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暮らしと仕事をひとつの空間に。生活雑貨屋を営む夫婦が、この部屋で目指すこと(世田谷)|みんなの部屋
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暮らしと仕事をひとつの空間に。生活雑貨屋を営む夫婦が、この部屋で目指すこと(世田谷)|みんなの部屋

2018-06-01 11:00
    人気連載「みんなの部屋」vol.113。部屋づくりのアイディア、お気に入りの家具やアイテムなどの紹介を通して、リアルでさまざまな「暮らしの在り方」にフォーカスします。

    学芸大学駅から少し離れた住宅街に高くそびえる、ヴィンテージマンション。ぐるり360度視界をを遮るもののないその場所は、まさに“見晴らしの一等地”。

    そこに暮らすのは、うつわと生活雑貨の店「threetone」を営む松永さん夫婦。マンションの一室を購入・リノベーションすることで、新たな一歩を踏み出しました。

    ふたりがセレクトするさまざまな器が部屋のなかにひしめくのはもちろん、その暮らしへのセンスは、きっと部屋の至るところに現れているはず。部屋と暮らしについて伺いました。

    名前:松永剛さん、千晶さん
    職業:うつわと生活雑貨「threetone」代表
    場所:東京都世田谷区
    物件価格:3900万円 リノベーション価格:非公開
    築年数:築47年

    お気に入りの場所

    景色が気持ちいい窓辺のそばで

    「いまはあの角に机を置いて、そこで仕事をすることが多いんです。窓から見える夕陽がものすごく綺麗で」(千晶さん)

    この部屋に暮らしはじめてから、「空って、日によってこんなにも色が違うんだ」と気付いたという松永さん夫婦。晴れていれば富士山だって見えるという見晴らしのよさを堪能できる、部屋をぐるり囲む窓は、1時間、1日、1年、と暮らしをさまざまに彩る。

    景色を堪能できるよう、「家っぽくなりすぎる」カーテンは、あえて付けなかったといいます。

    窓辺の木陰は、剛さんの特等席。

    アーチ状に枝垂れた植木(「キィ」というのがニックネーム)が、まるで木陰のような空間を演出するこの場所は、仕事用の机とうって変わって、ただ何もしないのが気持ちいい場所。

    剛さんは、ヘリノックスのチェアを部屋の中央に置き、テレビを観たり、好きな音楽をかけつつ電気を消して夜景を眺めたりするのが至福のとき。

    この部屋に決めた理由

    「threetone」というオンラインショップを営む松永さん夫婦。実はこの部屋、そこで取り扱う器を展示するギャラリースペースを併設しています。オンラインショップから飛び出して店舗を持つに至った経緯について訊いてみると、「実は“店舗”を持とうと考えたことはありませんでした」と意外な答えが。

    「ここは、“店舗”というより、オンラインのお客さまともう少し密につながるための場所にしようと思っています」(千晶さん)

    あくまでオンラインショップありきの、ヒトとモノ、ヒトとヒト、の交差点。とはいえ、ギャラリーを生活空間に併設することは、ともすれば安らぎの時間さえなくなってしまいそうな大胆な発想にも思えます。

    「ふたりとも、仕事と生活をあまりわけたくないタイプなんです。特にわたしは若い頃から、むしろ両者を同化していきたいと考えてきました。根底には、めちゃくちゃ面倒くさがりな性格がある。仕事と生活、ふたつも考えたくないからひとつにしたかったんです。この部屋ができたことで、それが叶っちゃった」(千晶さん)

    叶えるべく行動したわけでなく、自然な成り行きで「叶っちゃった」というのが妙にリアルで、想いの強さを感じます。

    残念なところ

    物件購入時の、予期せぬ落とし穴

    「購入契約時にわかったことがわりと多くて……。違法建築だから建て替えのときに割り当てが半分くらいになる可能性がある、とか。今後、耐震工事で臨時の費用がかかるかもしれない、とか。おまけに、契約後にアスベストが発見されるという事件も。無知を思い知らされました」(千晶さん)

    家を買うという人生で最も大きなイベントのひとつには、それだけ、つきまとう問題も大きいということがうかがえます。

    一方で、住んでみてからの後悔は「そんなにないよね」と、ふたりは顔を見合わせます。物件購入からリノベーションまで、入念に進めたふたりだからこそ得られた満足感でしょう。

    お気に入りのアイテム

    「threetone」で取り扱う商品は、ふたりの暮らしも彩る

    「これは『ONE KILN』というブランドのもの。

    『付き合ってみないとわからないじゃない?』って、まだオンラインショップすらない頃からお付き合いしてくださっています。

    桜島ならではの灰釉(かいゆう)を釉薬として使っていて、焼き物なのに重くないのが特長。いつも当たり前のようにそばにあるものなので、ランプシェードも自然な流れでこのブランドのものに」(千晶さん)

    「これは大好きな有田焼のデッドストック。九州の方ではデッドストックの陶器市って結構やってるですけど、輸送するのが難しいらしく、こっちにはほとんど出回ってない。

    本当に手間ひまかけられていて、そしてこの思い切りのよさ!バブル期の“やっちゃえ感”というか。それがすごく気に入ってます」(千晶さん)

    「これは宮木英至さんという岐阜の作家さんの作品。昔から、青が好きなんです。夏にこういうものがひとつあると、すごく重宝します」(千晶さん)

    ほかにも……

    ほかにも、鹿児島で毎年開かれる「ash Satsuma Design&Craft Fair」に出店していたイラストレーター江夏潤一さんの作品や、同じく江夏さんに描いてもらったというふたりの似顔絵。

    そして映画を観るときや、作業をしながら音楽を流すときに使うという「Ultimate Ears」のワイヤレススピーカーなどもお気に入りだと話します。

    暮らしのアイデア

    器は時短ツール

    「器って、そもそもそんなに高くないんですよね。それでいて、すごくいい仕事をしてくれる。惣菜を買ってきて載せるだけで、全然印象が違いますから。それだけで毎日が楽しくなります」(千晶さん)

    「うちのお店のコンセプトも、『家ごはんをごちそうにする』というもの。ふたりとも料理はズボラなので、手の凝ったものはできませんが、それこそ器ひとつで、テンション上がるんですよね」(剛さん)

    “器は時短ツール”という千晶さんの言葉には、思わずポンと膝を打ちそうになりました。

    展示会用の陳列台としても使えるユニット

    写真提供:松永さん

    「ダイニングでふだんL字で使っているユニットは、器の展示会のときはこんな風に、バラバラにして陳列台としてつかえます。

    天板を無垢材にこだわっておいてよかったです」(千晶さん)

    これからの暮らし

    「次なるビジョンというよりも、もともとこの家でやりたいと思っていたことをちゃんとやりたい。常にイベントが開催されている状態にするとか、お客さまが器を見にきて、みんなで楽しく過ごせる場所にするとか。考えていたことを実行するフェーズだと思っています」(千晶さん)

    「それこそ、『器に載せただけでテンションが上がる』という話をいろんな友達に伝えるだけでも、意味のあることだと思います。そうやって、お客さまともっと親密な関係を築いていきたいですね」(剛さん)

    ひとたび“場”ができた途端、それまで滞っていたことがスイスイ進み出すことがあります。松永さん夫婦にとって、この部屋がまさにそんな役割を果たしてくれたようです。

    合わせて読みたい:

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    Photographed by sawako fujii

    RSSブログ情報:https://www.roomie.jp/2018/06/431040/
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