もっと音楽通になるためにアンプを買ってみたいけど、選び方や楽しみ方がよくわからない……という人も多いはず。そこで、ディスクユニオンが運営するオーディオ専門店「オーディオユニオン 新宿店」の原さんに、アンプやハイレゾの楽しみ方をうかがってみた。
そもそも「アンプ」の役割って?
──まず、アンプの役割を教えてください。
アンプというのはアンプリファイアという言葉からきた「増幅」の意味で、つまり音を増幅する機械のことです。CDや音楽データの音の信号はとても小さいので、そのまま出してもあまりよく聞こえません。その信号を増幅して、スピーカーやイヤホンに送ってあげるのがアンプの役割。スマホなど、普段音楽を聴くもののどこかしらにアンプは使われています。
──では、外部にまたアンプを挟む必要はあるんですか? どんな変化があるのでしょう?
スマホの一番の目的は音楽を楽しむことではないので、音に関してあまり考慮されていないものもあります。きちんとしたアンプを搭載すると電力を食いますし、機器の大きさも必要になるので、スマホでは音質が犠牲になっているのが一般的と言えます。音を考慮したアンプをはさむことで、音楽データをデジタルから人が聞けるアナログに変換する精度が高くなるわけです。
忠実な音を再現したり、デジタルデータが変換されイヤホンに届くまでに発生するノイズによる音の濁りに対応し、音楽を純粋に楽しむことができます。
特にポータブルアンプは電力を抑えて音質も確保できる、ここ最近の技術。小さくてもそれなりに音が鳴るものも出てきていますし、今の音楽スタイルにあうモバイル性と音質の良さを兼ね備えているのがメリットですね。
──「アンプ」初心者がついやりがちな間違いを教えてください。
スマホで音楽を聴く場合、注意が必要なのはハイレゾ環境で再生するとき。ハイレゾを聴くためには、推奨するソフトを使わないと、ハイレゾの品質でイヤホンに届かない場合があります。いわゆるCD品質という、品質を落とした状態で再生されてしまうんです。また、ハイレゾ対応のUSBダック(アンプ)自体もピンキリで、例えば一番高い品質のものに対応していない場合は、再生そのものができない場合も考えられます。
そのため、買う前に対応している範囲を注意して見ることと、展示しているところで実際に試すことをお勧めします。やっぱり好みの音は個人差がありますし、聴くジャンルによっても異なりますからね。アンプの先につくヘッドホンでも音が変わるので、いろいろな組み合わせをして、自分で納得のいくものを選ぶのが大事です。
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──先ほど「ハイレゾ」という言葉が出てきましたが、「ハイレゾ」はCD音源を聴くのと比べると音質が良いんでしょうか?
「ハイレゾだから音が良い」って思い込みがあるかもしれないですが、ハイレゾというのはCDの品質よりも「音の情報量が多い」ということ。CDが主役だった時代に作られた作品はCDでベストな状態の音の作り方をされているので、それをハイレゾにしたらCDより音が良くなるかというと……必ずしもそういうわけではないんです。
例えばCDが流行る前の時代の、音源の元になる「マスター=いわゆる原盤」とよばれているものは、情報量がたくさん詰め込まれているので、それをハイレゾにするのは音質的にも優位な面があります。すべてのものがハイレゾになると良いわけではないので、ハイレゾのデータが音質の良し悪しを決めるのではないと認識をしてもらえればと思います。
──音の違いを体感しやすいジャンルはありますか?
クラシックは、楽器の情報量が多いのでハイレゾの恩恵が受けられるかなという印象があります。生演奏など音の微妙な強弱によるきめ細かい情報は、ハイレゾにすることで再現される利点もあるんです。ハイレゾがまだデータ化される前、1999年に「SACD」という規格が出ましたが、その際もオーケストラの方に受け入れられました。
SACDは、ジャズの受けがあまりよくなかった印象です。SACDになると「音が自然になる」「元の音に忠実になる」んですが、その分「力強さ」が少し弱くなるので、ジャズのウッドベースなど、ゴリゴリした押し出しのあるような音が削がれてしまうんですよね。
そのためSACDにしろハイレゾにしろ、ジャンルや曲によっての良し悪しがあると感じます。ただ、製作側はハイレゾで良いとして出しているので、そのあたりはリスナーとの体感の差になってしまうかもしれないですね。
その辺も踏まえると、やはりクラシックが合うのかなとは思うのですが、音が少ない場合はそれだけ変化がわかりやすいのもあるので、バンドサウンドや打ち込み系も良いと思います。
他にも、今は