イギリスのロンドンを中心に活躍する覆面芸術家、バンクシー。社会風刺的グラフィックアートとウォールアートを、世界各地にゲリラ的に描くことで有名だ。そんな彼が、ベツレヘム(パレスチナ自治区内)地域に「The Walled Off Hotel」をオープンした。

ファンはもちろんのこと、世界中の人々が、メッセージ性の高いアートが散りばめられたこのホテルに注目している。

バンクシーを中心に外部のアーティストも立ち上げに参加した「The Walled Off Hotel」。ベツレヘムという地に建てられたことと、このホテルの名前には深い関係がある。

そもそもホテルは、ベツレヘム地域のイスラエルとパレスチナを隔てる壁から5m離れたところに誕生した。この地域は“パレスチナ問題”を長い間抱えていることでも有名。そこにバンクシーは「壁を壊す」という意味の名のホテルをオープンさせることで、社会的メッセージを発信した。

肝心のホテルの内部は、さすがバンクシー、見ているだけで圧倒される世界観を持つ。部屋はドミトリーに、ゲストルーム8部屋、そしてスイートルームから構成されている。

どの部屋もアートが盛りだくさんで、部屋を鑑賞する目的で泊まりたくなる。ちなみに上の写真は、スイートルームの一部を映したものだ。

ホテルの部屋だけでなく、ホテル内にある様々な施設も魅力的。特に「Piano Bar」は、ピアノを中心にデザインされた美しいバー空間だ。

空間のテーマは「植民の開拓地」。アンティークな雰囲気とともに、お茶とスコーンが楽しめる。

また「Piano Bar」ではバンクシーのアートコレクションも飾られている。彼の所有するユニークな数々のアートを観覧できるのも、ファンにとってはうれしい。

まさにこの空間では、非日常のひとときを楽しむことができる。

そしてホテルにはアートギャラリーが設置されている。主にパレスチナのアーティストの作品が集められており、その土地の風土を感じ取ることができる。このギャラリーは、歴史家であり批評家であるHousni Alkhateeb Shehada氏によって監修された。

アートギャラリーだけでなくミュージアムも備えられているのも、このホテルの特徴だ。ミュージアムでは、ホテルから5m離れたところにある壁の歴史も説明されている。

その他の地域に関する説明や解釈なども、この空間ではアーティスティックに表現されている。

さらに興味深いのは、このホテルには一切テレビが設置されていないものの、ホテル内に本屋が設置されている点。ホテルが用意した“壁”をタイトルに含む本を、宿泊者は自由に借りることができる。

他のホテルにはない、ユニークなサービスである。

この他にもさまざまなアートやこだわりを持つ「The Walled Off Hotel」。施設内の他の写真が見たい人は、ホームページをぜひチェックして欲しい。

社会問題のひとつ、パレスチナ問題に改めて目を向けさせる、挑戦的で独創的なバンクシーらしいホテルである。

The Walled Off Hotel
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