今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:「蚯蚓出」アスファルトの上に干からびたミミズを目にする
七十二候:竹笋生(たけのこしょうず)
5月15日~20日ごろ
四季:夏 二十四節気:立夏(りっか)
炊き込みご飯や素揚げもおいしい、たけのこが旬の季節。
あまり馴染みがないが、かつてたけのこは目黒で重要な農産物だった。目黒区のHPによると、目黒不動前の料亭で「名物筍飯」として人気を博し、正岡子規なども味わっていたという。
目黒といえば有名な落語「目黒のさんま」を思い出すが、昔は「たけのこは目黒に限る。」といった状態だったのだろう。
旬の食材
たけのこ煮物、炒め物、蒸し物など、たけのこは調理の幅がものすごく広い。また旬の時期は、食卓にたけのこ料理がずらりと並ぶ光景も珍しくない。
大きくなりすぎるとアクが強くなってしまうことがあるため、皮の色が薄く、短めのものを選ぶのがおすすめ。
あさりあさりは、愛知県でよく採れる。全国のシェアは約7割で、平成16年から10年連続で全国1位を獲得しているほどの漁獲量。
同県内では約30箇所で潮干狩りができ、一大レジャーとなっている。
本日の一句
竹の子の 力を誰に たとふべき凡兆
江戸時代前期の俳諧師・凡兆(ぼんちょう)の句。松尾芭蕉に師事し、この句も連句集『猿蓑』に芭蕉の句とともに並ぶ。後に芭蕉から離れ、牢屋に入るなど生活は荒れていた。
たけのこの成長スピードは早く、1日に約20~30cmも伸びるという。この句も同じく、たけのこが成長する逞しい姿に感銘を受けている。
次回は「蚕起食桑(かいこおきてくわをくう)」。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
bamboo shoot , bamboo sprout in the garden image via Shutterstock
Manila clams image via Shutterstock