Photographed by tsubottlee 琵琶湖を囲み、京都や大阪へのアクセスも良い滋賀県大津市。最寄りの駅から歩いてすぐの住宅街に藤巻さんご夫妻のお住まいはありました。

お名前(職業):藤巻さん(画家・イラストレーター)、ご主人(会社員)
場所:滋賀県大津市
面積:121㎡ 5LDK
家賃:9万円
築年数:築50年 一軒家

間取り図(編集部作成):

←1階 2階→

 

前回の「築150年の戸建てで、職住一体の京都でひとり暮らし」から、今回はなんと庭付き一軒家へと広さは大幅アップデート。

ものづくりで暮らしをサポートしてくれていたパートナーはご主人となり、藤巻さんの暮らしの軸になるアトリエスペースをはじめ、家にあるほぼ全てのものをDIYされていました。

やったことがないことでも、まずやってみる。まだまだ、現在進行中のお部屋づくりについてお話を伺いました。

■目次
1. この部屋に決めた理由
2. お気に入りの場所
3. お気に入りのアイテム
4. 残念なところ
5. 暮らしのアイデア
6. これからの暮らし

この場所に決めた理由

創作活動の捗る環境だったこと

物件探しの条件は、ずばり夫婦それぞれが自身の活動や作業に取り組める空間があること。10件以上の内見を経て、納得の行く物件として今の住まいへ辿り着きました。

「私はアトリエの部屋が欲しく、夫はガレージとDIYができるスペースが欲しいという思いがありました。最初は、前回と同じ京都市内で探していたのですが、なかなか条件にあった住まいが見つからなくて。

根気強く探して行くなかで、部屋数と部屋の広さだけではなく、屋外のスペースも広い今の住まいに辿りつきました」(藤巻さん)

住まいは藤巻さんたちが住むに至るまで、長らく持ち家として住まわれていたこともあり、賃貸とは思えないほど広々とした空間が印象的。

「音の出る作業をすることもあるし、家の庭で焚き火をしたいという夢があったので、隣近所と距離が離れていて安心感があります。古い家ならではのレトロな雰囲気も気に入っているポイントです」(藤巻さん)

裏庭にある池には、なんとたくさんの鯉が泳いでいました。

こちらも前の家主さんが飼われていたとのことで、長く、大切に住まわれていた様子が伺えますね。

お気に入りの場所

DIYで作ったインダストリアルなキッチン

前のおうちでも、収納が印象的だったキッチンは、広くなった空間に合わせてパワーアップ。前回、棚なども制作されていたご主人が、広い住まいになったらと温めていたプランを一気に実現されていました。

「イメージ的にインダストリアルな作業場らしさのある空間にしたいという思いがありました。

そのためシンクと食器棚の間に作業場としてのスペースを設けて、物の取り出しや各スペースへの動線が取れたレイアウトにしています」(ご主人)

中心に作業スペースを置くことで、4辺が自由に使えるようになり、複数人でも作業しやすいのが便利なところ。

作業台の下には、ゴミ箱や鍋が置けるスペースも確保してあり、機能性もバッチリです。

「キッチンの窓枠に合わせて作ってもらった収納も気に入っています。調味料を置いていますが、料理をするときにとても使いやすいです」(藤巻さん)

食器棚には器がたくさん。前のおうちと比べるとかなり増えたそう。

「思い入れのある食器を集めてお店のようにディスプレイ収納しています。

私はフィンランドで買った食器をメインに絞り込んだのですが、夫が窯元で買った食器たちが多く、一気に数が増えました。これから一緒にどこかへ旅行した際にも、窯元に寄って食器を増やして行きたいです」(藤巻さん)

みんなで寛げるリビング

キッチンと隣接する場所に設けられているのがリビングスペース。2つの和室の仕切りを外し、広々とした一部屋として使われています。

「来客が多いので、物をなるべく置かずにリラックスできるよう心掛けました。床の間など元々ある空間もディスプレイスペースとして楽しんでいます」(藤巻さん)

キッチンに引き続き、リビングもご主人のDIYで作られたインテリアが数多く存在します。

テレビ台にちゃぶ台、大きなローテーブル、そしてなんとソファまで! 全て住まいに合わせて作られたもの。

なかでもソファは空間に合うよう、ゆったり寛げるデザインになっています。

「ソファを作ってみたいという思いがあって、クッションのみオーダーをし、テキスタイルを選んで2人がくつろげるサイズにしました」(ご主人)

リビングには他にも藤巻さんが描かれた絵や古道具など、おふたりのお気に入りのものが数多くディスプレイされていました。

パワーアップしてより使いやすくなったアトリエ

住まいを探す条件でもあったアトリエは、さらにパワーアップ。

前回と同様、パソコン作業と絵を描くスペースは分けつつ、各スペースを広くし、収納の使い勝手を良くすることで、より良い環境ができあがっていました。

「机の枠組みは設計図を描いて、サブロク板をそのまま使ってDIYしました。大きい絵を描いたり、資料を広げたりしてもストレスなく使うことができて気に入っています」(藤巻さん)

大きな窓が向かい合うようにしてあるため、自然光もたっぷり入るようになっていました。

窓からはお庭や街の景色も見えて、1日の変化を感じながら作業できそうです。

空間が広くなった分、収納の設計にも余裕ができたよう。

前の住まいに引き続き、有孔ボードを使ったデスク上の「掛ける収納」はもちろん、壁を使った掛ける収納やりんご箱を使った資料用の本棚など、収納スペースは十分。

仕事道具でごちゃつきそうな空間でもスッキリとした印象になっています。

また作業スペースと対面の窓際は、観葉植物も多く取り入れることで彩りをプラス。

「植物が好きなので古道具屋で買ったトレーを使って植物台をつくりました。作業をしながら緑が目に入るとリラックスできます」(藤巻さん)

みんなで集まって楽しめる屋上

お部屋だけでも賃貸とは思えないほど充実しているのに、極め付けは広々とした屋上スペース。

「友人を招いてバーベーキューをしたり、ランチをしたり。使い勝手が良く、天気がいいと居るだけでも気持ちいいので気に入っています。キャンプ道具を家で使えるので、家にいながらアウトドア気分を満喫できるんです。

10人くらい招いても余裕があり、みんなで楽しめるので屋上があってよかったと思いました。日当たりがいいので植物もよく育ちますね」(藤巻さん)

周りの景色も開けていて、なんだか映画のワンシーンみたい。2人でもみんなでも楽しめるスペースがあることで人を呼びたくなっちゃいますね。

お気に入りのアイテム

収納力が抜群のワゴン

広くなったアトリエでの作業をより便利にしていたのがボビーワゴン。作業スペースに合わせて移動させられることに加え、その収納力で作業環境がより良くなったのだとか。

「机の上に物があると気が散ってしまうので、仕事用具を収納できるワゴンを探していました。引き出しがたくさんあって、収納力も抜群で、飲み物も上に置けるので、資料や作品を汚す心配がなくなりました」(藤巻さん)

中を見せてもらうと、筆やインクなどの画材が一段ごとに整理整頓されていました。使わない時は引き出しをしまえば、シンプルなシルエットで、スッキリとして見せられるのも良いですね。

コーヒータイムが楽しくなるコーヒーメーカー

毎日の習慣であるコーヒータイムをより良くしてくれる「ケメックスのコーヒーメーカー」。

「最初はコーヒー好きの友人へプレゼントを考えていた時に、知ったのがきっかけでした。実際に手にして、自分も欲しくなって買ったものです」(ご主人)

「来客が多いので、一気にコーヒーを入れられて、そのまま出せるのですごく重宝しています。見た目もかわいらしいのでコーヒーを入れるのが楽しくなりました」(藤巻さん)

残念なところ

1階の日当たりの悪さ

広々とした庭付き一軒家で、近隣の住まいとも詰まっておらず、何不自由ない環境のように見えますが、唯一気になると話すのが1階の日当たり。

「南向きの位置が廊下になっており、屋根もついているため襖を開けていても、十分な光が届きません。最初こそ、植物をいくつか置いていたのですが、全く育たないのでドライフラワーを飾っています」(藤巻さん)

暮らしのアイデア

​​住まいや暮らしに合わせた家具を使う

お気に入りのスペースに関するお話でも、たくさん出てきたご主人のDIY。これまでの経験と作りたいイメージを膨らませてきたものを住まいや生活に合わせて作るのがポイントだと話します。

「DIYで作っている家具は部屋や用途に合わせて、寸法を合わせながら、ひとつひとつ家具をつくっています。

たとえばキッチンの棚は、持っているオーブンレンジに合わせて幅や高さを決め、使用時の熱を考慮してすのこを使っています」(ご主人)

キッチンには、調味料などを置いている窓枠収納以外にも、使用頻度に合わせたフライパンなどの収納スペースも作成。

ディスプレイとしても成り立っていて、片付ける習慣が付きそうです。

「和室は座って過ごすことを考慮して、全体的に低めの寸法にしています。天井も高くないので、空間的にも圧迫感が出ないようにすることで、より寛げる空間にましたね」(ご主人)

アイテムやテーマ設定に決まりがない場合は、その空間のなかにあるものを基準と決めて制作されているとのこと。

藤巻さんのアトリエデスクは窓枠のラインに合わせて作られたのだそうです。

「家に合わせて作るというのもベースにあるかもしれません。その分、引っ越すとなるとまた次の住まいに合わせて考えることになると思うので、今あるものを解体した時に、どれくらい木材が出るかは想像が付かなくて怖いですね(笑)」(藤巻さん)

これからの暮らし

住まいに「合わせる」から「合わせてもらう」暮らし

住み始めてから少しずつ、賃貸でもできるDIYを進めているおふたり。

まだまだ着手できてないところもあるとのことで、まずは住まいに合わせたお部屋作りの完成を目指したいのだそう。

「室内だと、1階は夫の作業部屋をより使いやすくして、2階は和室に本棚など作って、リラックスしながら読書ができるスペースにしていきたいですね」(藤巻さん)

「庭も有効活用して家庭菜園にしたり、屋上には芝生を敷いたりしてより居心地が良いようにしたいですね。

まだない空間を作ることはもちろん、今ある空間も含め、自分が作る物の精度も上げながら、より良い住まいづくりができたらと思います」(ご主人)

現在の住まいをもっと理想の空間にしながら、将来的に目指すは自分たちがやりたいことを制限なくできる、“自分たちの暮らしに合わせてくれる住まい”だと話します。

「いまの家もすごくいいんですけど、構造や取り付けられた家電に、何でこうなっているのかと疑問に感じてしまうところもあります。どうしても賃貸だとできることにも限界があって、まずできることからやってみるのも面白いのですが、0から作ることにも挑戦してみたいですね」(ご主人)

「私も建築を学んでいたので、床や壁などに張り替えたいとか塗りたいという思いや、間取りについても壁を抜いて広い空間にしたいとか、賃貸ではできないことへの欲求があります。

いまは家に合わせて考えていますが、逆に家に合わせてもらうみたいな感じで、住まいへもっと自由に向き合えたら楽しいかなと思ってます」(藤巻さん)

前回の住まいでも、今回の住まいでも、着実に理想の暮らしを実現させている藤巻さんとご主人。

話を聞いていると、そのうち家を建てることも自分達でやってしまいそう……!

おふたりが描き続けた作品のような住まいに、またお邪魔できるその時をワクワクしながら待ちたいと思います。

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RSS情報:https://www.roomie.jp/2023/01/943584/