岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/02/28
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/02/11配信「『へうげもの』の古田織部は戦国時代のスピルバーグ!大茶会は茶道のコミケだ!」の内容をご紹介します。
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2018/02/11の内容一覧
- もう2018年度No.1に決定かも『スリー・ビルボード』
- 『へうげもの』に描かれるとんでもない日本史
- 織田信長はどんな武将だったか
- 異形の戦車、真田のガマ
- 『へうげもの』の装丁
- オタキング的歴史マンガの読み方
- 千利休が作った侘び数寄の美学
- 劇中に散りばめられた悪ふざけ
- 喧嘩専用の鎖付き茶室
- 古田織部がもたらした食器革命は日本のルネサンス
- 暴力とアートは等しいというテーゼ
- 戦国時代のユニクロ・古田織部がやった感性の自由
- 論理は孤立する
- 『ポプテピピック』おもしろい
- 『カリオストロの城』模型/押井守
古田織部がもたらした食器革命は日本のルネサンス
歴史上の古田織部という人物は研究家の間でも色々と諸説あるんですが、そんな研究家の中に、『へうげもの』の元ネタになったと言われている、久野治さんという、古田織部専門の研究家の方がいます。
この人は、武家社会という格式高く窮屈なところを「カソリック教会」に見たて、それに対して人間味を追求した古田織部と安土・桃山時代というのを、「ルネッサンス」であると定義しました。
久野さんは、NHKの『歴史秘話ヒストリア』に出演した際に、おどけ続けて、何でもかんでもからかっていた古田織部の人生を追うことで、侘び寂びとは異なる、日本人の日の系譜を見つけと語っています。
というのも、「侘び寂びだけを良しとしていたならば、日本はこんなに文化的に豊かにはならなかった。そうではなく、もう1つの美の系譜「おちゃらけ」というのがあった」と。
僕はこの概念について、「ひょうげ」とか「おちゃらけ」と言ってるんですけども、たぶん、現代で言うところの「かわいい」に近いんじゃないかなと思うんですよね。つまり、カッコいいとかわいいの両方あるのが日本の特徴なんです。
この「かわいい」という概念は、実は諸外国には存在しない、世界的に見て新しい概念なんだというのは、今の現代アートの世界でもよく言われていることなんですけども。
もう1人、矢部良明さんという研究者の方が、『古田織部の正体』という本を書かれているんですが、その中で「古田織部が行った最も大きな業績は「食器革命」である」と言っています。
食器革命というのは何かというと。実は古田織部が活躍するまで、日本の貴族達は、木の椀に漆を塗った食器を使って食事をしていたんですね。お茶碗とか焼き皿というのは、ほとんど使わなかったんです。もちろん、例外的に高麗茶碗みたいなものでお茶を飲むことはあったんですけど、基本的には漆器を使っていたそうです。
実は、江戸時代以降、貴族から始まって庶民に至るまで、僕ら日本人が瀬戸物を持ってご飯を食べるようになったのは、すべて、古田織部が瀬戸物に絵師が絵を描いた食器を大量に生産して日本に流通させたからなんですね。つまり、古田織部のおかげで、日本人は瀬戸物食器というのを使うようになったと。
諸外国の食器というのは、例えば、ヨーロッパだったら、白が中心で柄がなかったり。中国だったら、すごく派手な柄のアートとしての皿はあるんだけど、そういうものは実際には食事に使われていなかったり。日用品として、柄がいっぱい入っていて、なおかつ安い瀬戸物食器というものは、日本以外では、世界中に存在していなかったんですね。
「それはなぜかというと、古田織部が作ったからだ」というのが、矢部さんの論です。
(中略)
で、こんなセンスを17世紀初めに持っていた古田織部というのは、当然、周りから理解されないわけなんですよ。
例えば、『へうげもの』の中にも、当時、朝鮮から来た使者が秀吉と面会するシーンがあるんですけど。
これは8巻に収録されているエピソードですね。
朝鮮からの使者に対して「高麗井戸茶碗でございます」と、日本で最高の茶器を出すんですけども、「この国では、貴人にもこんな粗末な器を出すのですか? これは我々からの土産です。我が国の貴人は明の景徳鎮のような真白き器しか用いません。豊臣殿は低い身分より成り上がられたとのこと。王を名乗る前に、まず礼節を学んだ方がよろしいかと」と思い切りバカにされるんです。
そうなんですよ。これが、世界の文化的に当たり前の反応なんです。別に、この朝鮮からの使者の人は、嫌味でもなんでもなく、本心から日本のことを「気の毒な国」だと思ってるんですね。
「ああ、どんなに頑張っても、歪んだ器とか、真っ白じゃない瀬戸物しか焼けないような可哀想な国なんだ」と思って、わざわざ持ってきた景徳鎮の茶碗というのをプレゼントしてくれるわけなんですけど(笑)。これが当たり前なんですよ。当時の日本に芽生えつつ合った、千利休がはじめた侘び茶の概念も理解できない。古田織部のセンスに至っては、まったく理解の外側なんですよね。
(中略)
これが、いわゆる「黒織部」と呼ばれる、『沓形茶碗』というヤツですね。もう、デザインセンスが、完全に現代アートなんですよ(笑)。
わかりますか、これ、すごいでしょ? まず、全体をツートンカラーで塗って、その上にヘタウマなイラストを描くっていう。
これは、『織部脚付角鉢』っていうものなんですけど。これなんて、もう本当に、現代でも通用するデザインなんですね。まあ、なんか、やり過ぎている感じもするんですけども。白いことよりも何よりも、美しいとかカワイイを重んじていたんですね。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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