「エンタメ」のジャンルで5名の編集部員が各々の「推し」について語るミニ連載。私は「書籍」推しです!

本が人生を教えてくれた

両親が読書好きで、お小遣いは多くないかわりに本であれば何冊でも買ってもらえる、という家庭で育ちました。

そのおかげで、実家は本(とマンガ)だらけ。

一人暮らしの現在は家が狭いので電子書籍に移行しましたが、何度も読み返すものだったり、いただいたものだったり、仕事で作ったものだったり、どうしても処分できない本と、買ったばかりの本だけは数冊、紙で残っています。

振り返ると、大切なことは本で学んだことも多かったような……。

子どもの頃は絵本や図鑑に広い世界を見せてもらい、大人になってからは小説の中に自分や自分の周りの誰かの気持ちを見つけたり、実用書や新書からはまったく知らなかった知識をもらったり、社会というものを理解するよすがをもらったり。

もちろん、実際の経験に勝るものはないと思うのですが、それを補ったり、広げたりしてくれるものが私にとっての書籍です。

と、いろいろもっともらしいことを書きましたが、何より、一冊の中に没頭できる時間が至福なのです!

実生活では毎日いろんなことが起きて、自分のコンディションが悪いときなんかは考えても無駄な悩みなんかで頭の中がいっぱいになっちゃいますからね。

悩むことに時間を使うくらいなら本の世界に没頭します!

自己肯定感の上げ方を教えてくれた、現在の推し本は…

目についたもの、おすすめされたものを読む乱読派なので、「推し本」といわれると悩むのですが、今回は『祖母姫、ロンドンへ行く!』(小学館)をリコメンド。

2023年に読んだ本の中で、「いちばん、友人におすすめした本」です。これって、まさに「推している本」だな、と。

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著者の椹野道流(ふしの・みちる)さんが、若い頃に(推察するに15〜20年ほど前でしょうか?)、80代の祖母をロンドン旅行に連れて行ったときの思い出を記したエッセイです。

このおばあさまがとんでもなく「姫」なのです。

身分が高いということではなく、自分に自信を持っており、自分の要求は正しいものだと信じ、自分に対し周囲はそれ相応の対応をすべし、と心から思っている。つまり「自己肯定感の塊」、著者の言葉を借りれば「メンタルつよつよの人」なのです。

こう書くと、すごく鼻持ちならないおばあさんのようにも思えますが、まったくそんなことはありません。他者を重んじることを第一とし、そのうえで、自身の扱いにも相応のものを求めるのです。

例えば、滞在している一流ホテルのバトラーが、日本人の祖母のためによかれと思って用意してくれたお茶菓子がなぜかすっぱい梅干しだったとき。私だったら「厚意だから」と何も言わず受け取ってしまうと思うのです。

しかし、祖母姫は絶対にスルーしません。

それは、「次にこの人が日本人をもてなしたときに、同じ間違いをしないように。この人の優しい思いやりがきちんと報われるようにしてあげるほうがいいわ」という理由から。

このように、祖母姫はロンドンで出会った人たちと正面から向き合って「一期一会の出会いにしっかりと楔を打ち込んでいく」のです。

もうこの祖母姫さまが名言の嵐で。

今回、この本をご紹介するにあたって、名言や心に刺さったシーンに付箋を貼りながら読み返したのですが、この付箋の数……。

全部ご紹介したいのですが、長くなるので2つだけ。

もっと綺麗になれる、もっと上手になれる、もっと賢くなれる。自分を信じて努力して、その結果産まれるのが、自信よ

──『祖母姫、ロンドンへ行く』P96より

祖母姫さまは、お茶などの趣味にしても、一流の人に習い、真剣に、とことん極めることを信条としています。また、生まれ持った容姿が特別でなくても磨けばそれなりになれる、と信じて、80代になっても自分磨きを怠らない人。

やるからには何でも真剣に、何年でも。そこまでやったからこそ「つよつよメンタル」でいられるのですね。

自己肯定感を上げるには、コレが必要だったのですね。読んでいたら、コレしかない気がしてきました。

また、こんなことも言っています。

謙虚と卑下は違うものなの。自信がないから、自分のことをつまらないものみたいに言って、相手にみくびってもらって楽をしようとするのはやめなさい。それは卑下、みっともないものよ

──『祖母姫、ロンドンへ行く』P247より

うう、ぐさっと突き刺さります。自分が何に対しても「ハードルを下げておこう」と考えてしてしまっているあれこれを思い出して……。

最後には、泣ける展開も待っています

こちらの本、名言が刺さるだけではありません。

著者さんが滞在先のバトラーたちの協力で実現したソウルメイトとの再会&その顛末や、帰国日のバトラーたちと著者たちとのやりとりでは涙ボロボロ。

とても読みやすい語り口だったのもあって、私は半日ほどで読了してしまいました。

すべてをシャットアウトして、ここではないどこかに行ける半日。

この至福の体験をくれる読書は、私の一生の趣味だと思っています。

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