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☗5

「みんなお疲れ! これで準備はすべて終了だ」
 クラス委員長の言葉を合図に、全員がパチパチ拍手を鳴らす。
 机と椅子を除けた教室に、近所の畳屋からレンタルした畳が敷き詰められている。普段と違うプチ和風な雰囲気に、皆が高揚の色を隠さない。
 いよいよ学園祭が明日からの二日間で行われる。
 どこのクラスも最後の準備に追われているが、来是のクラスは用意するものが比較的少ない。夜遅くまでみんな一丸となって作業する――なんていうのも青春の一ページだが、早く済んで余裕ができるなら、それはそれでいいものだ。
「次は将棋部の準備だな。行こうぜ依恋」
「うん。掃除するくらいのものだけど」
「将棋部はアマ女王に挑戦、だっけ? いっぱい人が来るといいな」
 浦辺が言った。将棋部の出し物についてはすでにブログでも告知しているが、ぜひ行きますというコメントがちらほらあった。少なくとも閑古鳥が鳴く、ということはなさそうだ。
「しかしよかったな、神薙先輩がミスコンに出る気になってくれて。我ら新聞部、存分に取材させてもらうぜ」
「あたしも忘れてもらっちゃ困るわよ」
「ああ、先輩と対決できるのは碧山さんくらいだろうしな! 他の参加者には悪いが、ふたりの一騎討ちだろ」
「碧山さん、応援してるからね!」
「いっぱい写真撮るから!」
「思い切って水着で出なよ! 絶対優勝できるって!」
 女子たちもこぞって応援する。自分は可愛いと公言してやまない依恋のことを、誰ひとり自信過剰などと諫めたりしない。むしろその強気に惹かれている。
 この碧山依恋という少女には、学園クイーンの資格がある。疑問を投げかける者は存在しない。
 来是もできるなら、彼女の夢を叶えてやりたい。しかし今年ばかりは、あの人を応援しなければならない――。
「あんたは別に紗津姫さんを応援してもいいわよ。そのほうがやる気出るわ」
「……逆じゃないのか?」
「いい女は逆境にも強くあるべきだわ」