人気連載「みんなの部屋」vol.119。部屋づくりのアイディア、お気に入りの家具やアイテムなどの紹介を通して、リアルでさまざまな「暮らしの在り方」にフォーカスします。

自分の好きな世界観を賃貸の部屋に取り込むには、なによりコンセプトが必要なのかも?

中島琢郎さん・出元亜優さん夫婦が暮らす部屋は、おたがいの好きなものや思い出が散りばめられていながらも、統一感を損なわない工夫がしっかり。

ふたり暮らしのインテリアを整えようとしている人の、ヒントになりそうです。

名前:中島琢郎さん、出元亜優さん
職業:クリエイター(琢郎さん) PRプランナー(亜優さん)
場所:東京都品川区
面積:45㎡ ワンルーム+ルーブバルコニー
家賃:14万3,000円
築年数:築5年

間取り図(クリックで拡大)

お気に入りの場所

屋上の専用バルコニー

ふたりが口をそろえてお気に入りの場所に指名したのがルーフバルコニー。

婚約の少し前からこの部屋に住みはじめたふたりの、プロポーズ場所がこの屋上だったそう。

周囲に高い建物がなく、見はらし良好で、春には桜の花まで拝めます。

ウッドデッキと物干し竿があるだけの広々したスペースなので、友人が遊びに来たときには、キャンプ用品を持ち出してアウトドア気分を味わうのだとか。

「去年は流しそうめん大会をしました。植木職人の友人が、竹を採集して筒をつくるところから(笑)

今後はプロジェクターで映画上映会をしたり、ミニ菜園をやってみたいなと思ってます」(琢郎さん)

思い出の品をかざるキッチン

もともとこの賃貸のオーナーが暮らしていただけあり、収納豊富で設備が充実したキッチン。

ここには、ふたりの思い出の品が集まっています。

旅先で見つけた食器や、亜優さんが大すきなスタジオジブリも手がけるイラストレーター・井上直久さんの絵画、旅行先で撮影した写真など……

次から次へ出てくるエピソードに、思わずほっこり。

収納を開けてみるふたりがそっくり

かなり広く、食洗機もついていて使いやすいので、この家に暮らしてからはふたりで料理をすることが増えたそう。

「週末に一週間分のおかずをつくりおきしています。日々のお弁当のおかずも、そこから詰めて。

ふたりとも料理がそんなにすきじゃないし、共働きなので、なるべく効率よく!」(亜優さん)

キッチンの中でもひときわオーラを放つのがamadanaの冷蔵庫。

めずらしいあざやかなグリーンの本体には、婚前旅行の世界一周旅で購入したステッカーや、ふたりの写真が飾られています。

亜優さんは転職の狭間に、琢郎さんは2ヶ月の有給をとって、“今後住みたい街”を探す旅をしたのだそう。

結婚式の思い出がよみがえるトイレ(亜優さん)

琢郎さんと亜優さんが結婚式をあげたのは、大崎下島という瀬戸内海に浮かぶ島でした。

トイレにはそのときの写真や、島で見つけたポストカードが。

天窓があるので、自然光が明るく降りそそいでいます。

窓のある明るいオフロ(琢郎さん)

「オフロが気持ちいいですね」と琢郎さんが言うとおり、真新しい設備で広く、窓がついているため換気もバッチリなオフロ。

水まわりがここまで充実した賃貸はめずらしいかも!

愛ネコ・ギンナンのお気に入りは、ベットの上…

2ヶ月ほど前にこの家に仲間入りした愛ネコのギンナン。里親を募集している団体から引き受けました。

彼女のお気に入りは、ベッドマットレスの上のよう。

この部屋に決めた理由

この家に引っ越す前は、目黒で同棲生活をしていたふたり。

ランニングが習慣の琢郎さんが目黒川沿いを走っていたとき、近くを通ったこの街の雰囲気を見て、気に入ったのだといいます。

「SUUMOで検索したらこの家を見つけて。変な間取りが気になって内見したところ、ヒトメボレして即契約しました。

物件選びで重視したのは、明るさ、風とおしのよさ、見はらしのよさ。四面採光で窓が多いのが気に入りましたね。

周辺のレトロな商店街には居酒屋やスナックがたくさんあって、よくふたりで出かけます。酒ずき夫婦なんで」(琢郎さん)

残念なところ

個室があったらうれしい

「プライベートなスペースというか、ネコを放し飼いにしておく用に、個室があったらいいなぁと思います。

なんだか最近、ちょっとネコアレルギー気味で……(笑)」(琢郎さん)

個室を求めて一度は部屋探しをしてみたそうですが、広さや日あたりなど「ここよりいい部屋は、今のところ見つかりませんね」と亜優さん。

服の収納スペースがちょっとせまい

大家さんの手によって元から付けられていた本棚や収納棚が、部屋のいたるところにあります。

「琢郎の洋服はキッチン裏の棚に、私の洋服は備えつけのクローゼットに。

洋服が多いので、吊り下げられるタイプのクローゼットがもう少し広かったらうれしいです……」(亜優さん)

新しく棚を買う必要もないし、快適で効率よく収納できているように思えますが……

ふたりぶんのものを収納するには、少しスペースが足りないみたいです。

お気に入りのアイテム

旅先で見つけた食器類

「お気に入りの器ならたくさん!」と亜優さんが見せてくれたのは、キッチン下の引き出し。

多くは旅先で見つけたもので、琢郎さんはぽってりとしたデザインのポルトガル食器が、亜優さんは琉球ガラスがお気に入りだそうです。

ふたりは大のお酒好きでもあります。

いつでもキンキンに冷えたビールが飲めるよう、ガラスタンブラーを冷凍庫に常備。そのグラスも、もちろん旅先で収集したものです。

ポートランドに行った際には、McMenaminsのタンプラーを購入(左2つ)。オリオンビールのジョッキも、ロゴマークがかわいらしい(右2つ)。

世界一周をしたバックパック

国内外合わせると、年に5回は旅行に行くふたり。そんな旅行に欠かせないのが、このバックパックなんです。

「海外旅行に行くときには、圧縮袋に服をつめて身軽に。はじめに使って衝撃を受けてから、圧縮袋がすごく好き……」と、圧縮袋愛を教えてくれた琢郎さん。

琢郎さんの顔が描かれた、コールマンのランタン

琢郎さんは以前、アウトドアブランド・コールマンに関わる仕事をしていたそう。

そこを退職するときにプレゼントしてもらったのが、自身の顔のイラストが入ったランタンでした。

暮らしのアイデア

家具は背の低いものを選び、開放感を出す

「ここに引っ越すとき、なるべくモノを減らしました」と話す琢郎さん。

スペースの使い方を慎重に考えて集めたインテリアのこだわりは、背の低い家具を選んだこと。

圧迫感を軽減したり、友人が遊びに来たときにテーブルを囲みやすいようにと、ダイニングテーブルではなくローテーブルをセレクト。

ベッドは、ベッドフレームを使わずマットレスを床に直置きしています。

確かに、マットレスのある一角は天井がななめに切り込んでいるので、ベッドを置くと圧迫感がありそう。

“リファレンス”を元に、インテリアのコンセプトを設計…

部屋のコンセプトを固めるときには、琢郎さんがアートディレクター的な役割を、亜優さんがリサーチの役割を担ったそうです。

好きなものをどんどん取り入れようとしていた亜優さんに対して、「リファレンスを出して」と琢郎さんの一言。リファレンスとは……?

参考画像のことで、実現したい部屋のイメージ画像を集めて、その特徴を抽出してコンセプトを立てる、という方法だそうです。

その結果、西海岸風というコンセプトに。

「子どものころによく遊びに行っていた、親戚が住んでいたサンフランシスコのハーフムーンベイというエリアがとても好きで……そこから使う素材やカラーのトーンが決まったり」(琢郎さん)

部屋を見まわすと、ウッドやステンレス素材が多く、色はデニム系とイエローで統一されていて、まさに西海岸を彷彿させる雰囲気。

「ソファやダイニングデーブルなど、大きな家具はこだわって選びました。WTWのダイニングテーブルが特にお気に入りです!」(亜優さん)

部屋の中央に精算ボードを配置

ベット空間には、突っぱり棒とワイヤーでDIYしたパーテーションが。

パーテーションに取り付けられたホワイトボードに書かれているのは……旅費の精算メモ。バインダーにはレシートも挟まっています。

「家計の割り方は、いろんな先輩夫婦を参考にしました。

僕が家賃・光熱費などの固定費、亜優が食費や外食代・消耗品代。

亜優が節約の努力をすれば、得できるようになってるんですよ(笑)」(琢郎さん)

「彼は先生みたい。私は生徒の気分です(笑)」と亜優さん。

家計の運用にも、ふたりの見事なコンビネーションが発揮されているようです。

これからの暮らし

「寝る前にストレッチするのを忘れないように」貼ってあるとのこと。かわいい

「このエリアは、羽田空港へのアクセスがいいし、国際免許を取得できる鮫洲も近いし、旅人にぴったりな場所なんです」(琢郎さん)

一時はマンションを買うことも検討したそうですが、「このペースで旅行をして家も購入すると、60歳で破産する計算になったんで(笑)」ということで、旅費を確保するには賃貸の方が最適だという結論に至ったそうです。

世界一周旅の時のメモ

賃貸で暮らしているもうひとつの理由は、海外移住を視野に入れているから。

「2020年までにふたりで海外移住をしたい予定です。

琢郎が選ぶ仕事や住んだ国に合わせて、出産のことや、自分のできる仕事を考えたいですね」(亜優さん)

目処がないと進まないから、ということで2020年を目標にしているふたり。それまではこの部屋で暮らす予定だそう。

「移住先は、これからふたりで決めていきたいと思います」(琢郎さん)

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Photographed by Norihito Yamauchi

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