忘年会や新年会など、大勢の人で集まる機会も多い年末年始。

気心の知れた友達や、普段なかなか会えない知人などとの会話に花が咲く絶好の機会だが、そんな場をさらに盛り上げるコミュニケーションツールとして、アナログゲームが注目を集めている。

アナログゲームとは、ボードゲームやテーブルゲームなど、電源を使わないゲーム全般を指すが、「なんとなくアナログゲームって難しそう…」というイメージをお持ちの方も多いだろう。


とはいえ、百聞は一見にしかず。今回は全国で6店舗を展開するボードゲームカフェ「JELLY JELLY CAFE」の渋谷店にお邪魔し、同店オーナーで運営会社の株式会社ピチカートデザインの代表取締役・白坂 翔氏に、プレイする人ごとに3種類のおすすめボードゲームを選んでいただいた。

渋谷店にある600種類ものボードゲームに対する今回のセレクト・テーマは、「カフェで大人数で盛り上がるゲーム」「家でカップルで楽しめるゲーム」「子どもと楽しめるゲーム」の3種類。

厳選されたゲームはいずれも、どんな方でも簡単に始められるゲームとなっているらしい。早速、実際のプレイを通じてその魅力も白坂氏に解説してもらおう。

カフェで大人数で盛り上がるゲーム


まず、白坂氏がオススメするのはカードゲーム『ボブジテン』だ。

日本の同人ゲームメーカーが製作したもので、「日本語を勉強している外国人ボブのために、巷にあふれる外来語を日本語だけで説明する」というゲーム。


ルールは非常にシンプルで、プレイヤーは出題者1人と回答者たちにわかれて、カードで指示された外来語について、出題者は外来語を一切使わずに説明する。回答者たちはその説明を聞いて、カードで指示された外来語を言い当てよう、というものだ。

例えば、「トマト」なら、「野菜で、赤くて、瑞々しいやつで……」などと説明をし、回答者たちは「パプリカ!」「トマト!」など当てようとする。一番最初に言い当てた回答者と、見事に正解まで導いた出題者にポイントが入り、その回答者がまた別のカードで指示された外来語を説明していく形となっている。

ただし、回答者は一度でも間違えたら「お手つき」となり、以後、その回で回答することは許されない。そのため、「早く言い当てたいけれど間違えていたら……」と慎重になってしまうわけだ。


実際のプレイでは「ブロッコリー」というお題について、「緑色の野菜で、冬に食べたい白い汁に入っていて……」と説明している途中に、「ピーマン!」という回答が挙がる。出題者も説明する際に「シチュー」という外来語を使えないので、うまく説明することが難しい。「キノコ雲のような形をしていて……」といったところで、別の回答者が「ブロッコリー!」と正解を答えて、無事ポイントを獲得できた。


白坂氏は「説明が上手い人と下手な人で分かれるのが面白いですね。出題者ももどかしい気持ちになるし、回答者も『お前の説明じゃわからねーよ!(笑)』とか言って、盛り上がれます。一ゲームが5〜10分で終わりますし、公式では『8人まで遊べる』となっていますが、ルール上は3人以上であれば何人でも遊ぶことができます。最初に遊んでみるアナログゲームとして、ピッタリだと思います」と太鼓判を押す。

事実、アナログゲーム好きの間でも評判を呼び、アナログゲームの即売会でも飛ぶように売れたそう。アナログゲーム玄人から初心者まで、大勢で遊ぶのに適したゲームといえるだろう。

家でカップルで楽しめるゲーム


このテーマで挙げていただいたのは、『QUARTO!』(クアルト)。2人用のゲームとなっていて、「五目並べ」の要領でさまざまな要素を持っているコマを4つ、同一の要素で一列に並べたプレイヤーが勝利するという、シンプルなルールだ。


特徴的なのは、配置するコマが持っているさまざまな要素。それぞれ「色(黒/白)」「高さ(高い/低い)」「形状(丸/四角)」「穴の有無(穴あり/穴なし)」といった4つの要素が設定されている。

その上で交互にコマを置いていき、「白いコマを4つ一列」「穴ありのコマを4つ一列」と、いずれかの要素を4つ目に置いたプレイヤーが「QUARTO(クアルト)!」と叫べば勝利となる。


また、自分の番に配置するコマは自分で選ぶことができず、相手側プレイヤーが選んだコマを渡される。そのため、すでに盤面にリーチが出来上がっている状態でも、「クアルト」が成立しないコマを渡されてしまうはずだ。反対に、自分が相手にコマを渡す時も「クアルト」が成立するコマを渡さないように気をつけないといけない。

筆者が白坂氏とプレイをしてみると、非常に頭を使うゲームだと強く感じた。現在のリーチの状況を常に把握し、その上で相手に渡すコマを決めなくてはならない。終盤には盤面に要素別のリーチがいくつも出来上がるので、「このコマを相手に渡せば、返しのターンで勝ちだ!」と勇んでコマを渡してしまうと、リーチを見逃して、まんまと相手が勝利してしまうことも……。


「このゲームは、プレイヤーの性格が出るんですよね。相手のリーチを潰していく人もいれば、堅実に自分のリーチを進めていく人もいる。夫婦やカップルで遊ばれる方が多いんですが、かなり繰り返し遊ばれることが多いです。自分が渡したコマで負けてしまうから、すごい悔しいんでよね(笑)。

考えることが多いゲームですが、終わった後に『ここではこのコマを渡しておけばよかった』とか、『このコマだったら、こっちが負けてた』みたいな感想戦をしても面白いです」と、白坂氏。

付き合いの長いカップルでも、ゲームを通じて相手の意外な性格が見えてくるかもしれない。また、ゲームが終わった後の感想戦もアナログゲームの魅力のひとつ。ゲームを通じて、より相手のことを知ることができるだろう。

子どもと楽しめるゲーム


最後に紹介してもらったのは、2人用ゲーム『森の赤ずきん』だ。基本は神経衰弱のようなルールで、小さな木の形をしたコンポネントを並べて森を作っていく。


テーブルの上に現れた森の木をめくっていき、裏側に「バスケット」の描かれた木を3つ発見したプレイヤーの勝ちだ。


木の裏にはバスケットのほか、めくられたら相手に自分のバスケットを一つ渡す「狼」や、追加でもう一回相手の番となる「木こり」といった図柄も描かれている。ゲームの開始時には、これらの木をお互いに自由に配置していって、森を作っていく。どこに「バスケット」や「狼」の木を置くかなど、最初からちょっとした駆け引きを楽しむことが出来る。

その後はお互いに森の中の木をめくっていくのだが、相手が自分の置いた「狼」をめくったかと思えば、その場所をすっかり忘れてしまって、自分が自分の置いた「狼」をめくってしまうこともあり得る。筆者も自分の記憶力の衰えに恐怖を覚えるのだった。


「記憶力や運要素、少しの駆け引きで楽しむゲームです。記憶力を使うゲームでは、意外と子どものほうが強かったりするんですよね。立体感のある木のコンポネントで森を作っていくのも楽しくて、子どももすごく喜びますよ」(白坂氏)

ルール自体もただ木をめくっていくだけなので、非常にわかりやすい。まさに子どもと一緒に遊ぶのに適したゲームといえるだろう。

アナログゲームはコミュニケーション・ツール

また、最後にはボードゲームの魅力から、「アナログゲームってどんな風に盛り上がってるの?」など、素朴な疑問についてもお話を伺った。

——そもそも、アナログゲームっていまどんな状況なんでしょう?


今、アナログゲームはここ数年テレビやラジオなど、メディアで取り上げられることも増え、かなり盛り上がっている印象です。

JELLY JELLY CAFEのお客さんには『人生ゲーム』や『UNO』『モノポリー』くらいしか知らないといったライト層の方も多いです。世界には色々なアナログゲームがあるということで、うちでは一般的に有名でないアナログゲームをフィーチャーして取り揃えています。『UNO』のように5〜10分で終わるものもあれば、『人生ゲーム』のように1〜2時間かかるようなものまで、さまざまな種類のゲームがあるんです。

——アナログゲームがメディアで注目を集めるようになったきっかけは?

ひとつには、SNSの普及が大きいと思っています。アナログゲームは結構絵面が良いので、実際に遊ぶ様子をTwitterやInstagramでアップされることも多いですね。ボードゲームカフェが増えてきた流れで、「遊びに行ってきた」みたいな投稿をする方もいらっしゃいます。

ここ数年でアナログゲームは、若い子たちのオシャレでインドアな遊び、という風に捉えられるようになっていると感じます。

——アナログゲームの魅力とは?

デジタルと比べた時に大きく違うのは、やはり人と対面で遊ぶというところですね。実際に面と向かって遊ぶものなので、コミュニケーションツールとしてもよく使われています。

また、心理的な駆け引きが必要なものから反射神経などを使うゲームなど、ボードゲームにはいろんな種類のゲームがあります。なので、誰でも何かしら自分に合ったゲームがあるはずなので、どんな人でも楽しめるのがボードゲームの良いところかな、と。

ただ、どうしても実際に人が集まらないと遊べないので、最近ではボードゲームカフェに集まって遊ぶシチュエーションが多くなっていますね。他には、家族でご飯を食べた後に遊ぶという人も増えています。

——今回遊んだもの以外には、他にどんなゲームがある?


例えば、“人狼ゲーム”のように会話や交渉に重点を置いた会話系のゲームもあれば、正解がなくて面白い答えを作っていく大喜利系ゲームもあります。親子向けとしては、誰よりも早くアクションをするスピード系のゲームや、『ジェンガ』のようなバランス系ゲームがよく遊ばれています。

最近注目をされているのは協力系ゲームで、プレイヤー同士で争うのではなく、全員が大きな目標に向かって力を合わせてクリアを目指すゲームです。プレイヤー全員が勝ち/負けとなるので、子どもだけが負けて悔しがるということになりづらく、家族で遊ぶのにも向いています。

なにより、多くのアナログゲームは運と実力のバランスがちょうど良いものが多いんです。考えないと勝てないけれど、適度に運でも勝ててしまう。そのバランスが絶妙というのも、アナログゲームの魅力です。運の要素が強いゲームでは小さいお子さんでも勝てたりするので、相手に合わせて遊ぶゲームを決めることができるんです。

——アナログゲームって、幾らくらいで買えるものでしょう?


小さいものであれば1000〜1500円で買えますが、大きな箱の大人向けのゲームであれば7000円くらいから高いものでは1万円を超えるものもあります。

最初から2〜3時間かかるゲームを買ってみても慣れるまで難しいと思うので、1000円くらいのゲームから始めてみてもいいかもしれません。それで気に入ったら、2000〜3000円帯のゲームを買ったり、大人向けのゲームに挑戦してみたり。

——実際、買おうと思った時に、どんな場所で買うことができる?


最近はネットだとAmazonだったり、東急ハンズやロフト、ヨドバシカメラといった大きな量販店でも買うことができます。うちみたいなボードゲームカフェでも、ゲームを販売しているところも多いので買える場所は年々増えていると思います。

——JELLY JELLY CAFEを始めたきっかけは?

もともと私の趣味がアナログゲームだったので、カフェを始めた時に私物のゲームを置いておいたんです。その頃は「ボードゲームカフェ」と名乗らず、ボードゲームで遊ぶこともできるよって。週に1回アナログゲームで遊ぶイベントをやっていたら、評判が良くて、毎日アナログゲームで遊べるような形になっていきました。今、渋谷店には600種類くらいのアナログゲームが並んでいます。

また、JELLY JELLY CAFEは渋谷店のほか、下北沢、池袋、水道橋、横浜、福岡に出店をしています。お客さんの年齢層は20〜30代が多いですが、横浜では親子向け店舗「JellyJellyKids」を2018年2月末までの期間限定でオープンしていて、そこには親子連れの方に来ていただいています。

——白坂さんがアナログゲームにハマったきっかけは?


友達が花見に持ってきた『ワードバスケット』というゲームを遊んでみたのがきっかけです。

アナログゲームはカラフルなものもあれば、地味なものもあるし、いろんな楽しみ方をすることができます。実際にやってみると、友達の普段と違う一面を見ることができたりして、その幅の広さが面白くてハマってしまいました。

同じアナログゲームといっても、人によって好きになるゲームが全然違ったりもするので、それもアナログゲームの魅力ですね。

年末年始にアナログゲームはいかが?

さて、アナログゲームは紹介された3つの他にも、カップルで遊べる『ガイスター』や、大人数で楽しめる『インサイダー』など、まさに百花繚乱だ。興味を持った方は、試しにJELLY JELLY CAFEに遊びに行ってみてはどうだろう? 

もし、そこで気に入ったアナログゲームと出会えたら、飲み会や帰省の際にゲームを片手に「アナログゲームをやろう!」と言ってみてはいかがだろうか? きっと、いつもと少し違った楽しみのある年末年始を過ごせることだろう。

JELLY JELLY CAFE 渋谷店
住所:東京都渋谷区宇田川町10-2 新東京ビル202
アクセス:渋谷駅ハチ公口から徒歩7分、渋谷東急ハンズから徒歩30秒
平均予算:1,500〜2,000円
営業時間:13:00〜23:00
定休日:不定休
電話番号:03-6809-0574(営業時間内のみの受付となります。)
全席禁煙

Text by 須賀原みち

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