岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/11/28

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/11/11配信「『紅の豚』完全解説 後編〜削除された幻のEDを復元!ポルコはジーナから●●ていた。ポルコの魔法が解けない理由とは?」の内容をご紹介します。
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2018/11/11の内容一覧


私小説としての『紅の豚』解説

 さて、この辺から、私小説としての『紅の豚』の解説になるんですけども。
 この「妻を家に待たせて、外で恋愛するのは、浮気じゃないからOK」というのは、スタジオジブリでの宮崎駿の生き方そのものなんですね。「不倫」じゃないんです。「恋愛」なんですよ。
 これは、ジブリスタッフはみんな知ってるし、鈴木敏夫もラジオや講演や対談の中で何度も話しています。
 そして、『夢と狂気の王国』という、スタジオジブリのドキュメント映画の中でも撮影されています。

 このドキュメンタリーの中に、スタジオジブリで働く三吉(みよし)さんという女性スタッフが出てきます。スタッフの間では「サンキチさん」というふうに呼ばれているんですけど。
 そのサンキチさんという女性スタッフは、このドキュメンタリーが撮影された当時、『風立ちぬ』を作っていた当時の「宮崎駿のお気に入り」だったんですよ。
 これが、当時の宮崎駿の作業机なんですけど。
(パネルを見せる)
 机の奥のところに、イラスト入りの張り紙があるのがわかりますか?
 この「原画チェック頑張って」とか、「あと何カット残っているのか?」というかわいいイラストが入った張り紙を描いたのが、サンキチさんという、まあ、すごい童顔で可愛らしい、もうひと目で「宮崎駿お好み」というのが誰にでもわかる女性なんです。

 この『夢と狂気の王国』というドキュメントの中でも、宮崎駿とこのサンキチさんはすごくイチャイチャしてるんですよ。
 どれくらいイチャイチャしているのかというと。宮崎駿がコンテをやっと完成させたという時に、まず、サンキチさんだけに話すんですよ。で、サンキチさんが「本当ですか? 良かった!」と言うと、宮崎駿は……あの宮崎駿がですよ? 自分から彼女に「ハイタッチ」をしようとするんですね。「ハイ! ハイ!」って。
 サンキチさんは、一瞬「え?」という顔をした後で、「ああ」とわかって、ハイタッチに応じる。そんな、はしゃぐ宮崎駿の様子が収録されているんですけど。

 このサンキチさんに限らず、宮崎駿には常にお気に入りの女性のスタッフであったり、もしくは雑誌の記者がいるんです。
 もう、周囲からは態度でバレバレなんですけどね。実は、どうも本人としては隠してるつもりらしいんですけど。これについては、鈴木敏夫も、すごく嬉しそうに「もう本当に宮崎さんは可愛い。あれで隠してるつもりだ」って言ってるんですけど。
 あまりにも態度が違うので、他人から見たら「ああ、この爺さん、恋をしてるんだ」ってわかるんです。でも、それを完全にプラトニックに、ストイックに、自分の中で抑えてるから、宮崎駿は他人にはバレてないと思ってるんですよね(笑)。

 この『夢と狂気の王国』を撮った砂田麻美という女性監督さんも、実はこの関係に気が付いています。
 それを示すように、このドキュメンタリーの中にはサンキチさん絡みのエピソードやカットがすごく多いんです。宮崎駿の「恋愛してるんだけど、それに関して自分でもわりと無自覚な様子」とか、「周りにバレてないと思っている様子」というのを、意地悪に……という言い方もナンですけど、すごく丹念に掬い上げて編集して残しているんですね。
 だって、この『夢と狂気の王国』の中には、サンキチさん絡みのシーンが本当にいっぱい入ってるんですよ。遂には「サンキチさんの結婚式」というところまで収録されているんです。
 もっと重要で、普通のドキュメンタリーだったら収録すべき「ジョン・ラセターが、わざわざ来日して宮崎さんと話している」というところは、一切ないのに。あのジョン・ラセターが出てこないドキュメントなんて、普通はありえないんですけど。
 まあ、そういう配分で見せています。

 さて、そのサンキチさんが、このドキュメントの中で結婚することになったんです。
 だけど、もし「サンキチが結婚する」なんて話が宮崎駿の耳に入ったら、ものすごくショックを受けるだろうし、仕事全体に影響するはずだから、なかなか言えない。「どうしよう?」と。
 ということで、宮崎駿以外のジブリのスタッフが「誰が宮崎駿にこのことを告げるか?」という相談をしたんですね。で、その結果、鈴木敏夫が「しょうがない。じゃあ、俺が言うよ」となったんです。……何が「しょうがない」なのか、もうわからないんですけど(笑)。

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