これはバブル景気の頃と変わりませんから、社会としての下限に近づいていると考えられます。

 少子化によって人手不足になっているといいます。これからも景気の浮沈によって、行き場のなかった人の割合も上下するでしょうが、失われた20年の間に日本社会が経験した極端に低い就職率の落ち込み方は、これからはしないでほしいものです。

 ところでこれらのデータを見て、今後大学がどうなっていくのか改めて考えてみようと思います。

 小学生の子供が二人いますので、今後の大学の姿というのは、もっとも気になる未来の一つです。今までもなんどか取り上げていました。

 教育費はこのまま上がり続けて少子化が進む?  

 教育は無償化するのか。3つのポイント  

 サイバー大学が見せる10年後の大学  

 【馬】どうなってる? 10年後の大学  

 毎回問題としているのは、高い学費を払って大学に行っても元が取れなくなってきているという問題です。

 返さなくてはいけない奨学金をとってまで、大学に行っても、それに見合った高い給料が得られず返せないという話を良く聞くようになりました。いったい大学ってなんなのと存在意義が問われるところにきているのです。

 さて今回の大卒・高卒進路のデータを見て考えられたことです。

 ・高校卒業段階では「行き場のなかった人」というのは、バブルの頃の水準5%程度に戻ってきています。一方で大学卒業では、「行き場のなかった人」はまだ10%以上おり、かつての5%強の水準の倍です。その様子をグラフにすると次のようになります。
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 これはつまり、大学に行ったからといって、その後の進路が有利になるわけではないという最近の状況を色濃く反映しているのではないでしょうか。
 あるいは、大学への進学率が増えたことで、高卒段階ではとりあえず大学行っとけと進んだけど、大学を出るときに行き場に困る人が増えているのかもしれません。

 いずれにせよ、漫然と大学に行っても将来が良くなるというわけではないことは親子共々肝に銘じておく必要があるのではないでしょうか。