岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/05/10
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今日は岡田斗司夫のゼミ室通信をお届けします。
DMMオンラインサロンの岡田斗司夫ゼミ室では月に1回オフ会があり、ここで質問や相談を受け付けています。
今回は4月東京オフ会より、参加者の方からの質問に答えました。
質問:監督の意図が観客に伝わっていないのなら、演出の失敗ではないですか?
質問
『火垂るの墓』の解説を聞いて「高畑さんの意図が視聴者に通じていない」と感じました。これは演出の失敗ではないのでしょうか?
解答:高畑さんはテーマを伝えることに熱心ではない作家なんです
岡田斗司夫の回答:
文藝春秋が出してる『ジブリの教科書』という本があるんです。
これにはジブリ作品の解説がすごく細かく載っている。
この中で野坂昭如さんと高畑さんの対談で、「これは心中ものだよね。だからこうなるよね」ということをさんざん言ってるんですよ。
だから高畑さんが心中ものとして書いているのは明らかなんですよ。
それがどうしてこんなに伝わらないのか。
僕がニコ生で解説した時も、「なるほど」という感想はあっても「やっぱりそうだ。心中ものだった」という人はいなかった。全然高畑さんの意図は伝わってないんですよ。
高畑さんはテーマを伝えることにあまり熱心じゃないんですよ。
そういうタイプの作家なんです。
言いたいことがあってそれを伝えることでなくて、どういう表現で見せるのか。
そこにすごくこだわるんです。
だから正確な構図とか、その当時の正確な資料とかが手に入らないと制作に入らない。
ニコ生で『火垂るの墓』の解説が終わった後も、高畑さんの資料を読んでたんですよ。
その中に『かぐや姫』の資料もあったから、ついでに読んでたんです。
そしたら、高畑さんの怒りの文章が見つかったんです(笑)
『かぐや姫』のテーマは「罪と罰」これはニコ生の中でも言いましたね。
これは映画を作る前から高畑さんが言ってたんですけど、あまり伝わらないから鈴木敏夫が焦って、映画のコピーに入れた。
鈴木さんはこれでみんなが考えるだろうと思ってのことだったんですけど、それをしたことで高畑さんが怒り狂った。
「俺はわざわざはずしたのに、宣伝で入れられた。しかし俺は、宣伝に口を出さないという約束をしている。だから文句が言えない。でもすごく嫌だった」
と言ってるんですね。
だから高畑さんが望むのはテーマが伝わることではないんですよ。
テーマをどのように伝えるのかに興味がある。
かぐや姫のテーマをこういう風に伝えるということに意味がある。
だから高畑さんは「心中もの」として見られるのは嫌なんです。
そうでなくて、見た人が
「そうか、これ心中ものか。江戸時代の人形浄瑠璃みたいな話なんだ。そうしたら、哀れで怖くてかわいそうという日本人の「あはれ」という概念が全部入ってる国産ファンタジーだな」と思ってほしい。
終戦の日に出したけれど、実はお盆の恐怖映画というフォーマットをちゃんと踏んでいる。
高畑さんなりの満足を体現してると思うんです。
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