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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『平成狸合戦ぽんぽこ』冒頭のリアルな狸は何を意味している?」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『平成狸合戦ぽんぽこ』冒頭のリアルな狸は何を意味している?」

2019-04-22 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/04/22

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2019/04/07配信「宮崎駿はなぜ試写会で泣いたのか?高畑勲はなぜ狸のキンタ×を描くことにこだわったのか?など『平成狸合戦 ぽんぽこ』の謎を大解明!」の内容をご紹介します。
    岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。
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    2019/04/07の内容一覧


    『平成狸合戦ぽんぽこ』冒頭のリアルな狸

     じゃあ、『平成狸合戦ぽんぽこ』です。
     大雑把にいうと「一見すると、自然保護がテーマのアニメに見せかけて、実は高畑勲の社会運動、いわゆる労働争議運動の映画……に見せかけて、実はファンタジー批判だ」というふうな話を今日はします。

     まずは、『ぽんぽこ』からはちょっと遡った話になっちゃうんだけど。
     みんな覚えてるかな? これは『火垂るの墓』の冒頭です。
     主人公清太がカメラ目線で観客を真っ直ぐ見ている。これは「私はあなたたちを意識していますよ」という意味なんだよね。
     そして、次にその清太が視線をはずす。これは「あなた達、こちらを見てください」という意味なんだ。
     こっちを見てくれと言われて見ると、そこには現在の三宮駅が現れる。これ、この前は写真を見せたよね? 柱があって、この横に特徴的な灰皿がある。これ現在の三宮駅なんだけど。
     そこにすーっと死にかけている清太が現れて、この灰皿が消えていって、そんな死にかけている自分を清太が見ているって話になるんだ。
     つまり、最初に観客を見つめていた清太は、現代にいる。そんな現代にいる清太が昔のことを思い出すと、現代のものがスッと消えて、死にかけた清太が現れる。
     この冒頭の数秒間のシーンで、高畑勲は「これからこの地にいまだに囚われてしまっている気の毒な男の子の話をするよ」って宣言しているんだ。

     ただ、「これは、現代にもなってもまだこの場所に囚われている男の子のかわいそうな話なんだよ」ということがハッキリわかるのは、ラストシーン近くだよね。
     最後に死んで幽霊になった節子が寝たことによって、清太は自分を縛り付けている節子の霊から一瞬だけ解放されて、もう一度、観客を真っ直ぐカメラ目線で見る。このシーンがあるので、やっとわかるようになってる。
     この辺りは2018年4月15日のニコ生でやったので、興味がある人は遡って見てください。

     なんでこれを話したのかというと、高畑勲の作品って冒頭の10秒くらいが、すごく大事なんだよ、もう本当に。
     今の『火垂るの墓』も一番最初のこのメッセージを見逃すと、なかなかわかりにくいんだけど。
     みんなもこの間の金曜ロードショーで見たと思うんだけど、『平成狸合戦ぽんぽこ』でも、この冒頭の5秒か10秒くらいのシーンがメチャクチャ大事なんだ。でも、わりとね見逃していると思う。

     これが冒頭の映像です。

     一番最初は、狸も映らずに真っ暗なんだ。真っ暗の中で子供達の掛け声がある。「狸さん、狸さん、遊ぼじゃないか♪」というと、狸がポンと映るんだ。
     すると、「今ご飯の真っ最中♪」って歌が返って来て、「おかずはなあに♪」「梅干し香香♪」、「一切れ頂戴♪」、「あらあんたちょっと、がっつきね♪」と、続く中で、ちょっとずつこの狸がアップになるんだけど。
     この狸は、あくまでリアルな狸。このリアルな狸のことを「本狸」っていうふうに、この作品の中では言ってるんだけど。本当の狸だね。
     その本狸は、ここで真っ直ぐカメラを見ている。カメラ目線になってるんだよね。

     ここが最初のポイント。
     この「なんで一番最初に狸を映して、この歌があって、ここで狸がカメラ目線になるのか?」というのがわかれば、実は『平成狸合戦ぽんぽこ』って、ほぼ全部わかると思うんだよね。


     このシーンには2つの意味がある。1つ目は単純。この映画のストーリーそのものです。
     「狸さん遊ぼうと言ったら、今はご飯の真っ最中」と。「おかずはなあに?」と狸に聞いたら「梅干し香香」、つまり「梅干しとお漬物だよ」と言う。それを聞いた人間が「一切れ頂戴」と言うと、「あら、あんたちょっとがっつきね」と。「あんた、すごい欲張りね」と狸に言われるというわらべ唄なんだけど。
     これはつまり、「狸のテリトリーである野山を人間は一切れ頂戴と言って、少しずつ少しずつ奪い始め、人間の危険性に気が付いていない狸が油断しているうちに、住む場所をすべて奪われてしまう」というお話だ、と。
     だから、「あら、ちょっとがっつきね」というのは、「人間というのはなんと欲深いんだろう」という意味で、平和に生きている狸が、その人の良さにつけ込まれて、すべてを奪われていくという、そういうお話ですよということを、冒頭の10秒間くらいで言ってるわけだよね。
     これはわかりやすい。「ああ、高畑勲だから、一番最初から意味があるんだろうな」と思って見たら、わりとこの部分は捉えやすい話なんだけど。

     もう1つの意味「なぜ、この狸が真正面のカメラ目線になるのか?」というのは、メチャクチャ難しい。実は、これは最後まで見ないとわからないところがあるんだ。

    (続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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