新人作家を紹介するのが大好きなFP山崎(@yam_syun)です。
新人作家の紹介には、ちょっとした喜びがありますよね。たくさんある新作コミックの山から見つけ出し、「まだみんなは知らないけど、いい作家だよ!」「たぶん、これからもっとおもしろいものを書くに違いないよ。読んでみて」と声をあげるのは得意げな気分にさせてくれます(実際には発掘した編集さんが最初に見つけたファンなのですが)。
今回紹介する作家、町田洋氏は『惑星9の休日』でたむらしげる氏の推薦を受け、『夜とコンクリート』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受けるなど、興味がある人にはオススメしたい作家さんのひとりです。
ちょっとした恋愛、ちょっとした孤独感を洒落た描き方で見せる
今回紹介する2冊のうち『惑星9の休日』はSFテイスト。そして地球から遠く離れた、辺境の惑星9(ナイン)に住む住民のちょっとした恋愛模様、ちょっとした孤独の心情を描きます。
『夜とコンクリート』は現代を舞台に、大人になろうとしている子ども、大人になろうとすることを拒もうとしてしまった若者、疲れて不眠症の建築士の日常とその悩みからの脱却を描きます。
いずれも、大きな感動があるわけでもなく、小さくポンと音がするような程度の変化がストーリーを作り出し、登場人物をひとつ次のステージへ連れて行きます。
その描き方がなんともいえず洒落ていて、レビューするよりは、「絵柄が好きならとにかく手を取ってみて」という感じの作家です。
それぞれ出版社のホームページで1話分が読めますので、ぜひ試し読みをしてコミックを買ってみてください。
10年前にも10年後にも古びない感覚
最近、実家を追い出されたマンガ1000冊を引っ越しして並べ直しているのですが、自分が10代のとき読んだマンガのいくつかは、今でも古びることなく「読ませる」一冊だったりします。
なぜかそういう本は長編の人気作であるよりは、短編集だったりします。私の場合だと『ルナパーク』(まつむらまきお著)とか、『KISS』(MEIMU著)などは今でも読み返して、感動が古びることはありません。
あるいは、シリーズ長編の合間に収録されている読み切りが、なぜか心のどこかに残り続けることもあります。
例えば、白泉社はロングヒットの作家にときどき短編を書かせるのがうまく、『ここはグリーンウッド』とか『フルーツ果汁100%』の合間に挿入された短編などはかなりよい作品でした。コミック文庫などでは落ちていることが多く、当時の読者にとってのプレゼントです。
10年後にも古びない感覚でまた手に取る一冊。なんとなく、町田洋氏のコミックはそんな一冊になりそうな気がしています。ある1冊が、作家には知られることもなく、誰かの数十年後にも心に残り続ける。それこそが“豊かな文化”といえるのかもしれませんね。
あなたにもそんな一冊、ありませんか?