岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/06/23
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2015/02/22配信「戦争とアニメ界の歴史の中の『風立ちぬ』」の内容をご紹介します。
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2015/02/22の内容一覧
- 本日のお題
- 「プロセス否定」の宮崎駿と「結果否定」の百田尚樹
- 映画版『永遠の0』がトラックアップ見せる主人公の最後の表情
- ウェルメイドをあきらめ、狂ってきた宮崎駿の『風立ちぬ』
- 『逆襲のシャア』で自分の魂を語った富野監督
- クリエイターとしてのアンビバレンツが後期宮崎駿を作った
- 質疑応答/アニメSF論争/パチンコ依存/失恋で死にたい/雑貨店売り上げ/夫が自由に
- 後半と次回の告知
- 戦記ものがロボットアニメへ、ロボットアニメが美少女戦闘アニメへ
- 作家性を前に出すアマチュアと「最初から狂っている」富野由悠季
- アマチュアだった『オネアミスの翼』、パンツを脱いでいく宮崎駿
- 堀越二郎の「美しいものしか見えない」眼鏡
- 狂った二人、きれいという言葉しか持てなかった二郎、
- 同時代作家への目配りと監督自身の生き様
- 質疑応答/『風立ちぬ』の感動とは/二郎の夢/宮崎監督のバランス/国産戦闘機/息子吾朗/ネットの喧嘩/平和/アニメーター見本市
映画版『永遠の0』がトラックアップで見せる主人公の最後の表情
僕、映画版の『永遠の0』で一番感動したのは、原作にない部分なんですよ。
映画版の『永遠の0』って、最後どういうふうになってるのかって言うと、主人公がついにこれまでは特攻から逃げて逃げて、自分で死ぬことを逃げて、戦争からも回避して生き残ってきた主人公がついに敵の空母に体当たりをするために行くっていう話。
で、敵の空母に突っ込む。
敵の空母に突っ込む時に、主人公はそれまで映画の中でほとんど見せてなかった色んな技を見せるんですね。たとえば、横滑りとか頭ひねりとか、そういう飛行機の飛ばし方なんですけども。どう言えばいいのかな。
これ前回も使ったミニチュアなんですけども、飛行機ってこういうふうに飛ぶってみんな思うじゃないですか。こう真っ直ぐ真っ直ぐ飛ぶって。これ、その通りなんですけども、飛んでいるベクトルがこうであれば、たとえば、方向舵をひねったら、頭をこう振りながらも真っ直ぐ飛ぶんですよ。
自動車じゃないん、飛行機っていうのは。
自動車じゃないというか、ドリフト走行してる自動車に近いのかな。だから頭を下げてだろうが上げてだろうが、首を振ってだろうが、飛行機が進むベクトル自体は変わらないと。
映画版の『永遠の0』で、一番最後に主人公が特攻する時に使った技法これで、頭をひねりながら真っ直ぐ飛んでいくんですね。そうすると、アメリカ軍のそれを撃ち落とそうとする兵隊はゼロ戦の方向自体は目で見てるから、目で飛び方を追って、「あ、頭をひねっているからこっちへ飛んでるんだ」と思いながら、このこっちの目標のほうに弾を打つわけですね。ところがこいつは頭をひねっているけど、ベクトル自体はこちらだから、こちらに進んでいるんですよ。
だから「弾が当たらない。なぜだ!」っていうシーンがあって、僕はそこらへんでゾクゾクっと感動して、これもいけない戦争を語っているのに高揚する感動なのかもわかんないんですけども。
なんで僕が感動したのかって言うと、主人公はそこまでの技を持っていながら、それまでずっと永遠にそれを封印してたんですね。
なんでかって言うと、自分には守らなければいけない約束があるから。それは何かって言うと、妻の元へ家族の元へ生きて帰るっていう約束があるから、そんな技術を持ちながらずっと封印してまわりから卑怯者とか何というふうに言われても、その技を一切見せずに、ずっと戦闘から逃げてきたんですね。
ところがラストのラスト、もうついに逃げれなくなった。
で、自分の身代わりに後輩、部下が死んでしまったっていうふうなことで主人公はついに自分の番が来たというふうに覚悟するんですね。で、憔悴しきった感じだったんですけども、ゼロ戦に乗ってからは、これまでのすべての技を、映画版の山崎映画版でそれ書かれるんですよ。
繰り出して、敵の戦艦にグワーッと特攻していくと。
最後、それをやりながら、山崎監督ですから、ちゃんとねえ、スタンダードな感動も届けるんですよ。
色んなこれまでに登場した人物が、笑ってこっちを見ながら徐々にカメラがトラックアップしていく。トラックアップっていうのは何かって言うと、ズームでアップにするのではなくて、ドリーレールっていうレールを引いて、カメラを上に乗せて、人物に寄っていく技法です。この人物に寄っていくズームっていうのはこの人に注目っていうことなんですけども、ドリーによる寄りっていうのはどういう意味があるかって言うと、今それを主観で見ている人の気持ちが伝わっているとか、もしくはそのキャラクターの思いを見てる人に伝えるっていう意味があるんですね。
(中略)
トラックアップしながら、色んなこれまでの登場人物、全部を出して、主人公の頭の中にいる人の繋がりとか、あとは後世で彼はどのような人の中で生き続けたか。
人間っていうのは人生が死んだ瞬間に終わるんじゃなくて、その人を語る人、思い出す人が亡くなった瞬間にこの世の中からいなくなるっていう考え方があるんですけども。
わりとそれに近い、縁、仏縁とか、東洋の縁に近いような考え方っていうのを映画の中に出すんですね。
でありながら、そういうふうなものを見せて、わりとありきたりな、言っちゃあ、山崎監督に失礼なんですけども、言っちゃあなんだけども、このトラックアップによる感動っていうのはありきたりな技法なんです。
『ALWAYS 3丁目の夕日』でも使ってるし、たとえば、『嫌われ松子の一生』とかでもすごい効果的に使ってるんです。あらゆる映画作家が、とりあえず感動させたい時に、これやっとけば間違いないっていうモンタージュ、色んなキャラクターがトラックアップしていったら、もう映画見ている人間はキャラクターに感情移入してるもんだから、絶対感動するんですね。
それをやりながら、最後主人公の顔のアップに、ゼロ戦でとうとう敵の空母に突っ込んでいく瞬間の顔にズーッと寄っていくんですけど、その時に唇の端がクーッと上がっていくんですね。笑うんですよ。
で、なんで笑うのかって言うと、これが、百田原作との違いなんですけども。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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