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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「マーク・トウェインの異世界チートもの『アーサー王宮廷のヤンキー』」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「マーク・トウェインの異世界チートもの『アーサー王宮廷のヤンキー』」

2017-10-06 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/10/06

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2017/09/10配信「へたれ異世界転生ものアニメの魅力を語り倒す!」の内容をご紹介します。
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    2017/09/10の内容一覧

    マーク・トウェインの異世界チートもの『アーサー王宮廷のヤンキー』

     では、『アーサー王宮廷のヤンキー』の話を始めましょう。

     まずは、マーク・トウェインという作家の話からしましょうか。
     マーク・トウェインは、ハレー彗星が地球に来た1835年に生まれました。なんでこんな話をするのかというと、マーク・トウェインは、生涯「俺はハレー彗星と一緒に地球に来た!」って言ってたくらいの、アメリカのホラ吹きじいさんだったからなんですけども。
     「俺はハレー彗星と一緒に地球に来た! だから74年周期で、ハレー彗星がもう一度地球に来る時に帰ってしまうぜ!」って言ってたんですけども。本当に次にハレー彗星が来た1910年に死んだんですよ。だから、本当に「ハレー彗星と共に来て、ハレー彗星と共に死んだ男」なんですけども。

     彼が26歳の時に南北戦争があったんですが、実は南北戦争では南軍の指揮官として戦ってたんですね。まあ、ミシシッピー川のことを書いてるくらいだから、「古き良きアメリカ」を愛する南部の男なんですよね。
     ただ、生涯、黒人差別には反対していました。なぜかというと、家にいたジェニーというおばさんの黒人奴隷のことを「第2の母親」として、すごい慕ってたからなんですよね。
     タランティーノの『ジャンゴ』とかを見たらわかるんですけど、当時の南部の黒人の奴隷の生活っていうのは、もちろん奴隷制で非人間的な扱いだったということはあったんですけども、ところが、一旦、家の中に入っちゃった「ハウス付きの黒人奴隷」というのは、家族同然の扱いを受けていたんですね。
     当時の南部アメリカっていうのは、ヨーロッパコンプレックスがすごかったので、とにかく一家の母親というのは、子供にまったく構わないんですね。ひたすらパーティーをやったり、社交界をやったり、ボランティアをやったりして、家の外に出ていた。なので、勢い、子供達はすごく淋しくて、その子供達の面倒を全部見ていたのは、黒人のおばさんになっちゃう。
     なので、その当時の南部の男っていうのは、「黒人の女性に対する限りない憧れと母性を抱きつつ、人種差別の世界で生きていて、南北戦争ではその奴隷制を維持するために南軍として戦う」っていう、すごいアンビバレンツな、心のバランスがとれないような世界に住んでいたんですよね。

     結局、マーク・トウェインは、南軍の少尉に任官されて戦っていたんだけども、途中で病気を理由に辞めちゃうんですね。ところが、軍事裁判で「あれは脱走だ」というふうに言われちゃって、南北戦争の後は、それが嫌でカリフォルニアに逃げて、サンフランシスコかどこかの新聞社に勤務して、そこから小説を書き始めるんです。
     『バックトゥザフューチャー3』でマーティー・マックフライが「古き良きアメリカ」に行きましたよね。本当ににあの時代と同じ頃に、もうアメリカでは流行作家になっていたんです。
     そして、1889年、40歳の前半という小説家として一番脂が乗っていた時期に書いたのが、この『アーサー王宮廷のヤンキー』という小説です。

     どういう話かというと、ハンクという19世紀の機械職人が、6世紀のイギリスにタイムスリップする話なんですよ。
     そして、タイムスリップした先で、アーサー王に気に入られる。魔術師マーリンという、アーサー王の側近だった男がいたんですが、彼に対して「お前みたいなやつはホラ吹きで、魔法は出まかせの嘘だ!」というふうに言い、彼の魔法を科学の力で暴いていって、どんどんアーサー王の隣で出世するという、本当に「異世界チートモノ」なんですよ。

     この話のベースになったのが、15世紀に発表された『アーサー王の死』という小説です。
     15世紀のスコットランドの騎士にトーマス・マロリーという男がいたんですね。15世紀というのは、騎士階級が残っていたギリギリ最後の時代ですから、もう本当に「最後の騎士」ですよ。彼は、同時に小説家でもあって、アーサー王の死というのを書いたんですね。
     このアーサー王の死というのは、英米文学の基礎になったような作品です。まあ、「イギリス人にとっての古事記とか日本書紀みたいなものだ」と思ってください。
     とりあえず、神武天皇と同じように、本当に実在したかどうか怪しいアーサー王という王様がいて、その部下の騎士ランスロットとアーサー王の奥さんとの間の不倫事件から端を発して、アーサー王朝が滅びていくという、イギリスの建国神話です。
     このトーマス・マロリーが書いたアーサー王の死を、徹底的に引用しながら「そんなことあるかい!」というふうに猛烈な勢いでツッコミ入れていくんですね。
     騎士たちがしょっちゅう話していた「俺はこうやって決闘した」とか、「我々はその巨大な男に一撃を食らわせてやった」という自慢話に、この主人公のハンクが、もう、ツッコむツッコむ。
     「なんですぐに「巨大なヤツ」が出てくるんだよ! イギリス中を見まわしても、そんなデカいヤツなんていねえぞ!」というところから始まって、「なんでお前らは、すぐ決闘して、決闘に負けたヤツは奴隷になるんだ? なんでお前らは暴れもせずにすぐに殺されちまうんだ?」っていうふうに、イギリス人が猛烈に愛してやまないアーサー王の死という文学に対して、えげつない勢いでツッコミ入れるんですね。

     じゃあ、なんでハンクがその世界で出世できたかというと。
     彼は本当に、19世紀のただの機械職人のオッサンなんですよ。そいつがウトウト寝ていたら、6世紀のイギリスで目を覚ました。……ここは100歩譲ってよしとしましょうよ。
     6世紀のイギリスで目が覚めて、「今日は何月何日だ?」って言ったら、近くにいた羊飼いの男の子が日付を教えてくれるんですね。するとハンクは、突然「ということは、あと2日後の午前11時2分に、6世紀で唯一の皆既日食が起こる!」って言うんですね。なんかね、そのシーンは一人称で「たまたま私は知っていたのだが、6世紀で唯一の皆既日食があと2日と何時間後に起きる」って書いてあるんですけど……都合がよすぎ!(笑)

    (続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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