こんな時代だからこそ、利便以外に価値がある。
柔らかな光を放つニキシー管は、単桁数字表示素子として1950年代ごろから普及し始めました。回路が単純であることや管の大きさも任意であるといった自由度の高さが特徴でしたが、消費電力や動作電圧の高さが欠点でもありました。それゆえ蛍光表示管の登場以降は低需要となり、1971年1月には蛍光表示管の生産量を下回ることになります。
そして1990年代までには全てのメーカーでニキシー管の製造が終了。現在はストックや個人設計モノが流通しているのみ……というのがおおまかなニキシー管の歴史です。今ではレトロモダンのアイコンでもあるニキシー管ですが、かなりレアな逸品なのですね。
そんなニキシー管を腕時計に使った「nixie watch(ニキシーウォッチ)」を以前紹介しましたが、実際に使用してみた模様をお届けします。
手首を照らす淡いオレンジと青いグロー放電、いざ実物を目にすると本当にふつくしや。ニキシー管はオレンジ発光が一番の魅力だと思っていましたが、青色の光も思ってた以上に目立ちますね。これがロストテクノロジーの息遣い……!
上から見ると青い部分もよく見えるでしょうか。淡いという言葉がよく似合う、ぼんやりとした明るさです。太陽光下だとわりかし見えにくいですが、暗所での見栄えは言うべくもあらず。
右サイドには大小のボタンがあり、大きい方のボタンを押すと時間→分が交互に3回表示されます。さらに表示中にもう一度ボタンを押すと秒が表示されるという仕組み。小さい方のボタンは時刻合わせに使います。
腕時計自体はなかなかのサイズ感で、時計本体部分は55mm×45mm×18mm、バンド部分を含む重さは約180g。重量盤レコードと同じ重さがこのサイズに詰まっていると思うと、かなりズシっときますね。モノ感! です。
本体裏面にはうっすらとニキシー管の刻印が。バンドはシンプルアジャストタイプで、ピン抜きの方向が記されています。
実際に付けてみた感じですが、なんせこのサイズ感ですからね。並のアクセサリー以上の視線誘導力があるというか、腕時計を付けている以上の感覚がまずあります。ニキシー管表示をもつアクセサリーを付けていると言い換えてもそれほど間違いじゃあないかも。
時刻を表示させるためにはボタンを押す必要があるので、ご想像通り使いやすいとはいえません。しかし、ボタンを押せばいつでもニキシー管の光を生みだせるというカタルシスは代え難いもので、それこそがコイツの持ち味。スチームパンクを、レトロモダンを纏える。それを思えばこの使いにくさも粋に感じてきませんか?
そもそも、あえてこの「nixie watch」を使いたいという人ならば機能的な部分に関してもわかりきっていると思いますし、その不便を楽しむこともできるでしょう。時間を知りたければ今や色々な手段があるわけですから、これくらい傾いた腕時計があってもよし。持っていてバイブスが上がるかどうか、大事なのはそこんところです。
バイブスが上がる腕時計「nixie watch」は、現在machi-yaにて取り扱っています。時代を超えて好事家たちを魅了し続けるニキシー管、そのぬくもりに触れてみませんか?
Photo: ヤマダユウス型
Source: machi-ya
(ヤマダユウス型)