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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「新海誠は、いかにして作家性を諦め、大ヒット映画『君の名は。』を作り上げたか?」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「新海誠は、いかにして作家性を諦め、大ヒット映画『君の名は。』を作り上げたか?」

2017-07-10 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/07/10

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2016/09/04配信「『君の名は。』と『アドベンチャー・タイム』から、感動の本質を探る」の内容をご紹介します。
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    2016/09/04の内容一覧

    新海監督は「いかにしてマンガを動かそうとしているか」

     『君の名は。』は、泣けるアニメということで、劇場に中高生が押し寄せております。最初に言いましたとおり、『シン・ゴジラ』が映画として65点、怪獣映画として90点、『エヴァ』新作として120点と言いました。
     『君の名は。』は映画としては70点、ベタ映画としては……やっとこれで意味がわかるよね? つまりロードラマとしてはたぶん、120点です。『世界の中心で愛を叫ぶ』系の映画としては、120点の出来です。
     それで、アニメとしては85点だと思います。
     まず「なんでマイナス15点なのか?」「ほかのアニメは、どれぐらいなのか?」そんなところから、話をしようと思います。
     僕は「アニメーションでやるべきこと」を全部やっていれば、60点ぐらい付けるんですね。そこにさらに「そのアニメでなければ出来ない表現」というのが加われば、80点、90点、100点となるんです。
     その意味で言うと『君の名は。』は、映像の特徴として「実写映像で既にある表現を、アニメでやってみました」的なものが多かったんですね。典型的なのが「時間経過を見せるのに、駅で電車がすごく早く動く」みたいな表現。これは実写でよくありますよね。電車とか車がバーッと早く動いていて、時間が早く過ぎていく。それをアニメに置き換えてたりしてただけなので、このへんが「ちょっと、つまんなかったな」と思いました。
     というのも、たとえば『AKIRA』というアニメだったら、バイクが夜の都会のなかを疾走する時に、テールランプがスーッと光の線を引くようにして走っていくんですね。これ「ストリーク現象」っていうんですけども、こういうのが新しいアニメ表現であって。
     もちろん、そういった現象自体はビデオとかで似たようなものはあったんだけども、それを表現としてやっちゃったのか、と。「これは面白いよな。すごいよな」ということで、『AKIRA』はアニメ映像表現として本当に100点オーバーで、120点ぐらいなんですよ。
     それに比べて『君の名は。』のなかに出てくるアニメーション表現は、単に「実写で出来ることをアニメに置き換えただけ」のような印象しかないんですよね。

    (中略)

     そしてテーマは「忘れたくないことも、人は忘れてしまう。思い出したいのに、思い出せないという切なさ」です。これ自体は、角川映画の原田知世主演の『時をかける少女』のラストシーンが、もうそんなことをやってるんですね。
     『時をかける少女』では、原田知世が未来から来た人を好きになってしまって、その人が未来へ戻っていく。それで「君は僕の記憶を失ってしまうよ」と。「私たちはもう二度と会えないの?」「会えるかもわからないけど、その時にはお互いがわからない」「そんなことない! 私は、どこにいても、あなたのことがわかる!」って言って、別れてしまう。
     それで映画のなかでは10年以上かな? それくらいの時が経ってから、主人公の原田知世と、未来から来た人が10年後の世界で、ほとんどなんのセリフもなしにすれ違うシーンがあるんですね。
     すれ違ってから、おたがいに「あれ?」って感じで。それぞれバラバラのタイミングで振り返って。だから、お互いに顔を合わさないまま、そのまま別れてしまうんですね。そういった、すごく切ない終わり方をしたんですけども。
     ラストは、そこと似ているなと。いわゆる「未来のすれ違いもの」で。でも、お互いがすれ違うだけだったら、「切ない」で終わってしまって、大感動にならないんですね。ベタ映画っていうのは、もっと感動させなきゃダメなので。
     で、飛騨の山奥に住んでいる女子高生の三葉(みつは)と、東京に住んでいる男子高校生の瀧(たき)の話です。

     ある日、お互いの体がすり替わって「俺、女の子になっちゃった!」おっぱいモミモミみたいなやつもあって。「私、男の子になっちゃった!」オシッコに行く時に「イヤぁ! なんか変なものが付いてる!」みたいなものもあってですね。それでお互い自分が持っている携帯にメッセージを残すことを思い付いて、2人のコミュニケーションが始まって。一度も会ったことがない2人は、徐々にお互いが気になる存在になりましたと。
     それと同時に、映画の冒頭から語られている、1200年に一回、地球に近づくティアマト彗星ですね。この彗星が、どんどん地球に近づいて来ると。
     それで、じつはこの女の子というのは、3年前に死んでいると。ティアマト彗星が地球に近づいて来る時に二つに分かれて、彗星の欠片がその村に落ちてきてしまって、女の子たちとその村すべてが消えてしまっていた。「お互いの体が入れ替わった」と思ってたんですけど、実は「3年前の女の子と、現代の男の子が入れ替わっていた」という話で出来ています。
     こういったことを知った二人は、なんとかしてティアマト彗星で全滅してしまう村からみんなを逃がそうとする。と、いうのが、お話のクライマックスあたりのプロットになっています。

    (中略)

     この構造は「どこかで見たことがあるな」と思ったんですよね。

     何かと言うと、『少年サンデー』の原作版の『Gu-Guガンモ』なんですね。『Gu-Guガンモ』っていうのは、空高く飛べない鳥だったんですけど、最終回の間際になって、やっと飛べるようになった。そしたら、ガンモが空を飛ぶと、周りにいろんな鳥が集まってくるんですね。その時から話が「あれ? ガンモってダメな鳥だと思ったけど、鳥の王様みたいに扱われている」と。そしたら夜に変な使者が来て「あなたは実は鳳凰の卵なんです」と。
     ガンモっていうのはドラえもんみたいな姿形で、コーヒーを飲んだら酔っ払う、人間の言葉を喋るキャラクターなんですけど。その正体は、「卵体」という巨大な卵なんですね。卵に手足が付いて、羽が付いて、ちょっと飛べて喋れる。そして、そのなかには何十匹もの鳳凰の子供が入っていると。
     鳳凰というのは、人間の子供の純粋な気持ちを受けて清い気持ちのままで、この世の中に羽ばたかなければいけない。だから、1年間という期間に限って、卵の状態で人間社会のなかで過ごすことが必要だった。
     「でも、あなたの役目はもうすぐ終わります。あなたはもうすぐ消えてなくなります」って、使者から言われるんですね。
     つまり、ガンモっていうマンガのなかのメインキャラクターは「包み紙」だったんですよ。捨てられる運命にある、1年間限定の包み紙。それが破れて、素晴らしい鳳凰が生まれるんですけども。でも、ガンモのことを無二の友達だと思っている男の子とその家族にとっては「その人しかいない」と思っていた家族の一人がいなくなっちゃうんですね。

    (中略)

     今回の新海誠が挑戦したのは「作家性のあきらめ」なんですよ。
     今までの新海誠は『ほしのこえ』とかでやってたような、男と女が何光年も離れて、男のほうは女の子のことをずっと想っているはずが勝手に結婚なんかしやがって、女の子のほうは銀河の果てで宇宙人と戦いながら「いつかあの人に会える日が来るんだろうか」なんて考えてるような、救いようのないくらい切ない話を連続して書いてて。
     そこそこの評価はあったんだけど、でも「このままではお前はジブリにはなれない。庵野秀明にはなれない」と言われたのかはわからないけど、そこで一念発起して「よっしゃぁっ、わかった! 俺は中学生・高校生、言い方悪いけどバカでもわかる映画を撮るぜ! オラァ、作った! ほら、バカが泣いてる!」っていうのが『君の名は。』なんじゃないかと(笑)
     でも、「バカが泣いてる」っていうのは言い過ぎなんですよ。さっきも言ったように、世の中の大半の方はそういうのしかわからないんだから、メジャー作家としてデビューしている以上、みんながわかるものを作るのが正しいんですよね。

    (続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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