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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「ホラーものは、アメリカの「建国神話」だ!」

2017-11-06 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/11/06

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2017/10/29配信「『ブレラン2049』『キングスマン』などこの秋の映画11本を一挙紹介!!」の内容をご紹介します。
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    2017/10/29の内容一覧

    ホラーはアメリカの建国神話

     『ブレードランナー 2049』を破ったのは、実は、スティーブン・キングの『IT』っていう、ピエロが出てくるホラー映画なんだ。そして、『アナベル 死霊人形の誕生』も、アメリカでの公開時には、それなりにヒットしている。
     なんでアメリカではホラー映画がこんなにヒットしているのか? 俺はこれについて、実はホラー映画っていうのは、アメリカの建国神話の1つだからだと思ってるんだよね。

     建国神話っていうのは、それぞれの国が持っている、「なんで我々の国は出来たのか?」っていう、言ってしまえば「ホラ話」だよね。
     イギリスだったら、「アーサー王伝説というのがあって、魔法使いマーリンというヤツがいて~」という建国神話があるし、日本だったら「イザナギ、イザナミから始まった~」という建国神話があるじゃん。たいてい、どこの国にも、そういうふうな「うちの国は何かしら特別で、こんなふうに神に選ばれた!」みたいな建国神話というのがあるんだけどさ。
     アメリカ合衆国っていうのは、世界が文明化された後に、無理矢理、作り上げた国だから、そういった建国神話がないんだ。だから、「建国神話的なものを大衆芸能で作る」ということをやりたがる。僕は、これがアメリカ合衆国の特徴だと思ってるんだよね。

    (中略)

     アメリカには「スーパーヒーローモノ」ってあるじゃん? 俺、たぶん、建国神話を持てない人工国家アメリカっていうのは、スーパーヒーローとホラーという形で、自分たちのルーツを創ろうとしているんだと思うんだよね。
     それは、アメリカ建国時から強く残り続ける「悪いインディアンを退治しに来てくれる騎兵隊」と、「本当は悪くないのに殺されたインディアンの怨念」という2つの大きなイメージがあるからだと思う。

     アメリカの建国物語というのを真実のみで描こうとしたら、実は「大虐殺の末、インディアンの土地を騙して奪い盗った血まみれの歴史」っていう本音に行き着いてしまうわけだよ。でも、そういった本音は、アメリカ人としては絶対に自分たちのアイデンティティの中心には置けない。
     なので、まず、「何かしら悪いヤツを退治した」という騎兵隊的なイメージがある。「西部劇の街とかで、悪いヤツがいたら、保安官とかに頼らずに、自分たちで戦わなければいけない」という自警団とかバットマンの流れの源流にあるようなイメージがあるんだ。
     そして、それだけでは説明しきれない後ろめたさを隠すために、もう1つの「土地を奪われ、騙され殺されたインディアンたちからの恨みに向き合わなければいけない」っていうのがある。これが、現代のホラー映画に流れていくイメージだよね。
     この「自分たちが殺した者の恨みを背負うためのホラー映画」と、「民衆の中から立ち上がり権力と関係なく人々を守るスーパーヒーロー映画」という2つの系列がアメリカの神話を形作っているんだよね。

     今、アメリカで『ブレードランナー 2049』を押さえてトップになっているのって、「マディアおばさんのハロウィン」みたいなタイトルのコメディホラー映画のパート2なんだよね(正しくは、『Tyler Perry's Boo 2! A Madea Halloween』)。
     スティーブン・キングの『IT』にしても、このマディアおばさんにしてもそうなんだけど、ハロウィンだからということとは関係なく、この春くらいから、アメリカではホラー映画がすごくヒットしやすくなってくる。
     つまり、大作SF映画よりも、スーパーヒーローモノとホラーモノの方が、今のアメリカ人の民族的な同意、国民的な集合意識っていうのを作りやすい状態になっているんじゃないかな?

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